( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

83: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:18:33.99 ID:jpces/WK0
ならばどうすべきか――いや、答えなど最初から一つしかないだろう。

理性を捨てよ。
本能に委ねよ。

脳など要らぬ、要るのは脊髄。

脳髄反射ではなく脊髄反射。
経験と本能による、高速を越えた超高速の感覚処理。
神経の死滅していく速度が倍となり、しかし対処の速度も倍となる。

それはいわゆる早回し。
挙動速度が上がると同時、己の終焉への速度も上がる諸刃の剣。

しかし、何を迷うことがあろうか。
ここで負ければ秩序の敗北と同義になる。

それはつまり、ワカッテマスの存在意義が砕け散ることに等しい――

( <○><○>)「――っあ――――!!」

切り替えはアッサリと。
まるで待ち構えたかのように、まるでスイッチ一つカチリと押すかのように。

ワカッテマスの意思は理性を捨て、そして滾る本能へとシフトした。



89: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:19:59.87 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「む?」

メ(リ゚ ー゚ノリ「お?」

从ξ゚ -゚ノリ「?」

それぞれの声で、それぞれの疑問を発する異獣。
目の前で限界を迎えていたはずの男が、更に速度を上げたことによる声だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ、まだ上を残していたか」

メ(リ゚ ー゚ノリ「はン! ならこっちも上げてくぜぇ!?」

単純な話だった。
いくら無限を扱えようとも、扱う身が有限であっただけ。
それを知りつつ、尚もここまで抵抗したワカッテマスは確かに賞賛に値するだろう。

しかし、それだけなのだ。

ここに無限は敗北する。
単独であったが故に。
自己の力に圧倒的な自信を持っていたが故に。

『彼ら』のように、力を認めて手を取り合うことをしなかったが故に。

( <○><○>)「わた――し、は――秩、じょを――!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「悪いが貴様には負けを知ってもらう。
      せいぜいよく噛み締めろ」



92: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:21:33.60 ID:jpces/WK0
今までのが嘘だったかのように速度が跳ね上がる。
その急激なまでの変化に、ワカッテマスの本能は皮肉にも反射的に思ってしまった。

――これは、もう駄目だ、と。

打撃が来る。
斬撃が来る。
刀雨が降る。

過負荷によって視力が潰れ、聴力が麻痺に陥る。
神経のほとんどが焼き落ちて尚、酷使される苦痛に悲鳴を挙げる。

無限の名を持つ最堅の鉄壁が、今ここに崩れ――

ル(i|゚ ー゚ノリ「ッ!?」

それこそが急激な変化だった。
在り得ぬモノが、有り得ぬタイミングで出現する。

ワカッテマスの直下の地面を砕き、巨大な立方体のような何かが押し上がったのだ。

当然、周囲にいた異獣が弾き飛ばされることになる。
三匹の異獣は、そのまま身を捻らせて着地。
自分達の邪魔をした何かを見据え、

メ(リ゚ ー゚ノリ「……わぉ」

と、感嘆ともいえる息を吐いた。



99: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:23:19.87 ID:jpces/WK0
目の前に出現したのは店舗だった。
看板に『Daddy Cafe』という文字を刻んだ、古臭い石造りの家屋。
この場において、まったく無意味で無価値な存在だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「これは……」

どう判断して良いものか、と青髪の女が唸り声を挙げた。

( <○><●>)「……だ、でぃ」

|(●),  、(●)、|「何とか間に合いましたね」

家屋の天井に倒れるワカッテマスの傍に、一人の男が出現する。
それは三人目の秩序守護者、ダディだった。

|(●),  、(●)、|「ダイオードさんには間に合いませんでしたが、貴方は助けてみせます」

( <○><●>)「しかし、私は――」

|(●),  、(●)、|「必要とするのは力ではなく貴方自身ですから」

メ(リ゚ ー゚ノリ「ちょっと待てよ、俺達の獲物持ち逃げする気かぁ?
      そんならテメェが戦ってくれるのかよ?」

|(●),  、(●)、|「いえいえ、私など相手にもなりませんよ。
         ただのしがない喫茶店の店長ですから」



104: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:25:04.72 ID:jpces/WK0
苦笑という表情に、ミリアが口端を吊り上げる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「……よく言う」

|(●),  、(●)、|「もう一度言いますが、私は『Daddy Cafe』の店長です。
         貴女が何を知っているのか知りませんがね」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そうか、私などに経緯を知る術はないが、失礼した。
      ではダディ殿。 ワカッテマスをどうするつもりかな?」

