( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

40: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:51:19.74 ID:mv9d85ga0
  
( ・∀・)「向こうが攻撃されたという事は、こちらにも来るだろう。
     皆に最大警戒命令を――」

爪゚ -゚)「既に発しております」

( ・∀・)「よろしい」

爪゚ -゚)「御主人様に判断して頂きたくは、連合軍へ攻め入るという策です。
    現状、世界政府はこちらに攻撃して来れませんが……」

( ・∀・)「だが好機でもある……これ以上は時間を無駄にするわけにもいくまい。
     さらわれたツン君も気になるところだしね」

爪゚ -゚)「彼女はもはや生きてはいないかと……おそらく皆様も同一の思いでしょう。
    その証拠に、誰もその話題を出したがりません」

( ・∀・)「出したがらない、の部分は正解だろうが
     きっと彼らは希望を望んでいないわけではないはずだよ」

爪゚ -゚)「では、何故――」

( ・∀・)「焦りは隙を生み、隙は敗北を呼び、敗北は絶望を運ぶ。
     そして僅かながらに、ドクオ君への気遣いもあるのだろう」

爪゚ -゚)「そして貴方はその意図を敢えて汲まなかった、と」

( ・∀・)「たった一人のために無謀な攻めを仕掛けるわけにもいくまい。
     これは世界を賭けた戦いだと言っても過言ではない。
     私の決断次第では……この世界の未来は大きく変わるはずだからね」



41: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:53:02.13 ID:mv9d85ga0
  
闘争か。
平穏か。
それとも、別の何かか。

その選択権を、今現在はロマネスク側が握っている。
まずは権利を奪い取らなければ、少なくとも未来への選択肢は一つのみだ。

( ・∀・)「ただ、一つだと感じるのは我々だけなのだがね」

爪゚ -゚)「悲しい世界ですね」

( ・∀・)「どの世界においても必定だよ。
     例えば正義のヒーロー。
     弱者を救うという得はあるが、悪者の得を奪うという所業も同時に行ってしまう」

爪゚ -゚)「得られる側と得られない側は共存を不可能とする……まさに表裏一体ということですか」

( ・∀・)「だからこそ人は悩む。
     全てを救えぬかと、全てを幸福に出来ぬかと
     ……全て誰も傷付けずに終わらせられはしないのか、と」

その時だ。
社長室、いや、FC全体に警報が鳴り響く。
敵襲撃を示す緊急の音。
それを聞いたモララーは、ほら、と肩を竦め

( ・∀・)「人はその願いが叶うことを奇跡と言う。
     その実、起きないからそう呼ばれているだけなのだがね」



42: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:54:42.44 ID:mv9d85ga0
  
ただ最初から居たかのように。
違和感さえ持たせずに。
一陣の突風のように。

それらは現われた。

展開されたのは一方的な攻撃。
一階に集っていたFC兵の大半は、敵の姿を視認する前に意識を奪われた。

エントランスホールには人の山。
防衛機材も、高額な銃器や武器も、培ってきた訓練の勘も経験も。
全てはたった三人の男によって叩き伏せられていた。

「な、んだと……」

微かに意識を保つ一人の兵が呻く。
多少なりとも抗戦することが出来ると思っていたのが、この結果だ。

圧倒的な戦力差。
いや、戦力というレベルでは量れない何かが在る。
そうでなければ、この結果はありえないはずだ。



44: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:56:05.07 ID:mv9d85ga0
  
――役立たずの愚図。

ホールに響く沈黙が、そう囁いているかのように聞こえた。

それを肯定するかのように声がする。
声源は戦場の中心だ。

┗(^o^ )┓「――この程度ですか」

剣を片手に持つ、身長一メートルほどの男。

\(^o^)/「人と英雄を比べるべきではありません。
      これは当然の結果」

槍を肩に担う、髪を一つにまとめた男。

|  ^o^ |「…………」

巨大な弓を握る、巨躯の男。

三者三様の格好、言動。
しかし表情はまったくの同一だ。
三つ子とでも言うのだろうが、その身長差はあまりにも大き過ぎる。



45: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:57:41.36 ID:mv9d85ga0
  
その時。

( ,,゚Д゚)「チッ――」

タ、と階段を駆け下りる音。
そして現われたのはいくつかの人影。

(`・ω・´)「これはまた一方的なやられ方だな。
      監視カメラの映像にも、残像くらいしか映っていなかったし
      当然と言えば当然なのかもしれないが」

