( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
4: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:14:49.57 ID:3S++GCzM0
  
第四話 『罪を得て、世界を経て』

扉が開く。
真新しいそれは、白のペンキで彩られていた。

(´・ω・`)「今日も良い天気だ」

出てきたのはショボン。
バーテンダーの服装を着込み、朝日を浴びて背伸びをする。

店の中から引っ張り出してきた小さな看板を設置。
今日のオススメを適当に書いて

(´・ω・`)「さて、今日も御願いしますね」

と、店に向かって頭を下げた。

まだジョルジュや流石兄弟も起きていない時間に行う早朝の挨拶。
店を持って以来、ショボンはこの行為を毎日欠かさず行ってきた。
やはり様々な事情から湧いてきた愛情からくるのだろうか。



  
8: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:16:15.96 ID:3S++GCzM0
  
この時間は比較的客足も少ないので、軽い朝食をとりに店内へ。
と、そこでショボンのポケットから音が鳴り始めた。
マナーモードにし忘れていた携帯だ。

(´・ω・`)「こんな早朝から誰だろう?」

手に取り、通話ボタンを押す。

(´・ω・`)「はい、もしもし」

相手の返事。

(´・ω・`)「あぁ、おはようございます……って、え?
      いや、それは突然過ぎて、そのー……いえ、たぶん大丈夫と思います。
      あぁぁぁぁぁ……はいはいはいはい、解りました絶対です絶対」

溜息をつきながら通話を切り、携帯をポケットに戻す。

(´・ω・`)「……何て朝だ」

ブツブツ呟きながら、看板を店の中に入れる。
扉が閉じられる直前に外側のノブに何かを引っ掛けた。

円を描いた鎖の先に長方形の板。
こう書かれていた。

『諸事情につき本日休店』



  
9: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:17:56.35 ID:3S++GCzM0
  
それから二時間。
ここバーボンハウスは、通常とはまた別の喧騒に満ちていた。

まず、店内に配置されたテーブルでジュースを飲んでいるのは

从 ゚∀从「おわかりです!」

(#゚∀゚)「テメェさっきから何杯おかわりするつもりだ!? えぇコラ!?」

カウンター席で遅い朝食を食べているのは

川 ゚ -゚)「ところで、今日の飯代なのだが……」

(´・ω・`)「もちろん頂くよ。
      流石にタダってわけにはいかないなぁ」

(;^ω^)「わ、解ってるお」

カウンターの最奥席で問い詰められているのは

(*゚ー゚)「ねぇねぇ、この前はフサギコさんと何をしてたの?」

( ,,゚Д゚)「……いや、だから偶然会って話していただけだ」

(*゚ー゚)「ねぇねぇ、この前(ry」

(;,,゚Д゚)「……もう勘弁してくれ」

という風に、騒がしい状況にある。



  
11: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:19:40.14 ID:3S++GCzM0
  
さて、何故彼らがここに集合しているのかと言えば

( ・∀・)「私が緊急招集を掛けたからね」

(;´・ω・`)「うわぁ!?」

(;^ω^)「ど、どうやって入ってきたんだお!?」

( ・∀・)「ははは、それは秘密というものだよ」

目を見開いて驚いているショボンの隣に、突如として出現したモララー。
そしてカランカラン、と扉が開かれる音が続く。

爪゚ -゚)「召集した全員は揃っているようですね。
    外にも特に怪しい人物はいないようです」

( ・∀・)「御苦労……さて、と」

奥から椅子を引っ張り出し、腰掛ける。

( ・∀・)「今日皆に集まってもらったのは、解っているとは思うが渡辺のことに関してだ。
     まぁ、突然だが……三日前、ギコ君が襲撃されている」

(;^ω^)「お!?」

(;*゚ー゚)「え……ギコ君……?」

( ,,゚Д゚)「…………」



  
12: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:21:31.53 ID:3S++GCzM0
  
( ・∀・)「幸いにも軽傷で済んだようで何より。
     さて、これで更に彼女が我々に対して悪意を持っていると確認出来たわけだが
     そろそろこちらとしても反撃をしても良い時期だと思うのだよ」

