( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

5: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:25:51.00 ID:yeAPhPGE0
活動グループ別現状一覧

( ^ω^) 川 ゚ -゚) 从 ゚∀从 ('A`) (´・ω・`) 从'ー'从
爪゚ -゚) ('、`*川 ( ゚∀゚)
所属:不滅世界
位置:都市ニューソク各地
状況:奇襲

( ФωФ) (´・_ゝ・`) ( ・ω・)=つ  <ヽ`∀´> *(‘‘)*
川 -川 ξ゚听)ξ (゜3゜) ,(・)(・),
所属:機械世界・アギルト連合軍
位置:都市ニューソク・連合軍アジト
状況:防戦



7: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:27:37.03 ID:yeAPhPGE0
第二十五話 『強く正しい偽善』

薄暗い部屋に音が響く。
大きく反響していることから、その空間は相当に広いものだと判断出来た。

二人が戦っている。
ぶつかり、弾き、そしてまた激突する。
渡辺と共に中枢を攻めるブーンと、その入り口を守る貞子だ。

川 -川「――!」

貞子の握った拳が迫る。

(;^ω^)「くっ……!」

白のグローブで往なすと同時、大気の壁を穿つ鈍い音が耳の真横で鳴り響いた。
避けられたと見るや否や、貞子の身体を回転させての回し蹴りが走る。

(;^ω^)「ほぁたぁ!?」

それをマトリックス姿勢で何とか回避。
ブーンの鼻先を、機械で構成された足が掠めていった。
思わずバックステップで一歩二歩と大きく地を蹴り、貞子から距離をとる。



10: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:29:52.86 ID:yeAPhPGE0
川 -川「…………」

(;^ω^)「何という速さ……これは間違いなく僕よりも格上」

攻撃速度もだが、何より反応が速い。
防御時も攻撃時も完璧な判断を一瞬で下す。
人間というよりも、獣を相手にしているような感覚だ。

荒れる息を整え、次なる攻防へ思考を巡らせる。
幸い貞子は一定範囲に近付かなければ仕掛けてこないようで
ブーンが休み休み戦えるのは、このおかげだった。

どうやら『敵の排除』よりも『侵入阻止』の方が優先度が高いらしい。

(;^ω^)「渡辺さん」

从'ー'从「うん、まだだね。 もっと攻め続けて」

ブーンの背後では、渡辺が携帯ゲーム機のような小さな機械を操作していた。

(;^ω^)「正直言って、あまり持ちそうじゃないですお」

从'ー'从「だったらその前に御願い」

少しだけ苛立ちの篭った声に対し

( ;ω;)「もういっちょ頑張ってきますおぉぉぉ!」

半泣きで、拳を握り込みつつ駆けた。



11: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:31:34.37 ID:yeAPhPGE0
8th−W『クレティウス』の身体強化を受けたブーンは、ステップ刻みの四歩で貞子に接近。

(#^ω^)「でりゃ!」

渾身の右拳を放った。
それは身を僅かに傾ける程度の動きに避けられるが

(#^ω^)(想定の範囲内だお!)

そのまま動きを止めずに連撃を繰り出す。
布の弾ける音が響き、しかし打撃音は響かない。

川 -川「無駄です」

(;^ω^)「っ!?」

風を切る音が耳に入った瞬間、反射的に身を落とした。
直後に頭の直上を手刀が通過していったことから、ブーンの判断は正しかったと言える。

少しでも遅ければ、首の骨――いや、首ごと持っていかれたかもしれない。



13: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:33:10.45 ID:yeAPhPGE0
(;^ω^)(やっべぇお……!)

内心、ブーンは冷や汗ばかりを流していた。

そのトリッキーな動作に追いつけない。
ペニサスとの訓練の成果が上手く出ないのだ。

たった一週間ほどの訓練で貞子レベルの相手に勝てるとは思わない。
しかし、あれほどの打撃の嵐を掻い潜ってきたのは事実。
少しはまともに戦えるのではと多少の希望的観測をしていたのだが、それは叶わないのだと悟らされた。

