( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 78: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:01:38.52 ID:xv3lMgtl0
- 飛び交うのは光。
北東から飛ぶのは拳大の光弾だ。
連射こそないものの、的確な狙いを以って放たれるそれは高速。
対し、南西から走るのは橙色の光閃。
小さいながらも、それは弾幕といえる数と圧で壁を作っていた。
いわゆる射撃戦だ。
しかも濃い森の中で行われているため、自然と相手の姿が見えない中での戦闘となる。
となれば、この局面で重要なのは培われた勘と経験だろう。
幸か不幸か、両者ともにそれらが少し欠けているわけだが。
('A`)「あの、ちょっといいッスか?」
(*゚ー゚)「何かしら?」
言葉と同時に羽片が来る。
いくつかが、ドクオの周囲に突き刺さった。
(;'A`)「……割と本気?」
(*゚ー゚)「ううん? 普通よ?」
(;'A`)「はぁ、そうッスか」
どう見ても本気で戦っているようにしか思えないのは、どう説明すべきか。
人質の命が掛かっている状況で、それは間違いないわけであるが。
- 80: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:03:36.53 ID:xv3lMgtl0
- ('A`)(まぁいいや。 こっちもそれなりに経験積んでるし)
以前のような恐怖感は払拭されている。
ブーンと行った訓練の成果が出ているのだ。
ああ見えてブーンはスパルタ気質で、他人に厳しく自分にはちょっと甘い、を地でいく困った君であったりする。
その御陰で、こうして何とか戦えている分には文句を言い様もないのだが。
しかしドクオはドクオである。
恐怖感は払拭されたが、また別の恐怖感が彼を襲っていた。
('A`)(俺、ちょっと前までは学生だったんだけどなぁ……)
陸上部で、しかも割とエースだった。
女子に好かれることはなかったが、嫌われ者とまではいかない微妙なポジション。
素敵な青春ではなかったが、それでもドクオは充実感を感じていた。
どこからだろうか。
あの日常が崩れたのは。
いつからだろうか。
自分にまったく自信を持てなくなったのは。
――そして、自分の中の何かがおかしくなったのは。
('A`)(あぁ、そうだ)
忘れていた。
聞いておかなきゃならないことがあった。
- 83: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:04:58.00 ID:xv3lMgtl0
- ('A`)「あの、しぃさん」
(*゚ー゚)「?」
('A`)「ツンってどうなりました?」
(;*゚ー゚)「……そっか。 一ヶ月の間は情報も何もなかったわね」
('A`)「…………」
(*゚ー゚)「ツンさんはロマネスクに拉致された。 ここまでは知ってるよね?
だから私達は、都市ニューソク地下にあるアジトに監禁されてると思ってたの」
思っていた、ということは
(*゚ー゚)「でも見つからなかった。
隈なく探して、潜伏中にも情報を集めたりしたけど……」
('A`)「じゃあ、やっぱり――」
(*゚ー゚)「……えぇ。 こちらではもう『死亡扱い』になってるわ」
死、という言葉が頭を巡る。
あまりに現実離れで、しかし現実的な単語。
('A`)「…………」
(*゚ー゚)「…………」
- 84: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:06:09.30 ID:xv3lMgtl0
- 互いに言葉は無くなった。
当然だ。
しぃは、ドクオがツンを好いていることを知っている。
その相手が死んだとなれば、どういう言葉を掛けて良いのか解らないのだろう。
そもそも『死んだ』という事実を伝える時点で、内心に大変な苦労があったはずだ。
('A`)(ハァ……)
心配を掛けたな、と思う。
しかし心のどこかで、そもそも俺はそんな重要な位置にいないだろ、とも思う。
ネガティヴだ。
相変わらずの後ろ向き思考に関しては、既に諦めがついている。
自分はこういう人間なのだとよく解っている。
- 90: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:07:49.86 ID:xv3lMgtl0
- ('A`)(でも……おかしい、よな)
自覚はある。
言葉にすることは出来ないが、自分はどこかおかしい。
何故ならば
('A`)「何で、悲しくないんだろ」
(*゚ー゚)「……え?」
('A`)「変だよな」
(*゚ー゚)「ドクオ、君……?」
('A`)「おかしいや。 アイツが死んだってのに何とも思わない。 何でだろう?」
はは、と笑いながら問い掛けた。
ドクオ自身は自然な、そして爽やかな笑顔で言ったつもりである。
実際その通りだったのだが
('∀`)「何でだろう、何で……ねぇ、知ってる、しぃさん?」
(;*゚ー゚)「…………」
真上から降り注ぐ太陽光の仕業か。
木々の揺れによる影の仕業か。
熱気による陽炎の仕業か。
それこそ悪魔の仕業か。
何故かしぃには、その表情が酷く歪に見えてしまった。
- 97: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:09:32.86 ID:xv3lMgtl0
- ( ゚∀゚)「ところでよー」
激しく動いていたジョルジュが足を止め、のん気な声を発したのは
戦い始めてから十分程が経過した頃だった。
( ゚∀゚)「何で俺達が戦ってんだ……?」
lw´‐ _‐ノv「は?」
(;´・ω・`)「君って奴は……何も知らずにここへ来てたのかい?」
同じく動きを止めたショボンが溜息を吐く。
(´・ω・`)「イクヨリとかいう偉そうな奴に言われただろう?
