( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

41: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:19:20.88 ID:QfbXw9x+0
  
フィーデルト・コーポレーション。
軍事的支援を行う会社の最上階、つまり社長室。
薄暗い空間にて、モララーは一枚の紙を見つめていた。

それは先ほど届いた彼宛の手紙。

( ・∀・)「…………」

その目は微動さえすることなく文字を見つめる。
一枚の紙に、大きく黒字でこう書かれてあった。

『貴様の仮面は剥がれたか?
 俺の笑みは、まだ何も忘れてはいない』

たった、それだけであった。

( ・∀・)「……君は未だに笑い続けているのだね。
     私が生きているのだから、当然と言えば当然だな」

少し俯き

( ・∀・)「君は憶えているのだね、私の憶えぬ彼女の顔を。
     だからこそ君は姿を消し……私を殺しに来るのか」

無駄なことを。
例え自分を殺したとしても事実は変わらない。
事実が変わらなければ、感情が消えることもない。

( ・∀・)「しかし面白くはある。
     是非とも来たまえよ、私を殺しに……その笑みを消しにね」



43: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:21:15.61 ID:QfbXw9x+0
  
オーストラリア。
その国は、オーストラリア大陸とタスマニア島、その他の小さな島で構成されていた。
平均高度が340メートルと、全大陸中最も低いことで知られ
低い大地が一面に広がっており、起伏が小さな大陸である。

その首都であるキャンベラの郊外一帯に、『世界運営政府』の本陣といえる建物が在った。

教会をイメージさせる巨大施設。
神秘的でありながら、その周囲の警備は厳重そのもの。
世界最高の権力を持つ男がいるのだから、それも当然であった。

その施設内。
やはり神々しさを感じさせる作りであるが、色々と秘密を抱えていた。

表舞台には出てこない『ラウンジ』という特殊部隊がある。
世界政府が表立って出来ないような汚い仕事を請け負う、いわば裏の人間達。
各地に散っている彼らであるが、帰るべき場所はこの施設だ。

彼らが事務活動をするのは地下。
設計図には記されることのない、完全な機密領域。

その広い室内に、部隊を統率するリーダーがいた。

「隊長、これが今日の報告書です」

(,,^Д^)「あぁ、そこら辺に置いておいてくれ」

適当に自分のデスクを指差す。
今、彼はPCと向き合っての作業中であった。



45: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:22:56.87 ID:QfbXw9x+0
  
ディスプレイに映っているのは、3Dで表現された一本の剣。
【ID Braid】と表記されたそれは、銀の色を放っている。

「進んでいますか?」

作業に没頭している男の背後から声が掛かった。

(,,^Д^)「……イクヨリ様」

( ̄ー ̄)「君は頑張り屋ですね」

(,,^Д^)「ここは貴方のような方が来る場所ではないですよ。
     我々と貴方は、表ではまったく関係ないことになっているんですから」

( ̄ー ̄)「良いんですよ。
      それの理論完成までの情報を渡した関係があるんですから」

それ、とはディスプレイに映る剣のことである。
わざわざPCを介して作成することから、何らかの特殊な機能を付属しているのは明白だった。



47: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:24:19.23 ID:QfbXw9x+0
  
未完成の剣を睨んでいる男を見つめ

( ̄ー ̄)「まだ、忘れることが出来ませんか?」

(,,^Д^)「……自分の表情が、その証拠です。
     あの男を自分の手で殺すまでは、この笑みが消えることはないでしょう」

( ̄ー ̄)「私怨ですね」

(,,^Д^)「すみません。
     その私怨のために、勝手に部隊を運用したりして」

( ̄ー ̄)「別に良いのですよ」

イクヨリは笑みを深くする。

( ̄ー ̄)「平和のために、世界のために、などと言ったのであれば
      君に協力することはなかったでしょう。
      私は、ただ憎い人を殺すため、という感情に正直な姿勢が――」

