( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

62: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:33:29.77 ID:BvYZC0rc0
いつの間にか音は止んでいた。
世界政府本部入口、白い庭園のような場所は沈黙に包まれている。

そこにいる人間を一人減らしたまま。

( ゚д゚ )「ダイオード……」

彼女に何があったのかを知ることは出来ない。

ただ、確かに何かがあったのだ。
ミルナに会う前――それこそ英雄になる前から何かがあったのだ。

( ゚д゚ )(アンタは一体誰だったんだ……?)

もはや届かない問いかけは心の内に虚しく響くのみ。
その答えを、ミルナは最期まで知ることはなかった。



67: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:34:49.66 ID:BvYZC0rc0
( ・∀・)「――さて」

ダイオードの死を遠目に確認し、モララーは緊張を解かずに吐息する。
その視線は、一人の少女へと向いていた。

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

美しい銀髪。
そして前髪に垂れる一房の金の色。
背丈は少女といえる低さで、しかし手に持つ漆黒の鎌は大きい。

変わったようで何も変わっていない現状に、全員が再度緊張を纏う。
確かに彼女はダイオードを葬ってくれはしたが、味方と楽観することは出来ないのだ。

最悪、強大な敵が更に強大な敵に替わっただけ、という状況になる。

( ・∀・)(そして何より――)

初めて見るはずなのだが、どこか覚えがあるような既視感があった。
まだ確信はもてないが、『きっとそうなのだろう』と思わせる何か。
その確認と牽制の意味を含めてモララーが問う。

( ・∀・)「……君は誰かね?
     と言っても、ダイオードが言っていたわけだが」

異獣。
ダイオードは、確かにそう言っていた。



75: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:36:29.30 ID:BvYZC0rc0
从ξ゚ -゚ノリ「…………」

しかし答えはない。
手に握る大鎌を手持無沙汰に揺らし、虚ろな目でこちらを見ている。
興味があるのかないのか、もしくは興味を見出そうとしているのか。

対し、軍神達は睨むまま動けない。
手負いとはいえ、あのダイオードを葬った張本人だ。

数十病ほど睨み合いが続き

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

突如として銀髪の女が身を翻すことで、緊張が最大まで高められた。

(;゚д゚ )「!」

(;´_ゝ`)「……って、え?」

しかし攻防は始まらない。
銀髪の女は、背を向けて世界政府本部へと入っていったのだ。

残ったのは風の音。

『眼中にない』と言わんばかりに、彼女はただの一度も振り返ることはなかった。



81: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:37:56.47 ID:BvYZC0rc0
張り詰めた空気がある。
常人には出し得ないそれは、一流の戦士のみに許される雰囲気だ。
経験と技術に裏付けされた空気は、更に更にと限りを知らずに重圧を増していく。

ここは世界政府本部最上階――の、一階下に存在する広い部屋。
普段は会議室として使われる室内には、未だ巨大なテーブルが一つ残っていた。

そこに三つの人影がある。

大中小と段々に背が変化している、しかしまったく同じ表情を持つ三人の男。

┗(^o^ )┓「…………」

\(^o^)/「…………」

|  ^o^ |「…………」

姓に同じ言葉を冠した三つ子――クン三兄弟だ。

弓、槍、剣の三武具をそれぞれ持ち
単体だけでも歴史に名を残せるような、それほどまでの強さを持つ英雄である。

持つ信念は、他の者に比べても異常に堅く冷たい。
ある時はヒートとミルナを鍛え、ある時は容赦なく彼らの敵となれる。

その理由を『真の意味』で知る者は極少数であった。



86: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:39:28.49 ID:BvYZC0rc0
┗(^o^ )┓「……そろそろ、ですか」

