( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

186: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:23:40.24 ID:9kIeQKni0
  
読まれているのだ。
どの程度の力で、どの程度押した時に、相手はどのような選択をとるのか。
それが男の脳内で組み立てられているのである。
ほぼ瞬間・自動的に。

対して、その意図さえも読み取ることが出来ないブーンは
男の想像した通りに動いてしまう。

圧倒的な技術・経験の差。

よく漫画や映画などで敵の『裏を掻く』などとする場面があるが
アレは相手を読み切ってから初めて実践出来る行為だ。


見えぬ裏を知るには表を理解する必要がある。


表を知らぬブーンは、男の裏の意図を読み取ることなど出来ない。
表を知る男は、ブーンの裏の意図を容易く読み取ることが出来る。

その結果は明白だ。



187: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:24:58.11 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「ほらよ!」

(メ;^ω^)「くっ!」

右フック。
慌てて腕を曲げてガード。
しかし

(メ;^ω^)「あっ!?」

疎かになっていた足を引っ掛けられる。
そのまま顔面を鷲掴みにされ

( ФωФ)「寝てろォ!!」

思い切り地面へと叩き付けられた。

川;゚ -゚)「内藤!?」

(メ;^ω^)「う……ぁ……」

後頭部が焼け付くように痛む。
心臓の鼓動と同じリズムで、頭痛が感覚を支配していく。

霞む視界。
耳鳴り。
息を吸おうとするも、横隔膜が思うように動いてくれない。



189: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:26:17.54 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「教えてやるよ……今のお前の状態も、一種の経験不足から来る症状だ」

ここまでの緊張状態に彼の身体が慣れていないのだ。
神経が強張り、無意識の伝達さえも狂わされる。
一般人である彼にしてみれば当然なのだが、今の状況で言い訳など通用しない。

弱い、と強者から唾を吐きかけられるのみ。

(メ;^ω^)「くそっ……くそぉ……!」

鷲掴みにしている腕を掴み、引き剥がそうとする。
そのまま足を蹴立てて起き上がろうともする。

( ФωФ)「クハハ!! 武道やってんなら、こういう時の対処法くらい心得ておけよ!」

川#゚ -゚)「貴様!」

( ФωФ)「おぉっとぉ、動くなよ!
        男同士のタイマンに女が水差しちゃダメダメだぜ?
        それにアンタが離れれば、俺の部下がその女捕らえても良いんだが!?」

川;゚ -゚)「くっ……!」

先ほどの男の言では、周囲の部下を使わないというような事を言っていた。
ただ言っていただけであって、事実になるとは限らない。

ここでブーンを嬲り、クーを誘い出すことが目的なのかもしれない。
だとすれば離れるわけにもいかなくなる。



191: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:27:42.97 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「クハハハハ! 残念だったなぁ、坊主!
        あの黒髪女にとっちゃ、お前よりもあの女の方が大事だとよぉ!」

川;゚ -゚)「ち、違う!」

( ФωФ)「あぁ!? 言葉と動作が矛盾してんじゃねぇかぁ!?」

(メ;^ω^)「うるさいお……!!」

白色のグローブが光る。

( ФωФ)「おっおっ!?」

何かの気配を感じ取ったのか、男はブーンを離して距離をとった。

(メ#^ω^)「OVER ZENITH――!!」

( ФωФ)「クハハ! それが噂の限界突破ってヤツか!」

次に現われたのは手甲。
強靭かつ強固なイメージを発するクレティウスは、すぐさま戦闘機動へ移る。



192: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:29:00.90 ID:9kIeQKni0
  
(メ#^ω^)「強化符『腕部』『脚部』! 展開!!」

白い符が散り、まず足に集う。

激音。

共に白い符がたわみ、その身を引き千切られる。
土煙と符を巻き上げながらの突進を開始。

( ФωФ)「――!」

(メ#^ω^)「おぉぉぉ!!」

続いて右腕に符が集う。
強烈な発光後、音速超過の打撃が――

( ФωФ)「ほい」

(メ;^ω^)「ッ!?」

対する男の行動は奇抜だった。
身を少しだけズラして足を出し、突撃してきたブーンの足を引っ掛けたのだ。

(メ;^ω^)「うわっ!?」

無論、踏ん張りなど利かない。
その勢いのまま、ブーンは数メートルの距離を吹き飛んだ。



195: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:30:19.46 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「簡単な理屈だわなぁ。
        いくら音速超過で高威力だとしても、その力は一点に集中される。
        他の弱い部分を突けばお仕舞いだなぁ?」