|(●),  、(●)、|「無論、助けさせて頂きます」

ル(i|゚ ー゚ノリ「その心は?」

|(●),  、(●)、|「簡単です。 仲間だからですよ」

放たれた言葉に目を見開いたのはワカッテマスだった。
既に神経の半分以上が死滅し、動かすことさえも苦痛を伴う身を微かに震わせた。

沈黙が発せられる。
ミリアは面白そうに目を弓にし、ダディはその大きな瞳で彼女を射抜く。
長い時間のように思えた無音は、しかしミリアの溜息によって上書きされた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「仲間を謡うか……かの秩序守護者が、意外というか拍子抜けというか。
      まぁいい、行け」

|(●),  、(●)、|「どうも」



108: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:26:40.84 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「おい、姉貴、いいのかよ?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「流石に興が殺がれたよ。
      いやまぁ、無限に勝てたという事実も出来上がったことだし、
      これ以上アレを相手するのはもはやイジメだろう?」

と、ミリアがワカッテマスへと鋭い視線を向ける。
既に満身創痍の彼は、視線を受け切れるほどの力さえ残っていなかった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「皮肉にも使う身の方が耐え切れなんだ。
      やはり身の丈にあった力が相応だということさ」

メ(リ゚ ー゚ノリ「まぁ……姉貴が言うなら」

ル(i|゚ ー゚ノリ「気を落とすな、兄上。
      それに祭りはこれからだ」

くつくつと笑うミリア。
意味を悟ったのか、キリバも可笑しそうに笑う。

|(●),  、(●)、|「……では、また会う日まで」

ル(i|゚ ー゚ノリ「うむ」

ワカッテマスを脇に抱えたダディが店内へと入っていく。
ドアに付けられた鈴が、場違いな涼しい音を奏でた。

続いて轟音と共に店が沈む。
ある意味で、最も派手な撤退の仕方だった。



112: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:28:11.62 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「さぁて、これでやっと邪魔者がいなくなったか」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「いや、アレは邪魔にすらならんよ」

(; ̄ー ̄)「…………」

秩序守護者に取り残された者がいる。
哀れ、存在さえも希薄だった世界の統治者は、最も頼りにしていた存在に捨てられたのだ。
額から大量の汗を流し、イクヨリは部屋の隅で怯えるように異獣を見ている。

メ(リ゚ ー゚ノリ「どーすんの?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「立ち塞がるのならば殺すしかないだろう。
      が、何もしないというのであれば、こちらも何かをする必要はあるまい」

どうせ結果は同じだ、と誰にも聞こえない声で呟いた。

声の色は『無関心』。
例え、この場にイクヨリがいようとも構わない。
たかが人間が、異獣――しかも『種』を取り込んだ突然変異体――には勝てるわけがないのだ。


自分達には天敵などいない。


異獣は、それを知っているが故に自信に充ち溢れていた。



119: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:30:04.08 ID:jpces/WK0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、時間を無駄にするわけにもいかないし、早速始めようか」

視線の先には、世界交差を発動させるための大型機械。
渡辺が作り上げた疑似魔力『歪』を利用した、四世界を混合させるための装置だ。

メ(リ゚ ー゚ノリ「って、そういやアイツがまだ来てねぇぞ」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

メ(リ゚ ー゚ノリ「まだ戦ってんの? え? ニダー?
      ったく、足止めは結構だが遅刻はよくねぇよなぁ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「まぁ、かつての仲間を前にすれば奴にも思うところがあるのさ。
      例え記憶を失っていても、残滓くらいは残っているのだろう」

放っておけ、と言わんばかりのスルー。
そのままミリアは、世界交差装置へと歩を進める。



124: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:31:49.52 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)「…………」

イクヨリは思考していた。
己は何をすべきか、と。

異常な状況である。
いつ殺されてもおかしくないというのに、異獣はこちらを無視している。
屈辱的ではあるが、ここで掴み掛かるほど彼は愚かでない。

どう考えても気まぐれで生かされている。
逆を言えば、いつ気まぐれで殺されても仕方無い状況だ。

どうするか。

このまま黙っていても、本当に無視され続けられそうな気がした。
いや、絶対にそうだろう。
事実、三匹の異獣はこちらを一瞥さえせず何やら話し合っていた。

どうすべきか。

(; ̄ー ̄)(ここでの私の行動が、人類の命運を握るわけですね……)

