( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

164: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:23:33.93 ID:B/Xg8yzC0
ミ;,,"Д゚彡「あ、ありがとうございます……というより、大丈夫なのですか?」

('A`)「……俺も、まだ戦えるから」

リロード。
空になったマジックカートリッジを排莢し、新たなカートリッジをソケットへ差し込む。
そのまま背中を見せたドクオは、味方を援護するために銃身を地面と平行になるように傾け

('A`)「やれるだけやってみるよ。 こんな俺でも何か出来るかもしれないし。
   出来ることさえ見逃して、もう後悔したくないから」

射撃する。
一際大きな光の破裂が、遠くにいた異獣の頭を撃ち貫いた。

ミ,,"Д゚彡(以前よりも攻撃力が上がっている……?)

(´<_`;)「フサギコさん、やっぱり空からの攻撃が邪魔だ! あれをどうにかせねばまずい!」

ミ,,"Д゚彡「わ、解りました! ならシューさんを呼び戻して一掃してもらい――」

声は、更に大きな音によって遮られることとなる。

真上だ。
上空からの爆音が、フサギコの高らかに放たれた命令さえも打ち消す。
直後、空気の激震とも呼べる震えが覆うように、陸で戦う者達の身体を激しく揺すった。

(;´_ゝ`)「な、何だ!?」

驚きに目を見開く兄者達は見る。
上空を何かが高速で飛び、その風を受けた異獣達が次々と爆ぜていくのを。



170: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:25:02.77 ID:B/Xg8yzC0
『はっはぁ! ヒーロー参上!!』

ミ;,,"Д゚彡「エ、エクストさんですか?」

『おうおう! 西軍の空は俺に任せとけよ!
 東はシャキンが行ってっから、ここの獲物は全部俺のモンだぜ!!』

('、`*川「だいぶ頭dでるわねぇ」

(´<_`;)「っていうか、あの爆発は何なんだ?」

よくよく見れば、高速で飛んでいるのはエクストの操縦するGDFだ。
灰色のボディに対し、その両翼は緑色の光に包まれており、その鉄翼が異獣の身体に少しでも触れた途端

《!?》

爆発を引き起こす。
しかしエクストは意に介す様子すら見せずに飛翔。
まるで数珠繋ぎのように連鎖する光は、ただただ圧倒的な光景だった。

( ´_ゝ`)「あれは13th−W『ラクハーツ』だな」

(´<_` )「ラクハーツって……あの爆発する斧?」

( ´_ゝ`)「アサヒ博士が言ってたのはこのことだったのか。
     GDFは魔力を使用していることから、カテゴリーで言えば魔法兵器に入る。
     だったら、外部から魔力を用いて強化も可能ってわけさ」



175: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:27:02.95 ID:B/Xg8yzC0
ミ,,"Д゚彡「つまりあれは、ラクハーツの力を持つ戦闘機というわけですか?」

( ´_ゝ`)b「そゆこと」

「「ってか、のんびり話してねぇで手伝え!!」」

周囲で必死に武器を振りまわしている兵達が、痺れを切らしたのか一斉に言葉を放った。

ミ;,,"Д゚彡「す、すみませんすみません!!」

('、`*川「んじゃ、私はもっと前に出てくるから。 守りは任せたわよ」

( ´_ゝ`)b「Wii (うぃー)」

d(´<_` )「把握」

ミ,,"Д゚彡「ミラーを最優先で御願いします。
      私もペニサスさんと一緒に前線の様子を見てきますね」

力強く頷く双子を背に、フサギコもペニサスと同様に前線へと走る。
走りながら、ふと左に見える巨大な結界へと視線を向けた。

ミ,,"Д゚彡(このまま済むわけがない……何か手を打っておくべきですか……)



183: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:28:29.38 ID:B/Xg8yzC0
最初から嫌な予感はしていた。

この戦いが始まって以来、ずっと足下を闇が這っているような妙な浮遊感。
いつ足下を掬われるか解らない状況に、不安が起きるのは当然だ。
自分がそう思うのならば、他の皆も同じような心中だろう。

ミ,,"Д゚彡(だからこそ、指揮を執る私が何とかすべきですね――)

空を見上げる。
真っ赤に広がる大空の中、翼を生やした異獣と戦闘機が激しい戦闘を繰り広げていた。

彼――エクストは強い。

戦闘力もそうだが、前提として心が強い。
何せあんな数の敵に、たった一機で挑んでいるのだ。
相棒であるシャキンも別場所にて同じように戦っているだろう。

解っているのだ。

離れていても――いや、離れているからこそ『互いが存在する』、と。

だから戦える。
怖くても、弱音など微塵も吐かない。
パートナーに笑われないよう、呆れられないよう。

敵に撃墜されるよりも、それが何より恐ろしいことだから。



189: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:29:59.31 ID:B/Xg8yzC0
ミ,,"Д゚彡「ミラーの道を最優先で作ってください!
      後ろや横に逃した敵は、南や北が対処してくれます!」

