( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 55: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:08:04.69 ID:7MWIIgEv0
- 今、FC残党は目立った活動を停止していた。
各地に情報収集を役目とする兵を送っている他は、全員がこの建物の中にいる。
一ヶ月。
それほどの月日が経てば、様々な情報が入ってくるものだ。
まずFCの存在。
世界運営政府によって『テロリスト』と断定されてしまっている。
しかも御丁寧に世界指名手配までされるという始末だ。
都市ニューソクを閉鎖したのも、FC本社に攻撃を仕掛けたのも、テロリスト殲滅のためだというのが向こうの言い分である。
発言力に天地の差がある限りは、こちらが何を言っても無駄だろう。
つまり世界の認識は、『FC=悪の組織』となってしまっているのであった。
ブーン達は未だに行方が知れない。
ただ状況から考えるに、世界政府によって身柄を拘束されている可能性が高かった。
つまり現状、彼らを救い出すために動いていると言っても過言ではない。
しかし表立っては動けない。
今やFCは悪の組織と成り下がっているために、他からの援助がほとんど期待出来ないのだ。
それとは別に、FC主力部隊が世界運営政府に捕らわれているという要素もある。
戦闘を主とした起こせないというわけだ。
- 56: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:09:48.76 ID:7MWIIgEv0
- そんな息苦しい状況下において、FC残党はのん気にこう思っている。
――ま、根気良く伏しておくかな、と。
モララーが忙しなく動いているので、近々何かがあるのだろうと予見しているのだ。
今出来ること――整備や鍛錬――を黙々とこなすのみである。
(´<_` )「……で、これをどうするんだ?」
[゚д゚]「すぐさまイジりてぇんだが搭乗者が生きてたんだろ?
なら、そいつの意見を尊重しねぇとならん」
(´<_` )「アンタそういうトコは無駄に紳士なんだよなぁ。
ってことは……まだ意識不明らしいから起きるまで保留ってわけか」
ところで、と弟者は話を切り替える。
(´<_` )「これがEMAだっていうんなら――」
[゚д゚]「あぁ、魔法世界とも繋がっちまった証拠だな」
- 58: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:11:35.29 ID:7MWIIgEv0
- (´<_` )「……あの都市ニューソクでの一件だろうか」
一ヶ月前にもなる戦いを思い出す。
FCに残っていたメンバーは、こうして無事に逃げることが出来たのだが
都市ニューソクへ送られてしまったブーン達は行方不明のままだ。
確かなのは、その件を境にロマネスク達の活動がストップしたという点。
そして世界政府が発した『FC=テロリスト』という情報が、世界に浸透してしまったという点。
(´<_` )(やっぱりモララーさんは先見の明があるなぁ)
武力は権力に勝てない。
つまり武力を主とするFCは、権力を主とする世界政府に勝てない。
それを見越した上で、モララーは手遅れになる前に『逃亡』という判断を下したのだろう。
- 60: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:13:32.88 ID:7MWIIgEv0
- 今、弟者達はJAPANにはいない。
それよりも遥か北。
ロシア北部の、ある建物に潜伏しているのである。
外見は古城に近く、そして城と呼べるほどに巨大だ。
しかし内部は近代技術を盛り込んだ要塞である。
地下には巨大な格納庫も存在し、デフラグと弟者がいるのもそこだ。
[゚д゚]「しかしまぁ、一体どんな経緯でここに潜伏出来るようになったんだろうなぁ」
もう何度も思った疑問を、デフラグが漏らした。
(´<_` )「何度も言うけど、『さぁ?』」
この建物は誰のモノなのか、などといった情報は今でも解らない。
しかも全てを一手に受け持っていたはずのモララーは、しばらくその姿を見せていない。
疑問に思うのは当然である。
しかし全員分の飯はしっかり出るし、今のところ誰かが消えたなどという報告もない。
