( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

50: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:17:25.63 ID:IySuGSYX0
/ ゚、。 /「私は幸せ者だよ、軍神。
      本気のお前と一対一で戦えるとは……ははは」

その瞳は闇のように深く暗い。
もはや正気ではない。

いや、元の彼女に戻った、と言った方が正しいのかもしれない。
巨剣を構えて獰猛に笑う彼女こそが、本来の姿なのかもしれない。

本気だ。
彼女は本気で、軍神を潰そうとしている。
相対するには相応の力が必要だと、状況が言っていた。
だから

(#゚;;-゚)「ごめんな……また修理頼むことになるよ、デフラグ」

呟くように、己の身体を診てくれる人に謝罪する。
通信機など使っていないので、彼本人には今の言葉は届いていない。

これはむしろ、己の覚悟を決めるための呟きだ。

右手が上がる。
機械に包まれた黒い指が、鎖骨の周囲を撫で擦り

その動きは、ある一点で止まることとなった。



52: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:18:53.78 ID:IySuGSYX0
『――!!』

突如、甲高い音が場を包み込んだ。
ひ、という悲鳴のような駆動音は、軍神の身体中を走り回る。
追うように光の線が生まれ、彼女の身体に模様のようなモノを残した。

(#゚;;-゚)「機械肌の全機能を起動させた。
    脳と直結した人工神経が、ウチの反応速度を最大限に活かしてくれる。
    これでもうアンタは――」

威圧というより、諭すような口調。
しかしダイオードは笑みを以って応えた。

/ ゚、。 /「ふ……ふふ、それがお前の最高の状態か?」

(#゚;;-゚)「はン、ウチからしてみれば最悪の状態やけどな」

自嘲の声に笑みを深くするダイオード。

再度激突するのに、そう時間は掛からなかった。



57: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:20:23.27 ID:IySuGSYX0
世界政府本部の外周を走る音がある。

数にして五。
幼女を思わせる背丈の女性や、片目に傷を負った男。
そして大剣を背負った金髪の女性など、多種多様な格好だ。

从・∀・ノ!リ「モララー達は既に先に行っておるようじゃな」

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、先ほど正面入口で敵と戦い始めたと連絡があった。
      これで本部内の敵の目は彼らに引きつけられることになる」

从・∀・ノ!リ「その内に我々が別場所から侵入。
      EMAとモナー、そして人質であるハインリッヒ達を救出じゃな」

( ><)「出来れば世界交差装置も確保してくれ、だそうなんです」

从・∀・ノ!リ「それはこの戦力では難しいが……まぁ、隙があれば挑戦しよう」

(*‘ω‘ *)「ぽぽっぽ!」

白い壁の前でゴソゴソとやっていたチンが作業終了を知らせる。

从・∀・ノ!リ「よし、伏せろ! スイッチONじゃ!」

閃光と爆発。
スイッチを押した瞬間、頑丈そうに見えた白い壁が光と共に粉砕した。

爆風を屈むことで回避したレイン達は、空いた穴へと歩を進める。



61: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:22:29.00 ID:IySuGSYX0
从・∀・ノ!リ「ふふふ。
       対魔力処理を施していたかもしれんが、魔法に関しては我らのほうが上よ。
       この程度の壁など、いくらでも破壊出来る」

ハ(リメ -゚ノリ「行こう、レイン。 モナーを助けないと」

从・∀・ノ!リ「とにかく行動は迅速に、じゃな。
       前衛はレモナ、任せたぞ」

|゚ノ ^∀^)「…………」

从・∀・ノ!リ「レモナ?」

|゚ノ ^∀^)「……えぇ、解ったわ」

無骨な剣を肩に乗せ、レモナは小さく呟いた。
その背を見送りつつ

从・∀・ノ!リ「ミツキ、おぬしまだ――」

ハ(リメ -゚ノリ「……解ってるよ」



65: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:24:49.35 ID:IySuGSYX0
俯き

ハ(リメ -゚ノリ「ただ、時に内面よりも外面が真実になることがある
       事実なんて脆いものだよ。
       人は少数派の真実よりも、多数派の偽装を信じてしまうんだから」

苦笑する。
諦めの色が混じった表情だ。

从・∀・ノ!リ「おぬし、まさか――」

レインが、ミツキの真意に気付いた。
何か言葉を発せられる前に、ミツキは首を振る。

ハ(リメ -゚ノリ「いえ、何も聞かないでください。
       僕はミカヅキの感情を正面から受け止めなければならない。
       『隊長を殺した』僕を、彼は打ち倒さなければならないんだ」

