( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 41: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:20:43.90 ID:e6qg+4CA0
- |゚ノ;^∀^)(コイツ……!!)
レモナは決して頭の悪い女ではなかった。
国ではミカヅキの上司の娘として、エリートの扱いと教育を受けてきている。
戦い方はもちろん、相手の思考を読み取る訓練も積んできた。
故に、瞬時に悟ることとなる。
異獣とは単なる動物に非ず。
単なる、欲に忠実な汚らしい獣ではなく、
|゚ノ;^∀^)(人間に近い――いや、同等の知能を持っている……!!)
判明した事実を脳で噛み締めた途端、ある感情がレモナの中に浮かぶこととなったのは当然のことだった。
一度生まれた熱く黒い感情は、瞬時に彼女の思考を染め上げてしまう。
|゚ノ#^∀^)「その笑みが……!」
それは、異獣よりもよほど獣らしい咆哮で
|゚ノ#^∀^)「その笑みであの二人を殺したのかァァァ!!」
愚鈍な突撃を敢行してしまう結果となってしまった。
- 44: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:22:18.99 ID:e6qg+4CA0
- 《――!》
対し、『待っていた』とばかりに身を伏せる異獣。
感情を発するということは明確な思考も存在する、という結論まで達するのに時間は必要ないだろう。
次いで、心を表現することが出来るということは、相手の感情を誘発させることも出来るという予測も可能だったはず。
しかし今の彼女に、そのような余地などないことは明白だった。
|゚ノ#^∀^)「これは――囮のつもり!? 馬鹿にしないでッ!」
飛び掛かって来た異獣を、右腕にセットしている薙刀の石突きで薙ぎ払う。
続いて左から迫っている敵を止めるため、姿勢を動かそうとして
しかし次の瞬間、その背後に控えていたもう一匹の獣が大口を開けて飛び掛かってきていることに気付く。
全ては『怒り』という感情が、彼女の思考の遅延を招いてしまっていたのだ。
|゚ノ#^∀^)「ッ!?」
激しい衝撃。
小さなアラートが三回ほど連続でがなり立て、組み付かれたのだと知る。
加重による鉄の鈍い軋みがコクピットに反響し、両肩部にダメージを示す赤い表示が掛かった。
メインウインドウには、今にも噛みつかんと牙を見せつける異獣の顔。
- 48: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:23:58.48 ID:e6qg+4CA0
- |゚ノ#^∀^)「離れ、なさいよッ!!」
判断は速い。
両腕を押さえられている以上、左右腕に装備した武器で対処するのは愚かな選択であり
だからこそ選ぶのは、本来は威嚇くらいにしか使用されない貧弱な武装で
《――!?》
連続した爆音と同時、外部マイクを通して異獣の悲鳴を聞く。
理由は簡単だ。
頭部に備え付けられたチェーンガンを起動させ、その大口の中に魔力弾を放り込んだのだ。
口の中を滅茶苦茶に蹂躙され、多量の血を吐き出す異獣は、そのまま仰け反るように後退する。
しかし、それを見逃す理由もなければ、生かしておく道理もなく。
|゚ノ#^∀^)「私を……いや、私達を――!」
赤黒い血にメインカメラの半分以上を汚された状態にも関わらず、レモナは一歩前進。
|゚ノ#^∀^)「嘗めるなぁぁぁぁぁ!!」
苦悶に呻く異獣の首を、その鋭長な得物で刎ね飛ばした。
- 49: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:25:46.51 ID:e6qg+4CA0
- |゚ノ#^∀^)「ハァ、ハァ……!」
『こちらシャキンだ。
レモナ、苦戦しているようだが――』
|゚ノ#^∀^)「要らない!」
『だが、シューか誰かを呼び戻した方が――』
|゚ノ#^∀^)「要らないって言ってるでしょう!?」
怒りに任せて通信を強制的に切ってしまう。
彼女らしくない行動に、今頃シャキンは怪訝な表情を浮かべていることだろう。
この怒りの理由として、異獣の笑みが癪に障った、という要因もあるが
決戦開始から既に三十分が経過しようとしている状況に、焦りを感じられずにはいられなかったのも一つだった。
深青の肌に生々しい赤を混じらせたEMAは、次なる敵へとメインカメラを向ける。
既に一体は倒しているため、残るは二体となっていた。
後方で奮戦しているギコ達がここに辿り着くまでに、敵の掃討を終わらせなければならないのだが――
|゚ノ;^∀^)(早く終わらせなくちゃ……早く、早く……!!)
