( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

75: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:00:37.46 ID:WsiWt4vU0

しかし、と言い

┗(^o^ )┓「だからと言って貴方達が勝てる道理はありませんよ。
       たとえ束になって掛かって来ても、この一振りの剣があれば私は負けない」

剣の帝王。
業名として、その意を受けている彼のプライドは誇り高い。
それを支える実力もあるし、技術も気概もある。
己の全てを踏まえての発言だった。

剣帝の言葉を聞いたしぃは

(*゚ー゚)「私は勝たないよ」

┗(^o^ )┓「?」

(*゚ー゚)「勝つのは、ギコ君だから」

( ,,゚Д゚)「!」

言葉を聞いて理解する。

所詮、自分に護れるものなど無いのだ。
自分が護りたいと思っている人こそが、本当の護り手だったのだ。



76: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:02:06.00 ID:WsiWt4vU0

解っていたはず。

あの時。
片腕を失った日から、自分には護れる力が無くなったことに気付いていたはずだ。
腕が一つなのに、どうして二つのモノを持つことが出来ようか。

決まっていたのだ。
あの時から、護るという要素が自分には合わないのだと。

ならばすべきことは何だ。

護れないと嘆くことか。
護りたいと歯噛みすることか。

違う。

この身に出来ることは、昔からたった一つ。

( ,,゚Д゚)「――ッ!」

立ち上がる。
大腿部に違和感を感じ、連鎖するように足が震えるが構わない。
右手に握ったグラニードを支えに身を起こす。



77: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:03:27.65 ID:WsiWt4vU0

┗(^o^ )┓「まだやりますか?
       貴方に護る力は無いのだというのに」

( ,,゚Д゚)「あぁ、そうさ……俺には護る力なんて無い」

いつだってそうだ。
護れたことなんて数えるほども無かった。

――元より己の身は『牙』。

モララーに拾われる以前から、自分の存在は鋭く研いだ牙だった。
敵対する存在の喉下を食い千切るだけ。
だからこそ、モララーも自社に引き入れようとした。

それが何だ今は。

大切なモノを手に入れたために、その牙を収めてしまった。
噛み付くことしか出来ないはずなのに。

( ,,゚Д゚)「……道理で、な」

一年半前の、モララーの言葉を思い出す。

――君としぃ君は……今でもあの時の関係のままかね?

