( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

136: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:53:20.69 ID:BvYZC0rc0
見透かされている。
いつかの森で出会った魔法世界の少女も、似たようなことを言っていた。
プギャーは異常であるが故に、その目的を果たすまでは死ぬことが出来ないのだ、と。
しかしだからこそ

( ^Д^)「……今ならお前でも倒せるさ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、それはどうだろうか?
      秩序も消えつつある現状、未来が貴様を必ず生かすと言い切れるか?
      言い切れるならばそれも良いが、目の前にいる相手を見て考えてみるといい」

異獣。
世界の核――『ルイル』を捕食しつつ世界を巡る病原菌。
果たしてそんな相手に、壊れかけた秩序などが通用するものか。

( ^Д^)「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「貴様は賢しいな。
      その内に度し難い歪みを抱えつつも、冷静でいられる。
      将来が楽しみ――っと、その将来は既に無いようなものだったな」

おそらく彼女は知っているのだろう。
目的を果たせば、それまで回避してきた分の死が一斉に襲い掛かってくることを。

その点で言えば、プギャーは生きつつも死んでいると言えた。
目的を果たして死ぬことしか出来ないが、果たすまでは死ぬことが出来ない存在。
一方通行の生は、決してまともとは言えないだろう。



141: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:55:13.76 ID:BvYZC0rc0
しかし

ル(i|゚ ー゚ノリ「ふむ、面白い人間だ」

と、目の前の異獣はプギャーを気に入ったようだった。

( ^Д^)「どう思われようが構わんが……どちらにせよ、ここは通さん」

ル(i|゚ ー゚ノリ「それは困ったな」

本当に迷う様子を見せる女。
困るということは、押し切る選択も選べるということだ。
殺そうと思えば殺せるし、生かせるのなら生かしてやっても良いというレベルなのだろう。

そんな無礼ともいえる気を感じ、プギャーは認識を更に改める。

( ^Д^)(奴らにとって、俺など玩具に等しいのか)

通さないだとかいう話ではないらしい。
青髪の女が押し通るか、通らないか、という二択なのだ。
通るとなれば、行く手を阻む障害は全て消えるだろう。

ル(i|゚ ー゚ノリ「本当に退いてはくれないのか?
      秩序守護者や世界政府につくメリットなど、貴様にはないように思えるが」

( ^Д^)「仕事だ、と言った」

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程、我を容易く潰せる男が簡単に鞍替えするわけがないか。
      これは失礼した」



146: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:57:18.98 ID:BvYZC0rc0
白刀から奏でられる涼音が、プギャーの死を予見させる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「非常に惜しいが、道の邪魔になるものは全て除ける主義なのでね」

言っている間に、プギャーは七回ほど『殺された』と確信していた。
青髪の女から発せられる殺気が、こちらの受けられるキャパシティを軽く凌駕しているのだ。
もし彼女が本気で殺す気になれば、それだけでショック死するかもしれないと思えるほどである。

ル(i|゚ ー゚ノリ「出来ることといえば、せめて一瞬で――」


「――ちょいちょい」


死刑を待つような空気の中、間抜けな声が響いた。
その場にいた全員が声の主を探し、しかし見つからずに戸惑う。

「……そこまでされるとイジメかと思うナリだすよ」

語尾で正体に気付いた者が、一斉に足下を見た。

,(・)(・),「ややっ」

そこにいたのはタマネギ、ではなく英雄神である。
いつの間にか、プギャーの足下で寝転がっていた。



156: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 20:59:07.91 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「貴様」

,(・)(・),「待つナリだす」

一歩踏み込んだ女を、小さな手で制す。
そのままプギャーの方へと振り返り

,(・)(・),「というわけで、ここはおいどんに任せて逃げるナリだす」

( ^Д^)「は?」

,(・)(・),「だから逃げろって言ってるナリだす」

つまり、それは

( ^Д^)「……アンタがここを守る、と?」

,(・)(・),「まぁ、守らんとおいどんが死ぬナリだすからね。
    死に物狂いで頑張るナリだすよ、フヒヒ」

矛盾している。
ここを死ぬ気で守りたいのならば、それこそプギャー達も戦力に加えるべきだ。
確かに太刀打ち出来ないまでの絶望的な差があるとしても、囮くらいには使えるのだから。

プギャーの表情から、そんな考えを読み取ったのか

,(・)(・),「生き残れるならば生き残るべきナリだす。
     君はまだ死ぬべきでなく、死にたくもないはずナリだす」



159: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:00:29.85 ID:BvYZC0rc0
( ^Д^)「だが、ここを死守せねば――」

