( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

  
51:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:28:52.46 ID:y361l3On0
  
/ ゚、。 /「残念だが私も女性だ。
      男が女を、なら解るが……私にそれは通用しないぞ」

ダイオードだ。
突如現われた彼女は、黒の大刀を肩に乗せて青髪の女を睨む。
殺気の塊を身に受けつつも

ル(i|゚ ー゚ノリ「だが悪くない。
      ふふ、やはりお前達は良い敵対者となれるだろう。
      しかし――」

今度は黒衣の男を見る。
その爛々と光る目を、楽しそうに見つめながら彼女は言った。

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、私達が戦うことなどありえないのだがな。
      我が王がこの世界の地を踏む時、それはお前達の失敗を意味するのだから」

( <●><●>)「その時は来ませんよ……私達が勝つのだから」

ル(i|゚ ー゚ノリ「楽しみにしているよ」

直後、女の身が闇に溶けて消えた。
まるで最初からいなかったのように。
それを黙って見送ったダイオードは溜息を吐く。

/ ゚、。 /「どうにも向こうは我々が気になるらしいな。
      仕方ないと言えば、仕方ないが」



  
52:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:30:21.79 ID:y361l3On0
  
|(●),  、(●)、.:|「手出ししないのが幸いですね。
           お陰で、比較的我々も動き易いというものです」

( <●><●>)「それでダイオード……何かあったから戻ってきたのでしょう?」

/ ゚、。 /「あぁ、後継者達がGDFの奪還に動いた。
      同時に渡辺達も動くだろうな」

( <●><●>)「やれることはやりました。
        あとは彼ら次第ということになります」

|(●),  、(●)、.:|「しかし、そろそろ私達が直接動いても構わないのではとも思いますが……」

/ ゚、。 /「まだ早い。
      ここで私達が介入すれば秩序が捻じ曲がってしまう。
      だからこそ、ワカッテが各地の『誘導』を行っているはずだが?」

毅然とした態度のダイオードに、尚もダディは食い下がる。

|(●),  、(●)、.:|「ですが……あまり人を駒として扱うのもどうかと思うのですよ。
            ヒートちゃんとミルナ君の件でさえ、私は心が痛みましたからねぇ」

( <●><●>)「言いたいことは解ります。
        が、下手に私達が介入して取り返しのつかないことになるのは避けたいのですよ」



  
54:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:31:48.28 ID:y361l3On0
  
|(●),  、(●)、.:|「ふぅむ……確かに手を出して本末転倒は駄目ですよねぇ」

/ ゚、。 /「『まだ』動けないのだ。
      時が来れば我々が独自に動けば良い……その時を迎えたくは無いがな」

言葉に、黒衣の男は吐息。
そのまま闇に染まった夜空を見上げ

( <●><●>)「とりあえず今は彼らの動向を見守りましょう。
        あのクルトの子達の――」

と、小さく呟いた。



  
55:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:33:20.74 ID:y361l3On0
  
道の途中で待機させてあったFC製の装甲車両に乗り換えたブーン一行。
彼らはひたすら西の方角へと走っていた。

エクストとジェイルの見解で
GDFを運び出そうとしている者は、西側に展開する『戦跡荒野』に敷かれたレールを用いて
FC本社が在る隣都市に運ぼうしていることが解っていた。

狙いは、おそらくその先にある飛行場だ。
そこから国外へ飛ばすつもりらしい。

少し緊張した車内。
皆はエクストが語る異世界の話に耳を傾けていた。

<_プー゚)フ「俺のいた世界は空が無かった。
         いや、在ったんだが……それは偽りの空だった」

( ^ω^)「偽り、ですかお?」

<_プー゚)フ「俺達が空と思っていたモノの正体は機械の天井。
        古い文献によれば
        二百年ほど前に俺達の先祖が『リフレクション』に収容されたのが始まりらしい」

川 ゚ -゚)「リフレクションとは?」

<_プー゚)フ「簡単に言えば機械壁で構成された『巨大な檻』だ。
        それが東西に位置する領地二つをまるごと包み込むように在ったんだ」



  
56:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:34:51.60 ID:y361l3On0
  
それは非常に危険なモノだった。
機械の壁付近の一定範囲に近付くと、『機械の触手』といえる物体が伸び出し
人間だろうが何だろうが絡み付いて吸収する。

故に、ほとんどの人間が近付こうともしなかった。

それでも脱出しようという案もあったのだが
その機械壁のせいで二百年間、誰も外の世界を見たことが無かった。

<_プー゚)フ「諦めたのかは解らねぇ。
        だが、俺達の先祖は自らの文化を形成することに専念を始めた」

独自の政府。
独自の軍。
そして、独自の兵器。

幸いにも機械技術が発達していたので、生活には困ることが無かったらしい。
余った時間と技術は全て軍備に使われた。

<_プー゚)フ「その過程で出来上がったのが『GIF』だ。
        『Gravity Liberating Fighter』……直訳で『重力解放戦闘機』。
        その名が示すとおり、重力からの解放をコンセプトとした機体だ。
        んでもってGDFってのは上位機に当たるのかね……まぁ、似たようなモノだと思ってくれ」



