( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
258: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:11:32.20 ID:S6V5Fdvb0
  
爪 - )「ガッ――」

从;゚∀从「ジェイルさん!?」

彼女のものとは思えぬ異声。
細かく首を震わせながら全身の力を失う。
ダラリとぶら下がった腕が、それを証明していた。

(;^ω^)「今度は僕が相手d――」

駆けつけたブーンが攻撃を仕掛けようとした時。

貞子とブーン達の間に、何かが流星のように勢い良く落下。
そのまま地を滑り、痛みに呻き声を上げるのは

川;゚ -゚)「ぐぅ……!」

(;^ω^)「クー!?」

从'ー'从「ふふ、思ったよりも弱くて残念無念〜」

川;゚ -゚)「くそっ!」

擦り傷だらけの身体で起き上がろうとする。
それを慌ててブーンが押さえ込んだ。



  
260: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:13:40.50 ID:S6V5Fdvb0
  
余裕を見せながら、こちらに向かって歩いてくるのは渡辺。
パートナーである貞子も、ジェイルの身体を投げ飛ばしながら視線を向けてくる。

(;,,゚Д゚)「ちっ……」

(;^ω^)「や、やばいお……」

敵の力を目の当たりにしたせいか、こちらの戦意はかなり削られていた。
このまま立ち向かったとしても、全滅は目に見えている。

「おや、これは面白い光景だ」

声がする方を向けば、モララーがのんびりと歩いてくるのが見えた。

(;,,゚Д゚)「……何をしていた?」

( ・∀・)「簡単な調査をね……ま、目論見は見事に外れたわけだが」

从'ー'从「そうこうしている内に、皆やられちゃったのでした」

( ・∀・)「やれやれ、私達がいなくともそれなりにやると思っていたのだがね」

2nd−W『ロステック』を手に持ち、渡辺の方へと足を向ける。
すぐさま貞子が割り込もうとするが

从'ー'从「ううん、今回は私が相手するよ。
      最近ちょっと身体がなまり気味だしね」

と、渡辺が手で軽く制す。
命令を受けた彼女は、すぐに足を止めて退いた。



  
263: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:15:22.46 ID:S6V5Fdvb0
  
腕を上げ、白い銃をモララーへと向ける。

从'ー'从「さぁ、貴方はこの銃にどう対するのかな?
      クーちゃんみたいにギルミルキルで回避も出来ず、それほど運動神経が良いわけでもない。
      身を護るモノの無く、ただあるのは破壊の鉄槌のみ」