( ゚д゚ )「…………」

防衛組のギコやペニサス、シャキン。
そして監視カメラの映像を見て飛び出したミルナだ。

('、`*川「アイツら……」

ミルナとペニサスが、それぞれ微妙な表情で襲撃者を見る。

( ,,゚Д゚)「やはり知っているのか」

('、`*川「私達の世界の住人だよ」

( ゚д゚ )「クン三兄弟、と……そう呼ばれていた」



48: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 14:59:08.29 ID:mv9d85ga0
  
クン三兄弟。
英雄世界にて、彼らはそう呼ばれていた。

身長順に、ジュカイ=クン、オワタ=クン、ブーム=クン。

『近』『中』『遠』と、それぞれの担当が決まっており、互いが互いを補い合う戦法を得意とする。
もちろんその戦法を支えている実力も非常に高い。
単体でも強いが、三兄弟集うと更に手が付けられなくなる。

厄介な相手だ。

( ゚д゚ )「そして最も英雄神に近しい存在だと聞いている。
    おそらくだが、業名の儀式ができて以来の最初の英雄ではないだろうか」

(`・ω・´)「ということは――」

( ,,゚Д゚)「英雄神がいるロマネスク側というわけか。
     奴らの戦力が戦跡荒野で殲滅させられたと聞いたが
     あれはフェイクだったのか……?」

言葉に、ジュカイが首を振る。

┗(^o^ )┓「いえ、あの襲撃は私達と何の関係もありません」

('、`*川「……ってことは味方?
     いやでも、FC兵をこんなにしたってことは違うよね」



49: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:00:51.07 ID:mv9d85ga0
  
\(^o^)/「道は二つだけではありませんよ」

( ゚д゚ )「まさか――」

|  ^o^ |「私達は貴方達、そしてロマネスク達のどちらにもつきません。
      そういうことです」

彼らの言葉が意味するのは、たった一つの真実しかなかった。

( ,,゚Д゚)「……秩序守護者についたか」

|  ^o^ |「御名答」

(;゚д゚ )「何故だ!? 英雄が英雄神への恩義を忘れたとでも!?」

英雄とは名前だけではない。

自身の誇りによって形成されている部分が大きいからだ。
だからこそ悪の英雄など、芯を曲げる英雄などいない。

ミルナは、目の前にいる三人の英雄も同じだと信じていた。



51: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:02:37.08 ID:mv9d85ga0
  
┗(^o^ )┓「別に恩義を忘れたわけではありません」

(;゚д゚ )「ならば――」

\(^o^)/「ただ、私達は芯を折ることが出来なかった。
       英雄神の恩義よりも、己が進むべき道を優先しただけのこと」

|  ^o^ |「異獣、という言葉以前の話ですよ。
      混乱が起きるくらいならば、その混乱が起きる原因を断ち切ろう、と」

つまり

|  ^o^ |「世界交差など、させはしません」

( ,,゚Д゚)「……今後の俺達もその考えに辿り着く可能性がある。
     それくらいは解っているはずだ」

|  ^o^ |「えぇ」

( ,,゚Д゚)「だったら何故ここを襲撃した? 場所を間違えているだろう?」

主導権を握っているのはロマネスクだ。
三兄弟が狙うとすれば、まずはFCよりも向こう側のはずである。

┗(^o^ )┓「えぇ、当初はそのつもりだったのですが……」

\(^o^)/「ここへ面白い客が来るそうなので」

( ,,゚Д゚)「客、だと……?」



54: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:03:59.36 ID:mv9d85ga0
  
異常な静けさを醸し出すFC。
その建物を、更に上から見つめる影があった。

メ(リ゚ ー゚ノリ「どうよ、姉貴」

ル(i|゚ ー゚ノリ「あぁ、面白いことになりそうだな、兄上」

赤髪の男と青髪の女。
所属不明かつ、能動的な行動を見せていなかった二人がFCを見下ろしていた。
コソコソ隠れるわけでもなく、ビルの屋上から身を乗り出している。

そこにあるのは自信。
完全に確立された、ある種の圧倒的な高位にいると確信している表情だ。

ふと、青髪の女が視線を逸らす。

ル(i|゚ ー゚ノリ「東の方角から二つほど。
      南の方角から一つ、か」

メ(リ゚ ー゚ノリ「役者は揃いつつある……ってね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「その結果は?」

