( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

113: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:43:20.06 ID:fjRVA6UF0
|゚ノ;^∀^)「気になる顔……?」

从・∀・ノ!リ「別に悪いことを企んどるわけじゃないから言っておくか。
       あの双子、流石兄弟とやらが気になるのだ……死んだ兄によく似ておってなぁ」

はは、と笑い、彼女はそのまま誰もいない通路を歩いていった。

気になるのは理解出来る。
しかし、レインには解っているはずだ。
あの流石兄弟が、レインの兄とはまったく関係の無いことを。

|゚ノ ^∀^)「……それでも」

偽者だと知っておきながらも話を聞こうとするレイン。
それはやはり、記憶の中の兄を投影しているからなのだろうか。

|゚ノ ^∀^)「どちらが正しいのかなんて、誰にも解らない……」

レインが残した言葉を呟く。
心の中で反芻し、覚悟を決めて渦巻く疑問や混乱に対峙した。


解らないのならば、せめて――



116: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:44:58.47 ID:fjRVA6UF0
三日後。

オーストラリア西部。
首都であるキャンベラの郊外に、世界運営政府の本部があった。

白色を基調とした教会のような神秘さを持つ巨大な建物。

しかし、華やかなのは外見だけだった。

今や内部は、武装した兵士が普通にうろつく物騒な空間と化している。
何か強大な存在に警戒するかのような空気が、建物全体を満たしていた。

( ̄ー ̄)「……このピリピリした空気、慣れませんねぇ」

最上階に位置するこの部屋にも、その雰囲気は伝染していた。

広く天井が高い室内の中心にあるのは、一組の巨大な機械群。
かつては都市ニューソク地下に設置されていた、世界を繋げるための装置である。

周囲には様々なカプセルのような物体があり、中には輝かしい色を放つ宝石のような石が収められている。



120: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:46:27.29 ID:fjRVA6UF0
イクヨリは、そんな光景を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
白い丸テーブルと椅子に腰掛け、午後のティータイムを堪能するかのような姿勢である。
そして彼には客が存在した。

( <●><●>)「もうしばらくの辛抱ですよ」

対するように座っているのは黒衣の男。
目深にかぶったフードから、爛々と輝く一対の瞳が顔を覗かせている。
彼もまた、手元にあるコーヒーを幾度か口付けていた。

( <●><●>)「既に異獣はこの世界に存在しています。
        しかし数はたったの二人――最近は四人に増えたようですが。
        まぁ、それさえ消滅させることが出来れば、この世界の恒久平和は約束されます」

( ̄ー ̄)「たった四人で何が出来ると言うのでしょう」

( <●><●>)「流石の私にも解りませんよ」

( ̄ー ̄)「だからこその厳重警戒ですね?」

( <●><●>)「しかし御安心ください。
        ダディとダイオードが行方を探して消去するために動いていますし
        この施設は高名な英雄が守ってくれています」



122: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:48:02.82 ID:fjRVA6UF0
( ̄ー ̄)「……しかし、何か懸念することがあるのでしょう?
      あまり長い付き合いとは言えませんが、今の貴方には落ち着きというものが微かに欠けています」

言葉に、黒衣の男は少し俯く。

( <●><●>)「状況的に出来過ぎている感があるからですかね。
        それに未だ見つからない厄介な組織もあります」

( ̄ー ̄)「FCですか……情報を得ようにも、捕らえた兵は口が異常に固いですし困ったものです。
      まぁ、もしもの時のための策がいくつかありますがね」

( <●><●>)「策ですか?」

( ̄ー ̄)「指輪という強力な戦力を持て余すわけにもいきませんからねぇ……彼らに少し働いてもらいますよ」

イクヨリの口端が吊り上る。
今まで見せていた柔和な笑みではなく、それは狡猾な笑みだった。



125: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:49:36.36 ID:fjRVA6UF0
世界政府本部の建物。
その一室に、タマネギ――英雄神がいる。

,(・)(・),「んー」

そして眼前に、跪く格好で頭を下げている英雄が三人。
身長がまるで異なる三人は、しかし同じ姿勢で同じ表情をしていた。

┗(^o^ )┓「英雄神様、御用でしょうか」

\(^o^)/「我らクン三兄弟、どのような願いでも叶えてみせましょう」

|  ^o^ |「それが例え、世界の破滅だろうと」

,(・)(・),「いや、そんな仰々しく構えんでも良いナリだす。
     君らに一つ大切な話があるだけナリだすよ」

ぱたぱたと小さな手を振り、タマネギは楽な姿勢でクン三兄弟を迎えている。

┗(^o^ )┓「大切な話、とは?」

,(・)(・),「この後のことナリだす」

\(^o^)/「というと?」



129: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:50:52.84 ID:fjRVA6UF0
,(・)(・),「今、この施設に現存する純正ルイルは英雄世界のモノだけナリだすな。
     そしてその純正ルイルにはおいどん自体が入っているわけナリだす。
     つまりおいどんが消滅することがあれば、それは世界交差の成功を示すナリだす」

|  ^o^ |「それをさせぬために我々がいるのですが」

心底不思議そうに首を傾げる三人。
完璧主義で、それを為すことの出来る実力を持つが故に『万が一』を考えないからだ。

,(・)(・),「物事にはイレギュラーが存在するナリだす。
     おいどんも今回は一応、割と本気で動いたりするナリだすが
     もし、おいどんが消えて無くなってしまったら……主らはどうするつもりナリだすか?」