あれは祝福や期待の意ではなかったのだ。
むしろ嫌味を籠めた皮肉。
牙しかないはずの、しかしその牙を隠してしまったギコを嘲笑う言葉だった。



80: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:05:02.61 ID:WsiWt4vU0

( ,,゚Д゚)「……英雄、聞け」

右足を出し、膝を折り、前屈姿勢で、巨剣を担ぎ、無いはずの左腕を前方へ突き出し

( ,,゚Д゚)「俺はもう何も護らない」

┗(^o^ )┓「……では?」

( ,,゚Д゚)「俺に護れる力なんて、元々から無かったんだ。
     だから――」

それは再認識の言葉。

(#,,゚Д゚)「護りに入ってしまう前に、貴様の身を叩き切らせてもらう――!!」

宣言するように地を蹴る。
一直線に、迷わず。

┗(^o^ )┓「懲りないですね」

ジュカイは剣を構えて迎撃の姿勢をとった。

慌てる必要は無い。
初撃を往なし、カウンターを嫌というほど叩き込めば良いだけのこと。



82: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:06:22.46 ID:WsiWt4vU0

(#,,゚Д゚)「おおおぉぉぉぉっ!!」

叫声。
牙を剥き、その獣は右腕一本で帝王へ立ち向かった。

残距離三メートル。
今のギコにとって、その距離は充分に間合いの中。
振り上げた巨剣を叩き落とす。

高速かつ高圧の一撃が、ジュカイの脳天を狙い

┗(^o^ )┓「甘い!」

その熟された技術によって往なされる。
剣の腹を利用し、巨剣の軌道を僅かに逸らさせたのだ。
故にグラニードは目標を切断することなく、地面へと叩きつけられる。

後は回転を利用しての連撃を――

そこまで考えたジュカイは、一つの気配が未だ消えていないことに気付いた。

ギコの攻撃の気配が、まだ止んでいないのだ。



83: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:07:53.92 ID:WsiWt4vU0

床を叩き割るグラニード。
しかし止まらない。
そのまま引き摺られ、床の中で半円を描いた。

回転する刃は止まることを知らない。
ギコの背後に現われたグラニードは、そのまま円を描き、再度真上へと打ち上げられ

┗(^o^ )┓「なっ――」

(#,,゚Д゚)「砕け散れッ!!」

二度目の攻撃を行った。
先ほどよりも重い一撃が、咄嗟に構えられたジュカイの剣に叩きつけられる。
キシ、と剣が悲鳴を挙げ、その衝撃は骨の芯にまで伝わった。

┗(^o^ )┓「ま、さか……」

身を逸らし、青い巨剣の軌道を変える。
またも床を叩き割ったグラニードは、やはり動きを止めない。
そして同じように真上へと走り

┗(^o^ )┓「くぁ!」

同じ箇所へと打ち下ろされた。

身体全てを用いた回転運動で受け止めるも、衝撃を逃がすことは出来ない。
それは足にまで伝わり、ジュカイはその身を縫い付けられたかのように不動とされた。



85: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:09:19.07 ID:WsiWt4vU0

ジュカイの用いる回転は、例えるならば『竜巻』。
横に走る刃は近付くもの全てを切断する。
速く、鋭く、風のように。

横を主とするジュカイの回転に対して、ギコの回転は縦だ。
一年半前、クーと初めて戦った際に用いた技。
下へと振り抜いた巨剣を、更に回転させるように振るだけの遠心力を用いた連撃だ。

その縦回転する刃は、例えるならば『落雷』。

重力を味方につけた巨剣は
技術を味方とするジュカイに対して、圧倒的な純力で牙を剥いた。

白い廊下に、ガ、という轟音が連鎖する。
それは床を叩き砕く音だ。

ジュカイの持つ技術は、確かに大したものなのだろう。
それはギコも認めている。
しかし、いくら技術があろうとも落雷は防げない。

(#,,゚Д゚)「おぉぉぉ!!」

段々と防御の質が落ちている相手に対し、段々と威力を上げて叩きつける。
それは、相手が砕け散るまで終わることはないだろう。
無慈悲ともいえる連撃を振り続けるのみ。



88: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:10:54.40 ID:WsiWt4vU0

そして遂に防御が崩れる。

┗(^o^;)┓「しまっ――」

剣が叩き折られ、その衝撃がダイレクトに身体の中を貫いた。

一時的な麻痺状態に陥る。
それをみすみす逃すのは、少し前までの『護る』自分だ。

(#,,゚Д゚)「俺は……俺は、もう違う!!」

断ち切るように。
今までの腑抜けていた自分を切り離すように。

その証明としてか、グラニードはジュカイの身体を一気に切り裂いた。



91: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:12:07.99 ID:WsiWt4vU0

┗(^o^;)┓「が――あぁ……!?」

鮮血が噴き出る。

半身切断する狙いであったが、彼の技術が少しだけ上だったようだ。
右肩から胸までに掛けて真っ赤な太線を残したジュカイは、そのまま残る力で地を蹴って後退する。

(#,,゚Д゚)「チッ……!」

闘争本能を剥き出したまま、逃げるジュカイを視線だけで追う。
仕留めたと思っていた頭が、身体に追撃命令を出すのを遅らせていた。

攻撃だけでなく、逃げ足も速い。
彼は常に退路を意識して戦っていた。
油断はともかく、流石は英雄といったところか。

ジュカイを切り裂いたグラニードは、そのまま勢いを緩めつつ数回転した後
血を滴らせながら、ふわり、とギコの右肩に着地した。



92: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:13:35.50 ID:WsiWt4vU0

その姿は今までの彼のものではなかった。
何処か頼りなさげに立っていたものとは違い、威風堂々と通路の真ん中に陣取っている。
そのまま視線を背後へ。

(*゚ー゚)「ギコ君……」

援護しようとしていたのか、羽片の頭を翼から覗かせているしぃがいた。
その姿を見て思う。
もはや自分に彼女の支えは必要ない、と。

――彼女を護るために戦うのではなく、彼女を護る前に叩き切るのだから。

( ,,゚Д゚)「すまん……俺は長い間、随分と勘違いをしていたらしい」

(*゚ー゚)「ううん、それもまたギコ君だよ」

( ,,゚Д゚)「これからはお前が護ってくれ。
     牙に護れるモノなど何もない……ただ、敵を噛み千切るしかないからな」

(*゚ー゚)「うん……護るよ、私が」

それが、『牙猫』と呼ばれた男が復活した瞬間だった。



98: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:15:46.58 ID:WsiWt4vU0

( ´_ゝ`)「うっしゃ、行くぜ」

(´<_` )「把握した」

表情そっくりに、二人の兄弟は同じタイミングで構えた。

兄は黒塗りの銃器を。
弟は黄金に光る盾を。

\(^o^)/(ここまで攻守の関係が解るのも珍しい)