(メ;^ω^)「くそぉ……!」

倒れた身体を起き上がらせようとするが

(メ;^ω^)「……!?」

力が入らない。
蓄積したダメージと限界突破による削られた体力。
二つの要素が不運にも今、絡み合ったのだ。

「――!」

同時に甲高い音を立て、クレティウスが指輪に戻る。

(メ;^ω^)「くそっ、駄目なのかお……!」

指輪発動には、ある程度の体力と精神力が必要だ。
詳しい理由は定かではないが、どちらか片方が足りないだけでも具現を困難とする。



196: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:31:43.38 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「はン、指輪無しじゃ何も出来ないってか。
        頼り過ぎてませんかコノヤロー?」

(メ;^ω^)「ぼ、僕は一般人だお……仕方ないんだお……」

( ФωФ)「あぁ? 指輪に認められても尚、一般人気取りかよ?
        そりゃちょっと頭おかしーんでねぇか?」

(メ;^ω^)「なっ……」

( ФωФ)「お前はもうとっくの昔に一般人超えてんだ。
        一般人が、俺と戦えるか?
        一般人が、ウェポンなんていう物騒な武器を使うか?」

(メ;^ω^)「で、でも僕は――」

( ФωФ)「言い訳が通用する世界じゃねぇぞ。
        まだ解ってねぇみてぇだから俺が言ってやるよ」

拳を構える。
ブーンの顔面を狙い

( ФωФ)「お前は、もう、逃げられねぇ」

激音が響いた。



198: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:33:23.93 ID:9kIeQKni0
  
从;゚∀从「!?」

川;゚ -゚)「あれは……?」

音と共に人が舞っていた。
黒い戦闘服に身を包んだ男が、公園の端から舞い上がったのだ。
きりもみし、そのまま地面へと叩き付けられる。

( ФωФ)「何だぁ?」

男の拳は寸前で止められていた。
その視線の先は、ブーンでもなく叩き落とされた兵士でもない。
公園の出入り口。
そこに人影があるのだ。

('、`*川「さぁてさて、こりゃどうしましょ?」

長身の女性。
中国風な衣装に身を包んだ彼女は、誰に言うでもなく問いかける。
対応する声が反対側――兵士が舞い上がった地点から響いた。

「多勢に無勢は気に入らんな。
 理由はどうあれ、俺は無勢に加勢することにしよう」

現われたのは筋肉質な男。
ジャケットを羽織ってはいるが、その巨体は隠しきれていない。
無骨な拳を構え

( ゚д゚ )「その方が、バランス良いだろう?」



201: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:34:34.17 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「私ゃどっちでも構わないんだけどね。
     とにかく御飯食べられるようになれば、何処にでも加勢しちゃうよ」

( ФωФ)「何だテメェら?
        周囲に部下置いといたはずだぞ」

('、`*川「え? いたっけ?」

( ゚д゚ )「よく解らんが、襲い掛かってきた黒尽くめの男を何人か気絶させた記憶がある。
     ペニサスはどうだ?」

('、`*川「あ、そういえば私もー」

( ФωФ)(張らせて置いた兵がやられた……何者だ、コイツら?)

と、そこで周囲から黒服の兵士達が現われる。
女が面倒臭そうに周囲を見渡し

('、`*川「ったく、こっちはお腹空いてるんだから動かさないでほしいわねぇ。
     あ、そこの御嬢ちゃん」

川;゚ -゚)「む?」

('、`*川「食事を奢ってくれるなら、助けてあげちゃうよ!
     しかも今なら御代わり五杯までで我慢してあげる!」

川;゚ -゚)「え、あ、あぁ……食事くらいなら構わんが」



204: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:35:51.60 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「聞いた、ミルナ君?」

( ゚д゚ )「一日振りにマトモな飯が食えそうだな」

コキリ、と指・首を鳴らす。

( ФωФ)「テメェら、普通に会話してっけどよぉ。
        この人数相手に無傷でいれるって言うのかよ、おい?」

公園の中心付近にいるクーが周囲を見渡す。
ざっと数えて二十以上。
雰囲気からして、戦闘訓練を積んでいる無能ではない兵士だろう。

川;゚ -゚)(これは、私でさえ逃げ切れるか……)