メ(リ゚ ー゚ノリ「FCの消滅」

まるで予め決められていた台詞を吐き出すかのような、そんなリズムを伴った会話。
もし二人に表情が無ければ、機械人形と判断されても仕方なかっただろう。



56: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:05:24.69 ID:mv9d85ga0
  
青髪の女が、クク、と喉を震わせて笑う。

ル(i|゚ ー゚ノリ「迷っている者達が
      現状維持を望む者達、そして現状打破を望む者達に消されるとは」

メ(リ゚ ー゚ノリ「潰し合いってのは醜いねぇ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「だが確実に洗練されている」

メ(リ゚ ー゚ノリ「あー、たまんねぇたまんねぇ。
      英雄や軍神……抗う奴らはまだまだ増えるだろうなぁ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「だが、そろそろ一旦落ち着くべきだ……混沌は余計なモノさえも削ってしまう」

メ(リ゚ ー゚ノリ「んじゃ、行きますか」

ル(i|゚ ー゚ノリ「行こう、FCへ。
      我々の背後から追跡してくる『彼女』を、彼に会わせなければならんしな」

メ(リ゚ ー゚ノリ「ちなみに殺しちゃ駄目?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「好きにしろ……余興で倒れるくらいならば、未来に生きる資格などないからな」

突如、二人はフェンスを飛び越える。
そのまま落下。

二対の化物が、混沌と化すFCへと忍び寄り始めた。



57: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:07:01.73 ID:mv9d85ga0
  
戦闘が始まっていた。
ギコ達四人に対し、襲い掛かる影は三つ。

剣を携えた男。
槍を振り回す男。
巨大な弓を構える男。

三人の連携は、鋭く、そして速い。

戦闘に慣れているはずのギコ達でさえ、その速度に翻弄されていた。

(;,,゚Д゚)「くっ……」

( ゚д゚ )「下がれ!」

('、`*川「よぉっし! 久々に本気出しちゃうよー!」

グラニードで防御していたギコが素直に下がる。
入れ替わるように飛び出したのは二人の英雄だ。



59: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:08:17.57 ID:mv9d85ga0
  
\(^o^)/「そこです」

ボ、という大気を穿つ音。
超高速の刺突がミルナを狙うが

( ゚д゚ )「ぬん!」

両腕を盾にするようにし、その恵まれた動体視力で回避していく。
しかし流れる冷や汗は隠せない。

一撃一撃が致死の臭いを撒き散らしているのだ。
もし身体の何処かに当たることがあれば、おそらくはその空間ごと突き抜かれるだろう。
オワタの放つ槍は、それほどの威力があった。

その根底を支えるのは速度。
突き出しから引きという二連動作は、どうしても僅かな隙を生じてしまう。
槍を持つ相手と戦う場合、如何にその隙を突くかという一点が重要なのだ。

