( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

58: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:44:55.60 ID:wOI31fop0
取り出したのは少し厚い紙の束だ。
右上部をクリップで止めたそれを、しなやかな手つきでめくり

( ・∀・)「まずは……東西南北順で行くならば東からか。
     東と西は、正直言って危険度は少ない方になると思う」

( ><)「何でなんですか?」

( ・∀・)「敵は本陣――北へ向かって進軍してくるだろう。
     それを東西二軍は真横、もしくは斜めから叩けることになる。
     正面衝突する他の軍に比べれば安全だという判断だ」

他に質問はないか、と見渡す。
全員の視線を確認したモララーは、また紙面へと目を落とした。

( ・∀・)「ちなみに各軍とも一人リーダーを決めてもらう……といっても、既に私が目星をつけているわけだが。
     ではまず東軍のメンバーを発表する」

会議室に、僅かな緊張が走った。



61: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:46:37.51 ID:wOI31fop0
( ・∀・)「東軍リーダーは……ギコ君だ。
     そしてしぃ君、ジョルジュ君、ショボン君が所属する」

「「――!」」

( ・∀・)「意見は後で受け付ける」

と、視線と手を使って場を制し

( ・∀・)「次は西軍。 リーダーはフサギコ君にやってもらう。
     メンバーはペニサス君、ドクオ君、兄者、弟者君だ」

再び息を呑む気配がするが、今度は誰も立ち上がることはなかった。

( ・∀・)「南軍。 ここは位置的に孤立する可能性が高く、一番過酷な戦いを強いられることになるだろう。
     だからそれなりの……リーダーとして軍神君。 メンバーはヒート君、ミルナ君に任せたいと思う」

(#゚;;-゚)「ま、妥当な判断かな。 ウチがリーダーとは思わんかったけども」

( ・∀・)「南軍は指揮よりも士気優先という考えでね。 不満があるなら変更を認める。
     残る北は――」

一枚めくり

( ・∀・)「北軍のリーダーはクー君。 所属は内藤君、ニダー君、ヘリカル君だ。
     ここはミラー設置防衛以外にも、本陣へ向かい来る異獣の壁にならなければならない。
     異獣と何百年と戦ってきた知識を持つニダー君とヘリカル君を中心に、高い防御力を維持してもらいたいのだ」



66: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:48:59.95 ID:wOI31fop0
川 ゚ -゚)「……私がリーダーなのか?」

( ・∀・)「ニダー君やヘリカル君は好戦的だからね。 むしろ自由にしてやった方が良いだろう。
     内藤君では正直荷が勝ち過ぎるだろうし……冷静な君ならば、上手くやってくれると思うのだが?」

何か言いたそうにするクーだが、ヘリカルやニダーを見て沈黙する。
彼らを下手に束縛するような役につければ、何かの理由で暴走してしまった時に面倒なことになるからだ。
それを見越して、おそらくモララーは言ったのだろうと思い直し

川 ゚ -゚)「解った。 出来る限り頑張ってみよう」

<_プー゚)フ「で、残った奴は?」

( ・∀・)「私は、ポリフェノール君と協力して本陣での全体指揮を執る。
     レイン君、デフラグ君、アサヒ君は『龍砲』の準備を。
     ビロード君とチン君は本陣防衛に参加してもらうつもりだ」

|゚ノ ^∀^)「私とシュー、そしてエクストとシャキンは遊撃かしら」

( ・∀・)「あぁ、そのつもりだ。 配置については追って説明する」

从・∀・ノ!リ「うむ、我の思っていた構想とほぼ同じじゃな。 流石と言うべきか」

( ><)「頑張るんです!」

lw´‐ _‐ノv「……後は」

( ´∀`)「モナ?」



72: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:50:33.36 ID:wOI31fop0
( ・∀・)「さて、私が困っているのは君のことについてでね。
     ここに残ってもらう線が濃厚なわけだが……敢えて聞く。 君はどうしたい?」

問われ、モナーは少し表情を曇らせた。
こういう時のモララーの問い掛けは、様々な意味が込められていることが多い。
高校時代を一緒に過ごしたモナーは、そんな彼の変わっていない部分を見て微かに安堵する。

