( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

68: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:12:52.95 ID:P3TmrJ1n0
从'ー'从「まさかとは思うけど、やっぱり間に合わなかった――?」

あの場所にロマネスクがいたということは、
やはり、少なくとも奴らは更に上に進んでいるということだった。

川 -川「マスター、早急に離脱を。
     建物の強度から考えて、このまま続けば崩壊の恐れがあります」

(;><)「潰れるのは嫌なんです!」

从・∀・ノ!リ「ならば、さっさと逃げるとするか。
       命あっての物種じゃよ」

身を翻し、レインはビロードとチンを連れて牢を出る。
続いて立ち上がった渡辺とハインも、貞子に手を取られて走った。

震動が更に激しくなる。

从・∀・ノ!リ「むぅ……これは全力で降りねばならんか。
       間に合うかのぅ」

と、のん気な声と共に通信機を取り出すレイン。

从・∀・ノ!リ「フサギコ殿、状況は?」

答えとしてノイズが走る。
どうやら電波が、酷く交錯しているらしい。



71: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:14:37.97 ID:P3TmrJ1n0
ざ、という砂音がしばらく続き

『――インさん――すか!?』

从・∀・ノ!リ「フサギコ殿、外はどうなっておる?」

『こっちも震動が凄くて……っとと! 早く離脱した方がよろしいかと!』

从・∀・ノ!リ「他の者達は?」

『先ほどモララーさんからも連絡があって、全員撤収命令が出ました!
 既に森の中にいた人達は撤収を始めています!
 ただ、モララーさん達は少しの間ですが貴女方を待つと!』

从・∀・ノ!リ「解った。 もしもの時は頼むぞ」

从'ー'从「……間に合わなかったみたいだね。
     おそらくっていうか、確実に最上階は異獣に制圧された」

从・∀・ノ!リ「おぬしはこれを予見していたのか?
       予見していた上で、先にハインリッヒの救出を?」

从'ー'从「あのキリバっていう赤髪の男の正体を知ってから、だけどね。
      よく考えたら、奴らが介入してくるタイミングとしては上出来だから」

从・∀・ノ!リ「ううむ、見事に漁夫の利を獲られたか……そもそも存在が反則じゃろう……ブツブツ」

そう言っている間にも走る。
壁や天井から、崩壊を告げる軋みが響いてきた。



74: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:16:41.54 ID:P3TmrJ1n0
从;゚∀从「あ、あああの、こう、ふわぁーっと空を飛んで脱出なんて出来ませんかね!?」

从・∀・ノ!リ「出来るのならば走りはせん。
       GIFやEMAが使えん現状、空からの救助も絶望的じゃよ」

一言で切り捨て、更に前へと走った。
嫌な予感がジリジリと迫る。

从;゚∀从「エ、エレベーター的なものは……!?」

从・∀・ノ!リ「死にたければ乗れ。 我は絶対に勘弁じゃ」

突き当りを左へ曲がる。
この先に階段があり、後は一気に最下まで駆けるのみだ。

从・∀・ノ!リ「ふむ、あまり上に上がれなかったことが幸いしたか」

(;><)「!! 危ないんです!」

ビロードの叫びに、全員が上を見上げた。
ヒビ割れた天井が砕け散り、その大小様々な破片の雨を降らす瞬間だった。

从・∀・;ノ!リ「まず――」

从'ー'从「貞子!!」

从;゚∀从「う、うわぁぁぁぁ!?」

その甲高い叫び声さえも、降り注ぐ轟音によって掻き消されることとなった。



76: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:18:29.73 ID:P3TmrJ1n0
走る音が響く。
靴が白い床を叩き、それが反響しているのだ。

<;ヽ`∀´>「ハァ、ハァ……」

右手にショットガンのような白い銃を構えて走るのはニダー。
まるで逃げるように、息を弾ませて移動していた。

<;ヽ`∀´>「やっぱり、……一筋縄では、いかんニダね……」

呟き、そのまま十字路へと出る。
流れ出る汗を拭って周囲を素早く見渡すが、敵の姿はまだ見えない。

その姿は痛々しいものだった。

右肩と左太腿に真っ赤な染みが出来ている。
顔には痣がいくつか、そして額からは二筋の出血だ。
そして手元に握るゲシュタルトブラスト本体にも、いくつかのヒビが見て取れた。