何せ自分は世界運営政府のトップだ。
吐く言葉は全て人類の総意だと見られるだろう。
しかし逆を言えば、対話の持っていき方次第では世界が助かるかもしれない。

――もし、ここに秩序守護者がいれば速攻で止めただろうが。

イクヨリは気付いていないのだ。
ここで彼が何をしようとも、今後の未来に何ら影響がないことに。



126: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:33:11.24 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)「……ッ」

ごくり、と喉を震わせて硬い唾を飲み込む。
その音が聞こえてしまったのか違うのか、しかし合図としたかのようにミリアが動いた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、そろそろか」

話が決まったのだろう。
頷いたキリバと銀髪の女をその場に置き、世界交差装置の前に来る。
白い右手をコンソールの直上にかざした。

メ(リ゚ ー゚ノリ「姉貴ー俺がやってやろうかー?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「いや、手助けされてばかりでは面目が立たん。
      立場的にここは私が任されるべきだ」

輝かしい光。
コンソールから出る光が手に吸い取られていく。
微かに目を瞑って、ミリアはその奔流を読み取っていった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「成程、意外と簡単な仕組みなのだな」

一人ごち、ピアノを弾くかのような流麗さでコンソールを叩く。
数々のダミーやトラップを軽々と回避し、ものの数分で全システムの稼働を成功させた。



132: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:35:15.05 ID:jpces/WK0
轟、と周囲のカプセルが音を発する。

紫色の光が次々と生まれ、それは白い部屋を淡く照らし
機械本体が地の底から響くような唸りを挙げ、メインウインドウに高速で文字を流し始める。
そして


【The Cross World】


一際大きな英文字が記された瞬間だった。

(; ̄ー ̄)「!?」

大地震かと間違うような震動が建物を襲う。
機械とカプセルが強烈な光に包まれ、その間にも更に震動が大きくなった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ようやくだ。 ようやく私達の仕事も終わりを告げよう」

メ(リ゚ ー゚ノリ「あとは遊ぶだけか。 乗ってくるかねぇ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「乗らざるを得ないだろう。
      何せ諦めれば死が待っているのだから」

メ(リ゚ ー゚ノリ「人間、生き残るためにかける力はすげぇもんがあるしなぁ……楽しみっちゃー楽しみだわ」



137: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:36:35.68 ID:jpces/WK0
(; ̄ー ̄)(ここが交渉チャンスですか――!)

世界が交わっても、相手にやる気がなければ助かるかもしれない。
そんな0%の可能性に賭け、イクヨリが震える足に鞭打って立ち上がった時。

た、という着地の音が傍で聞こえた。

(; ̄ー ̄)「!?」

「――――」

そこにいたのは人間ではなく、白い狼だった。
紅目が不気味な光を発しながらもこちらを睨み、鋭利な爪は在るだけで床を削っている。

これは、違う。

直感した。
この獣は、ただの獣ではない。

どうすべきか、逃げるべきか、興奮させないようにべきか――



143: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:37:37.58 ID:jpces/WK0
( ̄ー  「え」

顔面に衝撃が走り、左の視界が赤に染まる。
既に白狼の姿はなく、少し遠くから何が滴る音と獰猛な吐息が聞こえる。



つまり、今、自分は、食われt、ぇ、  あ       n ?



メ(リ゚ ー゚ノリ「あーあーあー、もう勝手に食い始めてやがる」

ル(i|゚ ー゚ノリ「先に、この世界の人間の味を知っておくのもいいだろう。
      どちらにしろ律するのは私達の役目さ」

そう言う姉兄の周囲にも、白狼の群れが姿を見せ始める。
久々に自由に動けるのを楽しむかのように、伸びをしたり欠伸をしたりと大忙しだ。

そのどれもに共通しているのは、赤に染まった瞳と鋭利な爪。

堂々と『最強』を名乗れる、戦闘に特化した生物。

獲物を前にした獣は腹を空かせて牙を磨き、今か今かと食事の時を待つ。



151: ◆BYUt189CYA :2007/10/12(金) 22:39:24.69 ID:jpces/WK0
メ(リ゚ ー゚ノリ「よっしゃー! やったるぜぃー!」

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

揺れが更に大きくなる。
段々と世界が繋がっていく。
徐々に秩序が剥がれていく。

ここに世界交差が完成された。
皮肉にも、交差によって倒さねばならぬ相手によって、だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「――さぁ、宴の始まりさ」


世界が壊れていく。


せかいがこわれていく。



セ カイ ガ コワ レ テ イク



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