それだけではなく、建物内の設備は全て勝手に使用しても良いことになっている。
世界中の情報を集められるだけの機器は整っているし、何か注文すれば大抵のモノはすぐに手元に届いてしまう。
このようなまったく文句の出ようもない生活を一ヶ月も続けていたため
流石に当初の疑問など、すっかり脳の隅っこに追いやられてしまっていた。
- 61: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:15:23.35 ID:7MWIIgEv0
- (´<_` )「とはいっても、未だに警戒心を持ち続ける猛者が何人かいるんだけど」
(`・ω・´)「それは俺のことか」
(´<_` )「わぉ」
いつの間にか、背後にシャキンがいた。
着ている作業服が汚れているところを見るに、戦闘機の整備でもしていたのだろう。
(`・ω・´)「これが発見された人型兵器……EMA、か」
機械で構成された同じような兵器に乗る彼は、やはりEMAに興味を持っているようだ。
(`・ω・´)「動力は?」
[゚д゚]「お前さん達のGIFと同じくルイルだろうよ。
今は内在魔力が枯渇しているっぽいけどな。
……ただ、それだけで戦闘挙動を可能とするとは思えん」
(´<_` )「どういうこった?」
- 64: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:17:14.11 ID:7MWIIgEv0
- [゚д゚]「戦闘機であるGIFの仕組みは意外と簡単だ。
何せルイルの魔力は、『機体を浮かせる』と『機体を飛ばす』という動作にしか使われん」
浮力操作とブースターのことを言っているのだろう。
最悪、その二つさえ動けばGIFを飛ばすことは出来る。
[゚д゚]「だがEMAってのは見た通り人型だ。
GIFに比べて、動かすべき部位が圧倒的に多いってのは解るだろ?」
(´<_` )「首、肩、肘、手首、指、腹部、股関節、膝、足首……あー、まだまだありそうだな」
(`・ω・´)「それをルイルだけでまかなうのは不可能、だということか」
[゚д゚]「よほどデカいルイルを積んでるのか……俺としては、アレが怪しいとは思うが」
デフラグが指差す先には、EMAの関節部があった。
[゚д゚]「例えば肘部の裏側を見てみろ。
あそこに妙なモンが付いてんだろ」
長方形のボックスが接続されていた。
見た限り弾装のようにも見えるそれは、肘部だけでなく各関節にも装填されている。
それを見たシャキンは、神妙な顔つきで答えを出した。
(`・ω・´)「……まさか、マジックカートリッジか?」
[゚д゚]「しかも超巨大なタイプな」
- 66: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:19:09.56 ID:7MWIIgEv0
- マジックカートリッジ――空中に霧散している極小の粒子である『魔粒子』を集めて封じた、拳銃でいう薬莢だ。
弟者の知るマジックカートリッジは、乾電池ほどの大きさの筒であったのだが
[゚д゚]「これだけデカいタイプは初めて見るな。
一機動かすだけでどれほどの魔力が必要なのやら……想像がつかねぇ」
デフラグの言から判断して、それは規格外の大きさであるらしい。
(`・ω・´)「だが、この世界には魔力が存在しないぞ。
これを修理整備して動かすとなると……どうやって魔力を調達するつもりだ?」
[゚д゚]「そこが一番の問題だ」
以前にも、魔力が足りないという問題に直面したことがあった。
その時には兄者の持つ4th−W内の魔力を用いて解決したのだが、代わりとして4th−Wは機能を失った。
ただ、指輪もかなりの戦力であることは事実なので、そう簡単に犠牲とすることは出来ない。
[゚д゚]「そして、当面の課題だろうよ」
言葉と共にデフラグはその場を去っていき、シャキンも同じように自らの作業へと移っていく。
(´<_` )「……EMA、か」
機械世界の戦闘機は形として見慣れていた。
英雄世界の英雄は理解の範疇を超えていた。
しかし今、この世界では決して見ることの出来ない物体が目の前にある。
(´<_`*)「こういうの見ると、異世界の存在を改めて実感するよなぁ」
妙に嬉しそうな口調で、弟者はしみじみとEMAを眺め続けていた。