ハインや渡辺さん達を殺されたくなければ、敵の足止めをしろって。
ついでに敗北すれば命はないと思えって」
( ゚∀゚)「……おぉ!」
手を叩き、電球か何かを頭の上に出現させる。
しかし残念ながら、その表現が完全に間違っていることにツッコむショボンではなかった。
何故ならば
( ゚∀゚)「つまりどういうことだ?」
(´・ω・`)「うん、想定の範囲内だよ」
と、完全にジョルジュの思考を読んでいたりするからだ。
- 101: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:12:10.66 ID:xv3lMgtl0
- そんな漫才じみた二人に、シューが冷静なコメントを発する。
lw´‐ _‐ノv「……仲、いいね」
(´・ω・`)「冗談は止してほしい。
これは僕がジョルジュを馬鹿にしているだけだ」
(#゚∀゚)「んだとぉ!?」
(´・ω・`)「まぁまぁ、落ち着くんだ。
僕が君を馬鹿にしようとしているだけで、まだ君は馬鹿じゃないんじゃない?」
( ゚∀゚)「はっ、そ……それもそうか!
だが俺様を馬鹿にすることは出来ねぇぞ! 俺様は優秀なんだからな!」
(´・ω・`)「……というわけなんだけど」
lw´‐ _‐ノv「何となく理解。
つまり馬鹿は馬鹿だから馬鹿だと気付かないわけだ」
(;゚∀゚)「んん? 馬鹿が……カバ? 何だって? 何語だ?」
(;´・ω・`)「君、まさかとは思うけど、わざとやってないよね?」
やれやれ、と肩をすくめるショボン。
こりゃ駄目だ、と半笑いで首を振るシュー。
- 103: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:13:46.48 ID:xv3lMgtl0
- (´・ω・`)「で、まぁ……こうして僕達に付き合ってもらってるわけだけど」
lw´‐ _‐ノv「うん」
言葉に、シューは刀を構え直す。
既に指はトリガーに掛けられていた。
(´・ω・`)「やっぱり。 君は相当に強いよね?
ちょっと聞きたいんだけど……僕らの戦闘力、どうなのかな?」
lw´‐ _‐ノv「別に悪くはないと思うけど」
(;´・ω・`)「うわ、完全に上から目線だ。 もしかして君が本気になったら僕らなんて瞬殺?」
lw´‐ _‐ノv「うん」
即答され、ショボンは苦笑した。
(´・ω・`)「これでも一ヶ月暇だったから色々鍛えたつもりなんだけどな。
嫌々だけど、ジョルジュともコンビネーションの訓練はこなしたし」
(#゚∀゚)「俺様の方が嫌だっての!!」
lw´‐ _‐ノv「嫌々なのに、どうして?」
(´・ω・`)「ブーンはドクオと、クーさんはペニサスさんと訓練を始めちゃったものだからね。
ハインや渡辺さん、貞子さんは早々に別施設へと連れて行かれちゃったし。
つまり余り者同士ってことさ」
lw´‐ _‐ノv「ふぅん……」
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:15:14.42 ID:xv3lMgtl0
- 手応えはある。
おそらく、そこらで暴れている世界政府兵よりも強いはずだ。
その理由として考えられるのは
lw´‐ _‐ノv(……物理法則を無視して自律する鎖に、距離を無視して穿つ槍。
どちらも『空間』を無視する属性同士、とても相性が良い)
ウェポンの性能もあるが、それよりも彼らの才能の方が理由としては強いだろう。
そして更に大きな理由があった。
この二人、仲が悪いように見えて、実は互いをよく見ているのである。
ショボンはやんちゃなジョルジュを、出来るだけ視界内に収めて行動している。
ジョルジュは常に前へ前へと出るが、時折ショボンの位置を確認するように振り返っている。
前者は『足を引っ張られたくない』という心配。
後者は『背後からの誤爆の回避』という警戒。
そこに信頼はない。
しかし、確かな信用はある。
つまり互いに頼ってはいないが、その能力は認め合っているのだ。
lw´‐ _‐ノv(だから、自然なコンビネーションが確立している。
計算された人工的な動きじゃなく、感覚から生まれる天然の動き……)
非常に読み難い、とシューは思う。
こればかりは知識や経験では予測出来ないからだ。
悔やむべきは、本人達にそのつもりはないという点だろう。
- 109: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:17:19.84 ID:xv3lMgtl0
- もしこれに『信頼』が加わればどうなるだろうか。
lw´‐ _‐ノv「……そりゃあ」
面白いことになりかねないだろう。
想像し、シューの口元に微かな笑みが浮かんだ。
(;´・ω・`)「うーん、何か笑ってるけどアレは何を意味するんだろう」
( ゚∀゚)「思い出し笑いじゃね?」
(´・ω・`)「こんな時にかい? まさか、君じゃあるまいし」
( ゚∀゚)「あぁ? じゅざけんな――って昔こんなセリフあったよなwwwwwwうひゃひゃwwwwww」
(;´・ω・`)「…………」
コイツもう駄目だろ、とショボンが心の片隅で諦めかけた時。
空から高音が響いたのを聞く。