('、`*川「うーん……?」

過程よりも結果を優先した命令に対し、前線にて踏ん張っていた兵達は首を振る。
その顔に小さな笑みを浮かべ

「俺達の任務は二つ。 ミラーの防衛設置と、南軍を無事に送り出すこと」

「だから、西の敵は全て食い止め仕留める。
 ここで南軍に仕事を与えちゃいけねぇ。
 アイツらの仕事は俺達よりも過酷で、まだこれからなんだ」

('、`*川「そゆこと。 後で『西軍は情けなかった』なんて言われたくないしね」

ミ,,"Д゚彡「皆さん……」

「別に俺達、無茶なことを言ってるわけじゃないよな、リーダー?」

ミ,,"Д゚彡「――解りました。
      それをやれると見たからこそ、モララーさんも私達をここに組み込んだのでしょうからね。
      ならば、やってやれないことはない」

「じゃあ、命令してくれ。 俺達はそれを命賭けて遵守するからよ」

「士気を上げる意味でも御願いするわ」



196: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:31:32.86 ID:B/Xg8yzC0
言葉に、フサギコは強い頷きを返した。
通信機を取り出し、自分に従ってくれる全員に届くように

ミ,,"Д゚彡「皆さん! 先ほどの命令を変更します!
      ミラーの道を最優先で作り、そして敵の撃破も最優先で行なってください!
      難しいことだとは承知していますが――」

『了解!』

張り上げた声を塗りつぶすかのように、ノイズ混じりの声が来る。
それは少し離れた場所にいる双子からのもので

『ようやく気合の入った命令が来たぞ、兄者』

『うむ、こちらでも気合を確認した。
 おまいら聞こえたな? 我らがリーダーが無茶言ってきたぞぉー!』

通信の向こうで、『うぉー』と雄叫びが響くのを聞く。
何やら予想していたものと真逆な反応に、フサギコは戸惑うばかりだ。

ミ;,,"Д゚彡「え……っと……?」

('、`*川「やっぱり上に立つ人の気合って伝染するのよね。
     理知なのも結構だけど、たまには勢い重視で良いんじゃない?」



204: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:32:51.77 ID:B/Xg8yzC0
ミ;,,"Д゚彡「そ、そういう見方もありますね、確かに。
       というか……私よりも貴女の方が指揮官向きじゃないですか?」

('、`*川「私は面倒だからパス。 人を動かすよりも身体を動かしてた方が気持ちいいから。
     あ、別に性的な意味で受け取ってもらっても結構よ?」

ミ;,,"Д゚彡「……さいですか」

この広い世の中には、『合わない人間』が必ず存在するのを御存知だろうか。

それは性格であったり趣向であったり、面白いところで言えば『顔が気に入らない』という例もあったりする。
発見の仕方にも何種類かあり、見ただけで感じ取れるケースもあれば、相手を知って感じるケースもあるわけで

ミ;,,"Д゚彡(ううむ……後者ですね)

あまり思いたくはないのだが、明らかにペニサスは自分の苦手なタイプなのを自覚してしまう。

堅実で規範を重んじる彼は応用力というものが少し欠けており、対するペニサスは応用力の塊。
『規範が何じゃい』と言わんばかりの自由奔放さを持つペニサスと合わないのも、仕方のない話なのかもしれない。

ミ,,"Д゚彡(まぁ、戦場で性格云々言うのもナンセンス――)

('、`*川「もうすぐ西のX地点っぽいから、南軍に連絡しとかないと。
     後は前線の維持に集中ね。 ほらほら、ちゃっちゃと済ませる」

ミ;,,"Д゚彡(うぅ……自信が無くなっていく……)



213: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:34:30.56 ID:B/Xg8yzC0
西軍の後方では、軍神を始めとした南軍の面々が待機していた。
今か今かと身を震わせる最中、軍神はミルナとヒートを両脇に置き、最後のチェックを行なっている。

(#゚;;-゚)「――というわけでウチは勝手に突っ走るから、アンタらは適当について来て」

ノハ#;゚  ゚)「「…………」」(゚д゚;)

かつてここまで身勝手なリーダーがいただろうか。

(;゚д゚ )「勝手に突っ走るとは、どういうことだ?」

(#゚;;-゚)「? そのままの意味やけど。
    ウチが先頭切って敵陣突っ込むから、アンタらはフォローよろしくなって感じで」

(;゚д゚ )「……リーダーがそれで良いのだろうか」

(#゚;;-゚)「形式上の話やろうし、そもそも社長さんはウチに指揮なんか期待しとらんわ。
    だったらせめて士気上げるために奮闘しましょか、みたいな」

理屈は解る。
彼女が上手く軍を動かせるとは思えないし、そんなことをするなら先に敵を倒すタイプだ。
それはミルナも重々承知している。

(;゚д゚ )「しかしだな――」

(#゚;;-゚)「だったらミルナがやる?」

(;゚д゚ )「は?」



220: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:36:12.17 ID:B/Xg8yzC0
(#゚;;-゚)「だから、南軍の統制。
    アンタ守りのが上手いんやし、ミラーの傍で皆をまとめたらええんちゃうかな」