推測がいくつか挙げられる。

まず一つとして、そもそもブーンの実力+αでは貞子に遠く及ばないということ。
そして二つ目は、貞子が人間ではないということ。

人間の身体は元々から完璧なバランスを誇っているのは御存知のことだろう。
貞子という人形はそれを真似し、更に人間が持つ弱点を克服している。

まず皮膚表面の頑丈さ。
続いて関節無視の機動。
そして無痛の感覚。

それらが全て淀みなく連結した結果が――

(;^ω^)「ぐぅ!?」

強烈な右フックがブーンの左肩を穿った。
肩の骨がそのまま吹き飛んだかのような錯覚を得、そして痛みが『存在する』ことを実感させる。



15: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:35:15.10 ID:yeAPhPGE0
衝撃に身体が浮く。
一瞬だけ不快な浮遊感がブーンを包み込んだ。
咄嗟に身を縮め、叩き付けるように自身を床に着地させる。

しかしそのままストップ、というわけにはいかない。
ザ、と床に薄く張られた砂埃を蹴散らしつつ低い姿勢で滑走する。

(;^ω^)「……いたた」

川 -川「流石に頑丈、そして良い反応です。
     身体強化の名は伊達ではないようですね」

言葉を放つ間にも貞子が迫る。

(#^ω^)「このっ!」

怯える暇はないと心を引き締め、屈んだ姿勢のまま身を捻った。
そこから生まれる動作は、立ち上がりと同時に撃たれる裏拳だ。

川 -川「――!」

貞子は大きくバックステップすることで回避。

(#^ω^)「おぉ!!」

すぐさま後を追う。
対して地面に着地した貞子は、一つのアクションを選択した。



20: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:36:49.15 ID:yeAPhPGE0
(;^ω^)「お!?」

轟音が響く。
貞子が、すぐ横にあった巨大なコンテナを片腕で持ち上げたのだ。

メキ、と、ギ、が混じった不快な音が連鎖し、否が応にもブーンの背筋を震わせる。
慌てて射線上から退避しようと身構えた時には投擲が開始されていた。

(;^ω^)(避けるのは無理だお――!)

直感的に判断したブーンは、逆に前へと出る。
向かい来る巨大コンテナへ渾身の右ストレートを放った。

鈍い衝撃と共にコンテナ表面が歪む。
しかしそれでも勢いは止まらず

(#^ω^)「くぬっ!!」

咄嗟に出した右足で真上へと叩き飛ばす。
オーバーヘッドキックのような格好は、クレティウスを装備したブーンならではの姿勢だ。
グシャグシャになったコンテナは高い天井にぶつかり激音を奏でる。

もちろんそれで終わるわけがない。
地面に着地すると同時、更なるコンテナが飛んでくるのが視界に入る。

(;^ω^)「うわぉ!」

床を蹴り、右方向へと転がるように回避。
真横を鉄の箱が掠め、少し離れた壁に激突した。



25: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:38:29.11 ID:yeAPhPGE0
次々と放られるコンテナ。
流石に元倉庫だけあってか、その数は予想以上に多い。
襲い来る猛攻に対してブーンは防戦を強いられることとなる。

しかしそれも長くは続かない。
回避や防御に体力を削られ、ブーンの動きに段々と鈍味が帯び始めたのだ。
そして遂に

从'ー'从「内藤君!」

(;^ω^)「!?」

出てしまった深い呼吸の隙を突かれ、一際大きなコンテナが猛スピードで投げられた。
身体の節々が『もう限界だ』と悲鳴を上げるが、それを無視して身を飛ばす。
そこで気付いた。

そのコンテナの背後に、貞子がくっついて来ていることに。

(;^ω^)「しまっ――」

川 -川「終わりです」

構えられた右腕に何か光るモノが見える。
おそらくはギコの言っていた『パイルバンカー』とかいう武装だろう。
いくら身体強化を受けているブーンでも、あの直撃を受ければ大怪我は免れない。
最悪の場合、そのまま死に至るかもしれない。



29: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:40:19.05 ID:yeAPhPGE0
未だ、身は宙に浮いている。
このままでは避けることなど出来るわけがなく、しかし

