( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

84: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:49:14.46 ID:e6qg+4CA0
意気揚揚と、半分一方的に役を押し付けたエクストは
残り少ない魔力を飛翔力に変え、高速で本陣へと飛んで行ってしまった。
それをシューは、小さい溜息で見送る。

lw´‐ _‐ノv「……ふふ、罪な男」

意味不明なことを呟いた彼女は、そのままペダルとレバーを操作して機体を浮かす。
空中戦ともなれば、残量から考えて二十分ほどしか戦えないだろう。

lw´‐ _‐ノv「けど、頼まれたからには果たさねば」

うむうむ、と頷いたシューは何やら幸福感を携えた笑みを浮かべた。
そのまま空へと舞い上がり、周囲を取り囲む異獣を見据える。

lw´‐ _‐ノv「ん……いや、待てよ?
      モミアゲ……手……襟……? んん?」

最高度の緊張に包まれつつも、シューの目は敵を見ていない。
ただ、やはり意味不明なことをブツブツと呟いた彼女は

lw´‐ _‐ノv「……うん、やっぱ無いわ」

と、謎の結論を生み出すのだった。



86: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:51:03.80 ID:e6qg+4CA0
戦闘開始から四十分が経過しようとしている。

四つの軍は、それぞれの目的地を目指して進軍しているわけだが、
その中で最も遅れをとっているのが東軍だった。

(;゚∀゚)「うぉー! コイツらうっぜぇ!!」

(´・ω・`)「どうやら他場所に比べて、敵の壁が随分と厚いみたい。
      西軍はもうすぐX地点を制圧出来るらしいよ」

(,,゚Д゚)「……ふン、確かに歓迎はされていないようだな」

気力は充実している。
ギコ達も頑張っている。
他の皆も頑張っている。

だが、根性だけではどうにもならないこともあった。

とにかく壁が厚い。
倒しても倒しても、なかなか進むことが出来ない。

戦線に加わったジョルジュ達も、最初こそは『無駄無駄ァ』などと勢いよく敵を葬ってきたが
段々と、その敵の多さに辟易してきているのが現状だった。



91: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:52:33.17 ID:e6qg+4CA0
(#゚∀゚)「ああもう面倒くせぇ! OVER――」

(´・ω・`)「こら」

(#)∀゚)「ぐはぁ!?」

ショボンの声と同時、見えない攻撃がジョルジュの頬を捉えた。
軽めの一撃は、しかしジョルジュが仰け反るほどの威力を生み出している。

(#゚∀゚)「痛ってぇな! 何すんだよ!」

(´・ω・`)「今ここでパワーを使い果たしてどうするつもり?
      まだまだ序盤なんだよ? 馬鹿なの? そうか馬鹿か」

と、ショボンは5th−Wの能力『刺突の予約』の回収を行ないつつ言う。

( ゚∀゚)「……ところでよ」

(´・ω・`)「ん?」

( ゚∀゚)「その予約の回収をしなかったらどうなるんだ?
     お前がミスったトコ見たことがねぇからよ、ペナルティ知らねぇんだ」

(´・ω・`)「そりゃあ、ミスしたことないしね」

当然のことのように言うショボン。
彼の慎重さが見え隠れする発言だ。



93: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:54:03.20 ID:e6qg+4CA0
(´・ω・`)「僕はミストランから聞いてるから知ってるけど、別に君も知る必要はないよ。
      それよりもほら、目の前の敵に集中集中」

何故か有耶無耶にしようとする彼に、ジョルジュは違和感を感じないわけがない。
しかし、そこまで深く聞けるほどの仲でもないことを知っているが故に

(;゚∀゚)「……んだよぉ」

と、小さく文句を言うしかなかった。

そんな時、ギコの通信機から声が鳴り響く。

『――こちら北軍のクーだ! X地点の確保に成功!
 これからミラー防衛に入る! 後は任せた!』

(,,゚Д゚)「ちっ、やはり北が早かったか……せめて南よりは先に制圧出来ねば、皆に顔向け出来んぞ」

(´・ω・`)「急ぎましょう、ギコさん」

(,,゚Д゚)「解っているさ……!
    しぃ、援護を頼む! ここからは一気に行くぞ!!」



94: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:55:35.12 ID:e6qg+4CA0
ギコがグラニードを構えて突撃を開始した頃。
西南を突き進む南軍に一つの動きがあった。

