( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
170: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 20:53:12.86 ID:S6V5Fdvb0
  
第五話 『世界の分岐点』

闇がある。
光はほとんど無い。
天には月があるはずなのだが、それも暗雲に邪魔をされていた。

微かな光が照らすのは、戦の傷跡が残る滑走路のような広域の土地だ。
黒いゲートをくぐり、そこから一キロメートルほどそれが広がる。

( ・∀・)「まだまだ寒い……もう春だというのに」

今は三月の中旬。
春の到来を確実に感じるが、まだ冬の肌寒さが残っている。
周囲の闇・少音が、更に感じる寒さを増幅させた。



  
175: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 20:55:15.03 ID:S6V5Fdvb0
  
隣でコートを揺らしているのはギコだ。

( ,,゚Д゚)「本当に、ここに真実とやらが在るのだろうな?」

(*゚ー゚)「まぁ、駄目元みたいな感じよね……」

川 ゚ -゚)「私にはそう思えないが。
     確かに奴は怪しかったが、嘘を教えるメリットなど無いように思える。
     それに行動せずに過ごすよりも、よほど良い」

そんな彼女の手は、しっかりとブーンの腕に絡んでいた。

( ^ω^)(……動きにくいお)

从 ゚∀从「でも、破壊されてるんですよね?
      研究所っていうのを、一度見たかったんですけど……」

ハインリッヒが興味深げに周囲を見渡す。
それを、少しだけ暗い顔で見つめるクー。

半年前に行われたFCの調査に、ハインリッヒは参加しなかった。
当時、まだ車椅子を必要としていたというのもあるが
精神的に未熟であった彼女を、この場に連れて来るのには抵抗があったのだ。

特にクーの反発が激しかったのを、ブーンは記憶している。

やはり我が子のように思っているのだろうか。
彼女のハインリッヒに対する愛情は、時に異常を感じさせる。



  
178: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 20:56:30.46 ID:S6V5Fdvb0
  
( ・∀・)「ジェイル君、どうかな? 何か変わったモノはあるかね?」

爪゚ -゚)「今のところは特に……ですが、逆にこの静寂さが不自然だと推測します」

事実だった。
周囲は、ザワザワと風に揺れる木々の音のみ。
それ以外はギコの小言がたまに聞こえる程度と、地面を叩く靴の音。

本来、あるべき動物の気配さえしないのだ。

( ・∀・)「……梟の鳴き声も聞こえず、虫の響きも無い。
     ははは、これは幽霊が出るフラグかもしれないね」

从 ゚∀从「幽霊ですか!? うわぁ、僕見たことないんですよ!」

( ,,゚Д゚)「……何の遠足だ、これは」

(*゚ー゚)「まぁまぁ」



  
179: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 20:58:17.78 ID:S6V5Fdvb0
  
