( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

4: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 20:52:39.61 ID:e6qg+4CA0
【現在の戦況】
                      □=荒れ地(1マス約100m)
□□□□□□□□□□□▲▲▲□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□▲▲▲□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□M□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□●□●×●□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□×●××□●M□□□□□□□□□
□□□□□□□□M●××■××●●□□□□□□□□□
□□□□□□□□●●×■  ■×××●□□□□□□□□
□□□□□□M●E ×■  ★  ■E ×××□□□□□□□
□□□□□□●□●××■  ■××××□□□□□□□□
□□□□□□□●●×××■××××□□□□□□□□□
□□□□□□□□□×××××××□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□×××××□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□×××□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□×□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

×=異獣、■=結界、★=中枢、▲=本陣、●=四世界混合軍、E=EMA、M=ミラー

勝利条件: 東西南北にある四ヶ所のX地点の制圧
敗北条件: 本陣陥落
       一時間以内にX地点の制圧が出来なかった場合



7: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 20:54:44.77 ID:e6qg+4CA0
【各軍の状況】

本陣: 全体指揮と『龍砲』の準備中。
所属: ( ・∀・) 从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) [゚д゚] (-@ハ@) |;;;|:: (へ) ,(へ)|シ

北軍: 順調に進軍。 X地点まで最も接近している。
所属: 川 ゚ -゚) ( ^ω^) <ヽ`∀´> *(‘‘)*

東軍: X地点接近中。 押され気味。
所属: (,,゚Д゚) (*゚ー゚) (´・ω・`) ( ゚∀゚)

西軍: X地点接近中。 南軍を無傷で送り出すことに成功。
所属: ミ,,"Д゚彡 ('A`) ( ´_ゝ`) (´<_` ) ('、`*川

南軍: 進軍開始。
所属: (#゚;;-゚) ノハ#゚  ゚) ( ゚д゚ )

遊撃: シャキンとエクストが空を制圧中、EMA二機は巨大異獣と戦闘中。
所属: (`・ω・´) <_プー゚)フ |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv

異獣: 結界を守るために行動開始。 ただし人型異獣は未だ姿を見せず。
所属: ル(i|゚ ー゚ノリ メ(リ゚ ー゚ノリ 从ξ゚ -゚ノリ 〈/i(iφ-゚ノii



10: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 20:56:19.51 ID:e6qg+4CA0
第四十七話 『画竜点睛欠如的戦場』

四の戦場が在る。
そして当然のように、四の戦闘が在る。
東、西、南、北の四軍が、それぞれの場所を目指すために発生する事象だ。

それはつまり、人が進もうとし、獣が阻もうとする結果から出る当たり前の現象なのである。

「「――おぉぉぉぉっ!!」」

《《――――ッ!!》》

飛び交うは声という大音、咆哮という重音。
断続的にぶつかるのは金属の音で、人側からは射撃の音も混じる。

人と獣が押し合い圧し合い、互いの領域を侵食するために武器を振るっているのだ。



12: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 20:57:55.62 ID:e6qg+4CA0
単純な力では獣に利がある。

これまで渡り歩いた世界の生物を片っ端から食い尽くし
その中で最も強い力を、全ての獣が持っているのだから当然である。

しかし、だというのに――

「あぁん!? テメェぎるきるみんぞクラァァァァ!!」

「おいやべぇぞ、隊長がキレた! 八つ裂きにされる! ……らしい」

押しているのは人間の方だった。

《……!!》

何故だ、と獣は思った。
何故、全てにおいて勝っている自分達が押されているのか、と。
力も、知も、数も――戦いの経験さえも凌駕しているはずなのに、と。

装甲を砕き、皮膚を裂き、骨や内臓にさえもダメージを与える爪と牙を持っているにも関わらず
そして致命的な傷を与えたにも関わらず、彼らは必ず――

「――へっ」

と、誰もが強かな笑みを浮かべるのだ。



16: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 20:59:51.70 ID:e6qg+4CA0
知らないわけではない。

あれは痩せ我慢にも似た、人間固有の感情からくる一つの能力。
異獣は知っている――人間とは、何かを条件にして異常な力を発するのだ、と。



さて、少し話は変わる。

まず前提として、異獣は人間から攻められたことがほとんどない。
何故なら常に侵略側であったからだ。

突如としてターゲットである世界に湧き、そのまま逃げ惑う生物を食いつつ蹂躙していく。
それが終われば次の世界へ、次の獲物へ。
単純ではあるが、これが異獣の生き様である。

故に獣は、常に襲う側であった。

その中で彼らのような存在を見たことがある。
家族、仲間、恋人などといった『大切な存在』を奪われた人間は、大概が涙して崩れ落ちた。

しかしそんな中、極稀に異常な戦闘力を発揮する者がいた。

「てぇぇぇりゃああぁぁぁ!!」

そう、丁度、目の前で吠える人間のような者が。



18: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:01:58.49 ID:e6qg+4CA0
強さに執着を持つ異獣が興味を持ち、捕食したことは何度もあった。
異常な戦闘力とはいえ、魔力を使用しなければ異獣に傷をつけることさえも出来ない。
捕らえるのは、暴れまくるという点を除けば簡単だった。

