( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

39: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:29:03.67 ID:xv3lMgtl0
(;^ω^)「へ?」

(,,゚Д゚)「機械音声、あるだろう? あれと同じだ。
    他の連中のは聞いたことがないので知らんのだが、少なくともグラニードは感情など無い声だぞ」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ、普通に会話することなんて……?」

(,,゚Д゚)「意識を深く同調させた時には可能だ。
    だが、俺はあんな無感情な声に『さん』付けは出来ない」

思えば、他の指輪使いから疑似精神の人格の話など聞いたことがなかった。
現状で判明している例は二つ。

8th−W『クレティウス』のような、確かな感情を持った男の声。
1st−W『グラニード』のような、無機質で無感情な機械の音声。

聞かずとも、同じだと思っていた。
ギコも同一の思いだったのだろう、他の指輪使いに話を聞いたことはないと言っている。
ウェポンという一括りになっている以上、その全てが等しいのだと思い込んでいたのだが。

(;^ω^)「クレティウス……?」

どういうことなのか、という問いかけは

『――――』

沈黙によってスルーされることとなった。



42: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:31:05.58 ID:xv3lMgtl0
ギコとブーンが戦う地点から少し東。
英雄世界の部隊が、戦術的優位を得ようとしているここでは剣撃の音が響いていた。

それだけではない。

草を掻き分ける音、木を蹴り飛ばす音、澄んだ鈴のような音、短い吐息。

それらは連鎖し、一つの音楽を奏でているようだった。

地面を叩く靴の音をベースに、甲高い音や鈍い音が踊り回る。
修飾するのは女性二人分の吐息で、それは聞くだけならば官能的にも感じられた。

ジャンルとしてはクラシック。

時に流麗に、時に寂寥に、時に激流に表情を変える。
そして今、流麗なリズムから激流へと変わろうとしていた。

ノハ#゚  ゚)「そこだッ!!」

木々の挟間からヒートが飛び出す。
右手には包丁刀が握られているが、それもすぐに放たれることとなった。

槍投げに似た格好から繰り出される投擲。
それは、柄尻の鎖を蛇のようにうねらせながら飛ぶ。



45: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:32:45.31 ID:xv3lMgtl0
切断。

阻むように立ち並ぶ樹木を、たった一閃で切り裂いていく。
その先にいるのは

川 ゚ -゚)「12th−W『ジゴミル』!」

透明色の盾を構えたクー。
雷撃の如く迫る包丁刀を、その面に触れる直前に弾き飛ばした。
斥力を操る盾にかかれば、表面を傷つかせずに攻撃を逸らすことなど朝飯前だ。

ノハ#゚  ゚)「でも、それで七つ目……!」

現状、1st、5th、6th、7th、9th、10th、12thを引き出すことに成功している。

川 ゚ -゚)「まさか本当に実行するつもりか……」

ノハ#゚  ゚)「もちろん」

流石に全てを引き出すと言った手前、その攻撃には怒涛という言葉が相応しい。
持てる技術を総動員し、クーの手札を次々と明らかにしていく辺り、ヒートという英雄の戦闘力の程が解る。



46: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:35:29.82 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)「さぁ、次は――」

鎖を引っ張る。
じゃらり、という金属音と共に、草木の挟間から包丁刀が姿を見せた。
それを空中でキャッチ。

川 ゚ -゚)「見事なものだ」

ノハ#゚  ゚)「自分の武器さえ扱えない戦士なんて、それは戦士とは呼ばないでしょ?」

振り回す。
手に持った鎖が回転し、その先にある包丁刀がプロペラのように円転を始めた。

川 ゚ -゚)「ふむ、まるで週刊ジャンポウに出てくる武器みたいだな」

ノハ#゚  ゚)「じゃんぽー?」

川 ゚ -゚)「あぁ、私と内藤がよく読んでいる雑誌だ。
     この戦いが無事に終わったら貸してやろう。 面白いぞ」

ノハ#゚  ゚)「? ……うん」

何やらよく解らないが、とりあえず的に頷いた感じだ。
クーはそんな様子に軽い笑みを浮かべ

川 ゚ -゚)「ならば、次はこれでいこうか」

一瞬の輝きの後、クーの両手にはクリアカラーのグローブが装着された。



47: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:38:29.14 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)(今度は格闘戦仕様のウェポン? 能力は何だろう?)