- 67: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:21:12.10 ID:7MWIIgEv0
- 潜伏する古城は巨大だった。
隠れるにしては目立ち過ぎるほどに、だ。
しかし潜伏開始から一ヶ月経とうとしているのに、血眼になって探しているであろう世界政府には見つかっていない。
目立つ存在でありながら、この城は目立たないのだ。
その理由として、ここが極寒の地であることが挙げられる。
年中常に雪に閉ざされたこの地にとって、雪の降らない日の方が珍しい。
ここは、自然のバリケードを持っているが故に安全だといえた。
それだけでは説明の出来ない謎もあるのだが。
(,,゚Д゚)「……ふぅ」
肺に溜まった熱い息を吐き、ギコは休憩の意思を見せる。
ここは訓練室の一角だ。
ただ武器を振り回すのに適している、障害物も何もない空間である。
様々な疑問や雑念が押し寄せる今、ギコはそれらを振り払うかのように一日の大半をここで過ごしていた。
- 68: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:23:12.37 ID:7MWIIgEv0
- (*゚ー゚)「お疲れ様、ギコ君」
打ち込みの気配が消えたのを敏感に感じ取り、休憩スペースにいたしぃがタオルを持ってくる。
その様子を嬉しさ半分、申し訳なさ半分で見るギコ。
(,,゚Д゚)「今更だが付き合う必要はないぞ、しぃ。
何か動きがあるまで、俺はこの毎日の鬱憤晴らしを止めるつもりはない」
訓練ではなく、敢えて鬱憤晴らしと言ってみるが
(*゚ー゚)「私が好きでやってるから気にしないでいいよ」
しかし、彼女は純粋なまでの笑顔でそう答えてきた。
勝てないなと心の奥で感じつつ、ギコは溜息を吐く。
(,,゚Д゚)「……見ていてもつまらんだろうに」
確かに面白いものではない。
延々と己の武器を振り回すだけだ。
軍神や英雄といった武の境地にいる彼らの演舞ならば、見応え満点のはずだろうが。
- 71: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:24:53.27 ID:7MWIIgEv0
- と、その時だ。
訓練室の更に一角の扉が開いた。
(*゚ー゚)「あ……フサギコさん?」
車椅子に腰掛けた姿で出てきたのは、フサギコだった。
その頬には幾筋かの汗が流れている。
扉のプレートには『射撃訓練室』と表記されていた。
ミ,,"Д゚彡「あぁ、こんにちは」
(,,゚Д゚)「また病室から抜け出してやっているのか」
ミ,,"Д゚彡「……黙って寝ているなんて、私には出来ませんから」
苦笑し、自力で車椅子を漕いで近付いてくる。
ミ,,"Д゚彡「とは言っても、まだ武器を振り回すことさえも出来ませんけどね。
だから比較的簡単に出来る射撃の訓練だけでも、と思いまして。
これでも昔から得意だったんですよ、銃器の扱い」
(,,゚Д゚)「比較的とはいえ、傷に響くだろう」
ミ,,"Д゚彡「えぇ、撃つ度に嫌な痺れが走ります」
- 73: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:26:31.53 ID:7MWIIgEv0
- 言葉とは裏腹に軽い調子で笑うフサギコを、二人は半目で睨むように見つめる。
その視線に気付き、彼は首を振った。
ミ,,"Д゚彡「心配には及びませんよ。
身体を壊さない程度に休憩を入れてますから」
(,,゚Д゚)「無茶はするなと言いたいが、既にその行動自体が無茶だな。
まぁ、医師には黙っておいてやる」
ミ,,"Д゚彡「ありがとうございます。
ところでギコさんがここにいるってことは、いつもの……?」
(,,゚Д゚)「あぁ、訓練という名の鬱憤晴らしだ」
ミ,,"Д゚彡「成程。 何だかんだ言って私と似たような理由なんですよね」
居ても立ってもいられないのだ。
そのベクトルは異なるものの、ギコとフサギコは性質として同種の苛立ちを胸に抱えていた。
- 74: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:28:18.45 ID:7MWIIgEv0
- ミ,,"Д゚彡「しかし、延々と一人で武器を振り回すのは苦痛でしょう?」
(,,゚Д゚)「お前に言われたくはないが、その通りだ。
やらないよりはマシだがな」