男の肩に手を置き

( ̄ー ̄)「個人的に好ましいのです」

(,,^Д^)「……ありがとうございます」



50: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:25:51.67 ID:QfbXw9x+0
  
よくよく見てみれば、PCを睨む男の笑みには大きな違和感があった。

『笑み』でありながら『笑み』でない。
人形に付けられた表情といえるような、まさに『塗りこまれた表情』。
狂気さえも感じ取れる、人工的な笑みであった。

( ̄ー ̄)「ところで私がここへ来たのは、君の様子を見に来ただけではないんです。
      個人的な頼み事をしようかと思いまして」

(,,^Д^)「?」

( ̄ー ̄)「『ラウンジ』を率いて都市ニューソクへ向かいなさい。
      あの都市にて、妙な情報を得ましてね……私の杞憂であれば良いのですが」

(,,^Д^)「貴方が気になさるほどの事が?
     まぁ、自分としては復讐相手が付近にいるので問題ないですが」

( ̄ー ̄)「杞憂で終われば良いんです」

男とはまた異なる笑みを出し

( ̄ー ̄)「詳細情報は後で渡しておきますね。
      では、お願いします」



52: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:27:13.80 ID:QfbXw9x+0
  
渡辺のアジト。
魔法陣が敷かれてある広い空間。
そこに人影が三つ。

从'ー'从「さて、そろそろ活動再開と行きましょうか」

『戦跡荒野』での戦闘から三日ほどが経っていた。
その間にGDFの整備と休憩、情報操作、次なる世界へ繋ぐための準備などに当てていた。

川 -川「では『英雄世界』への接続を開始します」

从'ー'从「あ、ちょっと待って」

動き出そうとした貞子を、渡辺が制す。
立会人として来ていた軍神が首をかしげた。

(#゚;;-゚)「何かあるん?」

从'ー'从「先に『機械世界』への再接続を行って欲しいの」

川 -川「何故ですか」

从'ー'从「連合軍メンバーが、どれほどこっちに来たか確認したいなと思って。
      ほら、まだ全員揃ってないでしょう?」



53: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:28:35.11 ID:QfbXw9x+0
  
現在、アジト内にいるのは幹部クラスである渡辺達六名と、約百名の一般兵のみ。

駒となる兵達がいない現状で世界を接続し続ければ
人手が足りなくなるのは目に見えていた。
このタイミングで仲間を増やす必要があるのだ。

魔法陣が光を発し、機械世界へとの接続を開始する。

川 -川「リクレオールオープン、アクセスリスタート。
     セージ70……80……90……100到達、リクレオール解除。
     同時にメセタリング固定……完了」

中央の魔法陣から、空間ウインドウのようなモノが生まれる。
それはアクセス状況を示すものであった。
記載されている情報を読み取り

从'ー'从「ふんふん、成程。
      大体は私の思った通りに進んでるみたいだね。
      ただ――」

集合していない幹部は残り二名。
一般兵にいたっては三百名ほどだ。

おそらくは、残りの幹部が三百名を統率しているのだろう。
そういう段取りであったし、世界交差から一週間以上経つというのに
彼らの存在が表に出ないのはおかしいからだ。



55: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:30:03.79 ID:QfbXw9x+0
  
そう、おかしいのだ。

从' - '从「……ふむ」

笑みを消し、思考する。
一週間が経過しているにも関わらず、こちらに接触してこない理由は何か。
考えられる可能性を逐一上げていく。

まず異獣の妨害が浮かぶが、ありえない。
未だにこの世界は解放されきってはいないのだ。
世界を移動するには『歪』の魔力を使用した、今行っている世界交差以外にあり得ない。

次に浮かぶは秩序守護者の妨害。
ありえない話ではないが、三百人以上の兵達を数人で行動不能にするのは難しいだろう。
そもそもあの勢力は、自分から表に出ることを良しとしないはず。

では、何だ?

从' - '从(単純なトラブルか何かだと良いんだけど……)

川 -川「マスター?」

从'ー'从「ん、何でもないよ。
      じゃあ、次は英雄世界への接続を御願いね」

川 -川「イェス、マスター」



56: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:31:28.67 ID:QfbXw9x+0
  
貞子が作業を開始。
その後姿を見ながらも、渡辺は別の思考を始める。

次に繋げる世界は『英雄世界』と呼ばれていた。

回収すべき武器や兵器は無いが
『英雄』と呼ばれる、特に戦闘能力に秀でている者達の力は目を見張るものがある。

特に『英雄神』と呼ばれる男は、かなりの力を持つと聞く。
同じ神である軍神レベルと思っても良さそうだ。

その下にいる他の英雄達も魅力的である。

『弓帝』『剣帝』『槍王』の三兄弟。
格闘女王にして竜殺しの『二極』。
防御の天才とまで謳われる『騎士王』。
その姿を未だ誰も見たことが無いという『隠者』。

どれもこれも、その世界では有名な英雄だった。
個人戦力で不安が残る現状、是非とも彼らの協力は得たい。

从'ー'从「…………」

しかし、先ほどの違和感が纏わりつく。
軽く頭を振って、疲労による一時的な疑心暗鬼だと思い込むことにした。
軍神は、その姿を横目に見ながら

(#゚;;-゚)(どうにもキナ臭くなってきたなぁ。
     ウチの想像が現実にならんことを祈るが……)