しかし不思議なことに、彼らを喰っても大した力は得られなかった。

そしてあの力は一時的なもので、どうやら特殊な条件を満たした場合に発現するらしい、としか解らなかったのだ。
吸収したからには発現しなければおかしいのだが、
今まであの一時的な力を使えた異獣は、一匹たりとも存在しない。

何故だ、とまた異獣は思う。

皮膚を裂かれ、骨を砕かれた人間が、何故こうも立ち向かってくるのか。
そもそも何故、彼らは倒れないのか。
他の世界とこの世界の人間は、一体何が異なるのか。

「教えてやろうか化物……!! それはなァ――!」

その高度な知能故に出た僅かな戸惑いを読み取ったのか、前で剣を構える男が歯を剥いた。
頭から流れる血に片目を潰されつつも、闘気の籠もった目で笑い

「――俺達が、テメェらをぶっ倒す気満々だからだよ!!」

《!?》

理解不能。
意味が解らない。
狂っている。

頭に浮かべた言葉と同時、その脳天に男の剣が突き刺さった。



22: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:03:55.16 ID:e6qg+4CA0
戦場の南西にて、一際大きな動きがあった。

それは破砕という現象によって確定される。
つまり簡単に言えば

(#゚;;-゚)「はああぁぁぁぁぁ!!」

ある一人の女が、異獣の壁を高速でぶち壊して進軍しているのだ。

敵陣へと一気に踏み込んだ彼女は、その手足を巧みに操り獣を散らす。

繰り出される打撃は高速かつ強力無比。
暗い経歴から得た類希なる体術を用い、機械の如く敵を破砕していく。

拳打の嵐が走った後には獣の亡骸が転がるのみだ。
顔面を砕かれている獣もいれば、腹から破裂している獣もいる。

後ろを追従するのは南軍本隊だ。
彼らに守られるように、その中心に当たる位置にミラーを積んだ大型車が走っている。
その屋根に、二人分の人影があった。

(;゚д゚ )「流石だな……今までの鷹揚な彼女とは思えん」

ノハ#゚  ゚)「おそらくあれが本当の軍神の姿。
     恨みの相手を前にして、その溜めこんでいたエネルギーを全開にしている」



24: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:05:49.74 ID:e6qg+4CA0
( ゚д゚ )「……だが、あのペースで最後までもつのか?」

ノハ#゚  ゚)「そう判断しているからこその突撃だよ」

言われてみれば確かにそうだ。
あの軍神が、体力も何も考えずに突っ込むわけがない。
何せ異獣に関しては、味方の中でもトップクラスの知識と経験を持っているのだから。

( ゚д゚ )「そうだな。 今の俺達に必要なのは軍神を信じる心だ」

ノハ#゚  ゚)「ミラーを守るのも忘れないで」

( ゚д゚ )「よし、気を引き締めて行くぞ! 軍神に後れを取るな!」

腕を勢いよく前方へ伸ばす。
同時、了解の声と共に兵達が武器を構えた。
隣にいたヒートも、腰の包丁刀を引き抜きながら

ノハ#゚  ゚)「……じゃあ、私も行ってくるね」

( ゚д゚ )「油断するなよ」

ノハ#゚  ゚)「そっちこそ」

軽い跳躍。
赤褐色の地面に降り立ったヒートは、鎖を鳴らしつつ駆ける。

その背中を、久々に見る彼女の戦いを、ミルナは何故か安堵しつつ送り出すことが出来た。



27: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:07:51.33 ID:e6qg+4CA0
「うぉ、ヒートさん!?」

「御久し振りっす! また一緒に戦えるのが嬉しいっす!」

ノハ#゚  ゚)「うん、私もだよ! さぁ行こう!」

ヒートの戦い方は、非常に複雑でありながら単純である。

黒塗りの中脇差――壱ノ武『飛燕』で、敵の攻撃を捌き
鎖付きの包丁刀――弐ノ武『夜鴉』で、近〜中距離を舞い
投擲用の鉄鋼槍――参ノ武『啄木鳥』で、遠くの敵を貫き
銀の色を放つ短弓――四ノ武『梟』で、静寂を以って狙い撃つ。

状況によって四の武具を、その両手で取っ替え引っ替えしながら戦うのが彼女のスタイルだ。

把握力。
判断力。
瞬発力。

単なる修行ではなかなか伸ばせない感覚を、彼女は生まれながらに持っている。
いわゆる『天賦の才』というものだ。
そして、その恵まれた才能をフル活用した結果が

ノハ#゚  ゚)「ふっ――!!」

あの、舞うような美しい攻撃の嵐なのである。



29: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:10:14.62 ID:e6qg+4CA0
鎖を振り回し、その先端にある包丁刀が敵を切り裂く。
かと思えば、今度は槍や矢が一瞬で標的を貫いていく。
周囲を踊るように鎖が走る光景は、その輝きと細さが相俟り蜘蛛の糸を連想させた。