北軍と西軍がX地点を制圧しつつあるという連絡が来たのは、ほんの数分前。
最短距離を駆けた北はともかくとして、南軍を率いて戦っていたという西に遅れをとるのは不本意の極み。
ライバルのシューがいる側に負けるとなれば、プライドの高いレモナが焦るのも仕方のない話であった。
- 51: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:27:46.04 ID:e6qg+4CA0
- 《――――》
その微細な感情を、機体の挙動から読み取ったのか。
残る二体の異獣がある行動をとる。
|゚ノ;^∀^)「なっ……」
作り出されるは攻めの姿勢ではなく、守りの姿勢。
EMAを中心に一定距離を保ち、ただ円状に、隙を窺うかのようにゆっくりと。
戦いのセオリーとして正しくはないが、レモナの神経を逆撫でするには充分な行動だった。
|゚ノ#^∀^)「この……ッ! 嘗めるなって――」
無論、その挑発に乗らないわけがなく、しかし
|゚ノ;^∀^)「ッうぁ!?」
背後で起きる爆発に、出鼻を挫かれる結果に終わってしまう。
何事かと振り向こうとした瞬間、視界の傍を黒い何かが駆け抜けていった。
- 54: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:29:42.94 ID:e6qg+4CA0
- 『……熱くなるのは結構だが、ベクトルと状況を考えろ』
よろけたEMAの隣に位置を固定したのはキオル。
備え付けられた機銃の先端から煙が出ていることから、今の攻撃はシャキンのものらしい。
その内蔵している魔力を用い、中空に浮かんだまま、彼はレモナに近距離用の簡易通信を飛ばしてくる。
|゚ノ;^∀^)「な、何よ……邪魔しないで!」
『何処でどう死ぬのはお前の勝手だ。
だが、今だけは許されないことを忘れるなと言っている』
|゚ノ;^∀^)「ッ……!」
『間違ったことを言ったつもりはない。
これはお前だけの戦いではなく、俺達の戦いだからな』
|゚ノ#^∀^)「でも、ここは私が任されてるんだから!」
『その状態で戦いを継続出来るのか?』
冷静な言葉を聞き、そこでレモナはようやく気付く。
サブウインドウに示されたダメージの深刻さを。
EMA用ライフルの、姿勢制御に使われる予備の大型マジックカートリッジを積んでいたバックパックが
接続部を打ち抜かれて外されている、という事実を。
- 56: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:32:13.34 ID:e6qg+4CA0
- 『スラスター部は破壊していない。
一人で本陣に戻り、補給するついでに頭を冷やせ。
その間、ここは俺が役目を引き継いでやる』
|゚ノ;^∀^)「ば、馬鹿言わないで! 空はどうするのよ!」
『お前がさっさと帰ってくれば済む話だ。
それに――』
ブースターに光を灯しながら、機体が前へと出る。
『俺とキオルならば、空と陸の戦線を同時に維持することも可能。 だろう?』
【ですね。 何ら問題はありません】
|゚ノ;^∀^)「でも!」
どちらが正論を言っているのかなど、考えるまでなかった。
バックパックを失ったまま戦っても、すぐに戦闘継続不能になるのは解っている。
だが、だが――
『いい加減にしろ……我を忘れて全体に影響を及ぼす気か』
そう、これは個人の戦いではない。
四世界という莫大な賭け金を賭けた、一世一代の大勝負なのである。
- 57: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:33:51.97 ID:e6qg+4CA0
- |゚ノ;^∀^)「くっ……解ったわよ」
何とか理性で感情を抑え込んだレモナは、機体を本陣へと向けた。
そして自身の代わりとなろうとしている男へ
|゚ノ#^∀^)「……私が帰ってくるまでにやられてたりしたら、承知しないわよ」
『随分とわがままなことだ。
誰のせいでこうなったと思っている?』
|゚ノ;^∀^)「うるさいわねっ、私のせいで死なれたら寝覚めが悪くなるじゃない。
それにアンタ、根に持ちそうなタイプだし」
恩人とも言える相手にそんな台詞を吐いたレモナは、
シャキンの返事さえ待たず、青色の光を噴出しながら発進してしまう。
コクピットの中、それを後ろ目に見送った彼は溜息を一つ。
