( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:13:31.81 ID:8X8P7LJL0
- 簡単?
どこがだ。
ミツキは言いかけ、その言葉を慌てて呑み込む。
今は迂闊な発言は避けるべき状況であることを思い出したからだ。
相手は人の身をしているが、異獣を名乗っている。
仮にもし異獣でなくとも関係者ならば、その力は強大なものだろう。
実際、赤髪の男はミカヅキの駆るウルグルフの一撃を片腕で受け止めている。
迂闊には手を出せないし、反論も出来ない。
メ(リ゚ ー゚ノリ「まぁ、事情は知る必要がないってね。
とにかく戦闘行為を止めてくれると嬉しいんだよなぁ」
ハ(リ;メ -゚ノリ「…………」
どう答えるべきか、と逡巡した時。
『断る』
と、ミカヅキの声が空に響いた。
対して赤髪の男は、その薄ら笑いを崩さずに
メ(リ゚ ー゚ノリ「……何だって? わんもあぷりーず」
『断る、と言った。
貴様が何であろうと、私とミツキの戦いに割って入る権利などない』
- 112: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:15:34.79 ID:8X8P7LJL0
- メ(リ゚ ー゚ノリ「へぇ、ここで断っちゃうかね。 邪魔しちゃうよ?」
『ならば貴様を斬ってから、ゆっくりと決着をつけてやるさ』
ハ(リメ -゚ノリ「……そうだね」
あぁ、とミツキは小さな溜息を吐いた。
そうだった。
ミカヅキと自分の戦いは、絶対にここで終わらせなければならないのだ。
彼もそれを望んでいるし、きっと自分も望んでいる。
なら、迷う必要は無い。
阻害する者は全て排除するだけでいい。
理由が何であれ、自分達の戦いを邪魔するならば、それを敵と見ても良いのだ。
『行くぞ、ミツキ。
最後になるだろうが……共闘だ』
ハ(リメ -゚ノリ「……解った」
懐かしさを感じる。
かつては、この男と肩を並べて戦っていたのだ。
EMAが完成する前から、レモナの父が自分達の隊長になる前から。
ミカヅキの言う通り、これが最後の共闘だろう。
あの赤髪の男を倒せば、次は自分達との決着をつけなければならないのだから。
正真正銘、彼と肩を並べて戦える最後の機会。
- 115: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:17:23.35 ID:8X8P7LJL0
- ならば、愉しもう。
戦いを愉しむという戦士としては模範的であり禁忌的な――しかし誰もが一度は思う感情。
ミツキにとっては、ミカヅキと共に戦えるからこそ感じられる特別な愉悦。
どうせこの後で死ぬのだから、今この時くらいは無礼な感情を持っても構うまい。
『貴様は私をサポートしろ……あんな男、一瞬で斬り捨ててくれる……!』
ハ(リメ -゚ノリ「解ってるよ」
しかし
メ(リ゚ ー゚ノリ「――なら、仕方ねぇなぁ」
その愉悦は、いつまで経っても感じることが出来なかった。
メ(リ゚ ー゚ノリ「ま、最悪、機体だけ残存してりゃあいいって姉貴も言ってたし――」
薄ら笑いが獰猛な笑みに変わった時、ミツキの全てが終わりを告げ始める。
メ(リ゚ ー゚ノリ「恨みっこ無しな」
消失。
擦過。
破壊。
- 117: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:19:20.85 ID:8X8P7LJL0
- 『なっ――!』
ハ(リ;メ -゚ノリ「に……!?」
何が起こったのか、解らなかった。
全ては一瞬の出来事。
赤髪の男の姿が消えたと思った瞬間、少し離れた赤いEMAの装甲が砕け散ったのだ。
メ(リ゚ ー゚ノリ「思ったより脆いな」
いつの間にか、赤髪の男がウルグルフの肩上に立っている。
その足下にある肩部装甲は、既に正常な形を保っていなかった。
ハ(リ;メ -゚ノリ「何だ、あれは……!?」
注目すべきは四肢。
まず目に付くのは、赤髪の男の足首が高速で回転しているという点。
いや、正確に言うならば、回転しているのは足首に巻かれたナットのような金属だ。
そして腕。
今まで羽織った黒布で隠されていたので解らなかったが、肩から先が無骨な機械によって包まれている。
肘に当たる部分から、蒸気のような白い煙が勢いよく吐き出されていた。
- 122: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:21:29.04 ID:8X8P7LJL0
- メ(リ゚ ー゚ノリ「ハハ、おもしれぇだろ?