(´・ω・`)「?」
いや、音は高いものだけではない。
重厚な駆動音や、高熱が大気を焼く音も混じっている。
- 110: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:18:46.59 ID:xv3lMgtl0
- lw´‐ _‐ノv「!!」
逸早く空を見上げたのはシューで、ジョルジュとショボンがそれに続く。
(´・ω・`)「あれは……?」
(;゚∀゚)「お、おいおい、今度は青色かよ」
今度は、ということは、以前にも同じようなものを見ているということだ。
それもそのはず。
彼らもまた、ミカヅキの駆る赤いEMAを目撃していたのだから。
lw´‐ _‐ノv「……ミツキ」
見上げ、シューは呟く。
おそらくは赤いEMAの下へ向かっている青いEMAを目で追う。
高速だ。
一度たりとも躊躇を見せない動き。
ただ真っ直ぐに、行くべき戦場を目指して空を走る。
その姿は、突き抜けるような青空に酷く霞んで見えた。
- 114: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:20:26.07 ID:xv3lMgtl0
- 反応があったのは、世界政府本部を出てから数分後。
まるでこちらを迎えに来るかのように、二機分の魔力反応がレーダーに表示された。
しばらく待つと、正面ウインドウに表示される景色に二機の機体が飛んでくるのが見える。
『――久しぶりだな』
『御久し振りです、ミツキ様』
ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、久しぶりだね……ミカヅキ、キオル」
かつてと変わらない声に、ミツキは軽い苦笑を浮かべる。
しかしすぐに無表情へと変化し
ハ(リメ -゚ノリ「二人が相手かい?」
『いや……彼女は関係ない。
キオル、ここから離れろ』
『畏まりました。 御武運を』
赤い機体の傍にいた黒色の戦闘機が、名残惜しむようにゆっくりと離れていく。
充分な距離をとったと見るや否や
『――さぁ、始めようか』
- 120: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:21:41.59 ID:xv3lMgtl0
- その光景と言葉に、ミツキは小さな懐かしさを覚える。
同じだ。
この世界へ来る直前、あの焦げ付くような太陽の下で戦ったあの時と。
世界交差とやらが、あと数秒遅ければ自分は今ここにはいなかっただろう。
数奇な運命だ。
何せ死ぬと思った次の瞬間には、この世界の森の中へと放り込まれていたのだから。
ハ(リメ -゚ノリ「…………」
感謝すべきか、と思い、違うな、と首を振る。
あの時点で死ぬべきだった自分が生きているのは、確実に間違いだろう。
そして、その数奇な運命を終わらせるための言葉を吐いた。
ハ(リメ -゚ノリ「一ついいかな?」
『命乞いか?』
ハ(リメ -゚ノリ「いや……戦いを止める気はないかな、と思って」
『ふざけるなよ裏切り者。
何のためにここまで追って来たと思っている』
ハ(リメ -゚ノリ「だろうね」
『貴様にはこの世から消えてもらう。
かつての仲間だろうが何だろうが、貴様は俺達の隊長を殺したのだから』
- 122: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:23:19.71 ID:xv3lMgtl0
- ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、そうだ。 僕が殺した」
『ならば話は終わりだ。 以上も以降も何もない』
通信は繋げたまま、両腕に握った二本の剣を音立てて構えた。
『――EMA−02「ウルグルフ」、行くぞ』
ハ(リメ -゚ノリ「名乗られたからには名乗り返さないとね」
レバーを握し締める。
深い呼吸の後、ウルグルフと同じように構えをとりつつ
ハ(リメ -゚ノリ「EMA−01『リベリオン』。
過去を清算するため、今一度駆ることを許してほしい」
身を動かす。
意思どおりに動くリベリオンの右腕が、前方へと突き出された。
同時、ウェポンパネルの中のある武装を選択する。
ハ(リメ -゚ノリ「空間転送――纏縛――固定――」
紫電が走った。
空の一部を染め上げ、一点に集中する。
- 124: ◆BYUt189CYA :2007/09/30(日) 20:24:35.50 ID:xv3lMgtl0
- そこから生まれたのは柄。
まるで空間を割って出現したかのようなそれを、青い腕が掴んだ。
引き抜く。
き、というガラスを切るような音が、大空に木霊した。
不可思議な光景の中から出てきた武器の形は、薙刀のような刃を持っている。
準備完了を示すように動きを止めると、ミカヅキの暗い声が届いた。
『――始めようか』
ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、終わらせよう――!」
赤と青の色が激突を開始したのは、その言葉の直後だった。
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