( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 6: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:34:01.35 ID:7MWIIgEv0
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活動グループ別現状一覧
全員不明
- 9: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:35:37.14 ID:7MWIIgEv0
- 魔法世界編
第二十七話 『EMA』
「くそっ……」
これで何度目になろうか。
その男は忌々しげな空気を溜息として吐き出した。
同時に、白い息が口から漏れる。
もう少しだった。
やっとのことで追い詰め、そしてあと一歩踏み込むだけで良かった。
そうするだけで自分の抱える問題が全て無くなるはずだった。
しかし、それは為されなかった。
男は歯噛みし、またその時を脳裏に思い浮かべる。
人生の中で最も記憶の中に焼き付いた時間を。
突如として起きた周囲の異常に、何事かと驚いた一瞬。
その瞬間に周囲の景色が変わった。
太陽が発する燃えるような暑さが消え失せ、真逆の極寒地に放り出されたのだ。
無論、倒せるはずだった敵も同じように消えてしまうこととなった。
- 14: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:37:28.46 ID:7MWIIgEv0
- 「……くそっ」
その時に受けた圧倒的な後悔と自己嫌悪に対し、彼はまた忌々しげに溜息を吐く。
あれからどの程度の時間が経ったのか。
三日以上、一週間以内といったところだろうか。
その間に何も口にしていない身体は。既に限界を迎えている。
彼は機械に囲まれていた。
両腕は備え付けられたレバーを握り、目の前には光を発するコンソールがある。
その上には、外の景色を映し出しているウインドウだ。
映像はたった二色で構成されていた。
黒い空に、小さな白い粒が乱れ飛んでいる。
いわゆる『吹雪』という光景を映し出していた。
彼は機械に囲まれている。
そしてその機械の外観は『人』の姿をしていた。
赤色の鎧を着込んだかのようにも見えるそれは、人の形をした兵器である。
背部から青白い光を撒き散らし、全長十メートルを超える鉄の巨人は低空を飛んでいた。
- 17: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:40:09.06 ID:7MWIIgEv0
- 「……限界か」
そんな人型兵器のコックピット内。
不調を知らせる電子音を耳に入れつつ、男は静かに呟いた。
動力である魔法石の中にある魔力が枯渇したのだ。
ウインドウに映る景色の速度が、徐々に削られていく。
「反応はない……な」
横にあるサブウインドウには、レーダーのような画面が映し出されていた。
しかし相変わらずというか、その画面に反応はない。
ただ延々と記された線が明滅しているのみだ。
人が住んでいるような場所があれば、必ず魔力が存在するはず。
魔力を感知するレーダーに何も反応がないということは、今ここで外に出ても助からないということである。
そう思い飛び続けたのだが、結局何も見つけることなく時間が来てしまった。
諦めの息が出そうになり、しかし無理矢理に飲み込む。
彼の戦士としての誇りがさせなかった。
- 18: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:41:46.05 ID:7MWIIgEv0
- その厳しい視線は僅かにウインドウを外れ、コンソールの端へ向けられる。
文字があった。
金属で構成された枠に文字が刻まれていた。
それは『こちらの世界』の言葉で、こういう意味を表している。
――EMA−02『ウルグルフ』、と。
それを視界に収めた瞬間、タイミングを合わせたかのように速度がゼロとなる。
機体全体が軽く揺れ、動いていた景色は完全にストップ。
墜落気味に着陸したのだ。
既に低空飛行を続けていたため衝撃は少ない。
どちらにせよ待つのは死なのだが、彼の身体は無意識に生を望んでいるらしかった。
とはいえ、そもそも戦闘用に作られた機体である。
この程度の衝撃に壊れたり、内部の人間に害を与えるようでは兵器として運用されないだろう。
長い間、己の剣となり鎧となってくれていた赤い鉄の巨人に対し、彼は少しばかりの笑みを浮かべた。
レバーから離した手でコンソールを弾く。
空気の抜ける音と共に、周囲の機械が割れるように開いた。
刺すような冷気がコックピット内に侵入してくる。
しかしそれを無視し、男は機体の外へ這うようにして脱出。
そのまま積もった雪の上に転がり落ちた。
- 19: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:44:05.57 ID:7MWIIgEv0
- わざとでもなく、滑ったのでもない。
もはや自分の身体さえも支えられないほどに、彼は疲労していたのだ。
(メ _凵j「……寒いな」
極寒の吹雪の中、当然のことを呟く。
周囲に見えるのは雪に塗れた木々。
空は黒一色で、細かい雪が暴風を表すかのように荒れ狂っている。
もはや、ここからの生存は絶望的といえた。
助からぬことを悟った彼は、冷たくなっていく右腕を軽く掲げる。
震える唇を動かし、誰に語りかけるでもなく小さな言葉を吐いた。