  
58:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:36:07.11 ID:y361l3On0
  
川 ゚ -゚)「重力からの解放……」

<_プー゚)フ「理論的に難しいことじゃない。
        【引】の魔力を用いれば可能とされていたからな。
        ただ、実現するのはかなりの苦労が伴ったらしい」

( ^ω^)「お? 引の魔力って何だお?」

その言葉に、エクストは軽く驚く。

<_;プー゚)フ「おいおい、まさかこの世界って……魔力が存在してないのか?」

('A`)「そんなファンタジックな要素、そうそうあってたまるか」

<_プー゚)フ「ファンタジックじゃねぇよ。
        俺のいた世界の機械技術も、魔力に支えられてる部分がほとんどだしな。
        その魔力を用いる技術を『魔法』というんだが
        もちろん、無から有を生み出したりするトンデモ技術じゃねぇぞ」

(;^ω^)(じゃあ、兄者さんのアレは何なんだお……)

<_プー゚)フ「魔法については、ちょっとややこしいから今回は割愛するぜ。
        で、俺はリフレクションの東領地にあるオーベウス軍に所属していたんだ」

(`・д・')「……無論、俺もだが」



  
59:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:37:40.36 ID:y361l3On0
  
<_プー゚)フ「ラミュタスさんは生まれながらの才能か知らねぇが
        若干二十三歳にして、オーベウス空軍のエースパイロットとなっていた」

そこでエクストは声のトーンを落とす。
少しだけ暗い顔で

<_プー゚)フ「だが、二年前……ラミュタスさんは行方不明になった。
        『空を見に行く』という言葉を残してな」

('A`)「目の前にいるじゃん」

<_;プー゚)フ「だから俺も驚いてんじゃねぇか」

( ^ω^)「ラミュタスさん、何で行方不明になっちゃったんだお?」

(`・д・')「…………」

川 ゚ -゚)(語る気は無い……それとも……?)

<_プー゚)フ「まぁ、色々とあったが、そこまでは普通に平和だったんだよ、俺にとっては。
        半年後に馬鹿が現われるまではな」

その馬鹿とは

<_プー゚)フ「名は『シャキン』。
        ラミュタスさんの弟にして、彼と同じく空を飛ぶ才能を持ち合わせている男。
        奴は軍に入隊することなく、軍内のニクルス開発局の民間テストパイロットとして
        俺の前に現われやがった」



  
60:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:39:06.49 ID:y361l3On0
  
言葉には表していないが、彼の驚きと怒りはかなりのモノだったのだろう。
それも当然だ。

厳しい訓練を積んで、やっとのことで戦闘機に触れたエクスト。
対して、才能という一言のみで戦闘機に乗れるシャキン。

当初、二人はかなり仲が悪かったらしい。

<_プー゚)フ「まぁ、それもアイツの気持ちが解るまでだったがな。
        アイツは悩んでたんだよ。
        兄という絶対に超えられない目標、面影に縛られてたんだから」

(`・д・')「……やはり、そうなのか」

<_プー゚)フ「知らねぇとは思うが解ってたんだろう? 弟の苦悩がよ。
        それすら差し置いて、行方不明になった理由って何だよって思ったさ」

しかし

<_プー゚)フ「アイツ――シャキンは見つけちまったんだ。
        試作型GIFの飛行テスト中に、『機械天井の亀裂』を。
        リフレクションの外に出られる……本当の空を見られる希望の光を」

それは本当に偶然の発見だったらしい。
亀裂の報告を聞いたエクストは、すぐに直感する。

<_プー゚)フ「ラミュタスさんの言っていた『空を見に行く』という言葉。
        そのことから、ラミュタスさんもこの亀裂を見つけたんだってな」



  
61:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:40:32.00 ID:y361l3On0
  
エクストは少しだけ遠い目をする。
過去を思い出しているような目の色だ。

<_プー゚)フ「結局、俺もシャキンもラミュタスさんを追いたかったんだ。
        行方不明後に連絡の一つも寄越さないし
        外ってのは、よほど良い所なんだろうなとか言い合ってよ」