確かに、やられていてばかりでは進展は望めない。
むしろこちらから仕掛けていかなければ、いつか死人が出るかもしれないという可能性もあった。

(´・ω・`)「でも、渡辺の位置は解ってるんですか?」

( ・∀・)「いや、それがまったく。
     我々が捜索の手を広げた途端、まったく情報が入らなくなってね。
     どうやら今までのは、自分の存在を知らしめるための餌だったらしい」

川 ゚ -゚)「目的が何なのか解らないな……」

( ・∀・)「昨晩接触したギコ君の話によれば、彼女は絶対的な正義を持っているらしい。
     そしてその正義を用いて世界を救うとも言っている」

( ゚∀゚)「世界を救うだぁ? そんなのアニメの中だけにしとけってんだよ」

ジョルジュが言うのも頷ける。
確かに一年前の戦いの規模は、特別大きいというわけではなかった。
むしろ個人の狂気が生み出した小規模の戦いである。

その関係者であった渡辺が『世界を救う』などと言っても、説得力が無いのは当たり前だ。
もしそれが本当なのならば

(´・ω・`)「クルト博士もリトガーも、世界規模の何かに関わっていたってことだね」

( ・∀・)「仮にそうだとしたら一年前の戦いなど、在って無いような小さなものかもしれない」



  
14: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:23:06.21 ID:3S++GCzM0
  
( ^ω^)「そもそも世界を救うって、何から救うんだお?
      別に大きな事件とか無いはずだお」

環境問題、国家間のいざこざ、人口過多による食糧問題、新種の病原菌。
世界共通の問題は色々と挙げられるが、どれも渡辺とは結びつかない。
何故ならば、それらとこちらを襲撃する理由とがまったく繋がらないからだ。

( ・∀・)「我々は別に、熱心に環境問題に取り組んでいるわけではない。
     国家や世界政府に対して何か繋がりがあるわけでもない。
     むしろ我々は、世界から見れば小さ過ぎて確認出来ないレベルの人間だ」

( ,,゚Д゚)「その俺達に、何故渡辺が接触を図ってきたか……」

川 ゚ -゚)「私達に共通しているのは『指輪』だ。
     やはりこれに何か秘密があるのかもしれない」

( ゚∀゚)「秘密ったってなぁ……戦うしか能がねぇぜ、実際」

その言葉にモララーが反応を見せる。
ふむ、と少しだけ考え

( ・∀・)「例えば、彼女が我々を『戦力』として見ていた場合……『敵』がいないとおかしいね」

从;゚∀从「敵、ですか?」



  
15: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:25:01.55 ID:3S++GCzM0
  
( ・∀・)「力を用いる先は『敵』しかない……そうだろう?
     敵がいなければ力など飾りだよ」

まぁ、と付け加える。

( ・∀・)「とりあえず仮の話だ……あまり広げすぎるのも良くない。
     もっと建設的な話し合いをしよう」

(´・ω・`)「んじゃあ、解ってることをまとめようか」

川 ゚ -゚)「渡辺は異世界の住人である可能性が高い。
     彼女は何か重要な真実を握っており、その中心人物という可能性もある。
     我々に対して悪意を持っている。
     しかし何故か、戦力として引き込もうともしている。
     目的・動機などはまったくの不明で、資料にも何も残されていない。
     そして――」

( ^ω^)「世界を救おうとしている、かお……」

( ・∀・)「実際、どう救おうとしているのだろうね?
     例えば地球のために人類を滅ぼそうとした人物が漫画か何かにいたような」

( ,,゚Д゚)「成程な……それが良いこととは限らんわけだ」

( ゚∀゚)「何かよく解んねぇ。 もっと情報はねぇの?」

( ・∀・)「正直言わせてもらうと御手上げ状態だね。
     資料を調べ尽くしたが情報はあまり得られず、更には研究所も崩壊してしまい
     ある程度は知っていたであろうリトガーもこの世にいない」



  
18: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:26:40.60 ID:3S++GCzM0
  
腕を組んで考え込む。

( ・∀・)「あと残る手といえば……渡辺本人を捕まえて吐かせるしかない、か?」

(´・ω・`)「物騒だね」

( ・∀・)「あまり手段としては褒められたものじゃないのは確かだ」

( ,,゚Д゚)「しかし吐かせたとしても、それは『教えられた』と大差ないんじゃないか?」

( ・∀・)「認識の違いが出てくるね。
     捕らえるまでの過程を『真実への道程』と見るか、吐かせて『教えられた』と見るか。
     つまり過程か結果のどちらを重視するか、ということだが……」

