( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 100: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:08:23.73 ID:7i2QT9Uk0
- ( ^ω^)「相性の問題だお」
仰向けのロマネスクを見下ろし、ブーンは冷静に言う。
( ^ω^)「もし僕がかつてのままの限界突破で挑めば、きっと今の立場は逆転してたお」
(;ФωФ)「だから、あの……形にした……?」
( ^ω^)「武器としての性能を変えられるのが、指輪の強みだと思うお。
そして本気を求めれば、指輪は絶対に応えてくれる」
(;ФωФ)「厄介なモンを……クルトの野郎め……」
再度、意識が闇へ落ちる。
が、ロマネスクの超人的な精神力が踏みとどまることに成功させた。
片膝をつき、苦痛の中で荒れる呼吸を整えようとする。
(;ФωФ)「ハァ……武器に意思なんざ仕込んでたのは……ハァ、そういう意味が、あったのかよ……」
( ^ω^)「それは……きっと、武器じゃなくて……」
言いかけたブーンは、しかし首を振って押し黙った。
そんな彼を無視し、ロマネスクは拳を包んだ黒のグローブを見つめる。
ひたすらに『強さ』を求め、自分の中にある力という力を引き出すため指輪を真似て作られた武器。
しかし『余計なモノ』と思っていた擬似精神こそが、指輪の『核』といえるものだったのだ。
- 103: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:10:05.52 ID:7i2QT9Uk0
- ( ФωФ)「……だったら、それすらも知らずに真似たこれじゃあ、勝てるわけねぇか……」
それは諦めの色が、そして微かな満足が混じった声。
目の前に立っている少年は、自分よりも遥か格下である。
本来ならば怒り狂うはずなのだが、そういった思いは湧き上がってこなかった。
これもやはり、平行存在という『自分』に負けたからと――
( ^ω^)「今回は、だお」
( ФωФ)「……は?」
何を言うかと思えば、ブーンは妙なことを口にした。
( ^ω^)「次はどうなるか解らないお。
もしかしたら、お前がまた勝つかもしれないお」
( ФωФ)「はン、馬鹿かテメェは……」
また戦おうとでも思っているのだろうか。
しかしそんな甘い意思を、ロマネスクは受け入れることなど出来ない。
心の底から、ブーンとは異なる思考を持っているが故に。
- 106: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:11:25.71 ID:7i2QT9Uk0
- 深かった喘息が、段々と整えられていく。
( ФωФ)「……んなモンどうでもいいから、さっさと答えを聞かせろ」
(;^ω^)「どうでもいいって……まぁいいお」
軽い深呼吸。
戦闘で淀んだ空気を完全に吐き出し、新鮮なそれを吸い込む。
意識を意図的に切り替え、ブーンは改めて思考を巡らせた。
――テメェは一体何なんだ。
概念的な問い掛けである。
存在自体を問うているようで、しかし異なるような多面性を持っている。
難しいな、と素直に思った。
しかし答えは持っている。
ロマネスクと自分の関係に、薄々ではあるが気付いた時に閃いたのだ。
その答えは一番近く、そして最も遠いところにあった。
( ^ω^)「――僕は、『内藤ホライゾン』だお」
( ФωФ)「…………」
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:12:43.59 ID:7i2QT9Uk0
- ( ^ω^)「お前が言うような、一般人でも非日常者でも何でもないお」
( ФωФ)「……それは、どんな内藤ホライゾンなんだ?」
( ^ω^)「この先で『内藤ホライゾン』がどんな愚かな選択をしたとしても、どんなに無様な逃げ方をしたとしても。
決して見捨てず、その先から目を逸らさない存在……それが『内藤ホライゾン』という本気の僕だお」
答えを聞いたロマネスクは沈黙を発する。
受けた言葉を吟味するかのように目を瞑り、そしてしばらくして言った。
( ФωФ)「そうかよ」
納得したのか、それとも落胆したのか。
先ほどとは打って変わったひどく落ち着いた声を出す。
( ФωФ)「……なら、」
( ^ω^)「お?」
( ФωФ)「気にすんな」