言う通りだった。
モララーの運動性は、実はあまり高くない。
それでも若い連中と同等なのは彼の行動に無駄が無いからだ。

全ての攻撃は急所を的確に狙い、その軌道は最短。
最低限動作での戦闘挙動が、運動性が高いように見せているだけなのである。

その全ては彼の頭脳に集約される。
どの箇所を、どの角度、どのタイミングで当てれば最も効果的なのか。
どのように動けば、体力を消耗せずに済むのか。

それがモララーの頭の中で組み立てられている。
無論、それを再現する肉体は持ち合わせているが、それだけではギコ達と対等には戦えない。

足りない部分を、頭脳で補完するのがモララーの戦い方であった。

それを渡辺は見抜く。
いや、前々から知っていたのかもしれない。

どちらにせよ、モララーが不利なのは明白だった



  
266: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:17:23.45 ID:S6V5Fdvb0
  
从'ー'从「でも、だからと言って私は油断も慢心もしない。
      何故ならその頭脳こそが厄介だからね」

( ・∀・)「ベラベラと喋るのは慢心の表れではないのかね?」

从'ー'从「むしろ余裕?」

( ・∀・)「それは私の専売特許だよ」

二人は同時に右足を踏み出した、
攻撃の合図は、渡辺の持つ銃から発せられる。

しかし目標には当たらない。
予知していたかのように、モララーが身を動かしたのだ。

( ・∀・)「銃口とトリガーを引くタイミングさえ見えていれば、理論上での回避は可能だよ」

从'ー'从「ふぇ〜、理論を現実にするのは凄いことだね」

でも、と付け加え

从'ー'从「私はそれすら超えるけど」

走り出す。
銃を持ちながら、しかし撃たずに接近。



  
267: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:19:14.14 ID:S6V5Fdvb0
  
一見、暴挙に見える行動だが

川;゚ -゚)「気をつけろ! 奴の銃は普通の武器じゃない!」

クーが叫ぶ。
どうやら身体の傷は、それによってやられたものらしい。

( ^ω^)「な、何が普通じゃないんだお?」

川;゚ -゚)「解らないんだ……!」

(;^ω^)「え?」

川;゚ -゚)「解らなくなるんだよ!」

直後、渡辺に更なる動きが。
接近の動作を収めず、しかし銃を持つ腕を軽く掲げ

从'ー'从「モード『ゲシュタルト』、オープンウェイブ」

ギン、という重い音が銃身から響く。
不可視の波動が展開され、モララーに襲い掛かった。
腕で目を庇った彼は

( ・∀・)「ふむ……?」

と、己の体を見る。
どうやら外傷はないようだが――



  
270: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:21:14.99 ID:S6V5Fdvb0
  
川;゚ -゚)「駄目だ、考えるな!」

从'ー'从「んじゃあ、行くよー」

走り出す。
白い銃のストック部分を持ち、ナイフのようにして近接戦を仕掛けてきた。
対するモララーも、ロステックを構えて迎撃する。

金属音。

全身の体重を掛けながらぶつかる二人。
目を睨みながら

( ・∀・)「わざわざ近接を仕掛けるとは、愚かだね」

从'ー'从「それはどうでしょーか?」

弾けるように、互いがバックステップで距離をとる。
しかし止まらずに激突を望んだ。

川;゚ -゚)「まずい……!」

クーが焦りの声を発する。
彼女の懸念が現実となったのは、その直後だった。

( ・∀・)「……?」

ふと、モララーに変化が起きる。
目の前に渡辺がいるというのに、それが何なのか解っていないかのような表情。



  
274: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:24:04.88 ID:S6V5Fdvb0
  
( ・∀・)「これ、は……?」

信じられないという表情。
次の瞬間、モララーの肩に渡辺の一撃が入る。
血を撒き散らし、痛みに顔をしかめながらも彼は後退しなかった。

(;^ω^)「どうなってるんだお!?」

川;゚ -゚)「白い銃の能力だ……私にもよく解らないのだが、見るもの全てにゲシュタルト崩壊を起こさせるシステムらしい」

人間の眼というのは、動いている物を認識するのに長けている。
逆に、静止している物を認識するのは苦手だ。

ある文字を見続けていると、認識力が薄れてきて、
だんだんその文字が、何という文字なのか解らなくなってしまうことがある。
この認識力の低下を『ゲシュタルト崩壊』という。

クーが言うには、あの銃から発せられる波動が
『ゲシュタルト崩壊』――つまり認識力の低下を促がすモノらしい。

つまり、あの波動を浴びれば
動体であろうが静体であろうが、見続けることによって認識力が低下してしまい
それをそれだと認識出来なくなってしまうというわけだ。



  
276: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:26:22.46 ID:S6V5Fdvb0
  
(;^ω^)「んな卑怯な!」

個人戦を主とするブーンは、この怖さが嫌というほど解った。
相手が複数ならば認識力低下も起こり難いのだが、個人戦は一対一だ。
つまり見るモノが一つなため、確実に掛かってしまう。

