( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 36: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:27:38.50 ID:WsiWt4vU0
( ,,゚Д゚)「っ!」
┗(^o^ )┓「甘い!」
無理矢理に身を回して叩きつける一撃。
その不意打ちといえる斬撃を、ジュカイは容易く防御した。
ジュカイの剣術は特殊である。
剣のサイズは普通だ。
グラニードと比べても、その長さは半分ほどしかない。
何か特殊な能力が付加されているわけでもなく、それは本当に普通の刀剣だった。
ただ、彼自身の背丈が一メートルに満たない。
これこそが最大の問題であった。
この低身から繰り出される体捌きが、見たことも無いほど独特なのだ。
手首や柄を軸とするのではなく、身体全体を軸とする動き。
腕の力で切りつけるのではない。
独楽のように回転しながら、身体全てを用いてぶつかってくるような斬撃なのだ。
当然、その勢いは自然と強くなる。
- 38: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:29:36.21 ID:WsiWt4vU0
前へ。
ただ前へ。
言葉にすれば単純なことだが、一対一の戦闘においての前進は意外と難しい。
相手は自分だけを見ている。
自分の挙動全てに気を配っている。
無闇に一歩踏み出して相手の間合いに入れば最後、渾身の一撃が待ち構えているだろう。
その精神的に難しい前進という問題を、ジュカイは身体ごとぶつかるようにして解消している。
要は反撃の隙を与えなければ良いのだ。
(;,,゚Д゚)(厄介な……!!)
今日何度目かの舌打ち。
人間、咄嗟に押されてしまえば、どうしても足を引いてしまう。
そうなれば意識は自然と受けに回ってしまう。
受けに回ってしまえば、相手の勢いが弱まるまで『攻め』に転ずることが難しくなる。
ギコは今、そういう悪循環に陥っていた。
- 39: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:31:26.01 ID:WsiWt4vU0
後退するのが危険だと頭では解っている。
今にも足を踏ん張らせ、その華奢な身体に一撃を入れようと思っている。
しかし攻撃の嵐が止まない。
ジュカイの剣撃は容赦を知らず、そのどれもが致命傷狙いだ。
しかも奇襲じみた反撃をも回避することから、ギコの動きに気を配っていることが解る。
肉を切らせて骨を断つといった反撃が出来ない。
実行することは可能だが、自分だけが斬られて終わりだろう。
┗(^o^ )┓「そろそろ、ですか」
ジュカイが呟いた。
その視線はギコを見ていない。
僅かに逸らされた目は、ギコの斜め後ろを見ている。
病室だ。
(;,,゚Д゚)「貴様は……!」
┗(^o^ )┓「えぇ、指輪を頂きに参っています」
やはり。
わざわざ別棟を狙うのだから、何か明確な目的があるとは踏んでいた。
ただ戦いたいだけならば一階に留まっていれば良いのだから。
- 41: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:32:48.54 ID:WsiWt4vU0
┗(^o^ )┓「指輪……使えないにしても、その内在魔力は相当なものなのですから」
(;,,゚Д゚)「何故、しぃや弟者のを狙う……!