その笑みは、決して良い笑みとは言えなかった。
しかし今のレインにそれを指摘する資格など無く。

从・∀・ノ!リ「…………」

酷く霞んだ背を、レインは黙って見送ることとなった。



68: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:27:01.09 ID:IySuGSYX0
森の中を疾走する音がある。
ハ、という短く吐く息がそれを修飾し、必死になって逃げていることを明確に示唆する。

<_;プー゚)フ「だらっしゃぁぁぁ!!」

奇声を上げて逃げる男、エクスト。
彼は右手に緑色のトマホークを持ち、しかし抗うことなく退避に徹している。
まともに戦える相手ではないことを知っているからだ。

('、`*川「あのさー、鬼ごっこで私に勝てると思ってる?」

追ってくるのはペニサス。
エクストが五歩走る分を、彼女はたった一歩で踏み越えてくる。
彼からしてみればとんでもない化物だ。

('、`*川「戦おうよー、少しは加減してあげるからさー……ほいっと!」

<_;プー゚)フ「誰が戦うか!
         くそっ! クン三兄弟も怖かったけど、お前もなかなかきゃぁぁぁぁ!!」

('、`*川「ねぇねぇ例えばさ、弓矢と拳ってどっちが怖いー?」

<_;プー゚)フ「はぁ!? 弓矢に決まってんだろ!」

('、`*川「ですよねー」

ペニサスの速度が上がる。
その視線は完全にエクストを捉え、だからこそ攻撃の気配を背中越しに感じることが出来た。
背筋を撫でる悪寒に、エクストは身を投げ出すような姿勢で跳ぶ。



71: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:28:42.36 ID:IySuGSYX0
('、`*川「ほいさっ」

<_;プー゚)フ「どわぁぁ!?」

放たれたのは拳。
数メートルを一瞬で無にする脚力から放たれたそれは、エクストの傍にあった樹木を容易く砕いた。
メキメキ、という耳障りな音をバックに

('、`*川「ねぇねぇ、弓矢と拳ってどっちが怖い?」

<_;プー゚)フ「拳! 拳の方が怖いです!!」

('、`*川「要は威圧感の違いなんだよねー。
     っていうか私の方も人質の命かかってるから、戦ってほしいんだけど」

<_;プー゚)フ「……っていうか、関係の薄そうなお前がよく我慢してられるよな」

('、`*川「いや、ハインちゃん可愛いし」

<_;プー゚)フ「お、俺も負けず劣らず結構可愛いよなぁ、とか自負しちゃってたりなんか――」

('、`*川「あ?」

百八十度転換した声を合図に、今度は手加減なしの攻撃が再開された。



78: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:30:49.85 ID:IySuGSYX0
<_;プー゚)フ「いぃぃぃやぁぁぁぁ――って、あれ?」

腰を抜かしたエクストに衝撃は来なかった。
不思議に思い、視線を上げると

('、`*川「……あれ何?」

<_;プー゚)フ「え?」

木々の挟間から東の空が見えた。
青が八割を占める中、一点だけ赤色が明滅しているのが目に入る。

それは青白い光を吐き出しながら、一直線にこちらに向かってきていた。

<_;プー゚)フ「ま、まさかありゃあ――」

それは巨人だった。
赤い甲冑のような装甲を身に纏った、無機質な巨人。



――EMAだ。



81: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:32:27.49 ID:IySuGSYX0
甲高い電子音が、空域に新たな敵の侵入を知らせる。

(`・ω・´)「!? この反応……!」

データベースに登録されていた。
直後、ウインドウの片隅に入力されていた名称が表示される。

――EMA−02『ウルグルフ』、と。

風貌越しに見る東の空。
その先から、猛スピードで迫り来る赤き巨人。
このままではシャキンの乗るGIFに激突してしまう軌道だ。

『――――な』

ノイズ混じりの通信が入る。

(`・ω・´)「お前――」

『――邪魔をするな』

(`・ω・´)「ミツキを狙ってここまで来たのか?」

『邪魔をするな』

(`・ω・´)「これ以上、場を混乱させるのならば――」

『邪魔をするな――!!』



86: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:34:14.12 ID:IySuGSYX0
突っ込んでくる。
あの機体の装甲からすれば、GIFなど紙同然だろう。