有能な兵士と相対した場合、実力もそうだが最も懸念すべきは数を用いた連携。
ウェポンという特殊な武器を持って戦っても、切り抜けられる自信はあまりない。
しかし、対して二人の答える声は

('、`*川「んじゃ、多く倒した方がデザート注文権利を得るってことで」

( ゚д゚ )「構わん」

川;゚ -゚)(奢る側のことは考えんのか……)



205: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:37:03.71 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「嫌だねぇ、スルーされるってーのは。
        おい、このムカつく馬鹿共を――」

言葉が終わる前に風が動いた。

「うげぁっ!?」

苦痛というよりも驚きに近い悲鳴。
慌てて視線で追えば、ペニサスと呼ばれた女性が一人目の兵士に蹴りを御見舞いしていた。

「なっ――どはっ!?」

反対側からも同じような悲鳴、
巨躯の男が、地を這うように突撃してタックルを繰り出している。

('、`*川「一匹ィ!」

( ゚д゚ )「二人だ」

('、`*川「な、何ぃ?」

パンッ、という衝撃音と共に掌底で打ち抜く。
吹き飛んだ兵士は、二人ほどを巻き込んで地に伏せた。



207: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:38:18.39 ID:9kIeQKni0
  
('、`*川「これで三!」

( ゚д゚ )「五人!」

('、`*川「ぬがぁ! 私のデザートが!」

( ФωФ)「何なんだコイツら……!?」

怒涛の勢いとは、このことを言うのだろう。
二十名近くの兵士がたった二人の、しかも素手の男女に圧倒されている。

千切っては投げ、千切っては投げ。

まさに言葉通り、黒尽くめの兵士達が吹き飛ばされていく。

「くそっ! そっち行った――ぐはぁ!?」

('、`*川「あらん、レディに背中見せるなんて失礼じゃなくて?」

( ゚д゚ )「この世の何処に竜を殺せるレディがいる?」

('、`*川「ミルナ君忘れた?
     つい先月、そんなレディが現われましたよ――と!」

激音。
二人同時に突き飛ばす。



209: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:39:26.59 ID:9kIeQKni0
  
( ゚д゚ )「そちらに送るぞ!」

('、`*川「あいよ!」

ミルナと呼ばれた大男が、敵の襟首を掴んで投げ飛ばす。
落下点に走りこんだペニサスが軽く足を掲げ

('、`*川「見よ! この見事な脚線美!
     新必殺――」

大気が渦巻き

('、`*川「あ、あれ……何だっけ!?」

もはや爆発としか表現出来ぬほどの足蹴が炸裂。
ベキリ、という嫌な音を立てながら、くの字になって男が吹き飛ぶ。

('、`*川「うわ、やっべ……」

( ゚д゚ )「何がだ?」

('、`*川「新必殺技の名前を忘れちゃったい。 てへっ☆」

( ゚д゚ )「年齢に見合った行為をしてほしいものだが」

('、`*川「アンタ後で憶えときなさいよ」

( ゚д゚ )「こちらの台詞だ」



212: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:40:52.75 ID:9kIeQKni0
  
のん気な会話の中にも打撃が響いていた。
ある者は銃器を、ある者はナイフを構えて迎撃するも、呆気なく空を舞う。

( ФωФ)「クハハ……こりゃ面白ぇ……!」

笑みを浮かべる。
が、制止する声があった。

(´・_ゝ・`)「ロマネスクさん、軍神が近付いて来てますよ」

( ФωФ)「あぁ? ちっ、やっぱ嗅ぎ付けられたか」

(´・_ゝ・`)「ここは後退を薦めます。
      あの男女は普通ではありません……おそらく英雄ではないかと」

( ФωФ)「あーくそっ、やっぱな!
        おいテメェら! 退くぞ!」

言葉と共に、兵士達が後退を始めた。

やはり動きは鋭い。
ミルナとペニサスが追撃を行おうとするも隙を見つけられず、それを出来ずにいた。
その内、公園内から敵の姿が見えなくなる。



214: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:42:27.00 ID:9kIeQKni0
  
気配の有無を確認したミルナは、軽く溜息を吐き

( ゚д゚ )「今回は奇襲だったから楽であったが……」