「南のX地点目視! この調子では五分ほどで到着可能かと!」

( ゚д゚ )「よし、順調だな」

戦闘開始から四十分。
ミラー設置などに時間が少々掛かるとして、五十分には準備が整うだろう。
最も離れた場所の制圧が任務だった故、一時間で間に合うかどうか、という判断だったのだが――

( ゚д゚ )(西軍がよくやってくれたということか。
     そして軍神の突撃が、一度たりとも止まらなかったというのもある)

自分がやったわけではないのだが、ミルナは誇らしい気持ちを抑えることが出来なかった。
これが俺の仲間だ、と誰かに自慢したいくらいだ。

「! 上空から敵襲!」

( ゚д゚ )「む……」

どうやら西の空にいた獣が、こちらを追いかけて来たのだろう。
ここで上からの攻撃を受ければ、進軍に支障が出てしまうかもしれない。



96: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:57:21.15 ID:e6qg+4CA0
(;゚д゚ )「くっ、面倒なことを! 射撃が出来る者はすぐ迎撃に――」

ノハ#゚  ゚)「ミルナッ!!」

声を遮ったのはヒートだ。
前線の敵を駆逐し終わったのか、武器を収めてこちらに向かってきている。
何か案があるのか、仮面から見える目には鋭い輝きが見て取れた。

ノハ#゚  ゚)「私に任せて!」

(;゚д゚ )「だが、一体どうやって――」

ノハ#゚  ゚)「アレやるよ!」

アレ?
アレとは何だ?

聞き覚えのない合図に、ミルナは記憶の糸を片っ端から引っ張ってみる。
が、心当たりなど一つとしてない。

(;゚д゚ )(む? 聞き覚えのない合図ということは――)

単純に考えて、そんなもの最初からないわけで。
つまり彼女が要求しているのは、それほど難しいことではないはず。



99: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 21:59:32.68 ID:e6qg+4CA0
前方、ヒートがこちらに向かって跳躍する。
どう見てもミルナ直撃コース。
そこまで来て、彼はようやくヒートの求めていることに気付いた。

( ゚д゚ )「成程……! ぶっつけ本番で無茶を言う――!!」

ノハ#゚  ゚)「でもミルナならやってくれる! そう信じた!」

( ゚д゚ )「ならば意地でも応えるしかないだろう!!」

吼えたミルナは、ミラーを積んだ車両の上で拳を構えた。
視線は真上を目指し、腰を落として彼女を待つ。

タイミングなど図る必要はない。

ただ彼女がここへ来ると言うのであれば、呼吸を合わせて構えていればいい。

ノハ#゚  ゚)「ミルナッ!」

( ゚д゚ )「ヒートッ!」

瞬間、二つの影が合致する。
構えられた拳にヒートの片足が乗った形だ。

それは、かつても行なった二人の信頼の証――人力射出カタパルト。



101: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:01:19.95 ID:e6qg+4CA0
(#゚д゚ )「行けッ!!」

臍下丹田に溜め込んだ力を、腰、肺、肩、肘、手首の順で流動させる。
生まれたのは身を天へ伸ばす勢いで、それはヒートの身体へと伝達された。

射出。

過去に行なったものとは角度が異なるが、結果はまさに二人の合体技に等しい。

ノハ#゚  ゚)「おおおぉぉぉぉっ!!」

真上へと打ち上げられたヒートは、数十メートルという距離を一瞬で飛破。
放物線の頂点へと辿り着いた時には、既にその武具を開放していた。

《――!?》

異獣が驚くのも無理はなかった。
機械ならばともかく、生身でこの高度まで到達出来る人間がいるとは思うまい。
そしてその驚愕の寸隙こそ、ヒートにとっては充分過ぎる程の幅を持ってしまっていた。

