( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

308: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:16:44.09 ID:9kIeQKni0
  
開いた視界から見えたのは、見慣れた天井だった。

( ^ω^)「……お?」

自分の部屋だ。
匂いも、色も、全てを知っている。
周囲を軽く見渡せば、どうやら時刻的に昼間らしい。
上半身を起こす。

(;^ω^)「?」

記憶が曖昧だ。
確か、妙な黒コートの男と戦って――

(;^ω^)「あ……」

そうだ。
負けたんだ。

しかし、頭に浮かぶ映像は不鮮明。
頭の何処かで『夢でも見たのだろう』という判断が下されるが――

(;^ω^)「痛っ……!?」

軽く頭を振った時、後頭部に激痛。
慌てて押さえようとして、右腕が思うように動かないことに気付く。
それらの要素があの戦いを現実だと証明していた。



311: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:18:12.51 ID:9kIeQKni0
  
と、そこでドア越しにクーの声。

「内藤、目が覚めたか?」

(;^ω^)「え? あ、うん、起きたお」

「……入って良いか?」

( ^ω^)「いいお」

少しの余所余所しさを感じつつ、クーが部屋の中へ入ってきた。
その目は逡巡を表すように忙しなく室内を巡っている。
やがて意を決したように

川 ゚ -゚)「……その、すまなかった」

(;^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「私は自分のことばかりを考えていた。
     それにこれまでの経験から、無意識下で君もきっとついて来てくれると思っていたんだと思う。
     でも、君は何か別の考えがあった」

頭を下げ

川 ゚ -゚)「だから、自分勝手ですまなかった」



314: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:19:26.66 ID:9kIeQKni0
  
(;^ω^)「ちょ、待つお。
      何で別の考え云々を知ってるんだお?」

川 ゚ -゚)「ショボンから連絡があってな。
     『渡辺達の件に対して、何らかのネガティヴな考えを持っている』。
     彼はそう言っていた」

(;^ω^)(ショボン……恐ろしい子!)

一言も口にしていないはずなのに。
様子を見ていただけで、そこまで読み取るとは。
伊達にバーボンハウスの店主をやっているわけではないらしい。

川 ゚ -゚)「で、だ。
     出来れば、相互理解のためにも『ネガティブな考え』とやらを聞きたい。
     君との意思が疎通していないのは、耐え難いんだ」

真剣な眼差しでの問いかけ。

( ^ω^)「……別に、ネガティヴなつもりはないお。
      ショボン達から見てネガティヴなだけで、僕自身は普通の思考だと思ってるお」

川 ゚ -゚)「それは?」

( ^ω^)「この前からの一連の件。
      悪いけど、僕には荷が重過ぎると思うんだお」



316: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:21:18.97 ID:9kIeQKni0
  
それは正直な思いだった。
まるで決壊したダムから溢れる水のように、言葉が次々と流れ出る。

( ^ω^)「僕はただの一般人だお。
      戦闘なんて、一年前や半年前の件以外では経験したことがないし
      そもそも僕自身が望んで投じたわけじゃないお」