今まで見てきたウェポン能力から推測する。
推測に値する材料は得ていた。

ウェポンの能力には共通する項目がある。

それに気付いたのは、五つ目に出されたウェポンである1st−Wを相手にした時。
これまで見たウェポン能力と共通項目を勘案し、ヒートは一つの法則性に気付いていた。
そしてその法則性から導き出された8th−Wの能力とは

ノハ#゚  ゚)(ヒット時の衝撃力増大……!)

もしくはそれに準ずるもの、とヒートは判断した。

ノハ#゚  ゚)「その正体、見極めさせてもらう!」

左手に持っていた刃の無い中脇差『飛燕』を納刀し、新たな武器を取り出す。
銀に染められた短弓――付けられた名は『梟』。

ノハ#゚  ゚)「ふっ!」

瞬間的に引き絞られた弦が細い音を立てて弾かれる。
射出されたのは、やはり銀色の矢。

川 ゚ -゚)「!」

対し、クーは身を前に倒すような姿勢で避ける。
そのまま勢いで駆け出した。



49: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:41:06.41 ID:xv3lMgtl0
ノハ#゚  ゚)「やはり接近戦か!」

川 ゚ -゚)「今までと同じだと思ったら怪我をするぞ……!」

両拳を握り締めるクー。
その姿に、ヒートは僅かな違和を感じた。

速い。

ノハ#゚  ゚)(いや、これは――)

川 ゚ -゚)「はぁっ!」

引き寄せた包丁刀で防御。
硬質な音が腕に響き、衝撃がヒートの身体を微かに押す。

川 ゚ -゚)「つg――」

ノハ#゚  ゚)「でやぁぁぁ!!」

連撃に持ち込まれる前に、ヒートが反撃の手――いや、足を出す。
ハイキック気味の一撃はクーの首へと吸い込まれるように走り

ノハ#゚  ゚)「!?」

思っていた以上の手応えが骨に響いた。



52: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:42:51.85 ID:xv3lMgtl0
川;゚ -゚)「痛っ――」

ダメージを示す苦痛の声を漏らし、クーは数歩後退する。
しかしヒートはそれを追うことをせずに呆然と見送った。

ノハ#゚  ゚)「…………」

川;゚ -゚)「油断した。 やはり8th−Wは万能が故に慢心を呼ぶな。
     自重せねば」

ノハ#゚  ゚)「万能?」

川 ゚ -゚)「ん? あぁ、この8th−W『クレティウス』の能力は身体強化なんだ。
     筋力上昇に加え、身体自体の耐久度も上がるし、神経伝達速度もそれなりに――
     ……何か気になることでも?」

ヒートの微妙な反応に、クーは首をかしげた。

ノハ#゚  ゚)「んー……あの、一つだけ聞いてもいいかな?」

川 ゚ -゚)「?」

構わない、と首を振ったクーに、ヒートは思いがけない疑問を吐く。


ノハ#゚  ゚)「それ、本当にウェポンなの?」



55: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:44:35.53 ID:xv3lMgtl0
一方その頃、世界政府本部の地下を目指す人影があった。