そんなヒートに、爪を立てた異獣が次々と飛び掛かる。

ノハ#゚  ゚)「……!!」

対する彼女の反応速度は凄まじかった。
敵が跳躍の姿勢を生み出した時には、既に視界に捉えているのだ。
当然、その対処も高速で行われる。

一瞬だ。

哀れ、ヒートに襲い掛かった四匹の異獣は、たった一呼吸の間にその身体を砕かれる。

その光景に敵はおろか、味方さえも目を見開いていた。
格の違いを見せ付けられたからではない。
確かに、他を圧倒する程の戦闘力を示されたのもあるが、それよりも何よりも――


単に、美しいのだ。


古く貴重な品を前にした時のような。
壮大な美術を初めて目にした時のような。

言葉など不要な、問答無用のインパクトが彼女には存在していた。



33: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:13:05.30 ID:e6qg+4CA0
( ゚д゚ )(だが、まだまだ余裕を残しているようだな……)

ミルナとヒートの付き合いは長い。
一年ほどの空白はあったが、それでも彼女の癖の大半を知っている。
彼女が本気か否かを知る指標が存在するのを、彼はその共にいた時間の中で発見していた。

壱ノ武『飛燕』。

それを逆手に握った時こそ、ヒートが本気を出す合図と言えよう。

通常、彼女は防御という行為をほとんどしない。
何故ならば、その前に敵を倒してしまうからである。
特に集団戦ともなれば、相手の群れを近付かせぬように戦うのが肝要となるのは当然の話だ。

如何に囲まれず、如何に自分のペースを保って戦えるかが
対集団を相手にする時のコツであり、勝利し得る唯一の術だとヒートは知っている。

しかし一対一――特に相手が強敵であれば、自然と防御せざるを得ないケースが多くなるのは解るだろう。

防御とは身を護るのみではない。
時には、様々な動作の起点となる。

往なし、捌くことで相手の隙を曝け出すことが出来るだろうし
弾き、振るうことで、逆に攻撃の姿勢を生むことも出来る。

武道を嗜む者の間では常識であるが、『反撃』とは防御から生まれる起死回生の手段なのだ。
故に、防御をただの防御として見ている内は、なかなか試合や戦闘で勝つことは出来ないだろう。
それほど戦いにおける『防御』とは、非常に重要なものなのである。



35: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:16:51.46 ID:e6qg+4CA0
( ゚д゚ )(つまり逆を言えば――)

――『飛燕』を握らない限り、彼女を手助けする必要はまったくない。

しかし、自然と拳が握られるのをミルナは自覚していた。
出来ることならば、あの華奢な背中をすぐにでも護りに行きたい、と心のどこかが叫んでいる。
もう彼女を失いたくない、と本能が軋みを挙げている。

( ゚д゚ )(だが……!)

同時に『あの頃のように、共に戦いたい』と願う自分もいた。
それを満たすためには、ヒートを全力で信頼しなければならない。

助け合うような仲ではなく、支え合うような仲でもなく。

握った拳に鋭い痛みが走る。
見れば、食いこんだ爪が皮膚を浅く裂いてしまっていた。
ミルナは、自分の中のヒートが如何に大きいかを改めて知る。

(;゚д゚ )「……どうにも幼馴染離れが出来ないようだな、俺は」

そして、その情けなさに思わず苦笑した。



38: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:18:17.48 ID:e6qg+4CA0
東の戦場では、巨大質量同士のぶつかり合いが連続していた。
大気の圧さえも押し潰す衝撃は、周囲に尋常ではない大音を振り撒く。

青い巨人と三体の大型の獣だ。
次々と跳び掛かる獣に対し、青い巨人――EMA『リベリオン』は薙刀を振り回して対応。
戦況としては身のこなしの速い獣に、人が翻弄されているような状況である。

|゚ノ;^∀^)「くぅぅぅ!!」

シェイクされるように激しく揺れるコクピットの中。
レモナは歯を噛みつつ座席にしがみ付き、レバーとペダルの操作に集中していた。

一匹払い除ければ、また一匹。
下手をすれば一度に二匹を相手せねばならない。
一瞬たりとも気を抜けない状況に、レモナは額を流れる汗さえも拭えずにいる。

目の前で威嚇の唸りを発する大型の異獣。
何度かの激突を経て、レモナは敵の力量を把握する。

奴らは獣ではない、と。

攻撃の中にフェイントを織り交ぜる獣などいない。
的確かつ計算された連携をとる獣などいない。
そして、

《――――》

明確な笑みを発する獣など、絶対にいない。



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