戦場であった滑走路を歩く。
そのまま真っ直ぐ行くと、崩壊した建物が姿を見せ始めた。

クルト博士の研究所。
いや、元・研究所と言った方が正しいのだろう。

そこはただの廃墟だった。
全ての建物が、まるで上から押し潰されたかのように砕けている。
破片の直撃を免れた柱や壁が、辛うじて形を残している程度。

そう、あの渡辺によって壊滅した場所だ。

(*゚ー゚)「でも、本当に幽霊が出そうな雰囲気ではあるわね……」

从 ゚∀从「あ、もし見えたら是非とも教えて下さいね!」

( ・∀・)「この場合、馬鹿と呼ぶべきか『ほぅら、ホラーだよ』と言うべきか……。
     うぅむ、悩むところだね?」

( ,,゚Д゚)「間違いなく馬鹿は貴様だな」

( ・∀・)「元祖バカップルには言われたくない」

二人が火花を散らしながら睨み合う。
その横で、ジェイルが無表情に周囲を見渡していた。



  
181: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:00:30.02 ID:S6V5Fdvb0
  
( ^ω^)「でも、何も無いお」

(*゚ー゚)「……やっぱり騙されたのかしら?」

川 ゚ -゚)「仮に騙されたとしても何になる?
     我々という戦力がいなくなったバーボンハウスを襲撃か?」

( ・∀・)「それはメリットが無いよ。
     街中で暴れれば、流石に足が付きやすいしね……やるとしても時期的に不自然だ」

(;^ω^)「お? じゃあ、どういう――」

そこまで発した時だ。
突如、周囲から光と風が巻き起こる。

光源はブーン達の周囲、つまり崩壊した研究所の端から円状に八つ。
風が竜巻のように渦巻き始めた。

从;゚∀从「うわぁぁ! 何ですかー!?」

( ・∀・)「ジェイル君、原因を報告したまえ」

爪゚ -゚)「不明です……が、一つだけ言えるのは
    これが自然によって発生したものではない、ということです」



  
184: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:02:07.12 ID:S6V5Fdvb0
  
( ,,゚Д゚)「……あれは」

ギコの視線の先。
瓦礫と化した研究所の敷地、その一番奥に二つの人影。

从'ー'从「いらっしゃーい」

渡辺と貞子だ。
以前と変わらずの白衣を着て、瓦礫の山に立っている。

从;゚∀从「だ、誰ですか……もしかして幽霊さんですかー……?」

从'ー'从「ん〜、その認識は実に美味しいなぁ。
      確かに私は亡霊と呼ばれても仕方ないような?」

(;^ω^)「マジかお!」

( ・∀・)「少し黙れ、馬鹿二人」

モララーが言葉で制す。
少し上の位置にいる彼女を見上げるような視線で

( ・∀・)「こんばんは、渡辺女史……良い夜だね」

从'ー'从「うん、そうだね。 計画発動には良い空気だと思うよ」



  
186: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:03:35.88 ID:S6V5Fdvb0
  
( ,,゚Д゚)「計画……貴様の言葉、一つ一つが意味不明だな」

从'ー'从「それは貴方達が無知だから」

川 ゚ -゚)「だが、貴様は全てを知っている。
     その計画も、知っているからこそ企てたものだと?」

从'ー'从「そう……私が正しいのだと証明出来ると同時に、世界を救うことが可能な計画。
      私はクルトともリトガーとも違う。
      私は彼らみたいに甘くはなく、臆病でもない」