(`・д・')「……ッ」

その言葉に、ラミュタスは少し苦い顔をする。

<_プー゚)フ「で、軍の命令無視って亀裂から脱出したわけだ」

(;^ω^)「何か物凄い端折ってる気がするお」

<_プー゚)フ「まぁ、鉄仮面野郎との戦いとか、東西領地の一触即発とかあったけどな。
        そりゃ俺やシャキンの個人的な思い出に等しいし、今は関係ねぇ。
        とにかく知っておいてほしいのは、俺とシャキンはリフレクションから脱出したってことだ」

( ^ω^)「で、その外の世界というのはどうだったんですかお?」

<_;プー゚)フ「あー、まぁ、その……そんな良いもんじゃなかったぜ」



  
63:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:41:56.86 ID:y361l3On0
  
('A`)「どういうこった?」

<_プー゚)フ「空気は汚い、空は常に茶色、木なんて一本も生えちゃいねぇ。
        おまけに二日間飛び続けて街はおろか、人っ子一人いねぇ。
        何つか、天国だか地獄だか解らねぇ光景だったな」

川 ゚ -゚)「つまり『リフレクション』の内部と比べ、かなり環境が悪かったというわけか」

( ^ω^)「それっておかしくないかお?
      何で檻の中が、外よりも居心地良くなってるんだお?」

<_プー゚)フ「俺とシャキンも同じことを思ったんだよ。
         でも答えなんて出るわけがねぇし、とりあえず飛び続けることにした。
         そうしたら――」

助手席に座っていたジェイルが声を上げる。

爪゚ -゚)「到着しました」

同時、装甲車が停止する。
慣性を身に受けながらも、ブーン達の顔に本格的な緊張の色が見え始めた。

運転席に座っていた男が扉を開いて外へ。
背後から付いて来ていたもう一台の装甲車両からも、幾人かの人影が走っていく。



  
64:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:43:20.77 ID:y361l3On0
  
爪゚ -゚)「状況把握が先決です。
    とりあえず兵に向かわせ、それで済むなら良いのですが――」

川 ゚ -゚)「それはどうだろうか。
     渡辺達が動くという可能性も高い」

( ^ω^)「お……そういえばエクストさん、警戒すべき人って誰なんだお?」

<_プー゚)フ「あぁ、忘れてた。
        俺達の世界には物凄ぇ強い奴が数人いるらしい」

ラミュタスを見て

<_プー゚)フ「まず、言わずともラミュタスさん。
        そして『軍神』って呼ばれてる女だ」

川 ゚ -゚)「軍神……」

爪゚ -゚)「身体的特徴をお願いします」

<_プー゚)フ「『らしい』って言ったろ? 悪いが知らねぇんだ。
        さっきの続きになるが
        リフレクションを出て数日飛んだ後、俺達は一つの小さな部隊と出会った」



  
67:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:44:52.81 ID:y361l3On0
  
それは本当に小さな部隊だった。
数十人程度で構成された彼らが言うには
『アギルト連合軍の離遠戦隊』と呼ばれる、最も本陣から遠い地点で戦う部隊。

<_プー゚)フ「んで、まぁ色々と話を聞いた結果。
        アギルト連合軍ってのは、ある生物と長年戦い続けていたらしい。
        で、その中で最も有名かつ最強の力を持つ女が
        『軍神』と呼ばれてるってのを聞いたってだけなんだよ」

(`・д・')「…………」

その時だ。
突如、ガシュンという機械音と共に銃声が響き始める。

(;'A`)「な、何だ!?」

すぐさま、ジェイルが無線機で状況を把握。
軽く指示を飛ばし

爪゚ -゚)「どうやら向こうは強行的に離脱するつもりのようです。
    私達も急ぎましょう」

( ^ω^)「合点承知!」

ブーンがサイドドアのノブを掴むが

(;^ω^)「お?」

開かれる前にロックが掛かった。



  
68:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:46:05.55 ID:y361l3On0
  
爪゚ -゚)「今から足で追っても間に合いません。
    こちらから、この装甲車で追いましょう」

言葉と共に、ジェイルが助手席から運転席へと移る。
サイドブレーキを解除してアクセルに足を乗せ

爪゚ -゚)「では、出発」

緊急発進。
無論、内部にいる者達は

(;^ω^)「のわぁぁぁ!?」

(;'A`)「いていていてぇ!? 足踏むなぁ!」

大混乱に陥ることとなった。
その中で、冷静に物事を考える者が二人。

(`・д・')(この一戦……GDFが絡んでいるとなれば、アイツも……)