今ここで俺を倒して奪っていけばいいだろう!」
┗(^o^ )┓「それでは駄目なのです」
解っていないな、と言うような表情で
┗(^o^ )┓「戦える相手から戦う力を奪ってしまったら、勿体無いでしょう?」
その『勿体無い』の意味が解るまで、それほどの時間は掛からなかった。
つまり、そういうこと。
彼らは根っからの戦闘狂なのだ。
彼らにとって目的とは手段でしかないのだ。
己らと戦える人間を残すため、戦えない人間から戦う力を奪うため。
そして今、目の前の男はしぃの指輪を狙っていると言う。
- 44: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:34:28.77 ID:WsiWt4vU0
(#,,゚Д゚)「させん……絶対にさせんぞ!」
┗(^o^ )┓「秩序を失った貴方に――」
ジュカイの身体が捻じれる。
その反動を用いた高速の一撃は、ギコの構える巨剣を容易く弾き飛ばした。
回転は止まらない。
剣はジュカイを軸として一回転し、ギコの右肩を薙ぐように走る。
(;,,゚Д゚)「がっ……!?」
防御が間に合わず、赤い液体が宙を舞った。
┗(^o^ )┓「護れるものなど、ありません」
ゴ、という重い音が頭に響く。
こめかみにジュカイの爪先が当たっていると気付いた時には、既に身体が浮いていた。
そのままの勢いで蹴り飛ばされる。
- 46: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:36:05.28 ID:WsiWt4vU0
長い廊下を転がり、
(;,,-Д゚)「くっ……」
痛みに顔をしかめる。
今のは下手に斬られるよりも強烈だった。
脳が思い切り揺さ振られ、衝撃を受けた首も痛んでいる。
立ち上がろうと身体に力を入れるも、自由に動いてはくれない。
そうしている間にもジュカイは、しぃが眠っているはずの病室へと歩いていた。
(;,,-Д゚)「や、やめ――」
あの男が指輪を奪うだけで終わらせるだろうか。
いや、そんなことよりも
――彼女に触れること自体が許せない。
(;,,゚Д゚)「しぃは護る……いつだって、俺が……!」
┗(^o^ )┓「だから護れませんよ、貴方には」
冷酷に言い放ち、ドアに手を掛ける。
躊躇なく開いた。
- 47: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:37:31.94 ID:WsiWt4vU0
┗(^o^ )┓「――え?」
見えたのは、病室を示す白ではなかった。
窓から見える夜を示す黒でもなかった。
橙色。
穏やかさを放つ一方で、しかし苛烈さをも表現する色。
表裏二つの意味を持つそれが、無防備なジュカイに襲い掛かった。
ギコは見る。
ジュカイの身体に、数百といえるほどの橙色がぶち当たっていくのを。
その衝撃は凄まじいらしく、英雄であるジュカイが廊下の壁まで吹き飛んでしまった。
- 49: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:39:54.92 ID:WsiWt4vU0
(;,,゚Д゚)「なっ……」
見覚えがある。
見覚えがありすぎて、逆に疑ってしまった。
彼女の仕業であるはずがない、と。
しかし、病室から出てきた人間はどう見ても――
(*゚ー゚)「…………」
しぃだった。
しかし
頭に巻いていた包帯が無い。
頬に張っていたガーゼが無い。
体が纏っていた患者服を着ていない。
いつも私服姿で、その背からは機械仕掛けの翼が生えていた。
そしていつもの笑顔で
(*゚ー゚)「もう大丈夫だよ、ギコ君」
と言ってくれた。
- 50: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:41:40.43 ID:WsiWt4vU0
( つ_ゝ`)「……?」
思っていた衝撃は来なかった。
想像以上の速度で貫かれてしまったのだろうか。
痛みを感じないのは、既に自身の身体が死んだからなのだろうか。
目を開く。
通路の先にいるはずのオワタが見えなかった。
その代わり、見覚えのある後姿が目に入る。
自分とほぼ同じ背丈を少しだけ丸め、両手に何かを構えていた。
(;´_ゝ`)「あ……」
目の前の男が振り向く。
まるで鏡を見ているかのような、自分そっくりな顔が見えた。
彼は、口元に笑みを浮かべ
(´<_` )「無事か、兄者」
- 53: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:43:24.43 ID:WsiWt4vU0
(;´_ゝ`)「お、お、お、お――」
(´<_` )「お?」
( ;_ゝ;)「おんびりばぼろぉぉぉぉぉん!!」
(´<_` )「日本語でおk」
冷静な突っ込み。
まさに本物。
偽者が出せる空気ではない。
少し引き気味の弟者の手を掴み、兄者は目幅涙を流しながら
( ;_ゝ;)「久しぶりだなぁ! 三ヶ月近くも何処行ってたんだよぉぉぉ!?」
(´<_`;)「落ち着け……リアル時間の話はタブーだ、兄者。
それにアンタ、頻繁に見舞い来てただろ」
( ´_ゝ`)「何故それを?」
(´<_` )「看護士さん達が噂してたぞ。
不審者が毎日のように俺の病室に来るって。
あ、ちなみに昨日してたサングラスはセンス悪いから変えた方がいい」
- 54: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:44:59.82 ID:WsiWt4vU0
( ´_ゝ`)「おー、サンキューな。
やっぱり、そういうのは弟者に選んでもらうのが良い」
うんうん、と納得しながら首を振る。
そして
( ´_ゝ`)「……ん? 何で昨日の俺を知ってるんだ?」
(´<_` )「すまん、実は三日前から目覚めてたんだよ。
見舞いの時はずっと寝たフリしてた。
アンタがいない時間は、しぃさんと一緒にリハビリやら何やらをこなしてたってわけだ」
( ´_ゝ`)「…………」
(´<_` )「敵を騙すには味方からって言うだろ?