この世界に来る前に戦った、ある女の武器からヒントを得て作ったんだけどな。
これがなかなか使いやすくて気に入ってんだわ」
ハ(リメ -゚ノリ「女……?」
メ(リ゚ ー゚ノリ「おぅ、不死――」
『おぉぉぉ!』
言葉を遮り、赤いEMAが身を回して赤髪の男を振り落とす。
空中へと放り出された男は、しかし姿勢を整え
メ(リ゚ ー゚ノリ「っとぉ、あっぶねぇな。
これだから人間は野蛮なんて呼ばれんだよ」
宙に浮かんだ。
ハ(リ;メ -゚ノリ「…………」
おそらく足首の回転運動が生み出す浮力を利用しているのだろう。
事実、男の両足先には高速で風が渦巻いているのが目視出来る。
問題は、その機構にどれほどの技術が詰め込まれているのか、だ。
- 124: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:23:32.72 ID:8X8P7LJL0
- 『ミツキ、考えている暇はないぞ』
ハ(リメ -゚ノリ「解ってる。 けど、嫌な予感がするんだ」
『相変わらず臆病――いや、慎重な奴だな。
やってみなければ解らんこともあるのさ……!』
ハ(リ;メ -゚ノリ「ミカヅキ、待つんだ!」
制止の言葉を振り切るように、赤いEMAが動き始める。
稼働は一瞬。
駆動音と同時にブースターに光が灯った。
同時、蓄えられた魔力が、EMAという機体の持つ重量を一気に押し出す。
爆発的な推力と共に放たれるのは、『先の先』を獲るための神速二刀剣。
単純な理屈だ。
如何なる力を持った相手だとしても、反応出来ない速度で斬りつければ勝負は決する。
力とは結局のところ力であり、しかし表に出なければ無力に等しい。
故にミカヅキは速度を選んだ。
何者さえも追いつけぬ速度さえあれば、それこそ最強なのだ、と。
事実、速度重視にカスタマイズされたEMAに乗ってからは無敗を誇っていた。
- 127: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:24:46.88 ID:8X8P7LJL0
- しかし、だからこそミカヅキは失念している。
速度的な意味での最強となった彼は、多大な自信と引き換えに――
『――はぁぁ!!』
高々に響く剣音。
赤髪の男との間にあった、数十メートルという空間を一息で無にする。
無論、その先にいた不敵に笑う男など障害にさえならない。
ハ(リメ -゚ノリ「やった、か……?」
結果を見たミツキは、しかし疑問を放った。
先ほどまで確かにいたはずの赤髪の男が消えているのだ。
おそらくは弾き飛ばされたのだろう。
あの突撃を正面から喰らい、平然としていられるとは思えない。
- 129: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:26:30.75 ID:8X8P7LJL0
- ハ(リメ -゚ノリ(でも奴は『異獣』を名乗った……死体を確認するまで安心は出来ない)
すぐさまEMAのコンソールを操作――与えた衝撃を計算する。
吹っ飛んだと思われる先を予測し、その周囲を重点的に走査した。
『――ッ!?』
ノイズと異音が聞こえたのは直後。
しかも、まったく想像していなかった方角からだ。
何事かと視線を向けた先では
ハ(リ;メ -゚ノリ「っ!?」
斬撃を見舞ったはずの赤いEMAが、その巨体を震わせている光景。
それだけではない。
機体の胸部には
メ(リ゚ ー゚ノリ「よいしょーっと! あらよっと!」