(`・ω・´)「やれやれ、気丈な娘だな。
さて――」
シャキンの鋭い視線の先。
二体の大型異獣が、獲物を逃がされた苛立ちからか、牙を立ててこちらを睨んでいた。
- 59: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:35:24.79 ID:e6qg+4CA0
- (`・ω・´)「キオル、武装は?」
【ミサイル類は全て打ち尽くしています。
機関銃のストックも僅か。 飛行可能時間はまだ余裕があります】
(`・ω・´)「つまり――」
【レモナ様が戻られるまで防御に徹し、その後に本陣に補給へ向かうのが常策かと】
(`・ω・´)「流石と言うべきか。 確かにそうだな」
しかしシャキンは首を振る。
(`・ω・´)「だが、この戦い……常套で勝てる相手ではないのも事実だ」
【では】
(`・ω・´)「あぁ。 アレを使うぞ」
その時だった。
懐へ手を入れかけたシャキンの手が止まり、すぐさまスロットレバーを掴み直す。
視線の先に異常を見つけたからだ。
(`・ω・´)「あれは……!?」
獣が身を震わせている。
逆立てた毛を天へと向け、身を丸めて呻いている。
それは、羽化する蛹を見ているかのような光景だった。
- 64: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:37:21.70 ID:e6qg+4CA0
- 破砕――丸めていた背が、爆発するように裂けた。
続けて出現したモノが何なのかを理解したシャキンは、大きく舌打ちし
(;`・ω・´)「化物だとは思っていたが、ここまでとは――!」
【来ます。 回避運動を】
(`・ω・´)「言われなくとも解っているさ!」
言葉よりも早くペダルを踏み込んでいたシャキンは、機体が垂直に上昇するのを身体で感じる。
直後、その真下をギリギリのタイミングで、巨大な何かが高速で通過していった。
正体は、あの大型異獣の一頭。
しかし先ほどまでの姿ではない。
その背に、歪で生々しい翼を生やしているのだ。
空に舞う数々の異獣を、そのままサイズアップさせたような光景である。
(`・ω・´)「わざと飛行能力を隠していたようだな。
ふン、こういうところはズル賢い人間を真似ているらしい」
【あの巨体が空を飛ぶとなると脅威ですね】
(`・ω・´)「空と陸を行き来する手間が省ける。 問題ない」
スロットルレバーを握り直したシャキンは唇を舐める。
眼下、こちらを見上げて飛翔しようとする二頭の大型異獣を睥睨し
(`・ω・´)「それに、賢い異獣に教えてやらなくてはな。
空で俺を敵に回すとどうなるかということを――!!」
- 67: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:39:30.07 ID:e6qg+4CA0
- 西の戦場でも似たような光景が繰り広げられている。
ただ違うのは、赤い巨人が青い巨人に比べて善戦している、という点くらいだろうか。
既に二体の大型異獣を葬った赤のEMA『ウルグルフ』は、
更なる獲物を斬り殺すため、その流麗な動きを止めることはしない。
lw´‐ _‐ノv「ふっ……!」
短い息を吐き、姿勢を前へ。
画面に揺れるターゲットを見据えて突撃する。
二本の刀剣が風を切って唸り
《――!》
その振りかぶられた前足二本を切断する。
噴水のように溢れ出る血は、赤黒い色だ。
lw´‐ _‐ノv「そんな形でも血は一緒なんだね」
でも、と呟き
lw´‐ _‐ノv「相成れないよ。 どちらかがどちらかの敗北を望む限りは」
- 71: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:41:01.45 ID:e6qg+4CA0
- 構える。
甲高い、鈴を擦り合せるような音が響いた。
魔力を帯びた二本の刀剣が反応し合っているのだ。
重厚な疾駆。
残る二体を前に、シューは躊躇なく機体を走らせた。
機体を構成する金属が軋み、音を立てるのをコクピットで聞く。
だが、それは悲鳴などではない。
噛み斬れ。
決して生かすな。
生かさず殺せ。
lw´‐ _‐ノv(…………)
それは、赤きEMA『ウルグルフ』の雄叫びなのかもしれない。
今はもういない搭乗者の仇を討てと言っているように、少なくともシューには思えた。