特にギコさんとアンタは嘘吐くのが苦手だしな。
で、指輪の使い手が意識不明ってなれば、欲しがる奴が確実に油断してくれる、と」
(#´_ゝ`)「……お前……!」
怒りを露わにした兄者が、弟者の襟首を掴む。
(´<_` )「騙すようなことをして悪かったと思ってる。
でも言っておくけど、この策の発案者はモララーさんだからな」
(#´_ゝ`)「違ぇよ馬鹿タレ! 焼肉のタレ!」
- 57: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:46:51.35 ID:WsiWt4vU0
(#´_ゝ`)「しぃさんと一緒に、だぁ!?
お前アレか!? 手取り足取り腰取りってかぁ!?」
(´<_` )「これは予想外。
ってか、そんなことをしたらギコさんに十回くらい殺されるから」
(#´_ゝ`)「ちっ、感動の再開が台無しだぜ!」
(´<_` )「主にアンタのせいでな」
( ´_ゝ`)b「でも……また会えて良かったぜ」
(´<_` )「『ぜ』を二度連続で使うのは致命的にダサいよな。
まぁ、いつも通りの兄者で安心したぞ……なんか尿臭いけど」
( ´_ゝ`)「あー言えばAUー」
(´<_`;)「……何かテンションおかしくないか?」
- 59: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:48:09.79 ID:WsiWt4vU0
やれやれ、と肩を竦める弟者。
渡り廊下の先で律儀に待っているオワタへ視線を向け
(´<_` )「さぁて、何とかしますか」
( ´_ゝ`)「あ、そのことなんだが」
何、と弟者が首だけを振り向かせる。
兄者は少し言い淀んだ後、意を決したかのように口を開いた。
( ´_ゝ`)「……俺、もう魔法少女じゃないんだ」
(´<_` )「何と」
( ´_ゝ`)「4th−Wの魔力を全て使っちまってな。
まぁ……もうそういう歳でもないよなぁ、とか思ってたんだけどゴニョゴニョフヒヒ」
(´<_` )「で?」
(;´_ゝ`)「いや、でっていうwwwwwww」
- 61: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:50:22.16 ID:WsiWt4vU0
(´<_` )「確かに最近のアンタといえばそんな感じだったけど
今目の前にいる兄者が昔から知ってる兄者なら、そんなモンが無くても戦えるはずだ」
自信満々な笑みを乗せ、兄の弟は言い放った。
(´<_` )「俺は知ってるぞ、兄者の素の力を」
( ´_ゝ`)「…………」
(´<_` )「敵は英雄で、銃器を以ってしても太刀打ちが難しい相手。
対してこちらは黄金の盾と少しだけの装備、そして使い手は双子の兄弟。
何か燃えるだろ?」
( ´_ゝ`)「も、萌え、燃えるな」
(´<_` )「せっかくだから前半のノイズは無視する」
冷酷に言い放つ。
早速、戦闘モードに入った弟者は
(´<_` )「んじゃ、俺はアンタの指示に従うから……教えてくれよ、アイツを倒す方法を」
絶対の信頼が篭った声で言った。
- 63: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:52:22.68 ID:WsiWt4vU0
背を向ける。
弟者の役割は、敵の猛攻を最前線で防ぐための盾だ。
たった、それだけ。
それだけしかすることがない。
違う。
盾だからといって、攻めに転じることが出来ないわけではない。
その方法を兄者は知っている。
ただ、背中を守る存在を信頼していなければならない。
だから弟者は信頼している。
だからこそ兄者を信頼している。
それに応えるにはどうすれば良いか。
弱音を吐き続けるのか。
弟に戦いを任せるのか。
( ´_ゝ`)「……ふむ」
キィ、と耳鳴りのような音が頭に響いた。
それを合図とし、元々から細い目が更に鋭くなる。
- 65: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:53:42.29 ID:WsiWt4vU0
現状、装備、能力、空間、条件。