(`・ω・´)「ッ!」

スロットルレバーを倒し、ペダルを踏み込む。
重力制御を司っていた小型ルイルが活性化し、機体の位置を押し上げた。

直下をEMAが通過していく。
その際に発生した衝撃が機体を揺らすが、微細な調整で立て直すことに成功。
熟練された腕が、経験が咄嗟の判断を手助けする。

(`・ω・´)「逃がさん!」

既に機首はEMAを向いていた。
風防の正面に捉え、ペダルとスロットルレバーを全開。
一瞬にして景色を吹き飛ばす速度まで上がり、代償としてGキャンセラーでも追いつかないGが身体全体に掛かる。

(`・ω・´)「だが、この速度なら――ッ!」

いくらEMAが高速を誇ろうとも、GIF『レイドール』には及ばない。
こちらは『速く飛ぶ』ことに主眼を置いた機体だ。

予想通り、ものの数秒で追いつくことに成功する。

『……その挙動、異世界の物だな?』

(`・ω・´)「機械世界所属のシャキンだ。
      悪いが、この場に無用な混乱を招きたくはない。 機体を止めろ」



91: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:35:59.34 ID:IySuGSYX0
『機械世界?
 ……成程、これは礼を言わんとならんらしい』

(`・ω・´)「何……?」

視界の先でEMAがこちらを振り向いた。
赤い電子の双眸が不気味に光る。

『貴様のいた世界のはずだ……私のいた世界の理論を用いてWSSを構築した科学者が』

(;`・ω・´)「なっ――まさか――」

自然とレバーを強く握る両手。
彼の言葉に覚えがある。
あれはこの世界に来る前、一つの騒動が起きる直前――

――もちろんタダで教わったわけじゃないわよ? 戦闘機用WSSを組み上げて返してあげたら喜んでたわ。

(`・ω・´)(こいつ、ガナーのことを……!?
      それに奴の世界の理論ということは、やはりこの機体のシステムは――)

『彼女に会うことがあれば言っておいてくれ。
 「貴女の組み上げたWSSは、非常に役に立った」と』

(;`・ω・´)「お前……」

『伝言は預けた。 それを持ってここから去れ』

声はそう言っているが、意志は別の言葉を示唆していた。
これ以上近付くのならば死を覚悟してもらう、と。



95: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:38:13.84 ID:IySuGSYX0
(`・ω・´)(だが……)

あの機体の搭乗者の目的はミツキだろう。
本陣にいるフサギコからの情報によれば、今彼は世界政府本部への侵入を試みているらしい。
もしそんな場に奴が突っ込んでいけば、混乱は避けられない。

『去れと言っている』

微かな怒気を含んだ声。
もはやこれが最後通告なのだろう、とシャキンは直感した。
数回深呼吸し、声に震えが出ないよう勢いをつけ

(`・ω・´)「だが断る!」

加速。
一瞬で風景が背後へと吹き飛ばされる。

『!?』

前方目掛けて機首をぶつけるような軌道に対し、EMAの両腕が反射的に上がるが

(`・ω・´)「――遅い!!」

突き抜ける。
機体先端に張った魔力を用いた突撃――『Force Attack』だ。

激音。

コックピットが揺れに揺れ、シャキンは身を押さえつけるかのようにして衝撃に耐えた。
一瞬の事とはいえ、震動が与えるダメージは侮れない。



97: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:40:31.18 ID:IySuGSYX0
抵抗が無くなり、推力任せに場を離脱する。

(`・ω・´)「やったか……?」

背後は灰色の煙に包まれている。
あれがEMAから出た爆炎ならば、勝ち目もあるのだが――

『流石は機械の鉄鳥……強襲はお手の物というわけだな』

声が来る。
続いて煙が晴れ、中から防御の形に手を組んだEMAが現れた。

(;`・ω・´)「くっ、効かないだと……?」

『残念ながら、こちらは魔法機動兵器でな。
 予め装甲には魔力をたっぷりと塗りこんである。
 ただ速く飛ぶための戦闘機と、戦うための戦闘機動兵器を同じように見てもらっては困るな』

(;`・ω・´)「だが、まだ負けが決まったわけではない……時間稼ぎくらいはやってやるさ」

『その考えが驕りだということを教えてやろう』

EMAが動く。
両腕を前に突き出した格好。

途端、その眼前に変化が起きた。



100: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:42:08.69 ID:IySuGSYX0
(;`・ω・´)「あれは!?」