川;゚ -゚)「しかし、一年前のは……」

( ^ω^)「うん、多分、自ら戦いに身を投じたんだと思うお。
      でも……それは君が僕を巻き込んだからだお」

川;゚ -゚)「……!」

( ^ω^)「でも」

川;゚ -゚)「……でも?」

( ^ω^)「僕は、アイツに負けたことが悔しいと思ってるお。
      見返したいと思ってるお」

アイツとはロマネスク
クレティウスの対極といえる黒のグローブを持ち
格闘に少なからずの自信を持っていたブーンを叩き伏せた男。



317: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:22:46.22 ID:9kIeQKni0
  
( ^ω^)「だから僕はこの件にまだ関わる気でいるお」

川 ゚ -゚)「…………」

( ^ω^)「クーの手伝いとか、そんなんじゃないお。
      僕が個人的な理由でアイツにリベンジしたいだけだお」

川 ゚ -゚)「……そう、か」

立ち上がる。

川 ゚ -゚)「……だが今はあまり動いてはいけない。
     出来れば、まだ安静にしておいてくれ……」

ドアを開き、出て行ってしまった。
少しだけ沈黙が起き

( ^ω^)「そうも言ってられないお」

布団を剥いで起き上がる。
身体の節々が痛むが、動けないわけではない。



322: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:24:05.29 ID:9kIeQKni0
  
(;^ω^)「くっ……」

('、`*川「ありゃー、そんな身体で無茶だねー」

(;^ω^)「おわっ!?」

いつの間にか、長身の女性が部屋の中にいた。

('、`*川「あ、どうもどうも。
     昨晩からこの家に御世話になってるんだわ、これが」

( ^ω^)「お? お?」

('、`*川「かくかくしかじか」

( ^ω^)「……ってことは異世界の人なのかお?」

('、`*川「そゆこと。
     しかしまぁ、クーちゃんといいハインリッヒちゃんといい
     異世界の話を普通に信じちゃうから驚いたよ」

( ^ω^)「普通の人なら驚くと思うお。
      でも、もう僕達は前例を知ってるから……」

('、`*川「ふ〜ん」



323: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:25:41.41 ID:9kIeQKni0
  
満足そうに頷いたペニサスは、ブーンの身体を眺め

('、`*川「随分と痛めつけられたわねぇ。
     ねぇねぇ、敗者になった時はどんな気分だった?」

(;^ω^)「……アンタだって敗北の経験くらいあるお?」

('、`*川「残念。 私には無いんだわ」

(;^ω^)「え?」

('、`*川「本気で負けたことはないという意味で、だけど」

果たしてあり得るのか。
生まれてから一度の敗北が無いなど。

('、`*川「ま、私はちょっと特別だから」

(;^ω^)「お……」

その雰囲気。
纏っている空気。
一見隙だらけに見えるが、周囲に気を配っている格好。

(;^ω^)「アンタ、強いのかお?」

('、`*川「強過ぎて困っちゃうくらいには強いと思うよ」



325: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:27:08.08 ID:9kIeQKni0
  
(;^ω^)「だ、だったら僕を鍛えてほしいお!
      勝ちたい相手がいるんだお!」

('、`*川「勝ちたい相手って……あの両目に傷がある男?」

(;^ω^)「そうだお!」

('、`*川「ふぅむ……」

顎に手をやる。
少しだけ考える素振りを見せ

('、`*川「何とも言えないなぁ。
     そもそもコッチが鍛えるメリットってのが無いしー?」

(;^ω^)「そ、そこを何とか!」

('、`*川「いやいやいや、タダで教えるってのも楽じゃないわよー?
     モチベーション的に考えてもねぇ。
     ってか、まずは身体を治すことが大事ってことで」

やれやれ、と肩を竦めてペニサスは部屋を出る。
追おうとも思ったが、痛む身体がをそれをさせなかった。

(  ω )「……くそっ!」

残されたブーンは拳を握り締める。
今や彼の心は、『苛立ち』と『悔しさ』に支配されていた。



326: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:28:25.88 ID:9kIeQKni0
  
(´・_ゝ・`)「大体、アジト全ての機能の掌握を完了したようですな」

渡辺達がいなくなったアジト。
デミタスが、大量の紙束を抱えて歩いてくる。
その姿に一瞬だけ目を向け、ロマネスクは手元の資料に視線を戻した。

( ФωФ)「貞子はどうなった?」

(´・_ゝ・`)「現在、研究区にてスリープダウンさせています。
      マスターシステムの書き換えを明日にでも」

( ФωФ)「ニダーとヘリカルは?」

(´・_ゝ・`)「現在、自室にて待機させております。
      いくら渡辺さんを裏切ったとはいえ、こちらの味方とも限りませんからな。
      しばらくは様子見といった感じですか」

彼らの周囲では、兵士達が忙しなく作業に没頭している。
英雄神の魂が注ぎ込まれているという巨大ルイルに対して、物理的なコンタクトをとるためだ。

いわば篭城している敵の説得を諦め、閉じられた門を強行的に開こうとしているようなものである。



328: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:29:49.88 ID:9kIeQKni0
  
(´・_ゝ・`)「まだ時間が掛かりそうですな。
      引き篭もりのカウンセラーの気持ちが解るというものです」

( ФωФ)「何処で憶えた、そんな言葉」

(´・_ゝ・`)「潜伏中、この世界について少々学ばせて頂きました。
      色々と文化面で興味深い部分がありますが、人間の精神面を見れば脆いものかと」

( ФωФ)「満たされ過ぎてんだよ、この世界は。
        俺達のいた世界と比べてどうよ? 平和そのものじゃねぇか?」

(´・_ゝ・`)「最近で言えば、二十年ほど前に国同士の戦争があったようですがね」

( ФωФ)「下らねぇ」

と、そこでデミタスはロマネスクの持つ資料に興味を持つ。
視線に気付いたのか

( ФωФ)「あぁ、これは渡辺の部屋にあった資料だ。
       何やら面白そうな情報が載ってあるぜ」



329: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:31:00.17 ID:9kIeQKni0
  
(´・_ゝ・`)「例えば?」

( ФωФ)「ウェポンって知ってるか?」

(´・_ゝ・`)「確か、クルト博士が独自に開発した高度な武具のはずです。
      擬似精神とのリンクによって、限界性能以上の力を引き出せるという……。
      貴方の持つアレも、そのウェポンを参考にして作られたと聞きますが」