じゃらり、という死の音が響いた時には既に遅い。

未だ空中で身を揺らすヒートの右腕には鎖が握られており、
その振られる勢いの先端――包丁刀が、その身を龍の如くうねらせ始める。



104: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:02:50.65 ID:e6qg+4CA0
うねりが奔流に変わったのは直後。

命を持ったかのように疾走し、もはや空に浮くだけとなった獣に食らいつく。
それを何とか身を捻って避けることが出来た異獣は、その身を槍や矢に貫かれた。

圧倒的な光景だと言わざるを得ない。

ヒートが安定姿勢で空中に存在したのは、僅か二秒。
たったその間に包丁刀を投げ、その空いた両手に槍と弓を握っていた。
後は落下しつつ、周囲の異獣を片っ端から攻撃するだけとなる。

( ゚д゚ )(蜘蛛の巣に絡め捕られた虫だな……)

言い得て妙な感想を抱きつつ、ミルナはヒートの活躍を見守る。
見えない糸に捕まったかのように、異獣の群れは易々と身を食われていった。

ノハ#゚  ゚)「――っと」

そんな中、攻撃のセンスを南軍全体に見せつけたヒートが降り立つ。
武器を腰に戻し、酷使した手首をほぐすために手を振った直後。

まるで雨のように、血と臓物、そして獣の死体が周囲に降り注いた。



109: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:04:28.24 ID:e6qg+4CA0
( ゚д゚ )「……本領発揮といったところか?」

ノハ#゚  ゚)「まぁね」

自身にも降る血を拭い

ノハ#゚  ゚)「ようやく勘を取り戻したって感じかな。
      これで奴らともトップギアで戦える」

( ゚д゚ )「奴ら、とは……あの二人だな?」

ノハ#゚  ゚)「そろそろ来ると思うよ。
      ここまでされて、黙って見ているほど我慢強くないだろうし」

( ゚д゚ )「警戒しておくべきだな――む?」

「軍神がX地点まで到着! 周囲の敵を掃討完了しました!」

( ゚д゚ )「解った! ではミラーをX地点に設置!!」

部下の了解の声を聞くと同時、ミラーを乗せた車両が方向転換する。

少し走ると、死体の山の上に立つ軍神が見えた。
どうやらX地点周囲の敵は、全て彼女が排除してくれたようだ。



114: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:05:44.83 ID:e6qg+4CA0
車両が止まる。
後は荷台部のミラーを展開し、時が来るまで防衛に集中すれば良い。

(#゚;;-゚)「防衛準備もばっちしやね。 本陣に連絡よろしく」

( ゚д゚ )「解った――こちら南軍、X地点に到達。 ミラー防衛を開始する」

『了解した。 もうじき他も揃うはずだ。
 まぁ、ぶっちゃけ南の報告は最後に聞くものだと思っていたが』

( ゚д゚ )「皆がよくやってくれた結果だ」

『そう言える君もよく頑張ってくれたようだね。
 ならば、後は……ん、ちょっと待ちたまえ』

( ゚д゚ )「? あぁ」

『何? 巨大な魔力反応――と? でh――にれ――なけれ――!』

ざ、と深いノイズが入った。
怪訝な表情で通信機を振るミルナに、鋭い声が届く。

『――ろ! ミラ――を――やく!』

(#゚;;-゚)「? どないしたん?」

(;゚д゚ )「いや、ノイズが酷くて何を言っているのか――」

次の瞬間、絶望の序曲とも言える轟音が響いた。



117: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:07:31.18 ID:e6qg+4CA0
しかも一発だけではなく、連続という勢いで、だ。
大地さえも揺るがす勢いの大きな音に、周囲の人間も何事かと目を見開く。

