( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

6: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:03:06.33 ID:BvYZC0rc0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
(`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚] ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 
从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv
所属:四世界
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:強襲中

( <●><●>) |(●),  、(●)、| / ゚、。 /
( ̄ー ̄) ( ^Д^) (゜3゜) ,(・)(・), ┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |  ( ´∀`)
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) ('、`*川 从'ー'从 川 -川 <ヽ`∀´>
所属:世界運営政府
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:迎撃中

メ(リ゚ ー゚ノリ 〈/i(iφ-゚ノii
所属:異獣
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:???



9: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:05:47.77 ID:BvYZC0rc0
第三十九話 『道の果てに見たものは』

/ ゚、。 /「――がっ、ふ」

こみ上げて来る不快感。
そして同時に、血の塊が口から吐き出された。

/ ゚、。 /「お、前は……」

意識は当然のようにある。
胸を貫かれた程度で、すぐに絶命するような身体ではなかった。

傷を負ったことに関しては特に何も思わない。
気付かれずに背後に立たれた、という事実こそが最大の問題である。


从ξ゚ -゚ノリ「…………」


背後に寄り添っていたのは一人の少女だった。

そして抱き締めるようにして握っている『黒い大鎌』で、ダイオードの背中を突き刺している。
雰囲気としては矮小であるが、だからこその異常にダイオードは笑みを浮かべた。



10: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:08:00.90 ID:BvYZC0rc0
/ ゚、。 /「お前、異獣か……?
      ふン……だとすれば、我らが思っていたよりも早かったよう、だな」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

答えはない。
しかし応じる動きとして、大鎌がゆっくりと引き抜かれる。
それはダイオードの胸中を蹂躙するような動きで、細胞や血管を削ぎ取るような。

(#゚;;-゚)「ダイオードっ!?」

やっと異常を認識したのだろう。
前方から、軍神の驚愕した声が耳に飛んできた。

/ ゚、。 /「手を出すなよ、軍神……!」

(#゚;;-゚)「何を――」

/ ゚、。 /「コレは――私の待ち望んだ、獲物さ……っ」

苦しげな声とは裏腹に、素早く身を翻すダイオード。
しかし大怪我は大怪我だ。
如何に彼女が超人だとしても、地面に散る鮮血はどうしようもない。

/ ゚、。 /「ふン、この程度のハンデなど……掛かってこい、異獣……!」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

構えられた黒い巨剣と、黒い大鎌。
対比のようであり、しかし同属のような雰囲気だ。



13: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:09:58.88 ID:BvYZC0rc0
(;゚д゚ )「何だ、あの女は? ダイオードにあんな容易く一撃を入れるなど……」

(´<_`;)(あの外見、まさかとは思うが――)

( ・∀・)「…………」

(#゚;;-゚)「……ッ」

静観を決め込んだモララーとは裏腹に、軍神は吐き捨てるような吐息を残して顔を背けた。
もはや結果が見えている、と言わんばかりに。

それもそのはず。

この時点で勝負は決しているのだ。

胸部を刺し抜かれたダイオードと、無傷の少女。
構えられた得物、そして両者の身体から滲み出る気配。
いくらダイオードが超人であろうとも、対する少女もまた超人であれば結果は明白。

武装的に、身体的に、精神的に――

そのどれかが劣っている方が、負ける。



16: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:12:00.89 ID:BvYZC0rc0
/ ゚、。 /「ッ!」

まず攻めたのはダイオードだ。
リズムよく胸から血を噴き出しつつも、彼女は低い姿勢で走る。

薙ぐ黒閃。

しかし当たらない。
少女は、ふわり、という音が聞こえてくるような軽いステップで後退した。

/ ゚、。 /「だが、そこが……!」

黒剣の切っ先を向け

【GU−EX/Lo 『砕』】

かつて軍神の知人――つまりレモナの父が用いていた武装を発動させる。
一瞬の震動後に放たれたのは高密度の魔力弾。
未だ着地姿勢の少女目掛けて、周囲物質を『砕き』ながら走り

着弾、続いて轟音。

効果範囲内の全ての物質を粉砕しつつ、光は少し大きな半円を描いた。

文字通り粉々となりつつある様々な物質が砂塵と化す。
砂塵は衝撃波に乗り、周囲に撒き散らされることとなった。



19: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:13:54.94 ID:BvYZC0rc0
(;´_ゝ`)「うぉ……!?」

その迫力たるや、先ほどまでの比ではない。
速度も威力も容赦も何もかもが段違いだ。

(;゚д゚ )(これが、ダイオードの……!)