- 110: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:14:41.84 ID:7i2QT9Uk0
- 軽く手を振り、そして目つきが鋭くなる。
( ФωФ)「――さて、御喋りの時間もお仕舞いか」
その言葉はブーンへ投げかけられたものではない。
背後、この空間への出入り口である鉄扉だ。
その扉が、音を立てて開いた。
( ^ω^)「お? 渡辺さ――」
入ってきたと予想した人物の名を言いかけ、その音は途切れる。
「動くな!」
ブーツがコンクリートの床を叩く音。
それが多数。
雪崩れ込むように入ってきたのは、戦闘服に身を包んだ兵士達だった。
横一列に並び、隙なくこちらに銃器を向けてくる。
(;^ω^)「え? え?」
一体何事か。
自分を嵌めるためのロマネスクの罠か。
( ФωФ)「…………」
彼も黙って兵士達を睨んでいる辺り、そうではないらしい。
- 112: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:16:25.57 ID:7i2QT9Uk0
- (;^ω^)「あの戦闘服は……」
黒を基調とし、機能を重視した重厚な服装。
その胸と肩には特徴的なエンブレムが貼り付けられていた。
地球を剣が串刺しにしているような絵柄は
(;^ω^)「世界運営政府、なのかお?」
テレビで何度か見たことがある。
あれは世界政府軍の戦闘服だ。
現状、ロマネスク達と手を組んでいたと思われていたのだが――
『だが、それにしては様子がおかしいぞ』
クレティウスも不穏な空気に気付いたらしい。
彼らはブーンだけでなく、ロマネスクにも警戒の念を向けているのだ。
(;^ω^)「どういうことだお?
話によれば、お前達は手を組んでたはずだお……」
( ФωФ)「……ああいうことさ」
疑問を放つブーンに、ロマネスクは顎で出入り口の方を指した。
現われたのは
( ̄ー ̄)「初めまして、そして御久しぶりですね」
(;^ω^)「!」
- 116: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:18:04.18 ID:7i2QT9Uk0
- イクヨリが現れた。
世界運営政府の最高権力者。
第三次世界大戦でバラバラになった大国をまとめあげた、カリスマ的存在だ。
『別に驚くことじゃない。
都市ニューソクを根城にしていた連合軍を「都市閉鎖」で手助けしたのは世界政府だ。
ここに奴が現れることは不思議ではない……が』
何故、今というタイミングで。
( ФωФ)「ハメられたんだよ、俺ら――いや、俺は」
背後でロマネスクが吐き捨てるように言った。
(;^ω^)「それってどういう――」
( ̄ー ̄)「ハメた、とは失礼な言い方ですね」
笑みを崩さず、イクヨリは丁寧な言葉で
( ̄ー ̄)「私は元々からこのつもりでしたよ」
言葉と同時、彼の背後から人影が現れた。
周囲の人間に対して身長の低い、黒衣を羽織った、
( <●><●>)「…………」
(;^ω^)「お、お前は!?」
- 119: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:19:23.85 ID:7i2QT9Uk0
- 秩序守護者の一人だ。
ブーン達を都市ニューソクへ送り込んだ張本人。
この世界の秩序を守るために動く『超越者』。
『そうか……そういうことか』
クレティウスの納得した吐息が聞こえる。
『どうにもおかしいと思っていたが、お前達……いつから組んでいた?』
( ̄ー ̄)「最初からですよ」
隠す様子もなく、きっぱりと言い放つ。
( ̄ー ̄)「『この世界を守る』というのが私の目的であり、『この世界の秩序を守る』が彼らの目的でしたから
元々から利害が一致していたんですよ」
(;^ω^)「じゃあ、ロマネスク達に協力をしたのは――」
( ̄ー ̄)「この状況を作り出すためです。
秩序を壊し、この世界へ異獣を誘おうとしていた連合軍を瓦解させるには
この方法が手っ取り早いんですよ」
『FCと連合軍を潰し合わせ、トドメを秩序守護者と世界政府が刺す……漁夫の利というものか』
( ̄ー ̄)「まぁ、このようにFC側が優勢になるとは思いませんでしたけどね」
- 122: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:20:44.98 ID:7i2QT9Uk0
