( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 8: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:18:41.34 ID:r+btzLdX0
- 第六話 『Welcome to This World』
暗闇に染まっていた視界が開く。
最初に見えたのは白い天井だった。
自分が仰向けで寝ているということに気付いたのは、次の瞬間。
( ^ω^)「お……?」
鼻で空気を吸えば、清潔な匂いを感じた。
しばらくの間、あまり働かない頭で現状を感じ取ろうとする。
すぐ隣に人の気配があるのに気付いたのは、その直後。
( ^ω^)「……クー?」
川 ゚ -゚)「目が覚めたか」
椅子に座り、こちらを見ているのはクーだった。
いつものように黒コートを着込んでいるが、その額には包帯が巻かれている。
- 11: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:20:35.73 ID:r+btzLdX0
- ( ^ω^)「……どうしたんだお? 怪我でもしたのかお?」
川 ゚ -゚)「忘れたのか?」
その言葉で、沈黙を放っていた頭にエンジンが掛かる。
闇に落ちる前の記憶が徐々に蘇ってきた。
(;^ω^)「お……思い出したお」
川 ゚ -゚)「やれやれ、君は相変わらずだな」
苦笑しつつ吐息。
よくよく見れば、その表情に疲労が見て取れた。
ブーンは少しなまった身体に鞭を打ちながら、上半身を起こす。
( ^ω^)「えっと……どうなってるんだお?」
川 ゚ -゚)「あの夜から三日が経過している。
戦いの後、FCの連中が倒れている私達を回収して、この病院まで運んでもらったというわけだ」
( ^ω^)「渡辺達は?」
その言葉に、クーは俯いて首を振る。
川 ゚ -゚)「いや……あれから行方不明らしい。
私の意識が戻ったのが昨日で、情報を小耳に挟んだだけだから何とも言えんがな」
- 13: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:22:41.54 ID:r+btzLdX0
- 彼女の話によれば多少の怪我はあれど、他の皆も大体は無事らしい。
現状確認が終わった後、クーは備え付けられた電話機で誰かと連絡を取った。
川 ゚ -゚)「立てるか? 下のロビーで皆と合流しようと思っているのだが」
( ^ω^)「ちょっとクラクラするけど、大丈夫だお」
川 ゚ -゚)「まともに食事を摂っていないから腹が減っているのだろう。
とりあえず一階ロビーに集まって、それが終わったら食事へ行こう」
口元に笑みを浮かべ、手を差し出してくる。
ブーンは素直にそれを掴み、身体を支えてもらいながら階下を目指して歩き出した。
- 17: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:24:04.42 ID:r+btzLdX0
- 一階ロビー。
事務員と看護士以外に、人影はほとんど無かった。
起きた時には気付かなかったが、どうやら今は早朝らしい。
まだ少し肌寒い空間。
ロビーに並べられた椅子に、幾つかの人影があった。
从 ゚∀从「あ、内藤さん!」
( ,,゚Д゚)「……起きたか」
ハインリッヒ、ギコ、モララーの三人だ。
それぞれ腕や頭に包帯を巻いているものの、特に重傷者はいないらしい。
( ^ω^)「皆、無事で良かったお……って、あれ? しぃさんは?」
その言葉に、ギコを始めとした面々が少しだけ暗い表情を作る。
( ・∀・)「彼女の意識はまだ戻っていない。
少し頭の打ち所が悪かったらしくてね……しばらくは安静にしなければならない」
(;^ω^)「そうですかお……」
- 18: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:26:05.64 ID:r+btzLdX0
- ( ,,゚Д゚)「……その話はもういい。
モララー、それよりも――」
( ・∀・)「あぁ、解っている」
読んでいた新聞を折りたたみながら
( ・∀・)「現状を確認、そして報告しようか。
まず渡辺のことに関してだが……」
( ^ω^)「行方不明って聞きましたけど……」
( ・∀・)「そう、その通りだ。
あの夜から完全に姿をくらましている。
『見限った』という言葉から判断するに、もうこちらに接触する気はあまりないようだ」
ギコやブーンは戦いの終盤に参加していなかったので、モララー達が適当に説明する。
封印された世界、世界交差、天敵。
幾つかのワードが出てきたが
(;^ω^)「……ちんぷんかんぷんだお」
川 ゚ -゚)「クルト博士は世界交差を恐れていた……そのような文章が日記にはあった。
そして渡辺がそれを発動させたと考えるならば」
( ,,゚Д゚)「敵、か?