,(・)(・),「世界政府が落ちても戦いは続くナリだす。
     目の前にいるあの女の正体、君でも何となく解るナリだすね?
     アレの目的を考えれば……ここで生き残るのは価値あることナリだす」

( ^Д^)「――!」

英雄神が何を言わんとしているのか、やっと理解することが出来た。
つまり彼はこう言っているのだ。
世界政府は諦め、次のチャンスを待てと。

( ^Д^)「……解った。 後は任せる」

短く呟き、プギャーは背後の部下へ撤退命令を出した。
青髪の女の気にやられたのか、顔面蒼白の兵達は速やかに退避していく。

(;゜3゜)「隊長……?」

( ^Д^)「英雄神は生き残れと、生き残る価値があると言った。
     俺にはすべきことがある現状、遠慮なく生き残らせてもらう」

信用しているわけではないが、あれほどの男(?)が言うのだ。

何かが無いわけがない。
自分にはきっと、生き残る意味がある。



168: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:02:13.03 ID:BvYZC0rc0
(;゜3゜)「しかしイクヨリ様が――」

( ^Д^)「世界と個人など天秤に掛けるまでもない。
      確かに恩はあるが、生きていくための地が無ければ意味が無いだろう。
      イクヨリは運が無かった。 それだけだ」

それと、と付け足し

( ^Д^)「別に俺の命令に従う必要はないぞ。
     イクヨリを助けたければ、残っても構わん」

(;゜3゜)「い、いえ……私も自分の命が大事です」

( ^Д^)「それが正常だ」

正常、という言葉がすんなり出たことにプギャーは内心驚いていた。
己は異常であるくせに、正常の何たるかが解っているらしい。
それもまた異常が為せることか、と思い直し

( ^Д^)(だったら遠慮なく生き残らせてもらうさ……モララーを殺すまではな)

胸に決意を秘めたプギャーは、ただの一度も振り返ることなく走っていった。



174: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:03:44.23 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて」

足音が完全に聞こえなくなった頃。
面倒そうに立ち上がった英雄神を前に、青髪の女は腰に手を当てた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「戦う前に一つ話をしよう」

,(・)(・),「話すことなんてないナリだす」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そう言うな。
       こちらとしては、貴様の大罪についてハッキリさせておかねばならんのでね」

,(・)(・),「……何もかも御見通し、というわけナリだすな?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そういうわけだよ、英雄神――いや、bR『シャーミン』と言った方が早いかな?」

言葉に、英雄神は沈黙を返した。
青髪の女が言った言葉が真実であるが故に、だ。
何かを吟味するような表情を見せ、露骨な溜息を吐く。

,(・)(・),「一体何を知りたいナリだす?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「簡単なことさ。 私が問いたいのはたった一つの出来事についての真偽のみ」

笑みを浮かべ

ル(i|゚ ー゚ノリ「英雄世界を作り上げたのは貴様で間違いないな?」



179: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:05:59.70 ID:BvYZC0rc0
,(・)(・),「……そうナリだす」

ル(i|゚ ー゚ノリ「英雄世界とは、元々は特に取り柄を持たぬ普遍的な世界だった。
      何千年に一度ほどの割合で仙人が生まれる程度の、な。
      理由は知らぬが、そんな世界に目をつけた貴様は一人の仙人と交渉して身を得た……これはどうだ?」

,(・)(・),「…………」

肯定と受け取った女は更に続ける。

ル(i|゚ ー゚ノリ「そして貴様は、固有能力である『英雄の遺伝子』を使用した。
      自身は純正ルイルの中へと入って永久不滅の存在となり、時を待った」

何百という年月を必要としたはずだ。

英雄の遺伝子が浸透するのに三百年。
英雄という存在が認知され始めるのに二百年。
強大な力を持つが故に統率を求められるのに百年。

ル(i|゚ ー゚ノリ「タイミングを見計らい、貴様は英雄達の統率を買って出た。
      民衆からすれば、滅多に姿を見せない仙人が名乗り出たのだ。
      まぁ、信用しないわけがない」

こうしてシャーミンは英雄神となった。

生まれてくる英雄を審査し、その手元へと加え、戦力を蓄えていく。
まるでカードの山札を引いていき、自身の手札へと加えていくような感覚で。



188: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:08:08.43 ID:BvYZC0rc0
こうなりさえすれば、後は順次生まれてくる英雄達を溜め込んでいくだけだった。
そして、そこで根本的な問いかけが生まれる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「何故、そんなことをする必要があったのか」