- ( ФωФ)「…………」
悠々と語るイクヨリを、ロマネスクは冷たい目で睨んだ。
( ̄ー ̄)「貴方は途中から解っていたようですね?」
( ФωФ)「あぁ……コイツらが出現して迎撃出した時におかしいと思った。
外周部を警備していたはずのテメェら世界政府軍が、何も反応しなかったんでな」
( ̄ー ̄)「しかしそれが解っていても逃げることが出来なかった……外周部を我々が固めていたのですからね」
(;^ω^)(だからなのかお……)
ロマネスクが発していた違和感。
諦めていたような空気を感じていたが、その通りだった。
自分達がハメられ、そして逃げることが出来ないのも解っていたのだ。
( ̄ー ̄)「これでFCと連合軍というテロリストは潰え――」
( ФωФ)「――だがなぁ」
冷たい声が聞こえた。
弱々しさを見せていた色が、一気に氷点下まで落ち込む。
( ̄ー ̄)「!」
イクヨリが軽く目を見開いた。
その視線を追うように、ブーンは背後へと振り返る。
- 124: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:22:44.13 ID:7i2QT9Uk0
- ( ФωФ)「悪いが、ただ何もせずに終わるのは俺の性分に合わねぇんだ……!」
ロマネスクが、いつの間にかコンソールの前にいた。
言葉を吐く間にも腕が動き回り、機械を素早く操作する。
イクヨリが命令を出す前にメインモニターに異変が起きた。
『Magic World』、と。
( ̄ー ̄)「今ここで接続させる気ですか!」
(#ФωФ)「テメェらの望んだ結果で終わらせるかってんだよ!」
状況を理解した何人かの兵士が、ロマネスクを止めるために身を飛ばす。
しかしそれが届く前に甲高い音が響いた。
同時、メインモニターに映る画面の色が変わる。
それは、接続完了の証だった。
( ̄ー ̄)「……やってくれますね。
しかしこの世界の秩序を破壊するには、最終段階の――」
(#ФωФ)「クハハ……!
この程度で終わったと思えるから、テメェらは平和ボケなんて言われるんだぜ……!」
コンソールを叩く腕が止まらない。
魔法世界との接続をこなしつつ、同時進行でもう一つの命令を実行させようとしていた。
画面の隅の方に、小さな表示が生まれる。
『最終接続開始』、と。
- 125: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:24:14.54 ID:7i2QT9Uk0
- (; ̄ー ̄)「既に純正ルイルの接続を終えている……!?
いけない!」
ここにきて、イクヨリが初めて焦りの声を発した。
既に兵士達がロマネスクを止めるために走っているが、果たして間に合うか。
(;^ω^)「お……」
その兵士に追い抜かれ、ブーンはその結果を視界に収めようとする。
連合軍と世界運営政府。
元よりどちらも味方とは言えない。
そのどちらにも加担することなく、事の行方を見据える。
(#ФωФ)「はン、これで俺の勝t――」
言葉は途切れる。
それに被さり、バケツの中身をぶちまけるかのような水音が響いた。
同時、その場にいた全員が表情を固めてロマネスクの方を見る。
正確にはロマネスクの背後にいる人物を、だ。
- 127: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:25:55.78 ID:7i2QT9Uk0
- 从' - '从「…………」
渡辺が、そこにいた。
いつの間にこの部屋へと侵入していたのだろうか。
その両手に持った白い刃をロマネスクの背中に突き刺している。
体内を通って血に染まった先端が、腹の中央から突き出されていた。
(;ФωФ)「な、んで……テメェ、が……ッ!?」
口と鼻から塊のような血反吐を垂れ流しつつ、途切れ途切れに掠れた声を出す。
その疑問の意味は理解出来た。
所属が異なれど、ロマネスクと渡辺の最終目的は『異獣殲滅』である。
この世界の秩序を完全破壊して異獣を呼び込む、という手段はそもそも渡辺の考えのはずだ。
しかし、彼女は目を瞑って首を振る。
从'ー'从「まだ、早いよ」
(;ФωФ)「ま、だ、だと……」
从'ー'从「異獣に挑むには力を一つに束ねないといけない。
まだ混乱の渦の中にあるこの世界に異獣を呼んでしまえば――」
(;ФωФ)「だ、からテメェは、甘ぇ、んだよ……ッ。
世、界の、意思が一つに、なる……なんぞ、ありえねぇ……!」