断定は出来んと思うが」
- 20: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:28:25.66 ID:r+btzLdX0
- 从 ゚∀从「そもそも世界交差って何なんでしょう?
言葉から想像出来るのは、世界が交わるって感じですけど……」
川 ゚ -゚)「となると、私達の世界に何か影響が出ないとおかしいな」
クーがモララーを見る。
彼は肩を竦めて首を振り
( ・∀・)「いや、そんなニュースは聞いたこともないね。
私もその線が濃いと思って調べたのだが……」
渡辺の言う世界交差が発動して七十二時間。
それだけの時間が経過しているのにも関わらず、何も起きていない。
( ,,゚Д゚)「失敗に終わった……と見るべきか」
( ・∀・)「では、渡辺達は失敗が恥ずかしくて逃亡したと?
ありえない話ではないが、あれだけの自信を見るに可能性は低い」
川 ゚ -゚)「何処かに潜伏した、と考えるのが正しいかもしれないな」
腕を組み、思考するクー。
川 ゚ -゚)「では、何故潜伏した……?
それは天敵を相手にするため……?」
- 23: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:30:30.03 ID:r+btzLdX0
- ( ・∀・)「その天敵の正体が解らない限り、私達も迂闊には動けないだろう」
( ^ω^)「どういうことだお?」
( ・∀・)「もし、彼女が本当に世界を救おうとしていたら。
もし、その天敵が世界を滅ぼそうとしていたら。
その邪魔をする我々は一体どうなのだろうね……立場的に」
悪なのだろうか。
それとも別の何かなのだろうか。
不明だが、不明だからこそ
( ・∀・)「あまり無責任には動けない。
これからの行動は、慎重に決めなければなるまい」
というわけで、と続け
( ・∀・)「私とFCは、しばらくの間……この件への関与を控えようかと思っている」
(;^ω^)「え?」
- 26: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:32:11.19 ID:r+btzLdX0
- ( ・∀・)「渡辺の動向は不明で、その目的もはっきりと解っていない。
正直言って手出しし辛いのだよ。
彼女達が悪なのか、それとも本当の正義なのか。
それすらも解らないというのに、胸を張って堂々と行動など出来ない」
川 ゚ -゚)「そうか……まぁ、今まで随分と猪突猛進だったからな」
( ・∀・)「これからは少し行動を考えねばならないと思う。
それにジェイル君の修理も終わっていない今、私のテンションはガタ落ちだ」
そこでやっと気付いた。
モララーの隣で控えているはずのジェイルの姿がないことに。
秘書兼護衛をしている彼女がいない光景は、何ともいえない違和感を発している。
( ・∀・)「もう三日もジェイル君が淹れてくれたコーヒーを飲んでいない……!