<;ヽ`∀´>(……まったく、デタラメにも程があるニダ)

場を引き受けたはいいが、反撃すら出来ない状況はどうかと思えた。

しかも先ほどから何度かの震動が床を揺らし、嫌な予感を更に増幅させていく。
何かが起きているのは確実だった。



80: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:20:34.54 ID:P3TmrJ1n0
<;ヽ`∀´>(考えたくないが、奴がここにいるということは、やはり――)

そこまで言い、ニダーは突如として身を弾いた。
前方へ身体を投げ出し、直後

<;ヽ`∀´>「――!!」

ニダーの背後にあった壁が粉砕した。
大小の破片が、それこそ弾丸のようにニダーを襲う。
顔を守るようにして両腕を上げ、そのまま背中から着地して横転。

素早く視線を巡らせ、破壊された壁から出てくる敵を視界に収める。

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

<;ヽ`∀´>「くっ……あの御喋りだったアンタがここまで無口になるとは」

何か理由があるのか、敵はまったく喋ろうとしなかった。
呼吸をしているのかも解らないほど、口をまったく動かさないのは異常な光景である。

<;ヽ`∀´>「都市ニューソクでの戦闘後、死体が消えたという話は聞いてたニダ。
       だが、まさかそんな風になってるとは思わなかったニダよ……」

その男は、もはやロマネスクとは呼べない。
頭の天辺から足の先まで、まったく別人となっているのだ。

ただ数少ない共通点として、右目にかつてあった傷痕が確認出来る。
そしてその両腕は黒色の光を纏っていた。



82: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:22:35.57 ID:P3TmrJ1n0
〈/i(iφ-゚ノii「…………」

それでも、ロマネスクだと解る。
状況が、空気が、雰囲気がそうだと言っているのだ。
何より存在としての匂いが、ニダーや渡辺がロマネスクを思い出すきっかけとなっている。

<;ヽ`∀´>「何が……いや、どうなってるニカ?」

もう何度目になろうかという問いは、やはり無視される結果となる。

<;ヽ`∀´>(ということは、もはや奴にロマネスクとしての人格が残っていないニカ……?
       だとすれば話は簡単になるが……)

完全な敵であれば容赦も何も必要ない。
が、情報が足りない現状、目の前のロマネスクは数少ない情報源である。

安易に撃破は出来ない。
元より、撃破出来るような相手ではないのだが。

<;ヽ`∀´>「――くっ」

拳が来る。
いや、拳から放たれた黒い塊が来るのだ。

飛んできた黒塊を回避すれば、背後にあった白い壁が黒色に粉砕されることとなる。



85: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:24:13.48 ID:P3TmrJ1n0
接近戦主体かと思いきや、遠距離にも対応出来るようになっている。

しかし防御に徹すれば、ニダーであれば充分に生き残ることは出来ていた。
何故かは解らないが、動きが酷く鈍重なのである。

<ヽ`∀´>(あまり考えたくないが、身体が馴染んでないようにも見えるニダ。
      生まれて間もないような違和感……というか、そのままニダ)

目の前にいる敵はロマネスクであるものの、ロマネスクとして定着していないような感覚。
上手く言葉にすることは出来ないが、アレは人としてまだ未熟なのだろう。

<ヽ`∀´>「なら、生き残ることくらいは出来るかもしれんニダ……!」

五体満足で、という条件付きならば不可能であろうが
それこそ死ぬ気で離脱すれば、命くらいは助かるだろう――と、思い込んだ。
思い込まねばやっていられない。

サイドステップしつつ、ゲシュタルトブラストを放つ。
白い魔弾がロマネスクに食らいつくが、軽く仰け反るのみで耐えている。

<ヽ`∀´>「対魔力性能は高いニダね。
      でも、これなら前のアンタの方が幾分か脅威だったニダ」

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

挑発の言葉にも乗ってこない。
彼はロマネスクでありながら、やはり彼でないのかもしれない。

ロマネスクであるという確信を持ちながらも、違和を感じる状況は不可思議としか言い様がないだろう。



86: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:26:13.01 ID:P3TmrJ1n0
と、そんな時だ。

『うぉーい、まだやってんのかテメェ』

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

<ヽ`∀´>(? 動きが止まった?)