从'ー'从「うん、そうだね。
私達の世界でさえも、今のように一つになり切れなかったから蹂躙されたんだよね。
……でもだからこそ、この世界でのチャンスを無駄になんか出来ない」
- 128: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:27:33.31 ID:7i2QT9Uk0
- 言いたいことを言い終わったのか、渡辺は返事を待たなかった。
突き刺した刃を上下に動かし始める。
身体の中を掻き回される激痛に声を出せないのか、ロマネスクは無言で表情を歪ませた。
从'ー'从「貴方は充分に頑張ったけど、立場と状況が悪かった。
でも貴方の想いと土台は私が受け継ぐから、ね?」
慈悲とも残酷ともとれる言葉を残し、渡辺は白い刃を躊躇無く引き抜いた。
粒となった鮮血が舞う。
支えを失ったロマネスクは床へと身を倒した。
そのまま、もう動くことはなかった。
(;^ω^)「……ッ」
確かにロマネスクは非道だった。
彼が自分やフサギコにした仕打ちは、決して忘れることなど出来ない。
しかし
(#^ω^)「……何か胸の中がムカムカするお」
『どうにも、な』
- 131: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:29:11.89 ID:7i2QT9Uk0
- 探るような視線を向けるブーンを無視し、渡辺はイクヨリ達へと目を向ける。
それと時を同じくして、彼女の背後に貞子が姿を現した。
足を止めていた兵士らが一斉に銃器を構える。
しかし、渡辺はアッサリと
从'ー'从「降参だよ。 出来れば命だけでも保証して欲しいなぁ」
両腕を軽く掲げつつ、意外な言葉を口にした。
( ̄ー ̄)「……何を考えているのかは知りませんが、随分と勝手な言い方ですね」
从'ー'从「今の戦力で切り抜けられるとは思わないしね。
内藤君もそうでしょ?」
(;^ω^)「え、あ、た、多分……」
从'ー'从「そうだよね?」
(;^ω^)「……は、はいですお」
無意識に返事を飛ばし、ブーンは慌てて目をこすった。
渡辺の顔には、いつもの表情が張り付いている。
眉尻を微かに下げ、口元には小さな笑みが浮かんでいる。
だからこそ解らない。
今この身を一瞬で包み込んだ、圧倒的な威圧感の正体が。
- 132: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:30:22.88 ID:7i2QT9Uk0
- と、そこで思う。
(;^ω^)(ロマネスク……)
世界政府の兵に両脇を固められつつ、後ろ髪を引かれるような思いで背後を見た。
そして目を見開く。
見えたのは血溜まり。
本来あるべき死体が無くなっている。
まだ誰も気付いていないのか、ざわめきは今のところ聞こえない。
(;^ω^)(何で……!?)
兵士に背中を小突かれ、その部屋から退出させられる。
結局、何処かの施設へ送られるまで、ロマネスクの死体がどうなったのかは解らず仕舞いだった。
- 133: ◆BYUt189CYA :2007/07/20(金) 19:31:43.76 ID:7i2QT9Uk0
- 暗闇がある。
壁や天井はおろか、床さえも見えない闇の空間がある。
しかしそこに立つ二つの存在は、まるで光を当てられているかのように浮かび上がっていた。
メ(リ゚ ー゚ノリ「良い素材を得れたな、姉貴」
ル(i|゚ ー゚ノリ「これが本当の漁夫の利だよ、兄上」
男女がいる。
青髪の女と、赤髪の男。
二人は足元へ視線を落としつつ、満足そうな笑みを浮かべている。
そこにあるのは二つの物体。
四肢があり、頭があり――それは『人間』と呼ばれるモノだった。
その一つは、ガッシリとした肉体を持っていた。
黒コートを羽織ってはいるが、その中心部からは赤黒い液体が溢れ出ている。
その両目には縦傷が刻まれており、しかし呼吸の微動さえしない。
もう一つは、華奢な肉体を持っていた。
薄い布のような服を纏い、その細長く透き通った四肢を投げ出している。
その綺麗な手足に対して、頭部には当然のように綺麗な金色の髪が存在していた。
二つの人間を見下ろし、二人は笑った。
「「ふふ――ははははは――」」
微笑ではなく、声を発しての笑い。
無音といえる暗闇の中に、その歓喜の声は高らかに響き続けた。
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