今、モララーはそのような状態に陥っていた。

从'ー'从「ほらほら、私はここだよ」

右腕を鋭く振る。
見えているのに解らないモララーは、その攻撃を回避することが出来ない。
相手の攻撃という動作の意味が解らないからだ。

気配も感じる。
風も感じる。
声も聞こえる。

が、相手が解らない。
見えているのに、まるで背景の一部のような印象を受けてしまう。

( ・∀・)「だが――!」

踏み出し、ロステックを振るった。

从'ー'从「はずれー」

しかし当たらない。
明確な意思を感じられない攻撃は、どうしてもその動作に遅延が出る。
今のモララーは、目隠しをされて戦っているようなモノだった。



  
279: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:27:48.38 ID:S6V5Fdvb0
  
( ^ω^)「こりゃやばいお! 僕も加勢するお!」

川 ゚ -゚)「私も行く」

(;^ω^)「で、でも……」

川#゚ -゚)「時間が無いんだ! 怪我など恐れている場合ではないだろう!?」

(;^ω^)「わ、解ったお」

クーの足がクリアカラーのブーツに包まれる。
一瞬で彼女の身体が消え去った。

慌ててそれを追い始めるブーン。
身体強化されて足が早くなっているも、流石にギルミルキルには追いつけない。

戦場に到着していた頃には、既にクーは戦い始めていた。



  
281: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:29:41.70 ID:S6V5Fdvb0
  
从'ー'从「また来たの? それでまた同じ負け方をするの?」

川 ゚ -゚)「理屈は解っている……対処法は幾らでも考え付くぞ!」

相手が解らなくなるとはいえ、結局失われるのは視覚のみだ。

気配も感じる。
風も感じる。
声も聞こえる。

ならば、戦えぬ道理など無い。
ギルミルキルの高速移動を利用して、渡辺の背後をとる。
すぐさまハンレに戻し、叩き付けるように唐竹割りを繰り出すが

当たらない。

まるで刀が渡辺を避けているような光景。
真下に振り降ろすつもりが、どうしても斜めになってしまう。

( ・∀・)「彼女の周囲には『歪曲空間』が張られている」

モララーが声を発した。
しかしその目はクーを見ていない。
クーに対する認識力を低下させないようにしているらしい。

( ・∀・)「それを何とかしなければ、彼女に攻撃を当てることが出来ない。
     私のロステックならば破壊も可能だが……今は、ちょっと当てることが難しいね」



  
284: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:31:33.34 ID:S6V5Fdvb0
  
川 ゚ -゚)「歪曲空間……」

つまり彼女の周囲は正常ではないということだ。
どのような軌道をも歪める空間は、どのような攻撃をも通さない。
先ほどの銃撃戦において、渡辺が簡単に回避していたのも

川 ゚ -゚)「その空間のせいなのか……!」

あの回避動作は、おそらくカモフラージュだったのだろう。
とことんこちらを嘗めている。

从'ー'从「さて、あと一分を切ったわけだけど――」

( ^ω^)「おっ!!」

轟風一陣。
突如、風を切り裂きながらブーンが迫った。
その腕には巨大な白手甲。

( ^ω^)「強化符『腕部』展開!!」

ガシュ、と音を立てながら手甲の各部が展開。
その隙間から強化符が撒き散らされ、ブーンの拳に集う。

从'ー'从「それが君の限界突破ね」

( ^ω^)「ワイキョクだか何だか知らないけど、効果が出る前に撃ち抜けば良いお!!」

単純な考え。
それを実現するために、ブーンは全力で右拳を突き出した。



  
287: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:33:16.40 ID:S6V5Fdvb0
  
しかし。

从'ー'从「はずれー」

(;^ω^)「お……!?」

撃ち出した拳は渡辺を穿たなかった。
右方向に逸れてしまい

从'ー'从「身体、開いちゃったね」

言葉通り、ブーンの姿勢は隙だらけになってしまう。
慌てて後退しようとした時。

(;^ω^)「あ、あれ?」

渡辺がいない。
一体、何処へ消えたのか。
キョロキョロを周囲を見渡し始めたブーンに

川;゚ -゚)「何をしている! 前だ!!」

(;^ω^)「え? だ、だっていないお?」

そこでようやく気付く。
己の認識力が低下していることに。
嫌な予感が頭を過ぎるが、それを確証とする一撃が来た。



  