,(・)(・),「言うまでもないナリだす。
    アンタらに対抗するためナリだす」

ル(i|゚ ー゚ノリ「大罪はそこだよ。
      貴様は、個人の事情で世界丸ごと一つを歪ませた。
      これについて何か言いたいことはあるか?」

,(・)(・),「……特に何も。 こうでもしなければアンタらは止まらんナリだすからな」

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、そうされても私達は止まる気など欠片も湧かないのだが」

,(・)(・),「で、そんな遠い過去のことを今更何ナリだすか?
    出来れば、世界改変の罪で処刑、なんてフザけたこと言わんでほしいナリだすが」

ル(i|゚ ー゚ノリ「はは、まさか。 むしろ褒め称えたいくらいだよ。
      己の罪の意識を殺し、世界一つ分の未来を壊滅させ、自分の都合の良い歴史を作ってきた。
      生み出されたのは英雄という、強靭な身体と精神を人為的に植えつけられた戦士達。
      しかもそれが我々に対抗するためとは……嬉しくて涙が出そうだよ」

「…………」

意味を悟ったのか、英雄神の双眸が鋭くなる。



197: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:10:12.35 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「礼を言おう、bR。
       我々のために高級な餌をわざわざ用意してくれ――」

金属音が響いた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「おやおや」

余裕の笑みに反し、その身体は戦闘体勢を作り上げていた。
腰を落とし、右手に握った白刀を自身の前に据えている。
その刀身にぶつかっているのは英雄神の足だった。

,(・)(・),「確かにおいどんはアンタらのために英雄を作ったナリだす。
    それは否定出来ないし、その罪の深さは死んでも償えないことは解ってるナリだす。
    でも――」

残った片足で刀身を弾き飛ばす。
そのまま縦に回転するように身を回した英雄神は

,(・)(・),「アンタらに食べさせるために英雄を作ったんではないナリだす!!」

身軽さを利用して、身体ごと青髪の女へと突っ込む。

ル(i|゚ ー゚ノリ「過程と結果は異なるものさ……!
      貴様がそういうつもりで英雄を作ったとしても、
      我々にしてみれば、高級な食事を用意してくれていることと同義!」

回避する。
二つのステップを刻んで距離をとった。
しかしさせまいと、英雄神が地を蹴って追う。



203: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:12:18.81 ID:BvYZC0rc0
,(・)(・),「おいどんの英雄はそんなヤワじゃないナリだす!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「確かに、それは認めざるを得ないな。
      あの超保守的な秩序守護者が、わざわざ視察に行ったくらいなのだから」

英雄神の攻撃が一瞬だけ止まった。
その隙に青髪の女は身を翻し、更に距離をとる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「私は何でも知っているぞ。
      あのダイオードにbP8『ブロスティーク=E=ミゾーク』を与えたのは、実は貴様ではないと。
      そしてその貴様も、あの剣の出所は知らないのだ、と」

,(・)(・),「……アンタは知ってるナリだすか?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「アレは、ダイオードが元いた世界にあったモノだよ。
       私にとってもあそこは馴染みの深い場所でね……よく憶えているのさ。
       まぁ、今回の戦いと貴様にはまったく関係のない話ではあるが」

両者の足が止まった。
英雄神は最上階へと扉の前へと立ち、青髪の女は階下へと扉の前に立つ。
あれだけ立ち回っておきながら、結局両者の位置が変わることはなかった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、確認は済んだ。 そろそろ終わりにしよう」

,(・)(・),「アンタにとって、おいどんとはその程度の存在ナリだすか。
     嘗めないでほしいものナリだすね」



206: ◆BYUt189CYA :2007/10/09(火) 21:14:11.31 ID:BvYZC0rc0
ル(i|゚ ー゚ノリ「既に役目を終えようとしている老獪が、何を下らんことを――」

,(・)(・),「でもまだ終わってないナリだす。
    アンタくらいは、ここで消してみせるナリだすよ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「はは、成程。 言い得て妙だな。
      ならば同族の好だ――我が能力を用いて消し去ってくれようか」

右手が振られた。
途端、冷たい空気が周囲を急速に満たしていく。
クン三兄弟を襲った、あの気配だ。

,(・)(・),「……!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「あぁ、言い忘れていた。
      私自身はbQ0であるが、能力そのものはbP9のものを使用している。
      すまないが、貴様が今想像した事象は起きんよ」

,(・)(・),「bP9――まさか、これは!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「ふふ……この能力の利点は、例え知られていても内容さえ初見であれば必殺足り得るという点だ。
      知識が不足している貴様には、予想は出来ても避けることなど出来まい」

本来、風など吹かない場所に風が舞った。
生き物のように身をうねらせ、まるで意思があるかのように周囲を駆ける。
青髪の女の整った唇から、声という音の美麗な旋律が流れた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さらばだ――我が刃に抱かれて死ぬと良い」

容赦無く、能力を発動させた。



戻る第四十話