( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 66: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:39:19.99 ID:CXrAVO2E0
- 平常心を保っているように見える内心は、動揺を悟られぬようにするのが精一杯だった。
英雄になってから一年以上。
その間に、様々な戦場を潜り抜けてきた。
死にかけたことだってあるし、戦士として再起不能に陥りかけたこともあった。
故にミルナは、『死』に対しての嗅覚が常人よりも発達している。
しかしその感覚は、今目の前で異常な量の死臭を振りまく二人に気付かなかった。
ミルナにとって、それは非常事態である。
( ゚д゚ )「……俺を呼んだのはお前達か」
メ(リ゚ ー゚ノリ「ま、御膳立てっていうか、邪魔払いっていうか?」
( ゚д゚ )「何が言いたい」
ル(i|゚ ー゚ノリ「遠回しに言うのは良いが相手に伝わらねば意味が無いぞ、兄上」
メ(リ゚ ー゚ノリ「言葉のコミュニケーションってのは難しいねぇ、姉貴」
おかしな二人だ。
互いを『兄』『姉』と呼び、その顔は髪型と色以外はほとんど同一。
男と女のはずなのだが、中性的な顔パーツの配置のせいか同じ人物にも見える。
- 68: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:41:03.51 ID:CXrAVO2E0
- その片方である赤髪の男が、指を立てて言った。
メ(リ゚ ー゚ノリ「ヒート、という英雄を知っているな?」
( ゚д゚ )「!?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「知らないはずはあるまい。
お前は彼女によって人生を変えられたのだから」
突如として放たれた親友の名。
それを聞いた瞬間、ミルナは全てを理解した。
(#゚д゚ )「貴様らは……!!」
メ(リ゚ ー゚ノリ「その理解の早さは嬉しい誤算だねぇ。 説明の手間が省けるってーもんだ」
(#゚д゚ )「ヒートを何処へやった!?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「心配しなくても良い。 そのために今日はここへ来た」
(;゚д゚ )「!?」
ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅら、来るぞ」
青髪の女が北東の夜空を見上げた。
釣られてミルナも視線を向け、そして目を見開く。
まるで闇に紛れるように飛ぶ影は、真っ直ぐにこちらに向かって――
- 72: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:42:48.92 ID:CXrAVO2E0
- (;ぅд゚ )「ぬぉ!」
それは高速でミルナと兄姉の間に着地した。
舞い上がった砂埃から目を覆いつつ、ミルナは降り立った人物を気配で感じ取る。
その気配。
その匂い。
その雰囲気。
どれもが歪で、どれもが狂っているが、それは確かにミルナの知る彼女のものだ。
ノハ#゚ ゚)「…………」
そしてその姿も、ミルナの知る彼女のものだった。
突然出現したヒートに対し、ミルナは呆けることをしない。
すぐさま彼女の下へ足を踏み出し
(;゚д゚ )「ヒーt――」
ぴたり、と。
その無防備な首筋に刃を当てられた。
- 74: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:44:12.90 ID:CXrAVO2E0
- (;゚д゚ )「何を……!?」
ノハ#゚ ゚)「黙って」
(;゚д゚ )「忘れたというのか!? 俺はミルナだ!」
ノハ#゚ ゚)「――黙れッ!!」
鳩尾に衝撃が走った。
直後、反応する暇もなく身体が背後へと吹っ飛ばされる。
痛みを感じた時にようやく、腹に槍の石突がぶち当たったのだと気付いた。
(;゚д゚ )「がっ……げほっ、がはっ……っ!?」
無様に背中から落ちた様を見やり、赤髪の男はわざとらしく溜息を吐く。
メ(リ゚ ー゚ノリ「おいおい、かつての親友にする仕打ちじゃねぇだろ」
ノハ#゚ ゚)「…………」
言葉で答えずに態度で示す。
『お前達を殺す』と、その身から異常な量の殺気が溢れ出ていた。
- 77: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:46:53.91 ID:CXrAVO2E0
- ル(i|゚ ー゚ノリ「残念ながら、お前と遊んでやる期間は過ぎてしまった。
これから忙しくなるのでな。
暇潰しの遊び道具として扱ってやったが、これよりお前は邪魔となる」
メ(リ゚ ー゚ノリ「かつての親友と楽しく、空白の一年間の内容でも語らってろよ」
ノハ#゚ ゚)「貴様らはァ……!!」
殺気は止まらない。
右手に槍、左手に巨剣を握り、今にも飛びかかろうと――
ル(i|゚ ー゚ノリ「調子に乗るなよ、下衆」
強烈な衝撃波が走った。
瞬間的な動作はあまりに速く、その内容をほとんど素っ飛ばして結果を生み出す。
気付けば、青髪女の握った刀の柄がヒートの喉へ突き刺さっていた。