とはいえ、今問われているのは自分だ。
答えは自分で言わなければならない。

(;´∀`)「お、御手伝いくらいはしたいですモナ。
     荷物運びなら僕にも出来ますモナ」

( ・∀・)「だが危険だ」

(;´∀`)「僕よりも年下の彼らが戦地に赴くというのに……のんびりと待ってることなんてしたくないですモナ。
     それに、それに――」

( ・∀・)「それに?」

( ´∀`)「何か僕を嘗めてる雰囲気の元生徒に、良いところを見せて見返したいモナ」

(;^ω^);'A`)「「……うわぁ」」

元生徒であるブーンとドクオが露骨に引く。
それどころか、この会議室にいるほぼ全員が複雑な表情を浮かべていた。



76: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:52:05.90 ID:wOI31fop0
しかし、

( ・∀・)「――っは」

( ´∀`)「え?」

( ・∀・)「ははははは! 成程、面白い動機だね!」

突如として心底可笑しそうに笑うモララー。
ここ数ヶ月の中で、最も血の通った表情だと気付いた者は多かった。

( ・∀・)「世界の命運を決める戦いに、そのような下らない理由を含めて参加するのは君くらいだよ。
     いや、実に面白いと思う」

|゚ノ ^∀^)「……まぁ、無用な悲壮感を持たれるよりはマシだけど」

(#゚;;-゚)「この世界の人はどっかおかしいとは思っとったけど、あの人は筋金入りやね」

(,,゚Д゚)「心外だな」

(#゚;;-゚)「何言うてんの。 アンタもかなりの阿呆や」

(;*゚ー゚)「あ、あはは」

(;,,゚Д゚)「……否定はしてくれんのだな、しぃ」

『そりゃそうだ』と何人かの笑いが起きる。



81: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:53:35.97 ID:wOI31fop0
拗ねたギコをしぃが何とか励まそうとするのを見て、モララーは小さな笑みを浮かべる。

( ・∀・)「なかなか清々しい気分にしてくれたね、モナー君。
     その功績に免じて共に来るのを許可しよう」

(*´∀`)「あ、ありがとうございますモナ、先輩!」

( ・∀・)「これでほぼ全ての事項が決まったね」

|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「はい。 後は――」

( ・∀・)「あぁ、ならば行こう。
     移動には時間が掛かるし、本陣の設置も行なっておきたい」

(`・ω・´)「……目の前に置くというのに、敵は指をくわえて待つのだろうか」

( ・∀・)「私の見解が合っているならば――奴らが私達と戦いたがっているのならば、確実に待つ」

言いきるからには確証があるのだろう。
レインや軍神が何も言わないところを見るに、彼の意見に賛成しているのだろう。



85: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:55:04.15 ID:wOI31fop0
('、`*川「んじゃ、最後の戦いに行きましょかね」

ノハ#゚  ゚)「絶対に勝って……生き残ろう」

ミ,,"Д゚彡「そのために今日までやってきたんですから、勝ちますよ」

( ´_ゝ`)「後は俺達の頑張り次第」

<_プー゚)フ「や――」

( ゚∀゚)「やぁぁぁってやるぜ!!」

<_;プー゚)フ「あ、おい、こらテメェ!!」

『勝つ』『生き残る』といったポジティヴな感情。
絶望的な戦いに赴く心境としては、最高最適なものだ。

しかし、これが彼らの強さなのだと思わせる光景の中、一人浮かない顔をしている者がいる。



(;^ω^)(やばいお……クレティウスの話を切り出しにくい空気になっちゃったお……)



88: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:56:43.81 ID:wOI31fop0
『思い切りは大切だと思うぞ、内藤ホライゾン』

(;^ω^)(このメンツの中に切り込むのは至難の業だお)

『仲間関係故の躊躇というものか。 ならば――』

次の瞬間、ブーンの右腕が強い光を放った。
一瞬にして照らされた会議室に、驚きの声が走る。

(;^ω^)「わわっ」

(;><)「眩しいんです!」

[;゚д゚]「これはクレティウスとかいう指輪の光か……?」

徐々に収束する光は、最終的に無となる。
しかし充分に視線を引き付ける効果は残り、そして声が響いた。

『――驚かせて済まない。 話がある』

(;゚∀゚)「なんか喋ったぞ!!」

(´・ω・`)「……これがブーンのウェポンの擬似精神かい?」

『違う』

( ・∀・)「違う? 君はクルト博士の作った擬似的な精神ではないと?」

『あぁ、私は全てのウェポンの基礎――いや、それ以前の存在だ』



93: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:58:12.34 ID:wOI31fop0
緊張が走る。
ここに来て、根本的な事実が覆ったからだ。