(#^ω^)「クレティウス!!」

ブーンは相棒の名を叫んだ。

貞子の目が少しだけ見開かれたのは次の瞬間である。
突如真上から不可視の圧が降り注ぎ、彼女の突き出した右腕を弾いたのだ。

川 -川「――!?」

不測の事態に、貞子はブーンと距離をとるようにバックステップ。
衝撃を受けた右腕を確認し、そして今の現象について思考を巡らせた。

観測出来た反応は一つ。
ブーンが声を発した瞬間、真上に魔力の塊が出現したのだ。
それは意思を持っているかのような的確さで貞子の右腕を打ち抜いた。

魔法の類か、それとも別の何かか。
様々な戦いを経験してきた貞子でさえ、ブーンの放った何かの正体を見極めることは出来なかった。



33: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:41:44.43 ID:yeAPhPGE0
警戒心を見せた貞子を見て、ブーンは安堵の息を吐く。

(;^ω^)「ありがとうだお、クレティウス」

返事は何処からともなく聞こえた。

『危なかったな、内藤ホライゾン……しかし勝手に動いて悪かった』

( ^ω^)「いえいえ、頼りになるお」

『あまり頼りにしてくれるなよ。 私はあくまで補助なのだから』

( ^ω^)「おkだお」

まるで幽霊と会話しているかのような光景だった。

从'ー'从(あれが内藤君の新しい……?)

おそらくはそうなのだろう。
しかしどんなモノなのかを想像するには、情報が少なすぎた。



39: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:43:16.11 ID:yeAPhPGE0
川 -川「その正体、興味があります」

キリ、と関節から音を出しながら貞子が言った。
身体の各部に隠した武装を用いるつもりらしい。
ようやく本気を出し始めた、といったところか。

( ^ω^)(……あと一踏ん張りかお)

渡辺の言った策が成るまで、だ。
気合を入れなおしたブーンに向けて、クレティウスが言葉を投げかける。

『だが油断はするなよ、内藤ホライゾン。
 死なれると困るので最低限のサポートはするが……あくまで動くのは君だ』

答える代わりに拳を握る。
視線の先には、いつの間にかナイフを構える貞子の姿。
研究所での戦いでも用いていたことから、どうやら得意武器の一つらしい。

(#^ω^)「行くお!!」

初歩から全力で駆け、愚直にも貞子に向かって直進した。
作戦など元から一つ。
それを果たすためにも、ここからはノンストップだ。



45: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:45:07.23 ID:yeAPhPGE0
対する貞子は素早く腕を振る。
放たれたのはナイフ。
小さな音を奏でながら飛ぶ金属は、注視していなければ見えないほどに速い。

(#^ω^)「ッ!」

前へと傾けていた身体を右へ寄せる。
直後、自分の首があった空間を鉄刃が突き抜けていった。

『来るぞ!』

クレティウスの声に、慌ててブーンは視線を上げた。

(;^ω^)「なっ!?」

既に貞子は次の武器を構えていた。
それは長い柄を持ち、先端に巨大な刃の塊が付属した、

(;^ω^)「長斧!? どこからそんなモン出したんだお!?」

叫んでいる間にも回避運動を起こす。
振り下ろされた致死の一撃から、身を捻って逃れようとした。

川 -川「!」

激音が空間を振るわせる。
ブーンを砕くことなく落ちた斧刃は、コンクリートで構成された床を軽々と砕いた。
破片が四方に散らばり、それもまたブーンに牙を剥く。



51: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:47:08.94 ID:yeAPhPGE0
大袈裟に転がるように避けたブーンは、すぐさま立ち上がって走り出す。

(#^ω^)「止まってる暇はないんだお!」

そう、ここからはノンストップなのだ。

貞子に不動の時間は与えない。
故にブーン自身も不動とならない。
拳を握り、歯を噛み締め、ブーンは恐れを打ち消しながら走った。

(#^ω^)「おぉっ!!」

全身を投げ出すような右拳を放つ。

防御されようが回避されようが関係ない。
とにかく攻めて攻めて攻めまくる必要があり、そしてそれだけで充分なのだ。

往なされた反動で体勢が崩れるが、ブーンはそれを利用して更に前へと出る。
あまりに不恰好な戦い方に対し、貞子は冷静に対応していく。

川 -川「そう来ますか。 ならば」

短い声が聞こえ、貞子の身体が動いた。



53: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:49:00.45 ID:yeAPhPGE0
右手に出現したのはハンドガン。
左手に出現したのは片刃の鉄剣。