290: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:34:46.78 ID:S6V5Fdvb0
  
(;^ω^)「ぼべふぉ!?」

腹部に激痛。
震える視界を下げれば、銃身の先端が鳩尾にめり込んでいる。

从'ー'从「一回やってみたかったんだー、零距離射撃っての」

容赦なくトリガーを引く。
直後、発光。
同時にブーンの身体が吹き飛んだ。

川;゚ -゚)「内藤!?」

煙の尾を引きながら宙を飛び、背中から落下。
そのまま後転した後に止まる。

从'ー'从「おぉ、よく飛ぶ飛ぶー」



  
292: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:36:24.86 ID:S6V5Fdvb0
  
( ・∀・)「そこか!」

零距離射撃の轟音を耳に入れ、位置を判断したモララーが迫る。
ロステックを横薙ぎ気味に叩き込んだ。

しかし、空を切るのみに終わる。
ワンステップで回避した渡辺は、そのままの姿勢でモララーの頭に狙いをつける。

射撃。

攻撃の気配を敏感に感じ取った彼は、何処から来るか解らぬ攻撃に対して

从'ー'从「伏せた……?」

こうすれば、とりあえず初撃は凌げる。
攻撃が頭上を通り過ぎたのを肌で確認したモララーは、すぐさま立ち上がり

( ・∀・)「クー君、頼む」

川 ゚ -゚)「任せろ!」

声と共に、渡辺は右足に違和感を憶える。
それが巻きついた鎖だと気付くのに一瞬の時間を要した。

从'ー'从「うわっとっと」

( ・∀・)「そこか――!」

声と鎖の音で、大体の場所を割り出す。
そこ目掛けてロステックを振りかぶり――



  
295: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:38:13.10 ID:S6V5Fdvb0
  
轟音。

共に発生した地の激震に、モララーとクーが足を止める。

川;゚ -゚)「こ、これは!?」

从'ー'从「あらら、惜しかったねー」

腕時計を見ながら

从'ー'从「残念無念、時間がきちゃったみたいだよ」

周囲。
紫色光が、見るだけで痛みを感じるほどに強くなる。
竜巻の勢いが更に濃くなり、天高くまで上昇。

それを満足そうに見届けた渡辺は、軽いステップで瓦礫の山へ登った。

从'ー'从「さて、約束通り……これ以降の関与は許されないよ。
      それでも良いなら、死ぬ覚悟で私達を追うことね」

川;゚ -゚)「追う、だと?
     どういうことだ……!?」

轟音がクーの声をも掻き乱す。



  
297: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:39:48.15 ID:S6V5Fdvb0
  
从'ー'从「言葉通り」

両手を軽く広げ

从'ー'从「今、封印された世界は解放の儀式を受け、崩壊した封印壁は『世界交差』を呼び起こします。
      本日をもちまして、私は『天敵』との戦いに備えていくことになりました」

川;゚ -゚)「世界交差、だと……!?」

クルト博士の日記にあった謎の単語。
それを渡辺が発したことにより、クーは目を見開く。

( ・∀・)「封印された世界? 世界交差? 天敵?
     世迷言もいい加減にしたまえよ」

从'ー'从「無知の後継者が何を言っても無駄無駄。
      真実が知りたければ、それなりの努力と犠牲を払ってもらいたいな。
      まぁ、見限った私には関係のない話――」

続く言葉は激音によって消える。
震動が大きくなり、地割れがクー達の足場を崩していく。



  
298: ◆BYUt189CYA :2007/03/06(火) 22:41:09.25 ID:S6V5Fdvb0
  
从'ー'从「もうこれ以後は会うこともない……と言いたいところだけど
      貴方達には、ちょっとした預け物があるからね。
      いつかまた会いましょうー」

川;゚ -゚)(預け物? 一体、何を――)

地が砕ける。
足元を見れば、地面の亀裂の間から闇が顔を覗かせているのが見えた。
引きずり込まれるように、クー達の身体が沈み始める。

从'ー'从「じゃ、さようならー」

渡辺がのん気に手を振った。
その姿を睨み、腕を伸ばすが届かない。

川;゚ -゚)「くっ……ッ!」

視界が闇に染まる直前。
こちらに顔を向けていた渡辺が、一瞬だけ眉尻を下げるのが見えた。
それは『哀れみ』とも『寂しい』とも『悲しい』ともとれる表情。

川;゚ -゚)(え……?)

それが、彼女の見た最後の光景だった。



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