ノハ#;゚ ゚)「え゙ぁッ!?」
強制的に断たれた酸素供給路。
吸っても吸えぬ空気を求め、肺が異常な運動を起こす。
胸の内からの激痛にヒートは力無く膝をつくが、しかし目に映る意思は消えていない。
ル(i|゚ ー゚ノリ「そうだ、歯向かえ歯向かえ……もっと意思を尖らせろ。
今はまだ敵わぬとも、狂気に身を任せれば我らに届くかもしれんぞ?」
ノハ#;゚ ゚)「ッ」
青髪の女が楽しそうに笑い、ヒートの額を蹴り飛ばした。
- 79: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:48:32.80 ID:CXrAVO2E0
- 脳髄へ直接響く一撃は、殺意に絡め取られた彼女の意思をも潰してしまった。
蹴られた頭部が弧を描き、そのまま背中から仰向けに倒れる。
(;゚д゚ )「ヒ、ヒート……!」
未だ痛む腹を押さえ、ミルナは何とか立ち上がろうとしていた。
しかし思わぬ攻撃が足を震わせている。
その様子を見て興味をなくしたのか、青髪の女は黙って背を向けた。
メ(リ゚ ー゚ノリ「おう、一つだけアドバイスしとこうか」
女を追いつつ、赤髪の男が思い出したかのよう言う。
メ(リ゚ ー゚ノリ「今の内に彼女の仮面を取ってみることをオススメする。
きっとテメェは幸せになれるぜ?」
(;゚д゚ )「な、何を――」
疑問の言葉を発した時には、既に二人の姿はなかった。
- 80: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:49:50.53 ID:CXrAVO2E0
- 夜闇が照らす下。
取り残されたのは、かつて離れ離れになった二人の英雄。
( ゚д゚ )「…………」
一歩、また一歩と。
ミルナは、地に伏したヒートの下へと歩いていく。
仮面のせいで表情は読み取れないが、呼吸の動作から見て気絶しているのは明らかだ。
ノハ# )「――――」
( ゚д゚ )「……仮面」
かつての彼女の顔を思い出す。
コロコロと変わっていく表情は、見ているだけで幸せな気分になれたのを憶えている。
時に笑い、時に怒り、時に泣き、稀に真顔になったりもしていた。
一瞬の躊躇の後、ミルナはヒートの仮面に手を掛ける。
悪いと思いつつも、駄目だと思いつつも、その腕に力が流れ込むのを防げなかった。
- 82: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:51:24.73 ID:CXrAVO2E0
- 軽い音と共に仮面が外れる。
その中は
(;゚д゚ )「――ッッッ!?!?!?」
あまりに想像と異なった光景に、ミルナはその場に座り込んでしまう。
喉下まで這い上がってきた叫び声を必死に飲み込んだ。
息が詰まり、目が震え、体が石になったかのように不動となるほど、その精神的衝撃は強かった。
詳しい描写は敢えてしないでおく。
ただ、あのミルナが叫び声を挙げそうになるほどの光景だ。
想像するのはきっと難しいことだろう。
だからここに、概要的な一文だけ残しておく。
――ヒートの顔は、もはや人間のそれでは無くなっていた、と。
- 85: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:53:06.38 ID:CXrAVO2E0
- 沈黙が満ちている。
銃声が響いた社長室には、一つとして物音が無かった。
血を噴き出す音も。
脳髄を撒き散らす音も。
意識が消えて床に伏す音も。
つまり
(,,^Д^)「……何故、外した」
( ・∀・)「……何故、外れた」
撃たれたはずのプギャーは生きていた。
モララーの持つ拳銃から発射された弾は、僅かに軌道を逸らして壁にめり込んでいる。
(,,^Д^)「貴様になら、殺されても良いと思ってたんだが」
( ・∀・)「…………」
(,,^Д^)「俺が貴様を殺すか、貴様が俺を殺すか。
そのどちらかになれば良いと思っていた」
( ・∀・)「……何だね、そのロマン溢れる決着のつけ方は」
- 86: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:54:42.30 ID:CXrAVO2E0
- (,,^Д^)「そうでもしないと俺の気が治まらんというわけさ。
そして訊ねよう」
ぶら下げるように握っていた剣の切っ先を、モララーの方へ向ける。
(,,^Д^)「俺は貴様を殺したいわけだが、貴様は俺をどうしたいのだ?」
( ・∀・)「…………」
(,,^Д^)「!」
プギャーの目が見開かれた。
目の前の男が、問い掛けを無視するように疾駆したのだ。
瞬間的に解放した2nd−W『ロステック』を叩き込まれる。
しかし対象を砕かない。
プギャーの自然な動きで掲げられた刀剣が、ロステックを止めているのだ。
キシ、と剣が音を立てているのを聞きつつ
(,,^Д^)「そうか、殺したいわけか」
( ・∀・)「違う」
(,,^Д^)「では、何だと?」
( ・∀・)「起こった過去を全てそのままに納得させ、その上で君と仲直りをしたいと思っている」
- 87: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:56:08.49 ID:CXrAVO2E0