(メ _凵j「隊長、申し訳ありません……私はここまでのようです……」
呟きの後、男の意識は闇へと落ちていった。
そんな一連の展開を見つめる影がある。
木々の陰で、まるで覗き見にするような姿勢だ。
分厚い防寒具を着込んだ彼は、ゆっくりとした動作で通信機を取り出しつつ
( ´,_ゝ`)「……露骨な生存フラグに遭遇した件」
と、苦笑(?)混じりに呟いた。
- 21: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:47:29.81 ID:7MWIIgEv0
- 午前六時。
都市ニューソクの小さな住宅街。
そこに、彼の暮らすアパートがある。
その建物の前で、朝日を浴びながら背伸びをする男が一人。
( ´∀`)「今日もいい天気だモナー」
歳は二十代後半といったところだろうか。
彼の名はモナーといい、高校時代のブーンやドクオの担任をしていた男だ。
担当教科は国語で、部活は空手部を顧問としている。
現在、彼は無期限休暇の真っ最中。
都市閉鎖命令は解除されたものの、まだ都市全ての機能は復活していないが故のラッキー休暇だ。
仕事が無いわけではないが、日常に比べても時間が随分と余っている。
普段からの日課である散歩を早朝に持ってきているようで、朝独特の清々しい空気を肺に取り入れていた。
- 25: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:49:46.26 ID:7MWIIgEv0
- ( ´∀`)「いやぁ、都市閉鎖なんて物騒なのが発令された時はどうなるかと思ってたけど
何とか治まったようで良かったモナ」
FCという軍事会社がテロリスト養成所だと判明し
世界運営政府によって潰されてから、既に一ヶ月が経過していた。
同じ高校の先輩であるモララーが、その会社の社長であり
更には指名手配されているというニュースを聞いた時には、流石のモナーも驚いた。
しかし今では、あの先輩のことなので飄々とやっていることだろう、と納得している。
高校時代の彼は聡明で、いわゆる天才だった。
何処か抜けているモナーの良き先輩でもあった。
多少思考がぶっ飛んでいる感もあったが、常識面では完璧だったと記憶している。
(;´∀`)「そのモララー先輩が犯罪を犯すなんて……。
そういうことはしない人だと思ってたんだけどモナ……」
そういえば、彼の性格が大きく変化した時期があった。
確か、モララーと同じクラスの女の子が事件に巻き込まれて死亡した、というニュースがあった翌日からだったはず。
物静かで表情をあまり見せなかった彼が
よく笑うようになり、そして毛嫌いしていたはずの煙草を始めた。
親友と言えたはずのプギャーと疎遠になったのも、同じ時期だったか。
- 26: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:51:37.02 ID:7MWIIgEv0
- 何かあったのだろうな、と思う。
今でもその内容は知らない。
しかし確実に何かがあったはずで、それを境目にモララーは変わった。
少し遠い過去を思い返しながら歩く。
朝の湿気た空気が心地よかった。
いつもの散歩コースである小さな公園へと入る。
( ´∀`)「モナ?」
と、そこで気付いた。
公園に入った瞬間、視界内に違和感を覚える。
――いつもと違う。
漠然とそう思うも、何が違うのかは解らない。
ただ『異なる』という事実だけを知覚出来る。
( ´∀`)「?」
よく解らないが、とりあえず公園内へ。
横断するように中央を歩き、もう一つの出入り口へと向かう。
その途中にあるベンチで一息するのが楽しみの一つであった。
- 28: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:52:55.76 ID:7MWIIgEv0
- 古びた木製ベンチへ腰掛ける。
ここから見える景色はモナーのお気に入りだ。
( ´∀`)「ふぃー」
一息吐き、周囲を見渡す。
特におかしいと思えるモノは見当たらない。
( ´∀`)「やっぱり違和感なんて錯覚だったんだモナ」
うんうん、と自分を納得させるように頷く。
と、その時。
まず聞こえたのは葉が擦れる音。
それは一度だけ微かに聞こえた後、まるで命を持ったかのように蠢き始めた。
何処からなのかと慌てて首を動かした瞬間
(;´∀`)「モギャ!?」
頭頂部に硬い何かが激突した。
それは重力に従って、モナーの背後へと落ちる。
(;´∀`)「な、な、何だモナ!? テロかモナ!?」
- 31: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:54:15.45 ID:7MWIIgEv0
- 落ちてきたそれは、爆弾などの類ではなかった。
(;´∀`)「……刀?」
落ちていたのは一振りの刀。
紺色の鞘に収まっており、普通の日本刀に比べて長めの印象を受ける。
しかし、刀に付くべきではない要素があった。
引き金だ。
唾の真下。
構えた時、丁度右手の人差し指が引っ掛かる部分にトリガーが存在した。
普通は在り得ない要素である。
よくよく全体を見てみると、刀にしては近未来チックな様相であることに気付いた。
(;´∀`)「というか、そもそも何処から落ちてk――」
見上げる。
そこには
w´‐ _‐ノv「こっち見んな」
少女が上下逆さにぶら下がっていた。
- 35: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:56:12.35 ID:7MWIIgEv0