銃は殺すための、盾は守るための武具だ。
その役割を逆にすることなど出来ないし、出来たとしても大した意味はない。
槍を一回転させた後、オワタは構えつつ兄者を睨んだ。

先に仕留めるべきは、攻撃を司る兄者だ。

\(^o^)/「行きますよ」

(´<_` )「いつでも」

( ´_ゝ`)「どこでも」

ふざけた応答を無視し、オワタは地を蹴り飛ばした。



100: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:17:18.77 ID:WsiWt4vU0

何の問題もない。
ただ反応する暇も無い攻撃で兄者を潰し、残る弟者を料理すれば良いだけ。
たったそれだけだ。

(´<_` )「やらせんさ!」

割り込むように弟者の身体が入る。

\(^o^)/「だが、無駄!」

身を思い切り仰け反らせる。
その動きを反動として、弟者のジゴミル目掛けて穂先をぶち込んだ。

(´<_`;)「ぬぉ!?」

斥力を最大に展開しても、その攻撃を完全に防ぐことは出来なかった。
全てを穿つ勢いの槍の穂先は、一瞬ではあるがジゴミルの表面に触れることを成功させる。

踏ん張っていた弟者の身体が背後へと押され
それを見た兄者が慌てて背中へ手を添えた。

(;´_ゝ`)「何と」

想像以上だ。
速く、そして高威力の恐るべき一撃。



101: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:18:45.78 ID:WsiWt4vU0

しかし、それだけだ。
範囲が狭いだけでなく、その動きも非常に見切りやすい。
ただし、当たれば一撃必殺……非常に解りやすい戦闘スタイルだ。

( ´_ゝ`)「もしかして博打好きだったり?
      だったら、ジョルジュやエクスト辺りと気が合いそうかもな!」

何とか無力化した弟者が姿勢を落とした。
銃器を構え、出来上がった空間目掛けて射撃する。

\(^o^)/「ッ!」

既に予測済みだったのか、オワタは一ステップで退避。
兄者達の位置を軸として円を描くように移動。

定石通りの動きと言えよう。
近接攻撃の手段がない相手に対しては、あのようにして自分の間合いで戦うのが一番だ。

というか、こちらの攻撃手段が限られている時点で
既に勝負は決まっているようなものなのだが。

( ´_ゝ`)(だが、その未来を塗り替えることは出来る)

勝負は決まっているとはいえ、所詮は空想上の未来。
言い方はおかしいが、現実の未来はまだ訪れていない。
だから諦めなどない。



102: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:20:18.63 ID:WsiWt4vU0

( ´_ゝ`)(要は攻撃を当てることが出来ればいい。
      いくら英雄だからといっても、その身体が鉄に覆われてるわけじゃないしな)

ただ、無闇に撃っても当たりはしない。
特殊な訓練を積んでいるのか、元々から持っているのか知らないが
彼らの動体視力と反応速度は常人を超えている。

逆を言えば、ただそれだけなのだ。

英雄の強みは、その卓越した技術と身体能力。
別に攻撃を無効化されるわけでなく、体力が無尽蔵というわけでもない。

人間には人間なりの弱点が存在する。

それは例えば
強烈な光であったり、大きな音であったり、色々とあるだろう。
その中でも最も効果が高いと言われるのは、『精神的な刺激』だ。

右手を懐へ。

( ´_ゝ`)「人間、『そういうモノ』だとして認識していると
      それを見ても、それとしか映らないという妙な癖を持つ。
      先入観、とでも言うのかな」