末っ子であるジュカイが呟いた。
既に背の剣は抜き放たれている。
それが、彼の警戒心の強さを如実に表していた。

\(^o^)/「…………」

黙って応答するのは次男オワタ。
細目を更に細め、室内全てに全神経を行き渡らせている。
弟と同じように、その手には槍が握られていた。

|  ^o^ |「油断は禁物ですよ」

諭すような口調で言うのは長男ブーム。
二人を前衛に置いた彼は、その背後で弓を構えていた。
どこから現れても対処出来るように、視線が室内を這い回る。

非常に珍しい光景であることは言うまでもない。
クン三兄弟を詳しく知る者ならば、おそらく驚きを隠せないだろう。

あの三人が、余裕というものを完全に捨てているのだ。

彼らは果たして何を待っているのか、などという問い掛けに意味はない。
クン三兄弟は戦士であり英雄なのだ。

待つべき者など、敵意外に他ならない。



89: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:40:49.23 ID:BvYZC0rc0
そして、来る。
三兄弟が緊張して待ち受ける程の敵が、来る。

「「――!」」

張り詰める緊張。
続いて響いたのは扉の音で、敵が堂々と正面から乗り込んできたことを証明する。
『敵ながら天晴』とジュカイが呟き、オワタの口元に笑みが浮かんだ。

ヒールの床を叩く高い音が、秒を刻むかのように規則的に響き、こちらに近付いてくる。
遠い闇から浮き出るようにして現れたのは


ル(i|゚ ー゚ノリ「ふむ……お前達が最後の関門かな?」


青髪の女である。
腰に一本の白い刀を吊った彼女は、赤髪の男と共に行動する『何か』。

二機のEMAを墜とした彼と同じく、人ではない能力を持つのは明白であった。



94: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:42:09.25 ID:BvYZC0rc0
┗(^o^ )┓「貴女も異獣の一人ですね?
       最上階にある、世界交差を実行するための装置を奪いに来た、と」

ル(i|゚ ー゚ノリ「相違無い」

\(^o^)/「それは世界を食らうため」

ル(i|゚ ー゚ノリ「時が来たということさ」

|  ^o^ |「しかし正面から乗り込むとは……意外とフェアなのですね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「む? 勘違いしてもらっては困る」

首を振る女。
笑みを浮かべ

ル(i|゚ ー゚ノリ「フェアだとかそういう問題ではない。
      こちらからすれば、コソコソ隠れて侵入する意味などまったくないのでね」

言葉に、クン三兄弟の表情が硬くなる。
『真正面からぶつかっても負けることはない』と言っているようなものだ。
彼らのプライドを逆撫でするには充分なコメントである。



100: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:43:27.26 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、通してもらおうか?」

┗(^o^ )┓「黙って通すとでも?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「あぁ、すまん。 そういう意味で問うたのではないのだ」

すら、と涼しい音が響いた。
女の手が腰の白い刀を抜き放つ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「お前達をさっさと斬り伏せて押し通る、という意味でね。
      時間が勿体ないから始めようか」

\(^o^)/「随分と嘗められたものですね」

|  ^o^ |「後悔させてあげましょうか――!」

高速で三人が散る。
まったくの同じタイミングで、しかし別方向へ。
ジュカイは右方、オワタは左方、ブームは正面から光矢を構える。

三方同時攻撃だ。

一振りの刀しか持たない女にとって、それは防ぎ難い一撃であることは日を見るより明らかである。
通常ならば回避の場面であるのだが

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ」

納得の声を出したかと思った瞬間。



104: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:45:04.64 ID:BvYZC0rc0
┗(^o^ )┓「!?」

\(^o^)/「!!」

弾けるように、両サイドから攻め込もうとしていた二人が引いた。
溜めていた姿勢を崩し、前へと出ていた身体を無理矢理に後退させる。
果たして、その判断は正しかった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「流石、といったところか」

言う女の両腕には、今まで存在していなかったはずの物体が握られている。

それは刀。

一振りだけしか持っていなかったはずなのだが、今やそれは六倍に増えていた。
右手左手の指間に三振りずつの合計六振り。
まるで異常に長い爪のように構えられたそれは到底、一見してだけでは刀に見えない。

|  ^o^ |「……どこから」

疑問が出る。
見た限り、彼女の腰には一振り分だけの鞘が吊ってあるのみ。
残りの五振りは何処から出したのか。

ル(i|゚ ー゚ノリ「別に手品ではないぞ?」

右腕を軽く払う。
その一瞬で、握っていた刀は全て消失してしまった。



108: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:46:27.32 ID:BvYZC0rc0
\(^o^)/「……面白いですが、それだけですね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「良い判断だ、英雄。
      注目すべきところをよく解っている」