- その華奢な身体に、枝が上手い具合に絡み付いている。
降りたくても降りられない様子だ。
(;´∀`)「……あの、そこで何を?」
w´‐ _‐ノv「君には知る資格がない」
偉そうに言ってはいるが、ぶら下がっている。
( ´∀`)「……助けましょうか?」
w´‐ _‐ノv「何だと」
む、と不機嫌な声を出すが、ぶら下がっている。
それから問答を続けること数分。
説得の意味がないと判断したモナーは、半ば強制的に少女を救出することとなった。
- 39: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:57:45.61 ID:7MWIIgEv0
- 古びたアパート。
モナーが日々の寝食をこなす一室に、今日は客人が来ている。
久々の、そして初対面な客にとりあえず茶を出す。
( ´∀`)「えーっと……どうぞモナ」
lw´‐ _‐ノv「くるしゅうない」
と、初っ端から奇妙な発言をする少女。
小さなテーブルを挟み、モナーと睨み合うような形で茶に手を掛けた。
左手で持ち、右手を添えて一口飲み
lw´‐ _‐ノv「少し硬いな」
(;´∀`)「そ、そうですかモナ」
変わった子だな、と思う。
教師になって十年ほどになるが、このような少女と接するのは初めてだった。
歳は若過ぎることもなく、大人とまではいかない中途半端な幼さを持っている。
中学生と言っても納得出来るだろうし、高校卒業していると言っても頷けるだろう。
黙っていれば可愛いのに、しかし言うこと為すことに『?』が付いてしまう不思議な子だった。
- 43: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 19:59:59.56 ID:7MWIIgEv0
- lw´‐ _‐ノv「……で、私を拉致して何をするつもり?」
(;´∀`)「君が僕の家に行きたいって言ったモナよ」
lw´‐ _‐ノv「ははぁん、成程」
何かに納得しつつ、彼女はキョロキョロと周囲を見渡す。
モナーは、とりあえず自己紹介から始めることにした。
( ´∀`)「僕の名前はモナーだモナ。 君は?」
lw´‐ _‐ノv「私はシュー。
解り易く言うと、アベリメス=ミッゾシューベルノ=ダルシェイナのシューだ」
意味が解らない。
喉元まで出掛かったその言葉を無理矢理に飲み込む。
人間関係にしろ何にしろ、何事も否定から入っては続かないのだ。
( ´∀`)「へぇ……じゃあ僕は、エゾールト=エルモナーリのモナーだモナ、あはは」
lw´‐ _‐ノv「何それ気持ち悪い」
頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が走った、ような気がした。
強烈なカウンター。
ちょっぴり涙が出てきたのは内緒。
モナー先生との約束だ。
- 47: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:01:53.69 ID:7MWIIgEv0
- (;´∀`)「え、えっと……君の家は何処モナ?
僕が送って行こうモナ?」
lw´‐ _‐ノv「…………」
返事はない。
両手で湯飲みを握ったまま、シューがこちらを睨む。
探るような目つきに対し、モナーは負けじと見つめ返す。
lw´‐ _‐ノv「……私は」
根負けしたのか、シューの固い口が開きかけたとき
くぅ。
文字にしてこのような間抜けな音が響いた。
それは人間が空腹を訴える時に鳴らすはずで、モナーは別に空腹感は感じていない。
ということは
( ´∀`)「……お腹、空いたモナ?」
lw´‐ _‐ノv「…………」
- 50: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:03:13.98 ID:7MWIIgEv0
- lw´‐ _‐ノv「…………チッ」
無言で、こくん、と。
ここで頬を赤く染めれば可愛いものを、彼女はまったくの無表情で頷いた。
しかし逆にそれが愛らしく見えてしまい、モナーはついつい頬を緩める。
そこで自分の感情に気付いた。
(;´∀`)(――はっ! 年端もいかない少女に何て劣情を!)
lw´‐ _‐ノv「?」
(;´∀`)「ロリコン退散ロリコン退散……!!」
ぶつぶつと呟くモナーを見て、シューが訝しげに首を捻った。
- 53: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:06:36.34 ID:7MWIIgEv0
- [゚д゚]「すっげぇなぁ……」
赤色の人型兵器を格納庫へ搬入した直後、ここの責任者を命じられていたデフラグは感心の色を籠めた息を吐いた。
巨人を見上げた目は爛々と輝き、しかし口は半開きという何とも情けない表情である。
(´<_` )「これがアンタの言ってたエマってやつか」
その隣で、同じように見上げていた弟者が問う。
[゚д゚]「あぁ、そうだろうよ。
しかしたまんねぇなぁ……やっぱ人型機動兵器には男のロマンが溢れてるぜ」
(´<_` )「一応、FCにもあるんだがな」
[゚д゚]「あれは駄目だろう……バランスとか動力とか関節とか(中略)とか、問題がありすぎる。
一から作り直した方が早いくらいだ。
しかもカーナビとか付けてやがるし……ホント、お前ンとこの社長は馬鹿だよな」
(´<_`;)「モララーさんが聞いたら泣く……わけないか。 むしろ喜びそうだ」
本人がいないことを良いことに、二人は口々に言う。
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