- 74: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:42:46.95 ID:e6qg+4CA0
- しかし、彼女は首を振る。
lw´‐ _‐ノv「復讐なんて下らない」
左上まで振りかぶった刀剣を、袈裟の軌道で薙ぎ払った。
一瞬の抵抗の後、赤黒い血が舞い、切断された獣の前足が地面に激突。
動きは終わらない。
苦痛の悲鳴を挙げる獣を放り、余ったもう一本の刀剣を振り向き様に叩き込んだ。
《――っ!?》
それは、背後から襲い掛かろうとしていた異獣の脇腹に深々と食い込む。
尚も勢いを止めない刀剣が、そのまま暴れようとする身体を真っ二つに切断した。
これで四体。
西に現れた大型の異獣は全て撃破したことになる。
X地点を守るようにして配置されていた四体を倒したことにより、ようやくミラーを置くことが出来るだろう。
lw´‐ _‐ノv「……ふぅ」
手強かった。
敵が、ではない。
――自分の心が、だ。
- 76: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:44:30.07 ID:e6qg+4CA0
- lw´‐ _‐ノv「これは仇討ちじゃない……これは私の戦い」
言い聞かせるような呟き。
低い駆動音を奏でるコクピットの中、シューは僅かに視線を俯かせる。
軽く目を瞑り、自嘲の笑みを浮かべた。
lw´‐ _‐ノv「まだまだ私も修行が足りない。
戦いに公私を考える時点で間違っているというのに」
怒りはある。
ミカヅキはともかく、ミツキを殺した異獣を許すことなど出来ない。
ただ間違えてはならないのは、
この戦いは弔い合戦などではなく、生きる権利を賭けた戦争だということ。
決して、私怨に身を投じて臨んではならない――いわば聖戦なのだ。
lw´‐ _‐ノv「……情けないね」
葛藤している自分がいることに対し、落胆を覚えた。
頭では解っているのだが、感情が納得していないのだろう。
lw´‐ _‐ノv(でも、こんなことじゃレモナに笑われてしまう……)
単純な対抗心を燃やしたシューは、改めて心を引き締めた。
サブウインドウへと素早く視線を這わせ、機体のコンディションをチェック。
各部のマジックカートリッジ残量や、主動力の調子などを調べる。
まだどのくらい戦えるのかを、表示されたデータを基に勘と経験で判断した。
- 78: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:46:00.27 ID:e6qg+4CA0
- と、その時だ。
か細い飛翔音が聞こえたかと思った瞬間、EMAの真横を灰色の戦闘機が通過していく。
『おぉっ、そっちはもう片付いたみたいだな!』
lw´‐ _‐ノv「……エクトマン?」
『何その岩男に出そうで出ない名前!?
仲間の名前くらい覚えとけよ!』
lw´‐ _‐ノv(騒がしい男に捕まってしまった)
『で……ふむふむ、見た感じ苦戦したってわけじゃねぇみたいだな。 流石だ』
lw´‐ _‐ノv「ナンパは御断り」
『そこまで飢えちゃいねぇっ。
ほら、何つーの? いきなり四匹に囲まれてたから、大丈夫かなーって』
話の文脈から、どうやら彼なりに心配して来てみたらしい。
装甲と同じ色の血に塗れたEMAの周囲を、エクストのGDFが周回する。
- 80: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:47:43.92 ID:e6qg+4CA0
- lw´‐ _‐ノv「……で、それだけ?」
『いいや、まさか。 ちょっと頼みがあるんだ』
何、と聞き返せば
『調子乗って最初から全力出してたら、もう弾薬と魔力が尽きたんだわ。
すぐ帰ってくるから、空の方を少し頼んでいいか?』
言葉に、シューは空を見上げた。
当初よりは減っているが、それでもまだ厄介な数が残っている
lw´‐ _‐ノv「……解った。 ミラーの援護ついでにやっておく」
『おぉ、意外と話せる奴じゃねーか!
米ばっか食ってる変な女かと思ってたけど、見直したぜ!』
lw´‐ _‐ノv「ずっきゅーん」
『え? 何か言った?』
lw´‐ _‐ノv「……いや、何も」
『何かよく解んねぇが、とりあえず頼んだぜ! すぐ戻ってくるからよ!』
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