それらの要素を冷静に分析し、オワタを撃退するために有効な行動が逐一並べられる。
決して多くはなかった。
英雄という相手に対して、むしろこちらが取れる行動は極端に少ない。
前へ出れば突き刺され、後へ下がれば追撃が走る。
たとえ黄金の盾を持っていても、持ち手の技術の差が歴然なのだから。
( ´_ゝ`)(防御に使えないなら、攻撃か補助に回すしかないわけだが……)
そうなると身を守る存在が無くなる。
相手が英雄だからこそ、いざという時に身を守る手段が無ければならない。
確実に相手の攻撃を止める手段はないものか。
そこでふと、ある物が視線に入った。
( ´_ゝ`)「…………」
- 66: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:55:02.17 ID:WsiWt4vU0
信じられない光景だった。
目の前にある光景が信じられなかった。
(*゚ー゚)「ギコ君?」
(;,,゚Д゚)「……あ」
またも名前を呼ばれて、慌てるように反応する。
( ,,゚Д゚)「何で……」
(*゚ー゚)「ごめんね」
眉尻を下げた笑み。
そして言う。
(*゚ー゚)「ギコ君……ギコ君は、もう護らなくていいよ」
(;,,゚Д゚)「え?」
頭の中が揺さぶられた。
最も大事にしている彼女から、自分の行動を否定されたのだ。
- 67: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:56:38.11 ID:WsiWt4vU0
(;,,゚Д゚)「……俺が護らなくて、誰が護るんだ」
震えを押さえ、辛うじて言葉を吐く。
彼女の言葉はすぐに聞こえた。
(*゚ー゚)「私が護る」
それは決意の言葉か、それとも秘めていた言葉か。
シャン、という涼しい音が響く。
音源となった機械仕掛けの翼を広げ、橙色の羽片を舞い散らせた。
(*゚ー゚)「私が護るよ……自分も、ギコ君も。
それだけの力があるから」
それは神々しい光景だった。
美しい、と無意識に思ってしまうほど美しかった。
(*゚ー゚)「だからギコ君は、昔みたいに前だけを見ていて欲しい」
(;,,゚Д゚)「……!」
彼女の言葉が、ギコの張り詰めていた心を解していく。
そして今までの偽装していた感情を自覚した。
- 70: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:57:58.09 ID:WsiWt4vU0
あの日。
渡辺と戦った日を境に彼女は眠ってしまった。
頭を強く打ってしまったらしく、それからずっと目を覚ますことがなかった。
毎日のように見舞いに行った。
とにかく時間を作って、会いに行った。
別に、愛情やそういったモノが彼女の目を覚ます要因になるとは思わなかった。
むしろ否定派で、そんな奇跡が起きるのは漫画や小説の中だけだ。
秩序が壊れ掛けているのなら尚更だ。
今になって思う。
心の中にある感情を見て確信する。
自分は彼女が心配だったわけではない。
もちろんそれもあったのだが、大部分においては違う感情が支配していた。
彼女がいなければ駄目だったのだ。
自分にとって、彼女という存在が無ければ駄目だったのだ。
彼女がいるから自分も立てるわけで、だからこそ今まで戦ってこれた。
そういう、ことだった。
- 72: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 16:59:17.84 ID:WsiWt4vU0
( ,,゚Д゚)「……すまん」
無意識に謝っていた。
もちろん彼女は真の理由を知らないだろう。
だからなのか、しぃは笑みを浮かべたまま
(*゚ー゚)「大丈夫」
たったそれだけ。
たった一言と言える言葉だが、だからこそギコの心に染み込んだ。
┗(^o^ )┓「……まさか目覚めているとは」
付着した埃を払いつつ、オワタが起き上がる。
(*゚ー゚)「だからこういう結果になった。
油断大敵……英雄という強さに自惚れてる証拠だわ」
┗(^o^ )┓「言いますね」
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