ミツキとレモナだ。

男の方は、トリガーの付いたブレードを。
女の方は、やはりトリガーの付いた無骨な剣を。
それらを用いて二人は、たまに立ちはだかる敵を撃退していく。

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

|゚ノ ^∀^)「…………」

無言だ。
どちらとも話しかけることはなく、黙々と目的の場所を目指して走る。

「止まれ!」

廊下の角から武装した世界政府兵が飛び出した。
影を見るや否や、二人はその兵士に殺到する。

「止ま――!? ちょ、え!?」

銃口を向ける間もなく、ミツキが懐に潜り込む。
トリガーを引き込み

ハ(リメ -゚ノリ「ごめんね」

一閃。
青白い光を放つ刃が切り裂く。
斬撃を受けた銃器は、中身をぶち撒けながら破砕した。



59: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:47:51.39 ID:xv3lMgtl0
続いてレモナが、その岩のような剣の柄でこめかみをブン殴る。
兵士は結局、何も出来ずに沈むこととなった。

|゚ノ ^∀^)「近いわね」

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ」

敵の数が減ってきてる。
まさかここまで踏み込まれるとは予想していなかったのだろうか。
先ほど倒した兵士など、丸腰だったほどだ。

ハ(リメ -゚ノリ「レモナ、ここからは僕一人で充分だ。
       君は上階へ上がったレインの方へと――」

|゚ノ ^∀^)「嫌よ」

ハ(リ;メ -゚ノリ「え……っと、このままついて来ても面白いことはないよ?」

|゚ノ ^∀^)「子供扱いしないで。
      私、全て知ってるのよ」

言葉に、ミツキが軽く目を見開いた。

|゚ノ ^∀^)「御父様を殺したのは貴方じゃない……ダイオードとかいう、妙な女騎士だってね」

ハ(リメ -゚ノリ「誰に聞いた?」

|゚ノ ^∀^)「貴方に」

ハ(リ;メ -゚ノリ「……あの時か。 流石に迂闊だったな」



61: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:50:49.40 ID:xv3lMgtl0
すぐに心当たりが出るところから、あの時以外に喋ったことはないらしい。

ハ(リメ -゚ノリ「でも、ここから一緒について来ても何もないのは確かだ。
       僕はEMAとモナーさんを奪還して、そのままミカヅキに挑むつもりだから」

|゚ノ ^∀^)「死ぬつもり、の間違いじゃなくて?
      それに、やっぱりミカヅキ様は近くにいるのね?」

ハ(リメ -゚ノリ「キオルがいただろう?
       彼女はミカヅキの傍を絶対に離れない……彼の代わりに人を殺す役を担っているからね。
       あと死ぬつもりじゃなくて、ちゃんと『説得』はしてみるつもりだよ」

|゚ノ ^∀^)「なら、その説得は私がする。
      私の言葉なら聞き入れてくれるかもしれない」

ハ(リメ -゚ノリ「意味がないんだよ、それだと」

|゚ノ ^∀^)「……どういうことよ」

ハ(リメ -゚ノリ「もし仮に、ミカヅキが『僕が犯人じゃない』という言葉を信じたとしよう。
       しかし隊長を崇拝していた彼が、それで終わると思うかい?」

言葉に、今度はレモナが目を見開いた。

|゚ノ;^∀^)「今度はダイオードを狙う……?」

ハ(リメ -゚ノリ「そうなればミカヅキは必死だ。
       あれはEMAを用いたからといって勝てる相手じゃない」



64: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:53:12.40 ID:xv3lMgtl0
|゚ノ;^∀^)「で、でも、だったら私達みんなで挑めば――」