(;^ω^)「え、えと……この前、クレティウスと相談した時に
     この会議の場で彼が知っていることを教えてもらえるよう、約束したんですお」

(,,゚Д゚)「やはり俺の考えは当たっていたということか」

( ・∀・)「では、君は一体何者なのだね?」

『それについて言うことはしない。
 だが、私以外のウェポンは全て『私を模して造られた』とは言える』

ミ,,"Д゚彡「模して……?」

( ・∀・)「いまいち解らんね。 質問を変えよう。 君はどこから関与していた?」

問い掛けに、クレティウスは少し言葉を消す。
躊躇しているのか言葉を選んでいるのか、機械的な沈黙では判別出来ない。

『……この戦いの最初からだ』

(;^ω^)「え――」

( ・∀・)「最初から、ということは……もしや君は――」

『私はこの世界のモノではない。
 別の世界からここへと渡り、そしてクルト博士と出会った』



100: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 21:59:58.09 ID:wOI31fop0
(`・ω・´)「となると、時期としては指輪が作られる前ということになるのか」

( ・∀・)「待てよ? それが事実ならば……」

頭の回転の速いモララーは、そこで一つの真実に気付いた。

それはかつて渡辺から機械世界の話を聞いた時。
リトガーとの戦いの裏側に存在した、異獣との壮絶な戦いの歴史。
そして、彼女でさえも解らなかった一つの疑問点。

『……気付いた者もいるようだな。
 そうだ。 私がクルト博士に機械世界を教え、そのアクセスを行なった』

(;´_ゝ`)「!?」

<_;プー゚)フ「おいおい……機械世界から追放された渡辺は、元の世界にに帰るため情報収集したって言ってたよな?
         そして異世界にアクセスしているクルト博士を見つけ、接触したとも」

機械世界と接触していたクルト博士は、対異獣用の最強生物を送る代わりに知識とルイルを得る。
高度な知識を用いて作られたのがウェポンであり、ハインリッヒやクー、ジョルジュという人造人間。

そして機を見た渡辺が活動を開始し、クルト博士は自殺、指輪は散り散りになってしまう。
助手であったリトガーはVIPを組織し指輪の回収を行ない、その手から逃げていたクーはブーンと接触することになり――
つまり、あの一年半前の戦いに繋がるということだ。
その後については、もはや言うまでもないだろう。

(;^ω^)「ってことはまさか――」

川;゚ -゚)「お前がこの戦いの引き金を引いた……!?」



106: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:01:53.46 ID:wOI31fop0
『そういうことになるだろうし、ならないかもしれない。
 そもそも私だけではあるまいよ。
 異獣が存在したこと、機械世界から渡辺が追放されたこと、クルトが最強生物を作ろうとしたこと。
 その全ての要素が巧妙に絡み合い、そしてこの世界は異獣との戦いに巻き込まれた』

川#゚ -゚)「責任逃れでもするつもりか!」

『どう受け取ってもらっても構わない。 私の目的は異獣滅亡だ』

放たれた言葉に偽りはないのだろう。
その目的があるからこそ、今クレティウスが話した内容に頷けるからだ。
それが解っているからか、クーは何か言いたそうにしつつも口を閉ざす。

( ・∀・)「……では、君の目的は私達と同じというわけだね」

『そのためにクルトに魔力という存在を教え、機械世界にアクセスさせた。
 肥大化した奴らを倒すには、どうしても一世界分以上の力で対抗せねばならなかったからな。
 そして私の寄代となっていた指輪をモチーフに、全十四のウェポンがクルトの手によって作られたのだ』

( ゚д゚ )「寄代とはどういうことだ?
     お前は、最初から指輪の姿を持ってるんじゃないのか?」

『私は元々不可視の存在でな。
 何か形を持っていた方が都合が良かったので、クルトの用意した指輪に憑依させてもらった。
 指輪が在って私が作られたのではなく、私が在るために指輪を必要とされたというわけだ』

(,,゚Д゚)「つまり最初にとり憑いたのがたまたま指輪だったということか」

(;゚∀゚)「これがもし茶碗とかだったら――」



114: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:03:51.56 ID:wOI31fop0
『茶碗? 形状的にありえない。
 本来、私は戦いに使われる存在だ。 とり憑くのならば携帯し易い物質を選ぶ。
 あの時クルトの持っていた私物の中で、最も適していたのが指輪だったのだ』

成程、とギコは頷く。
その代わりとするように、今度はブーンが手を上げた。

( ^ω^)「……一ついいかお?
     君が他のウェポンとは別の、むしろ基となった存在だってのは解ったお。
     じゃあ、リトガーの作った十五番目のウェポンが、君の性質に似ているってことは――」