川 ゚ -゚)「救うとは何だ? 物理的な救いか?」

从'ー'从「んぅー……」

渡辺の動きが止まる。
唇に人差し指を当て、何か思考しているような表情。
そしてこう言った。

从'ー'从「飽きた」

(;^ω^)「え?」

从'ー'从「質問ばかりで面白くないよ。
      もっとこう、思いをぶつけ合うような……そう、激しいバトルをしたいなぁ」



  
187: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:05:03.53 ID:S6V5Fdvb0
  
何を言っているのだろうか。

周囲では轟音を奏でながら風が渦巻き、点在するのは紫色の八つの光。
その中にいながらも、彼女の言葉を聞いた者達は沈黙で答える。

( ・∀・)「バトる意味が解らない。
     例えば、その計画とやらが私達にとって障害となるのならば
     それは止めねば、ということになるが……」

从'ー'从「自分に関係ないことは、どうでも良いの?」

川 ゚ -゚)「何だと?」

从'ー'从「そのままの意味だよ。
      貴方達は、自分に関係ないことなんてどうでも良いの?」

諭すような口調。



  
189: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:06:33.13 ID:S6V5Fdvb0
  
( ・∀・)「その計画が、私達以外の者に関係すると言うのかね?」

从'ー'从「……もういいや」

諦めた様子で、肩を落とした。
その表情には明らかに落胆の色が張り付いている。

从'ー'从「何て言うか……ドライだよねぇ」

(;^ω^)「ワケが解らないんだお。
      僕達は何も知らないんだから仕方ないお」

从'ー'从「無知だからって許されるなんてことは……無い場合もあるよね、社長さん?」

( ・∀・)「否定は出来ない」

川 ゚ -゚)「つまり、貴様は何がしたいのだ?」

クーが苛立ちを隠さずに問いかける。
先ほどからの飄々とした態度が癇に障ったらしい。

从'ー'从「あはは、ごめんごめん。
      ちょっと色々と試させてもらっただけなんだけど――」



  
191: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:08:11.00 ID:S6V5Fdvb0
  
渡辺の笑みが、消えた。

从' - '从「駄目だよ、貴方達は」

その言葉。
その空気。
その表情。

全てが一瞬で裏返り、ブーン達に敵意を剥いた。

从;゚∀从「ひっ……」

まるで実体化しているかと錯覚を受けるほどの殺気。
戦闘慣れしていないハインリッヒが直撃を受け、その場に尻を着く。

(;,,゚Д゚)「それが貴様の本性か……」

頬に一筋の冷や汗を流しながら、ギコが口を開いた。

周囲には風と光が荒れ狂っているはずなのだが、痛いほどの静寂が発生している。
その中で硬い唾を飲み込む音。
しぃが、やはり粘つく汗を流しながら渡辺を見上げていた。

( ・∀・)「…………」

モララーも同じく。
汗こそ掻いていないものの、しかし同じく声も発することは無い。



  
194: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:10:41.89 ID:S6V5Fdvb0
  
ブーンは視線だけで周囲を確認。
やはり風が竜巻のように身を躍らせているが、音を音として認識出来ない。
渡辺が何かしているのか、もしくは彼女の殺気が感覚を麻痺させているのか。

初めて感じる圧倒的な悪気。
あのクックルやツー、敵だった時のジェイルやハインリッヒを超える何かを感じる。

从' - '从「…………」

(;^ω^)(……怖いお)

真っ先に浮かんだ素直な感情。
それは恐怖。
まるで逆らうことが世界最大の罪だと思える。
おそらく、この場にいる全員が同じような感覚を身に受けているはずだ。

一人の例外を除いて。

「――つまり貴女は我々を見限った、と……そう判断して宜しいのでしょうか」

この状況下にありながら、凛とした声が響いた。



  
196: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:12:28.49 ID:S6V5Fdvb0
  
从' - '从「……そうだね」

爪゚ -゚)「理由を伺っても宜しいでしょうか」

ジェイル。
感情無き人形故に、渡辺から発せられる気を無視出来るのだろうか。
それとも感じてさえいないのだろうか。

どちらにせよ、彼女は確実に渡辺と対等の心境位置に存在していた。
その口から発せられるのは

爪゚ -゚)「確かに我々側に、人格が良い人物が揃っているとは言えません。
    むしろ言ってはならないと思っております。
    しかしだからといって一方的に見限られても、それはそれで不満が出るでしょう」

両手を軽く広げ

爪゚ -゚)「我ら無知なる者。
    教えを乞わねば知ることさえ出来ぬ愚者なれば
    しかし真実を自ら得ようとする心意気もある無力な存在。
    探究心と呼ばれるそれは、人間という生物に与えられた特権――」

無表情のまま目を伏せ

爪゚ -゚)「だからこそ僕たる人形の私が代弁し、代聴しましょう。
    ただただ主人のために、ただただ真実を手に入れるために」



  
197: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:14:13.48 ID:S6V5Fdvb0
  
風の音が聞こえる。
周囲の轟風だ。
つまり聴力が回復した、もしくは渡辺の策が解かれたことになる。
彼女を見れば、その表情に笑みが浮かんでいた。

从'ー'从「いいね……その謳い文句」

懐から白い銃を取り出す。
それを軽く掲げ、銃身で肩を叩きながら

从'ー'从「なら、こうしようかな。
      計画発動前に私を止めることが出来れば、真実を教えてあげる。
      その上で仲間になるかならないかの選択権も上げちゃう」