笑いながら、素手で装甲を『剥がしている』赤髪の男の姿があった。
- 133: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:28:31.59 ID:8X8P7LJL0
- 『き、貴様……!?』
メ(リ゚ ー゚ノリ「いやぁ残念だったねぇ、あれくらいじゃ俺は殺せないのさ」
その間にも、めき、という金属がひしゃげる音が響き続ける。
左手をEMAの首元に引っ掛け、右手で次々と装甲を剥がしている姿はまるで――
いや、比喩など不可能。
あの男が行っている所業は、それこそ類を見ない未曾有の暴挙である。
『どけ!』
ミカヅキが赤髪の男を引き剥がそうとするが、それも敵わず。
しかも身軽に回避していくついでに、その反動で更に装甲を『分解』していく始末だ。
ハ(リ;メ -゚ノリ「ミカヅキ、すぐ助けに――」
『近付くな!』
ハ(リ;メ -゚ノリ「!」
『もう間n――』
全ての言葉を聞く前に通信が途切れた。
いや、通信するための機材が破壊されたのだろう。
遂に赤髪の男が、胸部装甲を引き剥がしてコックピットを露出させたのだ。
- 135: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:30:22.62 ID:8X8P7LJL0
- メ(リ゚ ー゚ノリ「はぁい、初めまして」
(;メ _)「EMAの装甲を……化物め!」
もはや電子上の会話ではない。
一方は獲物を前にした笑みを浮かべ、一方は最大限の警戒の色を見せる。
ミカヅキの腕は、既にレバーを離していた。
腰に吊ってあった銃器に手を伸ばすが
メ(リ゚ ー゚ノリ「おおっと、動いちゃ駄目だぜぇ? 動かなくても撃っちゃうけど」
言いつつ、慌てた様子さえ見せずに機械に包まれた腕を突き出す男。
同時、手首から先が腕の中へと引っ込む。
完成した空洞は、どう見ても銃口だ。
メ(リ゚ ー゚ノリ「素直にこっちの言うことを聞いていれば、もう少し長く生きられたのにな?」
(;メ _)「何が目的なのだ、貴様は……!?」
不可解の一言がミカヅキの頭を巡る。
- 139: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:31:50.26 ID:8X8P7LJL0
- 異獣は世界の敵だ。
ならば、そこに住む人間も敵である。
しかし赤髪の男は『戦いを止めろ』と言った。
まるでここで死なれるのを嫌がっているような、そんな意味をこめて。
メ(リ゚ ー゚ノリ「はっ、アンタが今知ったところでどうしようもねぇさ」
(メ _)「ならばここで刺し違えても――!」
メ(リ゚ ー゚ノリ「あばよ」
閃光。
轟炎。
爆音。
コックピット内に突っ込んでいた腕の先から、何かが飛び出して爆発した。
ハ(リ;メ -゚ノリ「ミカヅキっ!?」
反動で赤髪の男は空中へと投げ出され
主と機能を失った赤いEMAは、そのまま重力に引かれるようにして落下を始める。
ドス黒い煙の尾を引きつつ、森の中へと落下していく様は堕天と言えた。
- 145: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:33:23.92 ID:8X8P7LJL0
- ハ(リ;メ -゚ノリ「ミカヅキ……!? おい、返事をしろ!!」
返ってくるのは沈黙。
直後、何か重い物体が墜落した音が響いた。
ハ(リ;メ -゚ノリ「ミ、ミカヅキ……!?」
メ(リ゚ ー゚ノリ「おっと、ちょっと火力が強すぎたかぁ?