- (,,^Д^)「っ……馬鹿か」
( ・∀・)「言うまでもないほど馬鹿だが、しかし私の正直な思いだよ」
眉尻を少しだけ下げた表情を浮かべる。
それは『笑み』というよりも、『悲しい』といった表情に近かった。
( ・∀・)「何せ私と君は、友達じゃないか」
(,,^Д^)「ッ!!」
甲高い音を響かせ、プギャーはロステックを弾いた。
足を数歩ほど下げ
(#,,^Д^)「ふざけるな……ふざけるなよ……貴様が、貴様が――!」
剣を思い切り振る。
まるで身体全体で感情を表すような動作で、彼は怒りに任せて叫んだ。
(#,,^Д^)「――貴様が『彼女』を殺したんだろがァァァ!!」
その気迫はもはや人ではなく獣に等しい。
理性を失った獣は、ただ目の前の仇を殺すために牙を剥いた。
対し、未だ理性にしがみ付く男が口を開く。
( ・∀・)「勘違いするな」
冷たい目で、冷たい言葉を吐いた。
( ・∀・)「――『彼女』は、死んだんだよ」
- 90: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:57:44.78 ID:CXrAVO2E0
- (#,,^Д^)「人の女を奪っておいて、よくもそんなことが言える……!」
( ・∀・)「人に罪を擦りつけて何が楽しい」
(#,,^Д^)「……ハ、ハハ、ハハハハハハハ! そうか、よく解った!
まだ貴様は過去を認めてはいないのだな!」
( ・∀・)「認めていないのは君だろう?」
(#,,^Д^)「もういい黙れ! やはり貴様は殺さないと気が済まん……!」
( ・∀・)「そう言っている間にも掛かってきたまえよ。
君は昔からそうだ。
大事なところで足踏みをしてしまい、結果的に大切なモノを手に入れるのが遅れてしまう」
やれやれと肩をすくませ
( ・∀・)「もしかしたらあの時、君の行動が少し早ければ『彼女』は助かっていたかもしれないね?」
(#,,^Д^)「貴様ァァァァァァァァ!!!」
もはや問答無用と悟ったか。
プギャーは剣を握り締め、モララーの命を断つため足を出した。
低い姿勢で這うように走る。
( ・∀・)「……この調子だと仲直りは無理かもしれないな」
呟き、ロステックを構える。
- 91: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 17:59:16.62 ID:CXrAVO2E0
- (#,,^Д^)「だらぁっ!!」
身を伸ばす勢いから派生する切り上げ。
大振りな動作なため、その軌道は単純明快だ。
( ・∀・)「変わってないな、君も」
身を護るようにロステックの柄を掲げる。
次の瞬間、不自然な感触と共にプギャーの剣が弾かれた。
( ・∀・)「ん?」
防御に成功した。
こちらはダメージを負っていない。
むしろプギャーの振るった刃の方に、多少のダメージがあるはずだが
――何だ、この違和感は。
ロステックには何も異変はない。
手応えにも問題は見当たらない。
特別何かに対して危惧すべき状況ではないのだが、微かな違和感がある。
確かめるように、再度の激突を望んだ。
柄を巧みに回転させ、上下左右ランダムにロステックを叩き込んでいく。
全てが粉砕力を持つはずなのだが、プギャーの剣は意に反して砕かれない。
- 94: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:00:41.62 ID:CXrAVO2E0
- おそらくは魔力が塗りこまれているのだろう。
ロマネスク率いる連合軍と接触しているのならば、その程度の技術供与が行われていても不思議ではない。
( ・∀・)「まったく」
まるで子供のように拗ねた口調で言う。
( ・∀・)「最近、ウェポンの存在意義が薄くなってはいないかね?」
(#,,^Д^)「うぉぉぁあああぁ!!」
( ・∀・)「しかも目の前にはキレた能面男……優雅さの欠片もない。
だが――」
負けている、と思い、劣っている、とも思う。
目の前で剣を振り回すプギャーを、モララーは笑うことが出来なかった。
笑えるほど、彼と対等だとは思えないからだ。
- 95: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:02:04.92 ID:CXrAVO2E0
- 今の自分達は、どの勢力に対しても歯向かうことすら出来ない。
その勢力は敵であり、そして敵になるかもしれない。
いずれにせよ、正義の敵などではなく、個人的な理由による対立的な敵だ。
しかしモララーは彼らのことを『愚か』や『馬鹿』だとは思わない。
真っ直ぐなのだ。
ただひたすらに、彼らは目的を遂行するために走っている。
邪魔があれば叩き潰すだろう。
足を引っ張れば切り捨てるだろう。
倒されれば誰も助け起こしてくれないだろう。
しかし皆、同じ方向を見て走っている。
誰も文句を言わず、そして誰もが誰もを信頼している。
だから劣っているのだ、と思えた。
真実を知らず、足並みが揃わず、何処を見ても良いのか解らず――故に、心の底から既に負けているのだ。
( ・∀・)「だからと言って、何も知らない、何も解らないと泣けば良いわけじゃない」
(#,,^Д^)「!?」
( ・∀・)「せめて上に立つ私が指し示さなければな……!