ミ,,"Д゚彡「私が相手をしてあげたいのですが、流石に無理ですし……。
他に誰か相手をしてくれる人はいないんですか?」
(,,゚Д゚)「いると思うか?」
ミ,,;"Д゚彡「……いないですねぇ」
戦闘を主としていないデフラグは論外。
流石兄弟は情報収集に掛かりっきり。
パイロットであるシャキンやエクストは、戦闘の種類が異なるので除外。
軍神は並の訓練では満足しないため、ギコなど相手にもしてくれない。
モララーは一週間ほど前から姿を見せない。
そして
(,,゚Д゚)「ミルナの奴も、今しばらくは戦えそうにないだろうしな……」
と、少し心配そうに呟いた。
- 75: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:29:59.94 ID:7MWIIgEv0
- 当の本人であるミルナは、白い部屋の中にいた。
ベッドと小さなテーブル以外は何もないという簡素な病室だ。
( ゚д゚ )「…………」
ノハ#- -)「――――」
FCの外で出会ったヒートは未だ意識を取り戻していない。
彼女を診たFC医療兵によれば、身体に過負荷が掛かりっ放しだったことによる神経疲労らしい。
思い当たる節はある。
彼女の特殊能力ともいえる『理性的バーサーカー』。
カウントダウンを聞くことにより発動し、一定時間だけ反応速度を飛躍的に上げる能力だ。
過去のトラウマを克服した証拠でもある。
おそらく、その能力を常時使用していたことで、肉や神経がボロボロになったのだろう。
それは彼女の戦士生命が削られていったという事実にも繋がる。
( ゚д゚ )「…………」
行方不明になってから一年もの間、ヒートに何があったのかを知ることは出来ない。
ただあるのは異獣によって干渉された彼女が、今このようになっているという事実のみだ。
そしてその証拠は、彼女が装着している仮面の下にある顔に表れている。
- 77: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:32:05.54 ID:7MWIIgEv0
- 今ベッドの上で眠っている彼女の顔には、それでも仮面が付けられていた。
とてもではないが直視する度胸などない。
以前の彼女の表情を知るが故に、だ。
( ゚д゚ )「何があったんだ……」
呟くが答えはない。
それを見つけるため、ミルナは過去を思い出す。
ヒートは、あの不気味な男女に怒りを向けていた。
そして聞いた言葉からして、その二人は
( ゚д゚ )「異獣、か」
その事実に辿り着くのに多少の時間を掛けてしまっていた。
人の形を持ち、しかも人と同じように行動する。
白狼の姿しか知らなかったミルナは、その新たな事実が信じられなかったのだ。
そして同時に戦慄する。
極論を言えば、この世界の誰が異獣なのか解らない。
いや、全ての生物が疑念の範疇に入ってしまう。
つまり、自分以外の全てに疑いが掛かるのだ。
今目の前で眠っているヒートも、もしかしたら――
(;゚д゚ )「……ッ」
- 79: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:33:31.19 ID:7MWIIgEv0
- ありえない。
いや、ありえないと思いたい。
しかし確率的には決して低くはないだろう。
目の前にいる彼女がヒートである確証はないに等しいのだ。
異獣である二人の男女を追うようにして現れた彼女は、確かに怒りと敵意を見せていた。
だが、とそこで考える。
( ゚д゚ )(もし、それがフェイクだったとしたら……?)
充分にありえる話だ。
ヒートと再会したあの時、もはやFCの逃走は決まっていた。
つまり敵側からすれば、その逃走先を知っておきたい立場にいたとなる。
( ゚д゚ )「……まさか」
ヒートが現れたとなると、ミルナはそれを放っておくことは絶対にしない。
それを踏まえた上で彼女を送り込もうとしたのだとすれば。
――まんまと奴らの手に乗っていることになる。
( ゚д゚ )「だが……」
それでも。
そうだとしても。
( ゚д゚ )(俺に出来ることは、目の前のコイツがヒートだと信じるしか……)
嫌な予感を振り払うかのように、ミルナは強く首を振った。
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