ま、コックピットを換装すりゃあ使えるでしょ」
ハ(リ#メ -゚ノリ「貴様ぁぁぁぁ!!」
メ(リ゚ ー゚ノリ「おいおい、感謝くらいはしてくれよ。
アンタを殺そうとした男を殺してやったんだぜ?」
ハ(リ#メ -゚ノリ「そこを動くなッ!!」
薙刀を構え、一気に押し出す。
フレームや機構が軋みを挙げるが、それを無視して赤髪の男へと向かう。
どうせあと数分で動けなくなるのだ。
ならば、それまでにあの男を落とすことに全身全霊を――
メ(リ゚ ー゚ノリ「いいねぇ、熱血だねぇ、俺そういうの嫌いじゃないよ?」
ハ(リ#メ -゚ノリ「その笑みがぁぁぁ!!」
ブーストの出力を最大にすると同時、全力を以って武器を振るう。
EMAの耐えられる限界を軽く超えた速度は、薙刀の先端から水蒸気の尾を引かせた。
- 149: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:34:50.62 ID:8X8P7LJL0
- メ(リ゚ ー゚ノリ「はン」
言葉を残し、男が消え、刃が通過していく。
耳障りな音が響いたのは直後。
続いて、真上から太陽の光が降り注いだ。
メ(リ゚ ー゚ノリ「おっす、初めまして! オラ、ごk――って、お?」
ハ(リ;メ -゚ノリ「……!!」
ミツキは先を読んでいた。
赤髪の男が、このEMAの装甲をも剥がしにかかるだろう、と。
機体の損傷を最小限に抑えたいのならば、搭乗者を直接殺すのが手っ取り早い。
ミカヅキの時の『火力が強すぎた』という発言から、もっと小規模な砲撃のはずだったのだろうが。
ともかく、あの男が動きを止めるのは今。
装甲を剥がし、腕に作った銃口を向ける瞬間だ。
故に、ミツキはレバーを離していた。
腰にある魔法武器であるブレードを抜き放ち、覗かせた男の顔面へと突き出していたのだ。
- 153: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:36:11.80 ID:8X8P7LJL0
- メ(リ゚ ー゚ノリ「わぉ!?」
それは首を掠るのみに終わる。
偶然か、それとも男の持ち得る超反応故か。
果たしてどちらなのかという答えを、ミツキは永遠に知ることはなかった。
メ(リ゚ ー゚ノリ「あらら、惜しかったねぇ……いや、悪くはないと思うよ?
単純に相手が悪かっただけさ」
ハ(リ;メ -゚ノリ「くそっ……くそっ!!」
メ(リ゚ ー゚ノリ「んじゃ、さよなら」
ハ(リ;メ -゚ノリ(レモナ――!!)
腕の先が光る。
それが最大限まで高められ、熱を感じた時。
ミツキの意識は、テレビを消すかのような儚さを以って黒色に染められることとなった。
- 156: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:37:41.37 ID:8X8P7LJL0
- 爆発する。
今度は、青いEMAが墜落していく。
先ほど赤いEMAが落ちた地点とは、少し離れた場所へと。
その光景を、森の中にいた全員が見届けることとなった。
魔法世界の技術の粋を集めて作り上げたはずの。
見るからに強力そうな人型兵器の、しかしあっさりと撃墜される様を。
無論、レモナもそれを目撃していた。
|゚ノ;^∀^)「あ……あぁ――!?」
(;´∀`)「そんな、ミツキさん!?」
|゚ノ;^∀^)「う、嘘よ……ミカヅキ様が、ミツキがやられるなんて……嘘に決まって……」
現実だ。
目で見た光景こそが、事実以外に他ならない。
魔法世界で名を馳せた二人の男は、取り合えるはずの手を取らぬまま散っていくこととなったのだ。
|゚ノ ;∀;)「死ぬわけないじゃない……あんなに強い二人が、死ぬなんて――」
- 161: ◆BYUt189CYA :2007/10/02(火) 21:38:59.67 ID:8X8P7LJL0
- ざわめく風の中、音が聞こえてくる。
男の笑い声だ。
見上げれば、赤髪の男が両腕を仰ぐように広げて身を震わせている。
事実だと言わんばかりに。
ミカヅキとミツキは、自分が殺したのだと言わんばかりに。
音は歓喜の声に等しい。
そして、それは二人の死を証明しているようなものだった。
(;´∀`)「……レモナ」
|゚ノ ;∀;)「いや、いやよ……」
肘で耳を塞ぐようにして頭を抱え
|゚ノ ;∀;)「いやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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