まず剣が振るわれ

(;^ω^)「くっ! このくらい!」

身を低くして回避したブーンの額に、ハンドガンの先端が向けられる。
容赦なく引き金が引かれた。

破裂音と共に音速超過で発射される弾丸。
しかしそれは、ブーンの頭部の肉を貫くことは出来なかった。

止まっている。
放たれた弾丸は、ブーンと貞子の中間点で静止したのだ。
物理法則的に考えてありえない現象が目の前で展開される。

川 -川「これは……」

(#^ω^)「――アタックチャーンス!」

何が起こったのかを分析しようとした貞子の隙を逃さない。
立ち上がる力を利用しての突進は、低い姿勢から派生した。

川 -川「ッ!?」

拳が胸元を捉える。
穿たれた力は彼女の上半身を蹂躙し、背中から弾けるように広がった。
『衝撃波』と呼ばれる現象である。



59: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:50:41.75 ID:yeAPhPGE0
ド、とも、パ、ともとれる破裂音を響かせ、貞子の身体が宙に浮いた。
しかしそんな状況下においても、彼女は瞬時に現状を把握しようとする。
その思考は反撃手順までも巡らせるに至った。

驚異的な反応処理速度に対し

(#^ω^)「ガンガン行こうぜ! だお!」

反撃の隙など与えるつもりはない。
防御や回避を捨て、ひたすらに攻め続ける。
攻撃は最大の防御とはよく言ったもので、現に貞子の反撃の手がみるみる少なくなっていく。

从'ー'从(そう、それでいい……)

生みの親である渡辺は、誰よりも貞子という存在について詳しかった。

彼女が作り出した貞子の戦闘プログラムは『交戦』に特化している。
敵の動きを見極め、最も効果的な反撃の手を瞬時に叩き出す、といった単純かつ複雑なものだ。
そういった意味で人間を超える性能を備えたのが貞子という戦闘人形である。

ただ一つ問題があるとすれば、その強さが『交戦』に集約されるということだ。

今、貞子が強いられているのは『防戦』である。
ブーンの繰り出す無茶苦茶な攻め手が、貞子の反撃の手を沈黙させているのだ。



65: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:52:19.40 ID:yeAPhPGE0
交戦と防戦。
一見して同じようなものにも見えるが、その内容はまったく異なる。

交戦とは『攻防の激突』である。
1と1のせめぎ合いによって生じ、より速度・力・体格・経験を持つ者が打ち勝つ。

対して防戦とは『攻撃の一方通行』である。
勢いを増した攻め手は2で迫り、守り手は−2で退がるだろう。
この時、二人の差は単純計算で4あることになる。

マイナス側の人間が状況を打開するには当然、交戦時よりも大きな力を求められる。

つまり現状、ブーンは知らず知らずの内に、貞子との間にある実力差を埋めつつあるのだ。
(これを戦術などと呼ぶのだが、ブーンに理解出来ているのかと問われれば難しい)

その純粋な勢いと気迫を利用し、交戦特化の貞子に防戦を強制する。
当然、貞子はいつも以上に思考回路をフル回転させることになるだろう。

そのことから引き出される現象とは、

川 -川「!」

変化が起きた。
ガクン、と一瞬だけバランスを崩したのだ。



76: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:54:21.48 ID:yeAPhPGE0
( ^ω^)「おぉ! これは!」

『だから油断するなと――』

クレティウスの言葉は真実となる。
好機を見て隙を生み出してしまったブーンに、貞子は反撃の手を向けた。
突き出された右腕が展開し、砲口を作り出したのだ。

(;^ω^)「ちょ!?」

ブーンの悲鳴と同時に激音が響く。
発射された魔力弾は、大砲の一撃に等しかった。
いや、物理法則を乱すという時点で比べ物にはならないだろう。
吹き飛んだブーンは、背中から床に落ちることとなる。

(;^ω^)「へぷしっ!?」

そんな光景を傍目に貞子は後退を選ぶ。
ブーンが起き上がらないことを確認し、その動きを止めた。

川 -川「廃熱開始」

言葉と共に貞子の身体が音を立てる。
肩や膝の装甲が展開し、白い蒸気のような湯気を吐き出した。
オーバーヒートを防ぐための一時的な廃熱行為である。

もちろん常に排熱する機構はついている。
故に動きを止めて装甲を展開してまで排熱する機会など滅多にない。
しかしブーンの過剰なまでの攻めが、常時廃熱以上の熱を生み出させたのだ。