しかし

从'ー'从「もし私を止めることが出来なかったら、今度こそ本当に見限るよ。
      これ以降、私達の視界に入るのなら『敵』と認識して容赦無く攻撃させてもらう」

川 ゚ -゚)「それは……」

( ・∀・)「随分と御高い位置から見下ろされたものだね」

从'ー'从「当然。 私は正しいのだから。
      正しい私が、間違いかも解らぬ貴方達を導こうってのは道理に適ってるでしょ?」

( ,,゚Д゚)「よく解らんが……随分と馬鹿にされたものだ」



  
198: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:16:08.96 ID:S6V5Fdvb0
  
从'ー'从「あはは〜」

クスクスと笑いながら銃を構え

从'ー'从「今から約十分。
      もう戻れないまでに計画が進行するまで、ね。
      目安として……周囲の光が大きくなったらアウトかな」

( ・∀・)「我々を相手に十分……無謀だね?」

ロステックを解放。
黄色の鉄槌を右手に下げ、モララーが笑う。

それに倣うように、他の者達も指輪を解放した。

( ,,゚Д゚)「何も解らず、何も知らず、何を信じるべきかも――」

川 ゚ -゚)「だが、とりあえず今やるべきことは解った」

( ^ω^)「行くお!」



  
202: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:22:14.56 ID:S6V5Fdvb0
  
全員が飛び掛かるための姿勢を作った瞬間。

激音。

皆が驚きの表情を浮かべた視線の先。
渡辺の背後から、幾つもの鉄骨が浮遊を始めた。

砕けているものもあれば、折れ曲がっているものもある。
が、それらはまるで意志を持っているかのように渡辺の周囲に浮かび

从'ー'从「んじゃ、開始!」

声と共に、鉄の群が襲い掛かってきた。
一直線にブーン達の位置まで飛来。

( ,,゚Д゚)「ッ!」

ギコが、皆の盾になるように向かってくる鉄骨を弾き飛ばす。
サポートとして、しぃが羽片をばら撒き始めた。

慌てて退避するのはハインリッヒ。
能力など関係無しに力のみで押してくる鉄骨に対し、彼女は無力に等しい。
それを追うように、護衛役としてブーンが走った。



  
208 名前: ◆BYUt189CYA [スマソ、さるったった] 投稿日: 2007/03/06(火) 21:31:28.93 ID:S6V5Fdvb0
  
川 ゚ -゚)「ハイン! 内藤の側を離れるなよ!」

从'ー'从「あはは、『最強』の名が聞いて呆れるね」

川 ゚ -゚)「その名で呼ぶな! ハインはもう『最強』なんかじゃない!」

从'ー'从「何言ってるの?
      ハインリッヒは今も尚『最強』だよ」

川 ゚ -゚)「違う……!」

从'ー'从「現実を、過去を見てみなよ……逃げはダメダメ」

大袈裟に肩を竦めながら

从'ー'从「彼女は『最強』。
     人々の盾となり剣となり弾となるために生まれてきた、人造史上の『最強』だよ」

言葉を耳に入れたクーが歯を噛む。
そしてハインリッヒも、少し青ざめた表情を見せた。

从'ー'从「何なら見せてみる?
      今、包帯で隠されている彼女の右腕と両足を――」

川#゚ -゚)「――貴様ァァ!!」

クーが吠え、地を蹴る。
向かい来る鉄骨を蹴り飛ばし、突っ立っている渡辺へと迫った。



  
212: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:34:23.98 ID:S6V5Fdvb0
  
直後、クーの身体が真横へと弾け飛ぶ。

(;^ω^)「クー!?」

川;゚ -゚)「ぐっ……!」

川 -川「マスターに近付けさせはしません」

貞子。
気配も無く現れた彼女が、素手でクーを殴り飛ばしたのだ。
そのままの姿勢で腰から二本のナイフを取り出し、駆ける。

迎撃はグラニードだ。
引力を司る巨剣が、ただの鋼鉄で構成されたナイフと対峙。

( ,,゚Д゚)「死ぬぞ」

川 -川「死にません」

激突。
十メートルの距離を一瞬で無にし、互いの得物をぶつける。
力任せの一撃だ。
当然、質量が大きい方が勝る。

( ,,゚Д゚)「――ッ!」

回転を交えた連撃。
縦に横にと青い刃が走る。
が、貞子は全てを両手に持ったナイフで捌いていた。
浅く黒髪が切り裂かれながらも、身に一つも傷が入らない。



  
216: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 21:36:52.09 ID:S6V5Fdvb0
  
川 -川「!」

何かに気付き、バックステップ。
その空いた空間を羽片の群が突き抜けていく。

しぃの不意打ちだ。

羽を広げて構える彼女を視線に入れる。
身を背後へ飛ばしている最中にも関わらず、貞子は右手のナイフを手放した。

足が地に着く。
慣性をそのまま放置し、右手をしぃに向かって振るった。
廃材を蹴飛ばしながらも投擲されたのは一枚の紙。

(;^ω^)「あれは――!?」

似ている。
彼の限界突破である『強化符』と、それは酷似していた。
ということはタダの紙であるわけがない。

予想は当たる。

風に乗るように身を躍らせていた紙は、地面に着いた途端に光を発した。
そのまま地を滑るように広がる光が

(;,,゚Д゚)「うぉ!?」

ギコ達の足に絡みついた。
完全に固定された足場は、上に立つ者を不動とする。



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