首を傾げるニダー。
当然だ。
この響く声は、ロマネスクにしか聞こえない思念波のようなものである。

『もうこっちは準備完了なんだぜ。
 まだ遊びてぇ気持ちは解るが仕切り直しだ。 戻ってこい』

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

『おいおい、言っとくが命令違反した場合は姉貴の制裁だぜ?
 テメェは俺らと同類だが、上下関係っつーのがあるのを忘れちゃ困るねぇ』

〈/i(iφ-゚ノii「……了解」

<ヽ`∀´>「!」

初めて聞いた声の色は、やはりロマネスクのままだった。
しかし内容は、了承の意を伝えるための一言。
かつての彼では考えられない言葉だった。

<;ヽ`∀´>(やっぱり、アンタは――)



91: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:27:53.42 ID:P3TmrJ1n0
〈/i(iφ-゚ノii「…………」

『んあ? ……あー、まぁそれくらいならいいか。
 ただしすぐに済ませて戻ってこいよー』

脳裏に繋がっていた不可視の接続が途切れる。
それを確認したロマネスクは、冷気さえ発しそうな青い目でニダーを見た。

<;ヽ`∀´>「っ!?」

思わず飛び退いた。
強烈な危険を感じる。
そしてその判断は、次の瞬間に正しかったことを証明する。

衝撃の圧が爆発した。

それは熱の壁となり、ニダーの下へと真っ直ぐに迫る。

色は黒。
炎と見間違う衝撃は、容赦なく彼の身を舐めた。

<;ヽ`∀´>「ぐぁ!?」

壁に叩きつけられる。
衝撃が骨肉を貫き、胃液が脈動する不快感が身体を巡る。

それを鉄の心で自制し、ニダーは唇から流れ出る血を乱暴に拭った。



94: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:29:29.16 ID:P3TmrJ1n0
〈/i(iφ-゚ノii「…………」

<;ヽ`∀´>「げほっ……!」

腹部に熱がある。
破片か何かが刺さったのだろう。
今はまだ出血だけで済むだろうが、無理に動けば後に響く。
他の怪我を考慮しても、もう満足に動ける身体ではないことは容易に理解出来た。

万事休す。

ロマネスクの攻撃が激しくなった以上、もはや生きて助かる道はない。

<;ヽ`∀´>「はン……早死にするとは思っていたが、まさかアンタに殺されるとは思わんかったニダ」

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

<;ヽ`∀´>「死ぬなら一匹でも道連れにしたかったが……相手が悪かったニダか」

観念したのか、ニダーは力なく肩を落とした。
見届けたロマネスクはトドメ刺すため、口を開くことなくニダーへと近付いていく。
おそらく魔力を節約するため、素手でニダーの命を奪うつもりなのだろう。

<;ヽ`∀´>「くっ……!」


しかし、それが幸いした。



97: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:30:57.90 ID:P3TmrJ1n0
まず周囲を照らしたのは光だった。
色の名は桃。

〈/i(iφ-゚ノii「!?」

続いて風が走る。
殺意を持ったそれが、まるで薙ぎ払うかのようにロマネスクを襲った。
一瞬だけ耐えるような姿勢を見せるが、たった数秒の後に吹き飛ばされる。

轟音。

震動する建物の音を掻き消す程の音だ。
威力など、喰らってみるまでもなく量れる。

<;ヽ`∀´>「な、何が……」

どうなって、と言おうとした時だった。


た、という軽いステップ音が右方から聞こえた。
視線を向ければ灰煙の壁があり、それを割くようにして現れたのは



*(‘‘)*「ニダーともあろう人が……不様ですね」



かつて魔砲少女を自称した、ヘリカルだった。



100: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:32:27.95 ID:P3TmrJ1n0
以前着ていたはずの、ヒラヒラの衣装は既に無い。
身を包んでいるのは動きを重視した軽装甲で、しかしそれには見えない服装だった。