104: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:22:29.50 ID:WsiWt4vU0

\(^o^)/「何を言っているのか知りませんが――」

( ´_ゝ`)「例えば、こう」

ひょい、と軽い動作で腕を振った。
その手から放たれた黒い小さな物体は、硬質な音を立てて床を転がる。

\(;^o^)/「なっ――」

オワタの足元に落ちたのは、手榴弾と呼ばれる兵器だった。
実際には見たことがなかったが、それがどういうモノなのかは知識として知っている。

\(;^o^)/「何を馬鹿な!」

この距離で爆発すれば、オワタはもちろん二人にまで被害が及ぶ可能性が高い。
それを知ってか知らずか

( ´_ゝ`)「バイバイ」

言葉と共に姿勢を低くする。
それを護るかのようにジゴミルを構えた弟者が盾となる。

そこに目掛けて蹴り飛ばそうとも思ったが、確か相手の盾は斥力を操るはずだ。
操作次第ではこちらの下へ戻ってくるだろう。



106: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:23:43.46 ID:WsiWt4vU0

迷い無く後退した。
全力で床を蹴り飛ばし、射程距離である十五メートルから出来るだけ離れようとする。
自然とその身は壁へ接着した。

それを見た兄者は口元を歪め

( ´,_ゝ`)「乙wwwwwwww」

と、憎たらしい声で言う。
疑問に思うが同時、その身に強烈な圧力が降りかかった。

\(;^o^)/「うっ!?」

( ´_ゝ`)「やーっと壁の前に立ってくれたな。
      その状態だとまともに動けんだろ?」

兄者が立ち上がる。
その横で、弟者がジゴミルをこちらに向けていた。
そこから発せられる斥力が、オワタの身を釘付けにしているのだ。



108: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:25:10.50 ID:WsiWt4vU0

( ´_ゝ`)「『爆発するモノ』だと思っているから、爆発しないモノでもそう思ってしまう」

拾い上げた手榴弾のピンは抜けていなかった。

( ´_ゝ`)「跳ね方や反響音をちゃんと見て聞いてりゃ、判断出来たはずなのにな。
      まぁ、アンタの世界に無いだろうから詳しくはなかった、ってのもあるが」

知識としては知っていた。
しかし、それが逆に仇となった。
手榴弾は爆発物だと刷り込まれていたのが敗因である。

\(;^o^)/「っ……やられました。
       それにしても、よくその咄嗟の策に弟の方がついてこれましたね」

(´<_` )「理由は簡単」

笑みを浮かべ

d(´<_` )「だって俺ら双子だし」

( ´_ゝ`)b「流石だよな、俺ら」

\(;^o^)/「……何と」



112: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:26:49.26 ID:WsiWt4vU0

常人には理解出来ないだろう。
しかし三兄弟の一人であるオワタには解る話だ。

理屈ではない。
ただ漠然と、兄はそうするのだろう、と頭に浮かぶのだ。
それに順じて動けばいい。

感覚というよりも本能に近いのかもしれない。

( ´_ゝ`)「んじゃ、トドメということで」

銃器の先をオワタへ向ける。
いくら英雄とはいえ、この距離で銃弾を受ければ絶命するだろう。
生かしておけば絶対に敵となるのなら、ここで殺しておくのが一番良い。

( ´_ゝ`)「嗚呼、何て冷酷な俺」

(´<_`;)「いいから撃て」

( ´_ゝ`)「あい」

その時だ。
ズン、という重い音が響く。
まるで音が形を持ったかのように蠢き、建物全体を激震させた。



113: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:28:09.26 ID:WsiWt4vU0

(´<_`;)「おわっ!?」

(;´_ゝ`)「ぬぉっ!」

何の心構えもしていなかった二人は、その場に尻餅をついてしまった。
支えるために腕を背後へ。
当然、オワタに向けていたジゴミルが離れてしまう。

(´<_`;)「しまっ――」

言葉を発する間に、オワタは一瞬で離脱してしまう。
指輪の回収が困難だと悟ったのか、それとも時間が来てしまったのか。
無防備な兄弟に攻撃を加えることなく、オワタは姿を消してしまった。

( ´_ゝ`)「これなんて御約束? まだ秩序が働いてんのか?」

(´<_` )「兄者、面目ない」

( ´_ゝ`)「いいや、実を言うと殺しなんてしたくなかったし結果オーライオーライ」



114: ◆BYUt189CYA :2007/05/23(水) 17:29:40.89 ID:WsiWt4vU0

それに、と言い

( ´_ゝ`)「これで一つ解った。
      英雄ってのは、ちゃんと作戦立てて準備しておけば
      決して恐れる相手じゃないってな」

快活に笑う兄者。
ポジティブというか、何とかいうか。

(´<_` )「……うーん、それはいいんだが」

弟者は腕を組んで、少し考える素振りを見せる。
しかし頭を振り

(´<_` )「まぁいいや。
      とりあえず久しぶりだな、兄者」

( ´_ゝ`)「うむ、三ヶ月振りだな」

(´<_`;)「だからリアル時間はやめとけって、色々と」

しかし再会の時を楽しんでいる暇は無い。
妙に苦しげな息を吐くモララーから連絡が来たのは、その直後だった。



戻る第二十三話