川 ゚ -゚)「……私は捕らえて吐かせる方が良いと思う。
     とりあえず真実を知れば、それ以降の対応も早くなるからな」

(;^ω^)「拷問とかするのもされるのも嫌だお」

(´・ω・`)「でも僕らのこだわりを優先させて、取り返しのつかないことになっても困るよね。
      彼女が言うには『世界』が関わっているわけだから」



  
20: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:27:59.46 ID:3S++GCzM0
  
意見が分かれる。

強行的に真実を見ようとする者。
受動的に真実を得ようとする者。

どちらが正しいだとか、どちらが間違っているだとかは関係ない、
問題は皆の足並みが揃っていないという事実だ。

( ・∀・)「さて……どうしようかね?」


「ならば、真実の場所を教えましょうか」


突如として聞こえてきた声。
この場の誰でもない。
全員が、一斉にバーボンハウスの隅を見る。

( <●><●>)「……こんばんは」

黒衣の人間が、そこに立っていた。



  
23: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:29:32.50 ID:3S++GCzM0
  
月下。
そして廃屋。
渡辺と貞子が利用しているそこに、新たな人影が現れた。

/ ゚、。 /「……ここ、か」

ダイオードだ。
二メートルを超える長身に漆黒の甲冑に、腰まで伸びたロングの黒髪の女性。
纏った色のおかげで、闇に紛れてここまで接近出来たが

/ ゚、。 /(流石に見付かっているだろうな)

これ以上進めば攻撃される可能性もある。
逆を言えば、ここから攻撃すれば反撃を受けずに済むだろう。
渡辺はそういう女だ。

/ ゚、。 /「……ふむ」

しゃがんでいた身を立ち上げる。
木々の枝が頭に当たるが無視し、背負った巨剣を手に持った。

それは漆黒の色が不気味に、そして同時に吸い込まれそうな神秘さを持つ刀身だ。
ある事情で得た武器らしいが本人は多くを語らない。
仲間であるダディ達も、この剣の詳細を知らされていなかった。



  
25: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:31:19.32 ID:3S++GCzM0
  
背後へと振りかぶる。
軽い動作を受けたそれは、鬱蒼と茂っていた木々の枝や葉を容易く切り裂いた。

/ ゚、。 /「ふっ――!」

押し殺した気合の声。
そして振りかぶっていた巨剣を、横に薙ぐように全力で振るう。
風を、むしろ空間さえも切り裂くような異音。
それは鈴のような澄んだ音に近かった。

一瞬の沈黙。
周囲の時が止まったかと錯覚を受ける時間は、次の瞬間に砕け散る。

爆発。

六十メートル前方にあった廃屋敷の下部が、爆弾の直撃を受けたかのように爆ぜたのだ。
壁を構成していた木材が砕け吹き飛び、支えていた土が花火のように舞う。
轟音と激音が入り混じり、新たな音を生み出す。