『アレは、彼が私の正体を知っていたからに他ならない』

( ・∀・)「リトガーもまた、あの戦いの裏で動いていたからくりを知っていたのだね。
     全て知った上で不滅世界を護ろうとした。 私達とは逆の……いや、事前対処として、か」

川 ゚ -゚)「…………」

从・∀・ノ!リ「じゃが、何故リトガーとやらはおぬしの能力を真似て15th−Wを作り上げた?
      我が知る限り、おぬしと他のウェポンの性能に大きな差異があるとは思えぬが」

『それは――』

( ´_ゝ`)「――アンタが、あのウェポンの中で最も強い力を隠し持っているから、か」

『あぁ、その通りだ』



120: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:05:25.85 ID:wOI31fop0
ノハ#゚  ゚)「本来はもっと強力だってこと? だったら、どうして内藤にその力を与えない?」

『言われずとも限界まで引き出している。 今の状態が、内藤ホライゾンに貸すことの出来る最大値だ。
 これ以上の力を彼に与えるとなれば、私は内藤ホライゾンという存在を乗っ取ってしまうことになる』

[;゚д゚]「どういうことだ?」

『私という存在は、「物質・生物にとり憑く」ことによって力を行使することが可能となる。
 今は指輪に憑いているが、力を内藤ホライゾンの方へと移し過ぎるとそちらに移動してしまうのだ。
 天秤を想像してもらえると解り易いかも知れない』

淡々と喋るクレティウス。
信じられない話ではあるが、このタイミングで話すということからも事実である線が濃い。

そもそもウェポンの基となっているのならば、それ以上の力を持っていても何ら不思議ではないのだ。

(`・ω・´)「だが、何故今更になって口を割る。
      クルト博士のことに関してはともかく、使用出来る力については術者の内藤にさえ初めて話すのだろう?」

『この話は言わなくても済む話だった。 謎のままでも問題なかった。
 大きな理由としては、ただ気が変わっただけ。
 そして、パートナーである内藤ホライゾンとの間の遠慮を無くすためでもある』

(;^ω^)「お……」



124: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:07:04.94 ID:wOI31fop0
『納得してくれたか? これが私だ、と』

しかし、

『……いや、この問い方は卑怯か。 内藤ホライゾンの性格ならば確実に「肯定」を出す。
 ならば――』

(;^ω^)「い、いや、どう問われても僕は君を信頼するお!」

川 ゚ -゚)「良いのか?」

( ^ω^)「これまで一緒に戦ってきたのは嘘じゃないってことは理解したお。
     難しい話はよく解んないけど、それが本当なら、これからもやってけると思うお」

始まりはジョルジュからクーを護るため、最近ではロマネスクを打ち倒すため。
ここまで来ることが出来たのは、クレティウスが力を貸してくれた御陰であることに疑いの余地はない。
その貸し与えてくれた理由に、悪意や裏切りが無かったと解ったのだから――

( ^ω^)「僕は、クレティウスを信じることが出来るお。
      これからも、これまでと同じように」

『――……』



132: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:10:48.16 ID:wOI31fop0
答える声は無かった。
ブーンの言葉が終わり、その後約十秒。
光以外は何も発しないのかと思われた瞬間、

(;^ω^)「うわっ!?」

突如、今まで以上の白光を生み出し

(;^ω^)「――って、あれ?」

そのまま消え去ってしまった。
後に残ったのは、ブーンの右手指にはめられた指輪のみ。

<_;プー゚)フ「ど、どうなってんだ……?」

('、`*川「ははぁん、成程」

|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「なかなか可愛いところがあるじゃないですか」

(;゚∀゚)「どゆこと?」

( ・∀・)「簡単に言えばね。
     彼は恥ずかしがって逃げたというわけだよ」

(;^ω^)「え……」



136: ◆BYUt189CYA :2007/11/13(火) 22:12:14.36 ID:wOI31fop0
( ・∀・)「ふむ……実に面白い。 
     しかし、これでかなりスッキリしたよ」

(,,゚Д゚)「そうだな」

( ・∀・)「ならば、今度こそ行こう。 決戦の地へ」

声に、会議室は沈黙する。
それは絶望的ではなく、むしろ希望に溢れた輝かしいものだ。

川 ゚ -゚)「……あぁ、勝つんだ。 絶対に」

( ^ω^)「おっおっ! これで僕も遠慮なく頑張ることが出来るお!」

( ・∀・)「行くぞ。 我々の全ての力を結集し、生き残るために」

対応するように全員が拳を突き上げた。

「「おぉ!!」」



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