(;゚д゚ )「むぅ……だが……」

(#゚;;-゚)「そっちの彼女さんはどう思う?」

『いや、別に彼女というわけでは』などと言い訳するミルナを余所に、ヒートは小首をかしげた。
少し考える素振りを見せ

ノハ#゚  ゚)「その場合、私は前線に出ればいいの?」

(#゚;;-゚)「うーん……道を開くのはウチ一人で充分やし、ミラーの防衛を最優先でって言われとるしなぁ。
    もしミルナがミラーの傍におる言うんなら、アンタも一緒におってええよ」

ノハ#゚  ゚)「解った。 だったら私も軍神に賛成する」

(;゚д゚ )「お、おい、俺に任せても良いのか?」

ノハ#゚  ゚)「うん。 だって私は知ってるから」

ミルナの目を覗き込むような視線は、それだけで多大な説得力を持っていた。
そして彼女は、記憶を掘り起こすかのようにゆっくりと言葉を放つ。

ノハ#゚  ゚)「私は知ってるよ。
     護ることに関してミルナの右に出る人なんかいないんだって。
     ミルナが護れば、絶対の無事が保証されるんだって」

(;゚д゚ )「なっ……え――」



229: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:37:56.13 ID:B/Xg8yzC0
ノハ#゚  ゚)「でもミルナは自分を疎かにする部分があるからね。
     まだ治ってないんなら、私がサポートするよ」

(;゚д゚ )「む、いや、その……確かに一年前、お前がいなくなってから頻繁に注意されるようになったが――」

ううむ、と呻いたミルナは首を軽く振る。
額に流れる汗を拭い、深呼吸。

彼もまた、遠くなったように感じられる記憶を思い出しながら

( ゚д゚ )「……あぁ、そうだ。 そうだった。
    今思えば、お前が俺の背中を護ってくれていたんだよな。
    俺が皆を護る代わりに、お前が俺を守ってくれたんだ。 一年前にお前がいなくなって、やっと解ったんだ。
    だから――」

ノハ#゚  ゚)「うん、大丈夫。 もう勝手に消えたりしないよ」

(#゚;;-゚)「ひゅーひゅー」

「いいないいな、相思相愛いいなぁ」
「羨ましいから氏ね! 彼女と最高な人生を歩んでから笑顔で氏ね!!」
「やったらぁチクショー! 異獣が何だ! 奴らを倒すよりも女作る方が難しいっっつーの!!」

突如として激しい闘志を燃やし始める南軍所属の兵達。
ただの嫉妬で終わらない辺り、良い根性をしているようだ。



235: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:39:38.92 ID:B/Xg8yzC0
と、その時である。

『フサギコです! 軍神さん聞こえますか!?』

(#゚;;-゚)「はいはい、どうぞどうぞ」

『西のX地点に接近しました! 出番です!』

銃撃や獣の咆哮をバックに、フサギコの怒鳴りに近い声が南軍中に響く。
直後、兵達の表情に強い笑みが生まれたのは、彼らが何よりも出撃を望んでいたからに他ならない。

そしてその時が、今まさに来たのだ。

(#゚;;-゚)「気張っていくよー」

何とも力の抜けた声。
一瞬だけ肩を落としかけたミルナだが、軍神の姿を見て思い改める。

( ゚д゚ )(これは――)

闘気、と呼ぶべきか。
彼女の身体に陽炎が揺らめいているのは、決して見間違えではないだろう。
よくよく考えてみれば、恨みの相手を前にして何も思わないわけがない。

むしろ今までよく我慢してきた、と思わせる光景だった。



242: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:41:09.33 ID:B/Xg8yzC0
ノハ#゚  ゚)「…………」

ヒートにも同じことが言えるだろう。
そういう意味では、この軍は大きな爆弾を二つ抱えていることになる。
多大な戦闘力との引き換えだと考えれば、仕方のない話ではあるが――

( ゚д゚ )(……その分、俺が頑張らなければな)

前方、西軍の面子が方向転換を開始する。
この後は結界に近付き、ミラーを設置して防衛に徹する予定だ。

自分達南軍はこのまま更に直進し、敵陣の只中をたった一軍のみで駆け抜けなければならない。

先ほどまでのように他軍の援護は受けられない。
シャキンやエクストは、予想外に増え続ける敵の対処のため、空から降りられなくなりつつあり
レモナとシューも、突如として出現した大型異獣を相手で精一杯らしい。

( ゚д゚ )「……――」

開かれた視界の向こうには、ただただ白色の群れがあった。
上を見れば赤く染まった空があり、赤褐の大地が暗い炎のように足下を照らす。

地獄とは、このような光景を言うのだろう。



246: ◆BYUt189CYA :2007/11/17(土) 21:42:50.33 ID:B/Xg8yzC0
( ゚д゚ )「だが、足を止める理由にはならんな」

ノハ#゚  ゚)「だから行くよ。 勝って生を打ち立てるために」

戦闘開始から十八分。
四世界混合軍で最も強力な部隊が、最も過酷な戦場へと進み始める。


まだ彼らは、
いや、四世界は知らない。


自分達が戦おうとしている敵の本質を。

自分達が何に抗おうとしているかを。



――自分達が、何処へ向かおうとしているのかを。



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