指差す先も解らないのならば、とりあえず見上げるようにと高々に示せばいい!」
発光。
構えたロステックの槌頭が黄光を生み出した。
社長室に満ちていた殺気という大気が掻き乱され、一種の不気味な空間を作り上げる。
- 96: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:04:00.52 ID:CXrAVO2E0
- (#,,^Д^)「それが噂の限界突破というヤツか……!」
その迫力は本物だ。
秘めている魔力の全解放を示す圧が、プギャーの頭に昇っていた血を冷ます。
冷静になる機会を与えてしまった結果になるが、モララーは『これで良い』と思った。
( ・∀・)「君はまだ死んではならない。
何も解決していないのだからね。
しかしだからと言って、このまま暴れさせるわけにもいかない」
(#,,^Д^)「…………」
( ・∀・)「さて、選びたまえ。
このまま殴り飛ばされて逃げ帰るか、痛みを恐れて逃げ帰るか」
挑発ともとれる発言に対し
(#,,^Д^)「そのどちらも選ばん! 今ここで貴様を殺す!」
( ・∀・)「せっかちな人は嫌われるよ」
既にロステックの槌頭は三倍以上に大きくなっていた。
視認出来るほどの濃密な雷を纏わせ、プギャーを喰らうために牙を剥いているようにも見える。
- 100: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:05:22.02 ID:CXrAVO2E0
- ( ・∀・)「室内で使うものではないが――」
(#,,^Д^)「あぁぁぁぁ!!」
剣を振りかぶって突進してくる相手に対し、モララーは一歩踏み込んで
( ・∀・)「暴走する旧友を止めるのに、そして自分を戒めるのには充分だな……!」
全身のバネを用い、叩き上げるような動作でロステックを振るった。
閃光が視界を奪う。
続いて金属音が響き、それに被さるかのように激音が轟いた。
それは落雷の音に等しい。
全てを叩き壊し、焼き払う稲妻の一撃が室内を蹂躙する。
視界は白に染められ、聴力は轟音に封じられ、肌は走る雷撃によって神経を撫でられた。
- 101: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:06:42.73 ID:CXrAVO2E0
- ( ・∀・)「……ッ」
どのくらいの時間が経ったのだろう。
一度に様々な刺激を受けた頭が、時間を感じる暇を忘れてしまっているらしい。
数瞬のことか、それとも数分のことか。
解らないが、先ほどまでの騒がしさが嘘のように静まり返ってる周囲がある。
ぼやけるような感覚に浸りつつ、モララーは周囲へ目を這わせた。
そして煙の先で見つける。
(;,,^Д^)「くっ……」
流石に、あの大雷撃は防げなかったようだ。
小奇麗だった野戦服が焼け焦げ、所々が裂け、痛々しい黒煙を上げている。
彼は忌々しく舌打ちをし
(;,,^Д^)「これが限界突破か……憶えたぞ」
( ・∀・)「その身を用いて味を覚えたか。 意外と根性があるようだね」
- 104: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:08:09.55 ID:CXrAVO2E0
- プギャーの身体が揺れている。
もはや戦闘続行は不可能なまでにダメージを受けたらしい。
(#,,^Д^)「チッ……次に会った時が貴様の終わりだ。 覚えておけ」
言い残し、返事も聞かずにプギャーは姿を消した。
どこか急いでいるような節も見受けられたが、一体どういう――
( ・∀・)「っと……」
貧血のような感覚が身を襲った。
全身の肉から力が抜け、未だ形を保つ机に手をついた。
( ・∀・)「ふふ、もう歳だということか……。
たった一回の行使で、ここまで身体にダメージを受けるとは」
渡辺が言った通り、指輪の行使には体力と精神力を用いる。
それら二つの合成物によってコーティングを施し、魔力の漏洩を防ぐためだ。
これにより指輪は、半永久的に能力を使用し続けることが出来る。
無論、使用された体力や精神力は戻ってこない。
魔力の代わりに消費されるものなのだから、当然と言えば当然だ。
そしてそれは、三十代に近いモララーの身体を蝕んでいく。
恵まれていない体躯。
過去にあった事件による心の古傷。
周囲が思っている以上に、モララーの心身は既にボロボロだった。