無理に言葉にするならば、ゴスロリ装甲服、と言ったところだろうか。

<;ヽ`∀´>「ヘ、ヘリカル……?」

*(‘‘)*「ようやく準備が整って来てみれば何ですか、その情けない格好は」

<;ヽ`∀´>「うっ……いや、返す言葉もないニダ。
      でも何故、アンタがウリを助けたニカ?」

*(‘‘)*「別に特別な理由なんてないです。
    ただ――」

バツの悪そうな表情で

*(‘‘)*「――何がどうあれ、目の前で人が死ぬのは嫌なんですよ」

<;ヽ`∀´>「……は?」

対し、呆けた顔を向けるニダー。
その言葉を吐いたのが、目の前にいるヘリカルだとは一瞬だけ思えなかったからだ。



107: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:34:05.37 ID:P3TmrJ1n0
*(;‘‘)*「べ、別に他意はないですよ! 仲間が死ぬのは寝覚めが悪くなるです!
     それだけです!」

<;ヽ`∀´>「…………」

*(#‘‘)*「テ、テテテメェ! 何勝手に見てやがりますか!!」

<;ヽ`∀´>「……いや、そんな真っ赤な顔で言われても。
       それに今の言葉は誰の受け売りニカ?」

*(#‘‘)*「うるさいうるさい! 助けてやったんだから礼くらいしやがれですよ!」

ふン、と鼻を鳴らしながら手を差し伸べてくる。
あまりに不器用な言動に、ニダーは苦笑しながら立ち上がった。

<;ヽ`∀´>「別にアンタが何を考えようとも知らんが……決め台詞くらいは言い慣れておかないとニダ。
       せっかくウリを颯爽と助けたのに格好がつかんニダよ」

*(;‘‘)*「んな……っ!?」

<ヽ`∀´>「まぁ、助かったのは事実でアンタはウリの命の恩人ニダ。 礼を言うニダ」

*(#‘‘)*「……はン、気まぐれで助けてやっただけです!
     あーあ! こんな恥ずかしい思いするなら助けなきゃ良かったですよ!」



112: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:35:34.93 ID:P3TmrJ1n0
赤くなっている顔を隠すように背けるヘリカル。
やれやれ、と肩をすくめたニダーは、ロマネスクが吹っ飛んだ先を見据えた。

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

*(‘‘)*「あれは――」

<ヽ`∀´>「ヘリカル、アイツはロマネスクニダ。
      でも、もう――」

*(‘‘)*「……見りゃ解るですよ」

吐き捨てるように言う。
嫌悪感丸出しで、ロマネスクにステッキの先を向けた。
深く息を吸い

*(‘‘)*「アンタはあんまり好きじゃなかったですが、それでも目指す目的は一緒だと思ってました」

〈/i(iφ-゚ノii「…………」

*(‘‘)*「裏切るんですね。 私達を、そして自分の志を」

返事は無い。
それがロマネスクの今を如実に示唆していた。

ただ黒い拳を構える姿は、朽ち果てたマリオネットのようにも見受けられる。



116: ◆BYUt189CYA :2007/10/13(土) 21:37:29.60 ID:P3TmrJ1n0
<ヽ`∀´>「ヘリカル、もうアイツに意思は残ってないニダ」

*(‘‘)*「みたいですね。
     なら、もうこんな所には用なんてないです。
     撤退しますよ」

<ヽ`∀´>「どうやってニカ?」

*(‘‘)*「私がどうやってここまで来たか、それくらいは自分で考えて欲しいものです。
    それともまさか、アイツとの戦闘で頭を打って馬鹿にでもなりましたか?」

と、ステッキを見せてくるヘリカル。

<ヽ`∀´>「……成程」

*(‘‘)*「しっかり付いて来るんですよ。
     いくら私とアンタといえど、あのロマネスクを相手にするには分が悪いです――!」

床を蹴り、後方へと跳ぶ。
同時にニダーも、痛みを堪えつつ全力で追った。
しかし違和感を得たのは、しばらく走ってからである。

<;ヽ`∀´>「……追ってこない?」

ヘリカルが侵入するために破壊した壁まで辿り着き、ニダーは不思議そうに呟いた。
追ってくるかと思っていたロマネスクの気配が消えているのだ。



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