ハ(リメ -゚ノリ「勝てないことはないだろうけど、多くの犠牲が出るだろうね。
       僕が望む結果じゃない」

首を振るミツキ。
つまり彼の本望とは

|゚ノ;^∀^)「ミカヅキ様に殺されて、御父様の仇をとらせてあげる……?」

ハ(リメ -゚ノリ「それが一番犠牲の少ない方法なんだ」

|゚ノ;^∀^)「ふ、ふざけないでよ! 貴方はそれでいいの!?」

ハ(リメ -゚ノリ「嫌ならやっていないさ。
       それに僕はあの時に死んだ――死んでいたはずなんだ」

|゚ノ;^∀^)「だからって殺されに行くの!?」

搾り出すような声で

|゚ノ;^∀^)「ミカヅキ様を一生騙すつもりなの……!?
      偽の仇を討たせて、偽の喜びを植えつけるの!?」

ハ(リメ -゚ノリ「知らなければ同じだよ」

|゚ノ;^∀^)「でも私が知った!」

ハ(リメ -゚ノリ「……解っているとは思うけど、この事実は伏せておいてほしい」



65: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:55:19.07 ID:xv3lMgtl0
|゚ノ#^∀^)「ふざけないでよ! 解らない! 解るわけがないわ!
      何で貴方が死ぬ必要があるのよ!」

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

|゚ノ#^∀^)「間違ってる! 絶対に間違って――」

ハ(リメ -゚ノリ「ごめん、レモナ」

ミツキの腕が動いた。
それは柔らかい声とは真逆の、ナイフを思わせる鋭い動き。

|゚ノ;^∀^)「――ッ」

首筋に衝撃が走った。
同時、意識が急速に闇へと落ちていく。

レモナは、そのまま抵抗する暇もなく気絶した。



67: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:57:01.48 ID:xv3lMgtl0
ハ(リメ -゚ノリ「っと」

倒れかけたレモナを支える。

ハ(リメ -゚ノリ「正しいとか、間違いとかいう問題じゃない。
       犠牲は少なければ少ないほど良いんだ。
       何人かの死よりも、一人の死の方が圧倒的に軽いんだよ」

華奢な身体を抱きかかえ、

ハ(リメ -゚ノリ「それに必ず殺されるわけじゃあない。
       ミカヅキの怨恨の度合いによっては、もしかしたら――」

言いかけ、止まる。
己の言っていることの馬鹿らしさに気付いたのか、微かに笑みを浮かべた。

ハ(リメ -゚ノリ「まぁ……生きられるわけがない、な。
       生かすつもりだという程度の恨みなら、ここまで追ってはこないだろうし」

と、苦笑混じりに歩き始めた。



69: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:58:22.70 ID:xv3lMgtl0
しばらく行くと、大きな通路に出る。
右を向けば巨大なシャッターのような扉。
その脇には、人間が通るようなサイズの鉄のドア。

ハ(リメ -゚ノリ(……となると、あの巨大なシャッターは人間以外のモノを通すためか)

そんなもの決まっている。

ハ(リメ -゚ノリ(EMA、かな。 元々は戦闘機やヘリを搬出するためのものだろうけど)

と、そこで足を止め

ハ(リメ -゚ノリ(モナーさんも近くにいるはず。
      彼がEMAのパイロットだと勘違いされているならば、だけど)

見渡し、何処かに扉がないかを見る。

しかし見つからない。
仕方がない、と肩を竦めたミツキは、その足で格納庫へと入ることにした。



73: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 19:59:56.06 ID:xv3lMgtl0
内部に明かりは少ない。
非常事態に移行しているせいか、微かな赤い電灯が光っているのみだ。

その中に、在った。

ハ(リメ -゚ノリ「…………」

見上げる先には青い巨人であるEMA。
ミカヅキのEMAに比べ、重厚な印象を与えてくる。

彼の機体を『武者』と呼ぶのならば、ミツキの機体は『騎士』が相応しいだろう。

ハ(リメ -゚ノリ「最後の仕事だよ。 待っていてくれ」

すぐに動かすことが出来る状態であることを確認し、今度は付近にあった扉へと足を向ける。
ノブに触れるが、鍵が掛かっているせいか回らない。

ハ(リメ -゚ノリ「失礼」

レモナを担ぎ直し、その動きで腰のブレードを引き抜く。
軽い音と共に切り裂き、傾いた扉を蹴り飛ばした。
そこには

(;´∀`)「ひゃぁぁ! 命だけは御勘弁をー!」

突然の音に身を震わせ、命乞いをするモナーの姿があった。



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