そこにかつて見た面影は無く。
ヒートと自分の面倒を見てくれた騎士は何処にもいなかった。
在るのは歯を剥き、加減無き攻撃を続ける悪鬼。

もう戻れないのか、思うと同時、最初から違ったのだ、と悟らされる光景だった。

/ ゚、。 /「これで片足か片腕はもらった、か」

手応えはあった。
いや、あるように攻撃した、が正しい。

初撃から本気であった。
異獣相手に加減は無用。
『奴ら』は人間ではなく、そして生物として見てもいけない存在だ。

/ ゚、。 /(……いや、それは私も同じか)

巨剣を、そして血を流す胸元を見て思う。
既に身は朽ちてもおかしくないはずなのに、未だ活動していること自体が人間ではない証拠だろう。
今も刻一刻と命が削られているのだが、それに対する焦燥はまったくない。



22: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:15:40.27 ID:BvYZC0rc0
駆ける。
向かう先は灰色の煙だ。
未だ内部にいるはずの少女に、更なる攻撃を加えるため走る。

相手が軍神や他の者ならば、その姿が見えるまで待機もありえただろう。

しかし今回は別格のケースだ。
加減などすれば、逆にこちらが狩られてしまう。

奴を人だと思うな。
人の形をしていても、中身は別物。

こちらも人を捨てた身なれば、同情も容赦も在ってはならない。

/ ゚、。 /「――!」

その時だった。
進む視界がスローとなり、ふとした感情が頭に浮かぶ。
それは今まで一度も考えた事のない思いであり

/ ゚、。 /(いつからだろう……人としての何かを失ったのは)

異獣と接触したが故に出た疑問だった。


だからこそ、ダイオードは触れてはならない記憶に手を出してしまう。



28: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:17:47.20 ID:BvYZC0rc0
/ ゚、。 /(……? いつだ?
      私はいつ生まれた? 何をして育った? 誰と会った……?)

無い。
憶えているはずの記憶が無い。
在るのは、ただただ人を斬り殺した記憶だけ。

しかし確信がある。

何か、大切なモノを忘れてしまっているような――

その時、砂塵が動いた。
深い思考に入ろうとしていたダイオードは、対する反応が一瞬だけ遅れてしまう。


――致命的だった。


灰色の煙を突き破って伸びるは黒色の線。
先端には鋭利な刃を持つ鎌頭。

端的に言えば、少女の持つ大鎌の柄が伸びているのだ。



31: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:20:10.00 ID:BvYZC0rc0
自然と重心が遠くなり、その分だけ扱い難くなるものの、遠心力の力を充分に受けられる形状。

その刃が走る。
ようやくそこでダイオードが状況を理解し、防御するために剣を構えるが――

轟。

鎌は言うまでもなく切断するための武器である。
刃は敵の防御を掻い潜り、引っ掛けるようにして斬り裂くための形状だ。

ただ、剣の腹を向けるだけの防御で防げる代物ではなく

/ ゚、。 /「ぐっ――あ!?」

結果として次の瞬間、ダイオードの右腕が地面へと落ちることとなる。

(;´_ゝ`)「うぉ!?」

(;゚д゚ )「ダイオード!!」

どちゃ、という粘着質な音に、がしゃ、と重い金属が落ちる音が被さった。



37: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:22:25.72 ID:BvYZC0rc0
从ξ゚ -゚ノリ「…………」

晴れかけた煙から少女が飛び出す。
伸ばした柄を元の長さに縮めつつ、ダイオードにトドメを刺すため鎌を振りかぶった。

/ ゚、。 /「くっ!」

腕を拾う暇はなかった。
全力を以って退避する。
ただし、心の内に出現した違和感をも引き連れて。

/ ゚、。 /(何、だ……これは――)

鎌を持った少女ではない。
頭の中に浮かんでくる、覚えのない景色のことだ。


背の丈ほどあるランスを背負った女――

こちらを見上げる三人の制服を着た男女――

暗い何処かの台座に刺さる黒色の巨剣――


/ ゚、。 /「あ……!? うぁ!?」

ヒビが入ったような激痛が脳に走る。
何か思い出すべき、しかし思い出してはならない記憶が引き摺り出されようとしていた。



43: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:25:13.94 ID:BvYZC0rc0
/ ゚、。 /「何なんだこれは!? 私は何を知って――」