('、`*川「うん、ちゃんと準備されると厄介かもね。
     まぁ、『厄介』程度なんだけど」

肩を竦める。
少し息が荒くなっているものの、疲労などは感じさせない。

川;゚ -゚)「…………」

从;゚∀从「…………」

見事、としか言い様がなかった。
呆然としている二人に、ペニサスが視線を向ける。

('、`*川「んじゃ、約束通り御飯六杯ね!」

川;゚ -゚)「え……」

( ゚д゚ )「……何か増えてないか?」



216: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:43:41.03 ID:9kIeQKni0
  
(#゚;;-゚)「アンタらなぁ……あまり面倒事を起こさんといてぇな」

闇の中。
薄暗い通路を、コツコツ、と高い音を響かせ歩く軍神。
その背後には

( ФωФ)「わーってるよ、ちゃんと反省してるぜ。
        合流に遅れた詫びとして『最強』を手土産にしようと思っただけなんだってば」

(#゚;;-゚)「それが面倒事なんや。
    もうちょっと軌道に乗るまで我慢出来んのか、と」

(´・_ゝ・`)「まぁまぁ、お互いに落ち着きましょう。
      既に済んだことです」

( ФωФ)「そういうこった」

(#゚;;-゚)「はぁ……ホントに解っとんのかい」



217: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:44:44.91 ID:9kIeQKni0
  
足を止める。
正面には巨大な鉄扉。

(#゚;;-゚)「会議とかする時は、大体この部屋を使うことになってる。
    特に渡辺や貞子は常にココにいると思ってえぇよ」

(´・_ゝ・`)「解りました……ボッコス、憶えましたか?」

( ・ω・)=つ「ボッコボコにしてやんよ」

(#゚;;-゚)(また何か妙なメンツが増えたなぁ……)

シュシュ、と拳を放つボッコスを見つめて肩を竦める。
気を取り直して鉄扉を開いた。
ギ、という軋みの音が大きく響く。

内部は相変わらず広い。
しかしいつもの薄暗さが無かった。

从'ー'从「あ、お帰りー」

(#゚;;-゚)「ただいま。
    何処かの阿呆共の回収終わりましたよ、と」

( ФωФ)「阿呆はねぇだろ」



218: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:45:49.52 ID:9kIeQKni0
  
从'ー'从「ありがとう、軍神さん。
      久しぶりだね……ロマネスク君、デミタス君」

( ФωФ)「おう、アンタも久々だな……かれこれ五年くらいか?」

从'ー'从「私からしてみれば十年だけどね。
      ところで、その子は?」

彼女の視線はボッコスへ向けられている。
他の者達も同じく視線を向けるが、彼は動揺することなくシャドーボクシングを続ける。

(´・_ゝ・`)「あぁ、彼のことはあまり気にせずに。
      私が趣味で作った機械人形ですから」

从'ー'从「へぇ、デミタス君も進歩してるんだー」

(´・_ゝ・`)「それはそうと、その背後の巨大な宝石は何ですか?」

視線の先。
渡辺の背後に、高さ三メートルを超えそうな巨大岩が鎮座されていた。
青緑に近い光を発しており、まさに宝石といえる。

从'ー'从「うふふ、次の世界に繋いだ直後に回収出来て僥倖だったよ。
      これは英雄世界の『ルイル』……英雄神が魂を注ぎ込んだ生きている魔法石だね」

( ФωФ)「へぇー、それが噂の……」



220: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 14:46:47.59 ID:9kIeQKni0
  
周囲では、デフラグや貞子が作業をしている。

(´・_ゝ・`)「反応は無いのですか?」

从'ー'从「残念ながらね。
      多分、こっちのことを信用出来ないからだろうけど……。
      とりあえず物理的コンタクトをとるために、デフラグさん達が頑張ってくれてる」

( ФωФ)「ふぅん……」

ロマネスクは周囲を見る。
皆、それぞれの作業に没頭していた。
この中では軍神が厄介であるが、数秒もあればカタはつく。

( ФωФ)「おい、あれは使えねぇのか?」

巨大ルイルの一角を指差す。
渡辺や軍神がその方向を見た。

( ФωФ)「何つって」

从'ー'从「え?」

彼女の後頭部に銃口が突きつけられたのは、直後だった。



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