58: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:33:23.17 ID:QfbXw9x+0
  
都市ニューソクから、少しの距離を置いた山中。
人の手が入っていない中に、ポツリと人工の建物が在る。

木々に隠れるようにして建てられているそれは
『世界運営政府』の機密軍事施設だった。

主な任務として、JAPANの中でも有数の大きさを誇る『都市ニューソク』周辺の監視を行っている。

世界運営政府は、このような施設を世界各地に持っていた。
各国の動きを迅速、確実に知るために。

世界政府の情報室で働く情報部だけでは捉えきれない『生の情報』を
監視という原始的な方法で得るのが目的だ。

もちろん存在は明るみに出てはいけない。
バレてしまえば、七大国の信用がガタ落ちするからである。

故に外部から情報を漏らさないため、高度な戦闘訓練を受けた警備兵が守護していた。

が、その施設に血の匂いが充満している。

外部の警備をしていた兵は、残らずその命を刈り取られていた。
内部にいた情報部の人間も同じく。



61: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:34:51.15 ID:QfbXw9x+0
  
施設の情報が集中する管理室。
そこに、この施設を襲撃した者達のリーダーが居座っていた。

( ФωФ)「はン、聞いた話だと強いって評判だったんだがな」

椅子に座り、足元の死体を蹴り飛ばす。
額に穴を開けている死体の服には、『ラウンジ』を表す紋章を胸に張っていた。

(´・_ゝ・`)「所詮は、鉛弾に頼るような原始人ですからねぇ。
      我々の戦力から考えて、このような結果は当然かと。
      これでは、きっと渡辺さん達も苦戦していないでしょうなぁ」

( ・ω・)=つ「…………」

白衣を着た細身の男と、シャドーボクシングをしている小柄な男。
彼らの周りには、白い銃器を構えた装甲服姿の兵士達。

(´・_ゝ・`)「まぁ、これで世界運営政府とやらが気付けば良いのですが。
      とはいえ、少々やり過ぎ感が否めませんが。
      約束の前に個人的報復されたらどうするつもりですか?」

( ФωФ)「別に構わねぇさ。
       どちらにしろ、その組織も叩き伏せるか従わせるかだからな。
       そのくらい解ってんだろ、デミタス」

その男の両目には、縦の刀傷のような痛々しい傷跡。
しかし視力は失っていないらしく、僅かに見える鋭い視線はデミタスを見ている。



64: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:36:37.71 ID:QfbXw9x+0
  
(´・_ゝ・`)「随分と自信満々ですなぁ、ロマネスクさんは」

( ФωФ)「こっちには大層な大義名分があるんだぜ?」

男は貪欲に笑いながら

( ФωФ)「世界を救うという、最高の大義名分がよぉ……!」

(´・_ゝ・`)「これを有効利用しない渡辺さん達の心境が理解出来ませんなぁ」

( ФωФ)「奴らは甘ちゃんだ。 クソったれのな。
        だが、そろそろ向こうの情報が欲しいところだな」

(´・_ゝ・`)「ですが、向こうのアジトの位置は不明です。
      流石に外部から情報を得られませんでしたよ」

( ФωФ)「まぁ、適当に歩き回れば渡辺側から見つけるだろうよ。
        その際には手土産を持っていっても良いかもしれねぇなぁ」

(´・_ゝ・`)「手土産ですか?」

( ФωФ)「あぁ、渡辺が欲しがってるのを持っていけば
        それだけで不問としてくれるだろうよ……この不在の期間とかな」



67: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:37:51.95 ID:QfbXw9x+0
  
(´・_ゝ・`)「ですが、何を手土産にしますか?
      英雄世界との接続を確認しておりますので、英雄でも?」

( ФωФ)「馬鹿だろテメェ、もしくは大馬鹿か?
        英雄相手に喧嘩売って無事に済むわけねぇだろ。
        それに奴らは仲間意識が異常に高ぇからな……今、恨みを買うと動き難くなる」