大量の砂煙が発生する視界の中。
突如、その灰の色を突き破るように何かが飛び出した。

川 -川「…………」

貞子だ。
単身一人で着地し、こちらへ視線を向ける。
何も担いでいないところを見るに、どうやら既に主と機材の避難は終わっていたようだ。



  
28: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:33:19.28 ID:3S++GCzM0
  
/ ゚、。 /「随分と準備が中途半端だな。
      それだけの時間があるのなら、逃げていれば良かっただろう」

川 -川「どうせ逃げても追いつかれるでしょう。
     それならば、今この時に倒しておくべきかと」

正論だな、とダイオードは呟く。
次の動作で懐に手をいれ、一枚の紙を取り出した。

/ ゚、。 /「渡辺が『秩序破壊』の計画を企てているという情報が入っている。
      一時的に彼女の身を束縛するためにも、逃亡先を吐いてもらおう」

川 -川「御断りします」

/ ゚、。 /「それは世界に対する裏切りを選ぶという事か、人形風情が」

川 -川「その程度の裏切りなど些細。
     私が本当に恐れるは、マスターに対する裏切りです」

/ ゚、。 /「何処まで行っても人形、か……。
      ならば、選択を誤ったことを地獄の底で悔やめ」



  
29: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:34:54.57 ID:3S++GCzM0
  
轟風。
ダイオードが、予備動作無しで突進したのだ。
砂煙を豪快に巻き上げなら、棒立ちしている貞子へと向かう。

激音、轟音、震音。

様々な音が同時に響いた。

/ ゚、。 /「タダではやられんか」

川 -川「私はマスターの最高傑作ですから」

ダイオードの瞬間三連撃を、貞子は手に持ったバールのようなモノで防いでいた。

/ ゚、。 /「速度が駄目なら、数で押そう」

バックステップし、その直後に真上へと跳躍。
変化は次の瞬間だ。

ダイオードが握る巨剣、刀身の根元に当たる部分に微かな光。
それは赤色の文字だった。

『十七連魔弾射出魔術陣【砕】』

現実となる。
突如、ダイオードの背後に血のような赤をした円陣が浮かんだのだ。
そこから発せられるのは、文字通りの魔力弾。
魔法陣内の複数円から出現したそれは、連続で貞子の下へ直進した。



  
31: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:36:38.10 ID:3S++GCzM0
  
容赦なく牙をむいた弾は、彼女がいた空間ごと食い荒らした。

空気を弾き、地面を抉る。
まるで花火のように土煙が舞い上がった。

それを突き破って跳ぶ影。

川 -川「……次は私の番ですね」

ほぼ無傷の貞子だ。
空中で静止したダイオード目掛けて、右腕を突き出す。
手首から肘の中間部分が折れ、小さな銃口が頭を出した。

火を噴きながら弾丸を射出。
音速超過の小さな殺人鬼がダイオードの身体を突き破ろうとするが
強固な壁に阻まれ、自身を潰すという結果に終わる。

壁の正体は巨剣だった。
二メートル以上あるダイオードの身を、すっぽりと隠せるほどの巨大な刀身は
雰囲気が醸し出すとおり強硬である。



  
33: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:38:23.24 ID:3S++GCzM0
  
二人同時に下降。
着地音がした時、既に二人はぶつかり合っていた。

/ ゚、。 /「――!」

川 -川「ッ……!」

一つの金属音が響くと同時に、異なる位置から似た音。
神速とも言える速度で七度ぶつかる。

/ ゚、。 /「次だ」

またもや赤文字が走る。

『GU−EX/Lo 【震】』

重いはずの巨剣を一瞬で地と平行に。
切っ先を貞子へと向けた。

川 -川「ッ!!」

対する貞子の反射神経は異常だった。
すぐさま軌道を予測し、発射される前にバールを持ち上げる。

ドン、という重々しい音と、ギン、という金属音が重なった。

バールが弾かれるように吹き飛ばされる。
それを目で追うことなく、貞子は次の動作へと移った。
腰から取り出したのは二本のナイフ。



  
36: ◆BYUt189CYA :2007/03/04(日) 21:40:34.30 ID:3S++GCzM0
  
川 -川「流石は『秩序守護者』ですね」

/ ゚、。 /「理由はそんなものじゃあない……ただ私の力が強いだけだ」

川 -川「問いましょう。
     貴女は如何なる方法を用いても、マスターの邪魔をすると?」

/ ゚、。 /「『秩序』に関係ないことならば、私達は何も言うまい。
      だが彼女は関わり過ぎ、更には自らの手で動かそうとしている。
      これがどういうことになるか解るか?」

川 -川「とても幸いなことになるかと」

/ ゚、。 /「それは結果論だろう。
      何もしなければ、この世界の人間は何も知らずに済むはずだ」

川 -川「ですが、知らずともいつかは来るはずです……それこそ破滅の一歩かと思っておりますが」

/ ゚、。 /「だからこの世界に全てを背負わせると言うのか」

川 -川「いえ、マスターには考えがあります」

/ ゚、。 /「だとしても、世界最大の罪を被ることになるぞ」

川 -川「そんな罪を恐れて世界を壊し続けることに、如何ほどの意味がありましょうか」

相成れない存在とは、必ずあるものである。
今、この場には対極の考えを持つ者同士が問いかけ合ってた。



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