┗(^o^ )┓「ありえませんね」

,(・)(・),「いや、だから――」

\(^o^)/「我々がここにいる限りはイレギュラーなど起きません」

,(・)(・),「強気なのはいいけど――」

|  ^o^ |「英雄神様は私達の実力に何か不満があるとでも?」

,(・)(・),「ないナリだすがなぁ――」



132: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:52:46.17 ID:fjRVA6UF0
為らば良し。
そう呟き、クン三兄弟が身体を立ち上げた。
腰に差したそれぞれの武器が揺れ、硬い音を奏でる。

,(・)(・),「君らホントに自信家ナリだすなぁ」

┗(^o^ )┓「自信ですか……それは違うと思いますよ」

\(^o^)/「確かに自覚はないですね」

|  ^o^ |「やれることをやるだけです。
      ただ私達の場合、そのやれることの範囲が狭く深いのですが」

そう言い残し、三人の英雄は部屋を出て行った。
敵が近いのを本能的に感じているのだろう。

見送った英雄神は、ちょんまげをポリポリと掻きつつ

,(・)(・),「……まぁ、やれることはやったナリだす。 後は最後まで見届けるだけナリだす」

その目は虚空を見つめ

,(・)(・),「しかしbQ0は、よくぞここまでの規模に成長することが出来たナリだすなぁ。
    ま、それももう終わりナリだす。
    おいどん――いや、英雄の遺伝子を継ぐヒーロー達が止めてみせるナリだすよ」



135: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:54:50.73 ID:fjRVA6UF0
世界政府本部の地下。
特殊部隊である『ラウンジ』は、来るかもしれない敵に備えて準備を進めていた。
部隊長を務めるプギャーも、皆が忙しそうに歩きまわる室内で指揮を執っている。

(゜3゜)「プギャーさん」

( ^Д^)「ん?」

呼び止められて振り返れば、少し懐かしさを感じる顔があった。
しかし名前までは思い出せず、プギャーは済まなそうに口を開く。

( ^Д^)「すまん、誰だったか」

(;゜3゜)「酷いですね……貴方の部下の田中です」

( ^Д^)「あぁ……思い出した。 しばらく中国の方へ行っていたと聞いているが」

(゜3゜)「そっちはもう片付きました。 にしても、随分と物騒になっているようで」

周囲を見渡す。
確かに以前と比べれば、存在する人の数も増えているように見えるだろう。
重要な任務に就いている兵以外は、全て呼び戻したのだから当然だ。

( ^Д^)「ダイオードから聞いた話では、異獣は何処から現れるか解らんらしいからな」



138: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:56:03.62 ID:fjRVA6UF0
(゜3゜)「怖いですねぇ」

( ^Д^)「で、何かあったのか?」

(゜3゜)「外周部に備え付けられた全ての魔砲の準備が完了しました。
    これで陸空海どこから来ても、砲撃の嵐を見舞うことが出来ます」

( ^Д^)「だと良いが、相手は化け物だ……人間の作った兵器で対抗出来るのだろうか。
     ダイオードの言によれば、思念体やゴーストの類ではないから叩けるらしいが」

(゜3゜)「何事もやってみなきゃ解らんですよ」

( ^Д^)「あぁ、そう――!?」

警報。

室内が一瞬赤く染まる。
プギャーの声に被さるように響いたそれは、世界政府本部すべてに行き渡った。



143: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:57:49.73 ID:fjRVA6UF0
(゜3゜)「まさか……!?」

( ^Д^)「さっそく来たということだ! おい、誰か情報を持ってこい!」

部下の一人が受話器を耳に当ててまま

「北東部山岳から敵襲! 多数です!!」

( ^Д^)「多数だと……? 何故気付かなかった!」

「そ、それが『突如として現れた』と!」

(;^Д^)「馬鹿な! 何者――」

言いかけ、そして気付く。
多数ということは異獣ではない。
部下の慌てようから見て、その敵は予想外の種類のはずだ。

( ^Д^)「奴らか……!!」



146: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:59:00.84 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「魔法の力とはなかなかに素晴らしいものじゃないか。
     子供の頃に夢見た透明人間を、まさかこの歳で実演出来るとは思わなかった」