しかしオワタの槍の速度は人知を超えている。
一撃を往なしたと思えば、次の一瞬で追撃が来る。

そこにリズムなど関係ない。
ほぼ同時に五連ほどの刺突が向かってくるのだから。



61: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:10:04.27 ID:mv9d85ga0
  
だがミルナも馬鹿ではない。
真正面から立ち向かうのは愚行だと解っている彼は、後退しながらチャンスを伺っていた。

押しの攻撃に対して有効なのは、引きの防御。
押しに対して押すのは素人がやることだ。
タイミング良く計画的に足を下げつつ、ミルナが待っているのは

('、`*川「ほいさっ!」

ペニサスの奇襲。
轟、と風を巻き上げながら接近する。

しかし

┗(^o^ )┓「敵は一人ではありません」

オワタとペニサスの間にジュカイが駆け込んだ。
その低身を活かしての高速の割り込みである。

('、`*川「どりゃぁぁ!!」

構わず蹴りを放つ。
大気がうねり、空間が引き伸ばされる攻撃。

直後、重々しい金属音が響き、周囲に衝撃波を撒き散らした。



62: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:11:23.80 ID:mv9d85ga0
  
(`・ω・´)「とんでもないな……」

アサルトライフルを物陰で構えたシャキンが溜息を漏らす。

ペニサスの足は、別に特別な加工を施しているわけではない。
しかし高速でぶつかった剣を受け止めていた。
普通ならば切断されているはずなのだが。

(`・ω・´)(流石は英雄、といったところか)

その言葉は、彼らの行動を見てから吐かれたもの。

周囲には気絶したFC兵達が倒れている。
正直言って戦闘の邪魔になるだろう。

しかし三兄弟は、その彼らを一度たりとも踏まずに戦っている。
つまり敢えて避けているのだ。

敗者に唾を吐きかけるようなことはしない、とでも言いたいのだろう。
そして、自己を支え立てる誇りが許さないのだろう。
だからこその英雄なのだ、とシャキンは理解した。



63: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:13:50.30 ID:mv9d85ga0
  
と、そこで殺気がこちらに向けられたことを肌で感じ取る。

(;`・ω・´)「チッ!」

全身を投げ出すように飛び出した瞬間、先ほどまでいた場所に光の矢が突き刺さった。

|  ^o^ |「コソコソと隠れるのは気に入りませんね」

(;`・ω・´)「生憎だが、俺は普通の人間なんでな!」

銃口を向けて発砲。
この距離と姿勢では、まず当たることはないだろうが
それでも牽制の意味で撃っておくべきである。

案の定、ブームが数歩だけ下がった。
その間に体勢を整えて――

( ,,゚Д゚)「油断するな!」

ギコが飛び出した。
シャキンを庇うように巨剣を突き出す。

閃光。

グラニードの刀身に光の矢がぶつかった。



65: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:15:01.11 ID:mv9d85ga0
  
(`・ω・´)「馬鹿な……いつの間に撃った!?」

( ,,゚Д゚)「あの矢はただの矢じゃない……上を見ろ」

視線の先。
そこには、まるで氷柱のように光の矢がこちらに向いて静止していた。
いつでも撃ち出せるのか、その尾に光が渦巻いている。

(`・ω・´)「……放った矢も、ある程度は操れるというわけか」

射程範囲から逃れるように柱の陰に隠れる。

( ,,゚Д゚)「弓だけが発射装置ではない、気をつけろ」

周囲を見渡す。
もはや何処に矢が仕掛けられているか解らないからだ。

全包囲攻撃とでもいうのだろう。
ブームの放つ矢は、もはや何処から飛んできてもおかしくない。



67: ◆BYUt189CYA :2007/05/04(金) 15:16:14.48 ID:mv9d85ga0
  
( ,,゚Д゚)「英雄の力を甘く見ていた、か?」

(`・ω・´)「……正直な」

( ,,゚Д゚)「運動性も、戦闘に対する嗅覚も、経験も、そして持つ武具も。
     全てが俺達を凌駕している」

(`・ω・´)「仕掛けて勝てるか?」

( ,,゚Д゚)「悪いが絶対に無理だ……勝てる気がしない」

(`・ω・´)「ならば――」

( ,,゚Д゚)「モララーが何かを企んでいる。
     俺達に出来るのは、その企みを成功させるための時間稼ぎくらいだ」

油断無く巨剣を構え

( ,,゚Д゚)「いいか、勝とうなどと考えるな。
     時間を稼ぐ……いや、生き残ることを考えろ」

(`・ω・´)「やれやれ……無力は罪だ」

その言葉にギコは、違うさ、と答え

( ,,゚Д゚)「アイツらが異常なだけだ」

と、兄弟と互角に渡り合うペニサス達の方へ向けて言い放った。



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