クーが、そのラミュタスを軽く睨みつつ

川 ゚ -゚)(私達は、腹の中に猛毒を仕込まれているかもしれないな……)



  
69:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:47:49.73 ID:y361l3On0
  
シナーが所有している装甲列車『RD−28』。
移動用というより、むしろ戦闘用に作られたそれは厚い装甲を持っている。
その運転室で、汗を流して慌てているのはシナー本人。

( ;`ハ´)「な、なんてこったいアル!
      出発直前に襲撃なんて、なんてバッドタイミングアルか!」

既に起動していたそれを動かし始める。
ガタン、と硬質な音を立てながら装甲列車が移動を始めた。

倉庫から出て、そのままレールに身を乗せる。

その先は『戦跡荒野』だ。
第三次世界大戦の戦場だったそこは、未だに戦争の傷跡が生々しく残っている。

( ;`ハ´)「隣都市まで到着すれば、後はどうにでもなるアル!
      とにかくここから三十分がワタシの正念場アルな!」



  
71:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:49:11.67 ID:y361l3On0
  
GDF以外にも運搬物を積んでいる装甲列車は現在、十両編成だ。
その内、最後尾から三両は何も積んでいない状態。

(  `ハ´)(こういう時のために用意しておいて良かったアル。
       もし向こうも列車で追跡してきたら、連結外してぶつけてやるアルよ!)

メインウインドウ上部に取り付けられた小さな画面を見る。
それはバックカメラで送られてくる、装甲列車背後の映像だ。
もし相手の列車が来れば、このカメラでタイミングを計って連結を外し
大ダメージを与えるという寸法だ。

そういう寸法なのだが

( ;`ハ´)「ホ?」

おかしい。
レール上には何も見えないのだが、背後から何者かが追ってくる。
猛スピードで追跡してくるそれを見たとき、シナーは自分の顔が青ざめるのを自覚した。

( ;`ハ´)「そそそ、装甲車両ぉ!? しかもFC!?
      なんであの野蛮な会社がワタシを狙うアルか!?」

警察? いや、ありえない。
都市ニューソクの警察には根回ししているはずだ。
ならば何故、依頼の無い限りは動かないはずのFCが――

( ;`ハ´)「文句言っても仕方ないアル! とにかく全速力で逃げるアルよ!」

燃料や時間配分など気にしている場合ではない。
思い切りアクセルレバーを倒し、シナーは決死の覚悟で逃げ始めた。



  
72:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:50:41.49 ID:y361l3On0
  
[゚д゚]「お、始まったな」

逃亡を始めた装甲列車を見つめる人影が六つ。
双眼鏡で確認したデフラグが、口にくわえていた煙草を投げ捨てる。

从'ー'从「んじゃ、出発しようかな」

<ヽ`∀´>「こっちは準備OKニダよ」

装甲よりも速度を重視した設計の、ジープのような車両。
その周囲で、彼らは思い思いの格好でくつろいでいた。

*(‘‘)*「でも、全員で行くなんて大袈裟じゃないです?」

从'ー'从「ま、都市ニューソク外の活動なら、ある程度派手でもOKだしね。
      獅子は兎を狩るのも全力で〜みたいな諺もあるし」

(#゚;;-゚)「んで、はよ追わんでもええんか?
     あの速度やと三十分くらいが限度ちゃう?」

[゚д゚]「それに、後継者共も動いてやがる。
    装甲列車を猛スピードで追いかけてるぜ」

从'ー'从「あーらら……もう関わるなって言ってあったのにねぇ。
      まぁ、それだけ覚悟があると見てあげちゃおうかな」



  
74:造園業(大分県) :2007/03/26(月) 16:52:00.86 ID:y361l3On0
  
その言葉に、貞子が

川 -川「……手加減をするつもりでしょうか?」

从'ー'从「いやいや、まさかそんなわけないでしょ。
      私達の目的はあくまでGDFの強奪……邪魔するんなら容赦はしないよ」

<ヽ`∀´>「流石は我らがリーダーニダ」

从'ー'从「んじゃあ、出遅れてもアレだし。
      そろそろしゅっぱーつ!」

言葉と共に全員がジープに乗り込む。
運転席に座った貞子が、確認もせずにアクセルを踏み込んだ。



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