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:09:58.85 ID:CXrAVO2E0
- 「――社長」
突如として掛けられた声。
誰であろうが、今の状況を知られるのはまずい。
モララーは一瞬で平静を取り戻し、唯一の出入り口へ視線を向けた。
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「大丈夫ですか?」
( ・∀・)「ポリフェノール君……非戦闘員は既に離脱命令を下しているはずだが」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「他の者達は既に脱出しております。
私はモララー社長への報告を持って参りました」
( ・∀・)「あぁ、他の者達のことか。 失念していた」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「皆さん無事ですよ。 これをどうぞ」
手渡されたのは通信機だ。
ギコやシャキン達に通じているものだろう。
それを確認したモララーは、彼らに向けて言葉を放つ。
- 109: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:11:08.24 ID:CXrAVO2E0
- ( ・∀・)「全員、無事か?」
『あぁ』
『こちらも無事だ』
『……問題ない』
ギコ、シャキン、ミルナの順に返事が来る。
最後の声だけ覇気がないようだったが、とりあえず生きてはいるので問題視しなかった。
( ・∀・)「こちらも問題は片付いたので、これからどうするかということについて話をしよう。
気付いているとは思うが、FC社員達は既にここを脱出している」
『俺達もそうするわけか』
( ・∀・)「そういうことだよ、ギコ君」
『何でさ? ここに篭城は出来ないのか?』
エクストの間抜けな声が聞こえた。
横でシャキンが、『話がこじれるから黙っとけ』と言っているのが聞こえる。
( ・∀・)「襲撃してきた連中の真意が解ったからね。
ここに長居するのは正直言って自殺行為だ……この点については後で説明する」
モララーは咳払いし
( ・∀・)「君達には今から地下へ向かってもらおうと思う。
そこに脱出手段を用意させてあるので、すぐさまここから脱出するよ」
- 110: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:12:38.47 ID:CXrAVO2E0
- 『やはり権力には勝てんみたいだな』
はは、と自嘲の空気を纏わせた兄者の声。
ある程度の理解は出来ているらしく、モララーの言葉に文句をつけることなく了承した。
続いて全員の納得したかのような吐息が聞こえ、しかし唯一異なる色を発したエクストが
『ちょっと待てよ。 この一階に転がってるFC主力部隊はどうすんだ?』
( ・∀・)「置いていく」
『お、おいおい……主力置いていってどうするんだよ?』
( ・∀・)「彼らまでを連れて離脱するのには時間が足りないので置いていく」
『だから――』
( ・∀・)「置いていく」
『……チッ、解ったよ。 社長さんの命令なら仕方ねぇ』
( ・∀・)「では、行動を開始してくれ。 早めに頼むよ」
その言葉を合図に各通信が切られた。
- 113: ◆BYUt189CYA :2007/06/16(土) 18:13:57.17 ID:CXrAVO2E0
- 通信機をポリフェノールへ手渡し
( ・∀・)「軍神君はどうしたのかね?」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「既に地下へ降りてますよ。 何やら不機嫌でしたが」
( ・∀・)「命があるのならば、それでいい」
さて、と肩を回し
( ・∀・)「これより我々は世界に対して潜伏する。
色々と厳しい生活を強いられるとは思うが……」
|;;;;;;;|:::: (へ) ,(へ) |シ「大丈夫ですよ。 皆さん、見た目通りにたくましい方々ですし」
( ・∀・)「だと良いがね」
二人して社長室を出る。
扉が音を立てて閉まり、室内に静寂が戻る。
その部屋には、もう二度と誰も戻ってくることはなかった。
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