ノハ#;゚  ゚)「あ――」

「ミ、ミラーが……!?」

悲痛な声に、ミルナは背後を見る。

(;゚д゚ )「なっ――馬鹿な!?」

それは、何と例えれば良いのか解らない光景だった。
ほんの数秒前までは、その荷台部を垂直に近い角度まで立てようとしていた車両。
しかし、

(#゚;;-゚)「何や、あれ……」

(;゚д゚ )「まさかここまで奴らの――!?」



120: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:08:51.93 ID:e6qg+4CA0
無残な様相だった。
展開し掛けたミラー表面に刺さっているのは、大量の白い何か。
いや、よく見れば、細長く光る正体は刃だと解る。

――白色の刀。


それが、無限と言える数を以ってミラーを蹂躙していた。


皆の努力が実を結び、新品同様の姿でここまで辿り着いたミラーは
しかし、ただの一瞬でスクラップにされてしまったのだ。

ノハ#;゚  ゚)「あ、の刀は――」

ヒートの身が震える。
源は恐怖ではなく、憤怒だ。
一瞬にして殺気に包まれ彼女は、赤い結界の方角を睨み


ノハ#゚  ゚)「――貴様かァァァァァァ!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「…………」


鬼神の咆哮を放った。



123: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:10:39.05 ID:e6qg+4CA0
「超強大な魔力反応が四! 東西南北に一つずつ出現!!」

「南軍のミラー破壊されました!!」

「に、西戦力の一部が――強大魔力反応によって壊滅!?」

「東北両方の戦力の一部にも、壊滅的な被害の報告が――!」

( ・∀・)「何が……起きたと言うのだ……?」

一瞬であった。
結界の内側から巨大魔力が検出された、と報告があった僅かな間。
次の瞬間には、全戦力の約二十%が刈り取られていた。

从・∀・ノ!リ「……おそらく人型の異獣じゃな」

( ・∀・)「通信は?」

「な、何らかの干渉により遮られています!」

从・∀・ノ!リ「してやられたと考えるべきか、想定の範囲内だと言い張るべきか」

( ・∀・)「後者と言うべきだろう……そのくらいの覚悟はしていた。
     だが一番の問題は、こちらからの通信が届かないという点だね」



124: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:12:16.59 ID:e6qg+4CA0
从・∀・ノ!リ「異獣の大群が外部から来るまで二十分を切っておる。
      それまでに結界破壊を成功させる予定じゃったが、むしろこのままではミラー自体が危ういのぅ」

( ・∀・)「……こちらから援軍と残存戦力を送る。 後は彼らを信じるしかあるまい」

当初の予定では一時間で全て終えられるはずだった。
ミラーの設置に五十分、余裕を持ってプラス十分。
それだけの余裕を残していた。

だが、ここに人型の異獣が介入してしまった。
最も介入されたくない段階で、だ。

たった一手により、四世界混合軍の築き上げた現状は壊滅してしまった。

残る二十分で現状を立て直し、残るミラーを全て防衛。
三枚となったミラーに全てを賭けて、『神の裁き』を起動させる。
運良く結界を破壊出来たとして、異獣の中枢――心臓部と判断出来る『何か』を『龍砲』で撃ち抜く。

決死の綱渡りの連続である。
状況的に余裕など、まったくない。
しかも時間が過ぎれば、周囲を異獣に取り囲まれて全てが終わるだろう。

最初から解っていたはずだ。
これが異獣と戦うことなのだ、と。
解っていたのだが――

( ・∀・)「――祈らずにはいられないね」

从・∀・ノ!リ「これが奴らの及ぼす絶望か……やってくれる」



127: ◆BYUt189CYA :2007/11/25(日) 22:14:13.84 ID:e6qg+4CA0
彼らは、出現した強大な魔力に注目し過ぎていて気付いていなかった。

そしてその強大な魔力の持ち主――人型異獣もまた、自身の魔力と目の前の獲物を見ており気付いていなかった。



決戦の地から少し離れた地点の、遥か上空。



そこから、世界レベルの魔力を隠蔽所持した『何か』が高速で接近しているのを。





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