あぁ、私の心はもう限界突破だね!?」
( ,,゚Д゚)「さっさと帰れ」
( ・∀・)「言われなくとも」
溜息を吐きながら背を向ける。
片手をヒラヒラと掲げながら
( ・∀・)「何かあったら相談に乗るよ。
道は王道ばかりじゃない……君達も無理に行動することなく、自分の信じた道を歩みたまえ。」
振り返ることなく、外へと出て行った。
- 29: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:35:29.49 ID:r+btzLdX0
- それを半目で見送ったギコ。
彼に対し、クーが質問をぶつけた。
川 ゚ -゚)「ギコ、貴方はこれからどうするんだ?」
( ,,゚Д゚)「俺か……返すようで悪いが、お前達はどうする?」
( ^ω^)「ジッとしてるなんて……出来るけど、したくないお
微力かもしれないけど情報を探るんだお」
从 ゚∀从「僕も手伝います」
ギコは軽く目を伏せ、『そうか』と呟いた。
( ,,゚Д゚)「俺はしぃの目が覚めるまで、そばで看たいと思っている」
川 ゚ -゚)「そうか……」
( ^ω^)「ギコさんの大切な彼女だお。
そっちを優先しても誰も文句は言わないお」
( ,,゚Д゚)「あぁ、悪いな……ああ見えても俺にとっては最高の女だ。
その代わりと言っては難だが――」
- 31: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:37:08.25 ID:r+btzLdX0
- 右腕をポケットに突っ込む。
取り出されたのは
从 ゚∀从「指輪……しかも二つも?」
ギコの無骨な掌に乗っているのは指輪だった。
それぞれ青と桃の色を発している。
(;^ω^)「これは、1st−W『グラニード』と4th−W『アーウィン』……」
( ,,゚Д゚)「これをお前達に預けておく」
从;゚∀从「えぇ!?」
川 ゚ -゚)「いいのか?」
( ,,゚Д゚)「しばらく戦闘があっても参加しないだろうしな。
兄者と二人で決めたことだ、遠慮せずに有効に使って欲しい」
( ^ω^)「あれ? でも、持ち主以外は使えないんじゃ――」
( ,,゚Д゚)「既に擬似精神とは話をつけている。
流石に本来ほどの性能は出せないし、限界突破も使えないだろう。
それでも使い方次第では、充分に戦力となるはずだ」
故に、意識が戻らぬ弟者としぃの分は(当たり前だが)無い。
- 35: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:39:30.89 ID:r+btzLdX0
- ( ,,゚Д゚)「ただし、慣れない指輪の使用は精神力も体力も大幅に消費する。
使う時はよく考えろよ」
川 ゚ -゚)「あぁ、解った。 ありがとう」
( ,,゚Д゚)「礼を言われるほどじゃあない。
結局は要らぬモノを押し付けるという形だしな」
言いながら、ハインの左手に二つの指輪を落とす。
( ^ω^)「しぃさん、早く意識が戻ると良いお……」
( ,,゚Д゚)「心配は無用だ。
あの女はお前達の想像以上に強い」
口元を軽く吊り上げ、ギコはしぃの病室へと歩いていった。
( ´ω`)「……とりあえずお腹空いたお」
川 ゚ -゚)「近くのファミレスにでも行こうか。
モララーの計らいで、君は今日のすぐにでも退院出来る。
食事を摂ったら家に帰ろう」
从 ゚∀从「…………」
( ´ω`)「ハイン、早く行くおー」
从 ゚∀从「あ、はいはいー」
ハインリッヒは二つの指輪から視線を外し、先に歩く二人を追った。
- 37: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:41:37.19 ID:r+btzLdX0
- ブーン達がいる病院から、少し離れた位置。
周囲の住宅群とは雰囲気がまったく違う建物がある。
アストクルフ家の豪邸だ。
周囲は全て高壁に囲まれ、その敷地は広大。
外から見ても解るほどの巨大な家屋が、その豪華さを物語っていた。
正門前。
強固な門の前で、執事服姿で箒を掛けているのはフサギコ。
ミ,,"Д゚彡「〜♪」
鼻歌を鳴らし、枯葉や塵を掻き集めていく。
と、そこで人が近付く気配を感じ取った。
ミ,,"Д゚彡「あれ、ドクオさん?」
('A`)「えっほ、えっほ……フサギコさん、おはようございます」
黒のジャージを着込んだドクオ。