79: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:56:04.08 ID:yeAPhPGE0
『……やったか』

何かを確信したかのように、クレティウスが呟いた。

動きは次の瞬間だ。
それまで傍観していた渡辺が、持っている小さな機械を貞子へ向けたのだ。

从'ー'从「御苦労様、内藤君」

電子音。
ソナー音にも似た甲高い音が、その広い倉庫内に高々と響いた。
機械から発せられたそれは貞子の内部へと作用する。

川 -川「――――」

動きが止まった。
それを確認した渡辺は、彼女に近付きつつ機械を操作する。
廃熱は既に終わっているはずなのだが、貞子は動くことをしなかった。

(;^ω^)「お……」

渡辺の作戦通りに事が運び、ブーンは驚きを隠せない。



84: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:57:27.31 ID:yeAPhPGE0
――貞子をオーバーヒート寸前まで攻め続けて。

それが彼女から伝えられた作戦だった。
貞子が篭った熱の処理に動けば、それだけで何とかしてみせる、と。
正直言って半信半疑であったが、まさか本当に貞子の動きを封じてしまうとは。

从'ー'从「さて、と」

『待機』という命令を出し終えた渡辺は、貞子のマスタープログラムの書き換えに移る。
この書き換え作業を行うためにブーンに動いてもらったのだ。

貞子のメインプログラムは二種存在する。

感情や動作を司る『マスタープログラム』。
ロマネスクが書き換えた通り、ここには主人を識別する『主認識』も備えている。

そして隠されていた『サブマスタープログラム』。
これは完全に渡辺のためのプログラムだ。
現状のように、『もし貞子が敵の手に渡ってしまったら』という状況を想定して組み込まれている。

これは今、渡辺が持っている小さな機械から発せられる信号しか受け付けない。
ただし受信する部分が限られていた。

それは普段、貞子の頑強な装甲に覆われている。

つまりはそういうことだ。
貞子の命令権を取り戻すには、分解するか廃熱させなければならなかったのである。



89: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 21:58:55.11 ID:yeAPhPGE0
あとは渡辺の持つ機械で命令を送って動きを止める。
その間に、メインプログラムの書き換えを行うのだ。

从'ー'从「…………」

無言でコンソールを叩く。
その指の動きは、もはや人間のものではない。
まるで機械のように正確、そして高速に動き続ける。

(;^ω^)(おー)

息を呑み、上半身を起こしたブーンはその行く末を見守る。
と、そこでクレティウスが彼の安否を気遣うように

『ところで大丈夫か、内藤ホライゾン』

(;^ω^)「咄嗟に左手でガードしたけど、って、あああああああ!!!」

『む』

二人はそれぞれ驚愕の声を発する。
左手を包んでいた白色グローブに亀裂が入っていた。
しかもバチバチと音を立てつつ、電気のようなモノを纏い始めている始末だ。



96: ◆BYUt189CYA :2007/06/27(水) 22:00:30.64 ID:yeAPhPGE0
(;^ω^)「ど、どういうことだお!」

覚えはあった。
一年半前、巨塔の中でクーと戦った時にも同じような現象は起きている。
擬似的な2nd−W『ロステック』の一撃を受けた時も、クレティウスに傷が入ったのだ。

『魔力攻撃を受けたからか』

(;^ω^)「お?」

『いくら体力と精神力でコーティングを為されているからといっても、所詮は魔力兵器だ。
 魔力を用いた攻撃を受ければ、その分だけの威力を殺すことが出来るが、その分だけを消費する』

(;^ω^)「あうあう、よく解らないけど僕の不注意だお……ごめんだお」

『今まで魔力を用いた交戦を、ほとんど経験していなかったから仕方ない話だ。
 だがこれからは充分に気をつけてくれ。
 この世界では、魔力を補給する手段が限られているからな』

魔力がない世界での魔力補給は難しい。
他のEWや指輪から供給してもらう、くらいしか手段はないだろう。

(;^ω^)「今までは無限に使えると思ってたけど……これからは気をつけないと駄目なんだお」

両手を見つめ、ブーンは呟いた。



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