┗(^o^ )┓「強いか否か。 私達の興味はそこに尽きます」

ル(i|゚ ー゚ノリ「ならば来い。 この私を――いや、異獣を止めてみろ」

女が軽く両手を広げると同時、鋼の音が連鎖した。
それは女を中心にして、段々と波紋のように広がっていく。

冷気にも似た雰囲気。

殺気をそのまま冷やして流したのかと錯覚するほどで、しかし根本的な部分が異なる何か。

┗(^o^ )┓「これは――」

\(^o^)/「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「流石の英雄とて、これは感じたことのない種類の気配だろう?」

言う間にも気は充満していく。
広い会議室を包みこむようにして、だ。

それは同時に、死刑宣告に等しい響きを持ち合わせていた。



114: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:47:55.22 ID:BvYZC0rc0
(;゜3゜)「う、うわぁ!?」

田中は、現れた人物に対して思わず叫んでしまった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ、面白い歓迎の言葉だ」

来るはずがないだろう、と思っていた敵が来てしまったのだ。
思わぬ状況に怯える田中を背後へ退かせ、守備隊長を務めるプギャーが前へ出る。

( ^Д^)「英雄を……突破したというのか」

彼女が出てきた扉が通じるのは階下への階段である。
その先には会議室があり、そこを通らねばこの場に辿り着くことは出来ない。

会議室には守備としてクン三兄弟を置いていたはず。
実力は詳しく知らないが、あの英雄神が一目置く存在である。
生半可な戦力では太刀打ちすら不可能だろう、と思われていたのだが

ル(i|゚ ー゚ノリ「見ての通りだ……あぁ、別に裏技やチートを使ったわけではないぞ?
      正々堂々と戦ったさ。
      で、だ」

笑みを深くし

ル(i|゚ ー゚ノリ「単刀直入に問うが、その先に在るのだな?」



123: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:49:58.66 ID:BvYZC0rc0
鋭い、しかし余裕に満ちた視線の先には大きく頑丈な鉄扉。
奥にイクヨリがおり、そして世界交差装置が鎮座されているはずだ。

( ^Д^)「あぁ」

ここを守ると誓った以上、嘘を吐く意味はない。
どちらにせよ、あの女を通さないのが仕事だ。

(;゜3゜)「た、隊長……」

( ^Д^)「お前達は下がっていろ。 俺がやる。
     もし俺がやられた時は全力で逃げろ」

両刃の剣を引き抜きつつ、背筋を這う悪寒を自覚する。

予想はしていたが、しかし予想外だった。

クン三兄弟ならば止められると思っていた。
だが、あの女はこちらの予想を遥かに上回る存在らしい。

( ^Д^)(やはり百聞は一見に如かず、というわけだな)

ダイオード達に異獣の手強さは聞いていたが、これほどまでとは思わなかった。

プギャーは己の認識の甘さを悔いる。
悔いたが、すぐに気を取り直して青髪の女を睨んだ。



131: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:51:29.80 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ」

( ^Д^)「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「貴様、人間にしては面白いモノを背負っているな。
      ふむ……いや、人だからこそ出せる歪み、と言うべきか?」

( ^Д^)「何の話だ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「自覚はあるはずだが。
      貴様は今、この場で死ぬことが出来ないだろう?」

( ^Д^)「……!」

ぎり、と歯を噛む音。
しかし能面のような顔には変化など見られない。
それでも青髪の女は、笑みを更に深めた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「その様子では解っているようだな。
       死にたくないではなく、絶対に死ねないということに」

( ^Д^)「……確かに、俺はここで死ぬわけにはいかない。
      だが今は仕事が優先だ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「熱心なのは良いことだ。
      しかしよく今まで自制することが出来たな?
      その笑みが証明しているわけだが……成程、人間にしておくには勿体ない」



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