一瞬の発光。
直後、空間を割るようにして棒状の何かが現れる。

それは半分ほどまで分解された武器だった。

いくつかの大きなパーツと、多数の小さなパーツ。
そして周囲にはネジやボルトと思われる大小様々な釘状物体。

合致する。

秒にも満たない速度で、その武器は己の身を完成までもっていった。

一言で言うなれば『二刀流』。
合計二本の剣のような棒のような武器は、赤いEMAの両手に握られている。

『準備運動代わりだ。
 EMAの戦闘力を――フラフラと飛ぶだけの戦闘機など、もはや相手にもならないことを教えてやる』

EMAが動く。
両手に持った武器を振り上げ、背部のブースターが光を噴いた。

(`・ω・´)「嘗めるな!」

対応するように、シャキンも動く。



103: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:44:13.28 ID:IySuGSYX0
対応するように、シャキンも動いた。

一歩遅れての行動は、しかしシャキンの方が速い。
元よりそのために作られた機体だ。
速度で負けてしまっては、その存在意義に傷が付いてしまう。

だから加速した。

旋回軌道でEMAの背後をとる。
そのままミサイルをバラ撒き、自身も突撃するために機首に魔力を張った。

『――!』

螺旋を描いて殺到する爆発飛翔体。
赤いEMAが、避ける間もなく爆炎に包まれる。

(`・ω・´)「これで!」

躊躇を捨てて仕掛けた。
いくら赤いEMAの対魔力防御が高くとも、この連撃であれば多少のダメージを与えられるはず。

しかし――


『翼を断てば鳥は飛べまい』


スピーカー越しに呟かれた声に、シャキンは突発的な鳥肌を止められなかった。



106: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:46:04.49 ID:IySuGSYX0
機体が爆炎の中に突っ込み――

衝撃。

(;`・ω・´)「ッ!?」

風防の両サイドから苛烈な光が飛び込んでくる。
それと共に機体制御が効かなくなり、自身の方が攻撃されたのだと悟った。
しかも致命的な威力で、だ。

(;`・ω・´)「ぐっ――あっ……!?」

『流石は「重力解放戦闘機」といったところか。
 しかし、瞬発力に関してはこちらの方が上だったな』

(;`・ω・´)「馬鹿、な……俺のGIFが……!」

『何も不思議なことではない。
 近接戦において最も重要なのは瞬発力。
 いいか? いくら力があろうとも、先の先を獲れねば勝利は薄いのだ』

回転しつつ高度が落ちていく景色の中、ノイズ混じりの声が響く。

『この機体――EMA02「ウルグルフ」の機構は瞬発力に主眼を置いている。
 如何に先手を獲られようとも、それを逆転させる程の速度があれば負けることなどない』

視界の端、赤いEMAが二本のブレードを振るう。
どうやら接近戦に多大な自信があるらしい。



108: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:47:58.70 ID:IySuGSYX0
(;`・ω・´)「だが、翼をやられたくらいで!」

スロットルレバーやペダルを動かすが、しかし反応が薄い。
落下速度を抑えるだけで精一杯だ。

どうなっているのだ、と表情を青くしたシャキンに

『GIFの翼は真の翼に非ず。
 その正体は、武器兵器を収めるための単なる兵装庫に過ぎない』

(;`・ω・´)「まさ、か」

『お前の機体を浮かべているのは動力である小型ルイルだろう?
 悪いが、その接続を八割ほど寸断させてもらった』

つまりあの一瞬の交差で両翼を斬り飛ばし、更には動力の接続部を狙い穿った、と。

言葉を聞き、シャキンは戦慄する。
信じられない反応速度と判断力。
そして、それらを体現するEMAの性能。

十割切断をしなかったのは、彼なりの情けなのだろう。
この高さから引力制御を失って落下すれば高確率で死ぬ。

しかし二割ほどの出力が残っている現状、そのまま落ち着いて降下すれば生存出来る可能性が高かった。



111: ◆BYUt189CYA :2007/09/26(水) 21:49:38.69 ID:IySuGSYX0
『私の相手はお前ではなく、お前の相手も私ではない。
 EMAの相手はGIFでは成り立たず、GIFの相手はEMAでは成り立たない』

それに、と言い

『この機体は人を殺すために作られたのではないのだ。
 今は、ただ一人の例外を殺すために動いているのだがな』

赤いEMAが背を向ける。
もはやシャキンなど眼中にない。
青白い光を背部脇のスラスターから溢れさせ、本命のターゲットを探すために移動を始める。

反撃を。
せめて反論したかった。

しかし、精神的にも状況的にもそんな余裕など残されていない。

(;`・ω・´)「くっ――」

そ、と続く悪態は最後まで続かない。

両翼から爆炎を撒き散らし、GIF『レイドール』は森の中へと落ちていった。



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