モララーは岩の上に立っていた。
周囲にも似たような岩石が転がり、その挟間から灰の色が見え隠れてしている。

色の正体は人間だ。

灰色の装甲服を着込んだ兵達が、各々の武器を携えて立っている。
数にして約三百。

久々に感じる晴天の空気を喜ぶかのように、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。

(´<_` )「しかし流石に見つかってしまったようだな」

双眼鏡で、数km先にある世界運営政府本部を見ていた弟者が、ポツリと呟く。
やはりその身は装甲服に包まれ、その右手には黄金の盾が握られていた。

( ・∀・)「ここまで近付けただけで儲けものだよ」

(;´_ゝ`)「っつーかすげー……未だに信じられない俺がいるんだが」

兄者が見上げる先には、空が歪んでいる光景。
歪みはドームのようにモララー達を包みこんでいた。



151: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:00:47.86 ID:fjRVA6UF0
歪みの正体は魔力だ。

渡辺がかつて作っていた『歪』の魔力。
その話を元としてレインが再現したモノにいくつかの魔力をブレンドして作った、いわば『不可視のカーテン』。
歪められた空間は周囲にある物体を隠し通し、向かい来る全ての物質を逸らす、といったものだ。

(,,゚Д゚)「もう少し近付きたかったところだがな……。
    森の中にさえ入れば、後は自力で行けた」

そう言うギコの視線の先には、一面の緑色がある。
岩肌を露出させた山岳と、世界政府本部を分け隔てるかのような森があるのだ。

( ・∀・)「各世界代表者、返答求む」

モララーが通信機に呼び掛けると

『こちら英雄世界、問題ない』

『魔法世界もばっちおっけーじゃ』

『機械世界……ウチらも位置についたよ』

それぞれの部隊から、ミルナ、レイン、軍神の順に返事が届いた。
車椅子に乗ったフサギコが、それを確認して吐息する。

ミ,,"Д゚彡「結局、四部隊の混成は出来ませんでしたね……」

( ・∀・)「それぞれ主張が異なるからね。
     だったら、最初から分けて行動させた方が効率がいい」



154: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:02:53.64 ID:fjRVA6UF0
(´<_` )(モララーさん、何か不機嫌だな……)

モララーの言葉通り、四世界に所属する兵は四つの部隊に分かれていた。

モララーが指揮するFC残党。
軍神が指揮する連合残党軍。
ミルナが指揮する英雄達。
レインが指揮する魔法使い達。

それぞれの現状目的は同一だが、その後の最終目的は二分されている。
後で敵対する可能性があるのならば、最初から離れていようという判断からだった。

(,,゚Д゚)「まぁ、向こうの奴らにも指揮を執る役がいることだしな。
    足を引っ張るような存在がいないのなら、こっちはこっちで好きにやらせてもらうさ」

装甲服の一部を纏い、その上から茶色のコートを羽織ったギコが言う。
右手を軽く振り、青い発光とともにグラニードを作り出した。

(,,゚Д゚)「モララー、そろそろ合図を」

( ・∀・)「あぁ」

頷き、通信機のスイッチを入れる。
袖を叩くように広げ、破裂に似た音を大きく立てる。

( ・∀・)「総員、これより戦闘を開始する」

答えはない。
が、通信機を隔てた向こうで耳を澄ましているのが解る。



158: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:04:12.18 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「各世界は自分の目的を果たすために勝手にやりたまえ。 どうせ最終目的は同じだ。
     しかし互いの邪魔をすることを禁止する。
     そして、無駄に敵を殺すことも禁止する……後で面倒だからね」

しかし、と言い

( ・∀・)「すぐにでも突撃したい気持ちは解るが先に説明したとおり、世界運営政府の持つ砲台群は厄介の一言だ。
     生身で挑めば、いくら魔法という技術を持っていても防ぎ難いだろう。
     故に――頼むよ、シャキン君」

『了解』

声が聞こえたと同時、大気を切り裂く甲高い音が山岳に木霊する。
直後、黒色の何かがモララー達の直上を通過していった。

( ・∀・)「彼がド派手な合図をしてくれる。
     各自、各々で判断して攻撃を開始してくれたまえ――以上」

言葉を切った瞬間、重々しい音が地面を揺らす。
見れば、世界政府本部の外周部から黒煙が勢いよく噴き出し始めていた。

あの黒色の鳥に似た何かを落とさんがために、無数の砲撃が牙を剥いているのだ。



160: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:05:35.02 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「だが甘い。
     この世界程度の兵器で、あの機体を落とすことなど出来ん」

その姿は獰猛な鷲を連想させる姿を持っていた。

しかし生物に非ず。


名を『レイドール』。

駈る者の名を『シャキン』。

その身を走らせるのは『空』。


機械世界が誇る高速の鉄鳥が、切り込み隊長の役を担って戦場へと飛び込んでいった。



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