( ФωФ)「御丁寧に、所有者や位置情報まで記してやがる」

一束の資料をデミタスへ手渡す。

(´・_ゝ・`)「……ほぅ」

言葉通りだった。
1st−Wから15th−Wまでの詳細情報と、現所有者、そして所有者の個人的情報。
それら全てが資料数枚にまとめられている。



331: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:32:12.85 ID:9kIeQKni0
  
( ФωФ)「特に必要な力じゃねぇが……あって困るこたぁねぇよな?」

戻ってきた資料を手に取り

( ФωФ)「うっし、英雄神とのコンタクトが成功するまでは暇だ。
        ちょっくら強奪ってくるわ。
        いくらか兵を持ってくぜ」

(´・_ゝ・`)「構いません。
      ちなみに参考までに、どのウェポンを選ばれたのですかな?」

( ФωФ)「ん〜、やっぱりこれだなぁ」

ロマネスクの指の先。

そこには――



332: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:33:41.96 ID:9kIeQKni0
  
灰色の雲が現われたのは、アジトから追放されて数時間が経った頃。
それは段々と濃さを増していき、やがて水の粒を落とす。

[゚д゚]「チッ、降ってきやがったか」

(#゚;;-゚)「あんまり濡れるのは好きやないんやけど……」

軽く両手を仰ぎ、軍神は面倒そうに空を見上げた。

从'ー'从「傘でも欲しいところだね」

[゚д゚]「やめとけ。
    使える金はあんまりねぇぞ」

三人は都市ニューソクを歩いていた。

とはいえ、服装が目立つために裏道を主に移動する。
薄暗い道はやがて雨にまみれ、更に視界を悪くしていく。



335: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:35:07.23 ID:9kIeQKni0
  
(#゚;;-゚)「で、どうするん?」

[゚д゚]「どうするったってなぁ。
    人手も金も武器もツテもねぇし……ぶっちゃけると八方塞だろ」

(#゚;;-゚)「出来れば、何とかしてアジトを奪い返してやりたいんやが……。
    ウチ一人で突貫でもする?」

[゚д゚]「阿呆。 いくらテメェの力が強くても長時間は戦えねぇだろ。
    それに奴らは俺達の世界の人間だ。
    ある程度の対策を練ってると見ても良いし、減らすのも後々の戦いに響く」

(#゚;;-゚)「貞子も獲られてもうたからなぁ。
    アレがもし相手になったら、ウチもやりにくい部分があるわ」

二人は顔を見合わせ、同時に渡辺に視線を向ける。
アンタの意見はどうだ?
そんな意味を含んだ目に対し

从'ー'从「うーん……別にアジトの奪還は考えなくても良いかもしれない」

[゚д゚]「はぁ?」



336: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:36:38.09 ID:9kIeQKni0
  
从'ー'从「いや、最終的には奪還って形になるかもしれないけど
      今慌てる必要はないと思うんだ」

(#゚;;-゚)「何か考えがあるみたいやね」

問われた彼女は、うん、と呆気無く頷き

从'ー'从「私達の目的は『異獣の滅び』。
      それを為すには、ある程度の戦力と理解を得る必要がある」

[゚д゚]「あぁ、そうだな……俺達はそのために動いてきたはずだ」

从'ー'从「でもね、そこに条件は無いんだよ。
      『アジトを拠点とする必要』も『仲間皆で一致団結して動く必要』も無いんだ」

(#゚;;-゚)「……御免、ウチ頭悪いから解らんわ。 どういうこと?」

从'ー'从「まぁ、簡単に言えば
      『属した勢力』で行動しなければならないっていうルールはないってことで。
      この事から、私の考えを述べさせてもらうと――」

軽い笑みで

从'ー'从「ある程度の事情を理解していて、あるレベルの軍事力を持っていて
      一定の水準以上の研究開発技術を持っている組織。
      そこに行って協力を仰ぐだけで良いと思うんだ」



338: 屯田兵(大分県) :2007/04/04(水) 21:37:59.80 ID:9kIeQKni0
  
つまりは鞍替えだ。
護国院・アギルト連合軍という肩書きを捨て、別の組織に入るということである。
理解を得れば、早い段階で活動再開も可能だろう。

しかし、それを聞いた二人は眉をひそめる。

[゚д゚]「ちょっと待てよ。
    事情を理解していて、軍事力持っていて
    俺達の御眼鏡に適うような研究機関持ちの組織だぁ?
    そんな都合の良い組織なんてあるわけ――」

(#゚;;-゚)「あ」

軍神が、手をポンと叩いた。

(#゚;;-゚)「ある……一つだけあるやないか」

从'ー'从「そういうこと。
      では私達は、なけなしのお金で移動しまーす」

[゚д゚]「おいおいおい、俺がまだ解ってねぇぞ。
    もうギブアップするから教えてくれよ」

(#゚;;-゚)「アンタも大概鈍いなぁ。
    全ての条件を揃えとる都合の良い組織。
    それはな――」

そこで、渡辺が割り込んで答えを言った。

从'ー'从「フィーデルト・コーポレーション……通称FCだよ」



戻る第十五話