英雄の強みは、個人戦闘能力だけではない。
英雄制度という仲間意識を強めさせる儀式により
性格のぶつかり合いはあれど、基本的に全員が何処かで繋がっている。

一人を潰しても誰かが代わりをするだろうし、報復にも動くだろう。

そういった意味では、最も攻め難い相手とも言える。
逆を言えば、仲間に引き込めば心強いと言えるのだが――

( ФωФ)「俺達には大義名分はあるが、引き込める理由と材料がねぇ。
        それはしばらく渡辺達に任せるとして
        さて、何を手土産に持っていくかだが……」

(´・_ゝ・`)「そもそも情報が少ないですからなぁ。
      とりあえず『最強』が都市ニューソクにいるのは解っていますよ」

( ФωФ)「ふぅむ、『最強』か……ハインリッヒって名前だっけか?」



70: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:39:10.01 ID:QfbXw9x+0
  
(´・_ゝ・`)「先日の戦闘にて、ウェポンを使用したとの報告が入っています。
      どうやら成長されているようで……別の意味で」

( ФωФ)「放っておけばおくほど厄介になるわけか。
        よし、今の内に拉致っとくのも良いかもしれねぇな」

(´・_ゝ・`)「では」

( ФωФ)「この施設は捨てろ。
        『最強』捕らえて、渡辺んトコ行くぞ」

立ち上がる。
ジャラリ、と腰に下がった鎖が音を立てた。

( ФωФ)「後継者ってのも見てみてぇし、そろそろ本格的に動くとするか!
        クハハハハ!!」



71: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:40:11.74 ID:QfbXw9x+0
  
何処か解らぬ崖。
下を見れば、荒れ狂う波が岩肌を撫でている。

その崖のギリギリの位置に、一人の女性が立っていた。

ノハ#゚  ゚)「…………」

赤茶色の長髪を揺らし、何処を見るでもなく突っ立っている。

その顔には仮面。
表情を隠すように顔全体を覆っている。
白色のシンプルなモノであるが、だからこそ不気味さを醸し出していた。

その腰には四種の武具。
脇差、大刀、長槍、銀弓。
それぞれの武器が、バランスよく配置されている。

シルエットだけを見れば、それは人型の蜘蛛に似ていた。



73: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:41:35.81 ID:QfbXw9x+0
  
ノハ#゚  ゚)「……ここは」

己の立っている場所が解らないといった色の声。
返事は背後から来る。

┗(^o^ )┓「……ヒートさん」

身長一メートルにも満たない男が、いつの間にか立っていた。

┗(^o^ )┓「御久しぶりですね」

ノハ#゚  ゚)「…………」

┗(^o^ )┓「あの件から一年経ちましたが……皆、貴女のことを心配していました。
       特にミルナ君は、今でもきっと貴女のことを捜していますよ」

ノハ#゚  ゚)「……ッ」

ミルナ、という名前を聞いた時、彼女に微かな異変があった。
一瞬だけ肩を震わせたのだ。



75: 映画館経営(大分県) ::2007/04/03(火) 16:42:56.45 ID:QfbXw9x+0
  
┗(^o^ )┓「正直、生きているとは思いませんでしたよ」

ノハ#゚  ゚)「……生きられるとは思わなかった」

┗(^o^ )┓「しかし貴女は現に生きている」

ノハ#゚  ゚)「でも、私は……もう皆と会うことなんか出来ない」

┗(^o^ )┓「意思一つだと思いますがね」

ノハ#゚  ゚)「でも私はあの時に死んだ。
      存在していない人間が、存在している人間に干渉しちゃ駄目」

その言葉に男は、彼女に残る一欠片の人間性を見出す。

┗(^o^ )┓「……安心しました。
       貴女は、やはりヒートさんですよ」

ノハ#゚  ゚)「……さようなら」

高く跳躍する。
男を飛び越え、そのまま背後の森の中へと身を飛ばしていった。
敢えて追わなかった小柄な男は、その後姿を見つめ

┗(^o^ )┓「……貴女ならきっと、己の歩む道の選択をすることが出来ますよ」

と、少し寂しげに呟いた。



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