言葉は続かない。

鈍い音と共に衝撃が走った。
上半身を蹂躙したそれは、肋骨と内部の臓器を容易く断ち切る。
視線を下げれば脇腹に、深々と刃が抉り込まれている光景が目に入った。

/ ゚、。 /「がふっ」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

痛いというよりも、熱かった。
切断面に触れる刃は氷のように冷たいはずなのに、感じる熱は酷く高い。

喉元を上がってきた血塊を拒もうとして、しかし吐き出す。

/ ゚、。 /「げはっ……! がふっごぁ……!?」

声が思うように出ない。

逆流した血液が、食道どころか気道にさえも侵食している。
何より脇腹から上向きに刺さった刃が、肺の片方を破壊していた。



47: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:27:03.66 ID:BvYZC0rc0
傷は言うまでもなく深い。
下手に動けば上半身が斜めに剥離してしまいそうだった。

普通なら激痛でショック死するはずなのだが、ダイオードの場合はそうもいかない。

身が刺激によって痙攣し、目玉が飛び出そうになる。
しかし意識を失えない。
バチバチと火花が脳裏で散り、その度に気の狂いそうな不快感が身を襲った。

/ ゚、 /(――――っ――?)

神経が焼き切れそうな高熱の中で、ダイオードは一つの記憶の扉を開く。
死に瀕したが故に開いたのか、それとも今まで開こうとしなかっただけなのか。

どちらにせよ、ダイオードは自らが封印していた真実――過去を知ることとなった。

/ ゚、 /(これ……は――っ?)

それは素晴らしい記憶だった。
今までの記憶など、比較することすら恥と思えるほどの。

ライバルがいて、己を慕ってくれる人がいて、己もまた慕う人がいて。
見るも美しい都市に住み、毎日のように皆と顔を合わせて切磋琢磨した日々。

何故、このような素晴らしきものを忘れていたのか、と思った。
忘れていた自分を呪いたい、とさえ思った。



53: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:28:37.15 ID:BvYZC0rc0
/ 、 /「あ”――あ”ぁ”」

機能を失った目の奥に熱を感じつつ、しかし出た声は不気味な呻き。
もはや感動の声さえも表わすことが出来ない。

それがとても悲しくて、しかし思い出せたことが嬉しくて。

身体の内から際限無く溢れる血に混ざり、一筋の透明な液体が流れたのは誰も見ることが出来ず。
結果、その意味を知るのはダイオード本人だけとなる。

あぁ、と溜息を吐きたかったが、出てきたのは血の塊だけだった。
クリアとなった頭で、やっと思い出せた記憶と現状を吟味する。

/ 、 /(あぁ、私は約束を、果たせなかったのだな……。
      酷く、歪に寄り道ばかりして――まったく、情けない……)

身を動かそうとし、バランスを崩して仰向けに倒れる。
もはや彼女は起き上がることさえも諦め、最後の一回とばかりに深く息を吸った。

/ 、 /「ツー……ハ、イン……ジョr、ジュ……」

それは誰かの名前で

/ 、 /「そし……t、……クー、ルヴァ、ロn……また、いt――――」

一息で吐かれた言葉は血にまみれ、幸か不幸か周囲の人間に伝わることはなかった。



55: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:30:25.28 ID:BvYZC0rc0
力が抜けたかのようにダイオードの身体が沈む。
心臓から発せられるはずの鼓動が止まり、彼女の死を如実に表現しようとしていた。

(;゚д゚ )「ダ、ダイ、オード……?」

(#゚;;-゚)「…………」

問いかけに答えなどあるわけもなく。
軍神は、その呆気ない死に様を目に焼き付けるように睨み続けた。


ここに一人の騎士が死ぬ。


過去を捨て、しかし過去の何かのために戦っていたはずの彼女は、いつしか酷く歪んでしまう。
敗者の代表という名の勝者になり続け、強き者をひたすらに求め続ける生き様は血に汚れてしまっていた。

その人生は決して誇って良いものではなく、そして過去にも誇れないもので。
何故かと問われれば、対する答えは一つであろう。

――約束を、守れなかったから。

かつて果たそうとしたそれは、彼女にとって何よりも最優先すべきものだったのだ。
しかし徐々に歪んでいく未来に絶望し、叶うことはないのだと悟ってしまう。



59: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:31:52.89 ID:BvYZC0rc0
だから彼女は、いつしか記憶を自身の根底に封印した。

約束などという記憶が無ければ、彼女に残る目的は『強くなること』だけだったのだから。
後は黒い巨剣――ブロスティークに身を委ね、ただ秩序のためにと戦うだけでいい。
やるべきことを忘れ、戦いに明け暮れた人生は確かに虚しいものである。
だが――

/ ー /「――――」

だが、約束を果たそうとして走った記憶は、決して間違いではないのだ。


ここに一人の騎士が死んだ。


顔は生き様を示すかのように血に塗れ。
しかし安堵したかのように、その表情には安らかな色が満ちている。


今際の際に思い出した大切な記憶と共に、彼女――ダイオードは静かに散っていった。



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