軽く汗を流しながら、こちらに向かって走ってくる。
- 40: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:43:46.62 ID:r+btzLdX0
- ミ,,"Д゚彡「こんな朝からランニングですか? 御苦労様です」
('A`)「これでも元・陸上部エースなんで。
こうやってたまに走らないと、どうにも落ち着かないんスよ。
それにフサギコさんも朝から掃除、御苦労様ッス」
ミ,,"Д゚彡「右手のリハビリも兼ねてますから、楽しいものですよ。
あ、そういえば……お嬢様をお呼びましょうか、まだ寝てますけど」
(;'A`)「遠慮しておくッス。
寝起きの不機嫌を俺のせいにされたら、たまったもんじゃないッスから」
- 42: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:45:08.51 ID:r+btzLdX0
- ミ,,"Д゚彡「はは、お嬢様はそんな人では――」
少し沈黙して
ミ,,"Д゚彡「……ありえるので、ドクオさんの意見を尊重しましょう」
('A`)「流石フサギコさん、話が解る。
んでは、さよならッス」
軽く手を振り、駆け出す。
その姿を見送り、掃除の続きを再開しようとした時。
懐に入れていた小さな通信機から声が発せられた。
ξ--)ξ『フサギコぉ〜、朝御飯はぁ〜?』
ミ,,"Д゚彡「はいはい、すぐ準備しますよー」
今までののんびりした動作とは真逆の、素早い動きでチリトリに塵を叩き込む。
そのまま箒を肩に担ぎ、駆け足で豪邸へと戻っていくフサギコであった。
- 45: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:46:53.03 ID:r+btzLdX0
- ( ^ω^)「ぱくぱくむしゃむしゃ」
川 ゚ -゚)「擬音を口にするのはどうかと思うぞ」
ブーンが二杯目のカツ丼を美味しそうに食べている。
鳥天定食を食べ終わった彼女は、御茶を啜りながら溜息を吐いた。
その隣ではカレーライスを前にしているハインリッヒ。
从 ゚∀从「ところで、これから僕達はどうするんですか?」
川 ゚ -゚)「ん? 家に帰るはずだが……寄り道でもするか?」
从;゚∀从「いえ、そうではなくて渡辺さん達のこととか……」
川 ゚ -゚)「ふむ、まだ何とも言えないな」
- 48: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:48:22.03 ID:r+btzLdX0
- 湯呑みをテーブルに置き、腕を組みながら
川 ゚ -゚)「何せ、まったく情報が無い。
渡辺達の位置も、正体も……計画の意味も、成否も、規模も解らない現状で
私達に出来ることなど、ほとんど皆無だと言っても過言じゃない」
( ^ω^)「ショボンも情報屋を辞めてるし……流石兄弟さんは機能してないに等しいお」
川 ゚ -゚)「加えてFCも件に対しての活動を停止。
あるのは、私達の足と『少しだけの情報』のみだ」
从 ゚∀从「少しだけの情報……これですか」
ポケットから取り出されたのは、ボロボロの紙だ。
兄者が見つけてきた謎の文章。
川 ゚ -゚)「実際問題、私達が頼れるような人間・組織は無いに等しい。
となれば、自分達の足で探すしかないが……」
( ^ω^)「正確な位置も範囲も解らないのに
たった三人でがむしゃらにやったって時間の無駄だお」
川 ゚ -゚)「あぁ、私もそれは解っている」
从 ゚∀从「八方塞というわけですね……」
- 50: ◆BYUt189CYA :2007/03/09(金) 21:49:44.17 ID:r+btzLdX0
- 川 ゚ -゚)「今のところは出来ることなど少ないだろうな。
不本意ではあるが、事が動くまでは待機ということになりそうだ」
从 ゚∀从「……そうですか」
ハインリッヒが少しだけ落胆した様子を見せる。
その頭に、クーの手が乗せられた。
川 ゚ -゚)「だが、このまま何も無ければ……それはそれで良いと思うんだ。
真実は確かに知りたいが、怪我をしたり命を奪われたりまでして得たいとは思わない。
結局のところ、知らずとも生きていけるしな」
( ^ω^)「平和が一番かお……」
从;゚∀从「むぅー……」
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