( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

493: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:34:21.05 ID:8H9+v4j70
メ(リ゚ ー゚ノリ「俺があの時EMAを破壊しなかったのは、今この瞬間のためだったんだよ。
      テメェらが本腰入れて攻撃してくるのは予想済みだったから
      その戦力を削っちゃあ悪いってことでな」

つまり

メ(リ゚ ー゚ノリ「EMAという戦力は強力だ。 乗り手のセンス次第では大化けする。
      あのミカヅキとかミツキって野郎達も悪くはなかったんだが……仲間割れしてたみたいだしな。
      次のパイロット――つまりテメェに期待してたんだ」

|゚ノ;^∀^)「っ……弱くて悪かったわね……!
      でも私はアンタを殺す!」

メ(リ゚ ー゚ノリ「復讐という動機は時に狂気的な力を生み出すもんだ。
      悪いが、テメェじゃ圧倒的に足りねぇよ」

心底つまらなそうに言うキリバの目に、もはやレモナへの興味は失われていた。

わざわざEMAを残したのは更なる復讐者に期待するため。

より強者と喰いたい異獣としての本能は、しかしレモナという存在によって否定されたのだ。



498: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:35:44.99 ID:8H9+v4j70
己の実力不足が招いた屈辱的な現状。
レモナは歯を噛み、

|゚ノ#^∀^)「だったら足りるようにしてやるわよ!!」

メ(リ゚ ー゚ノリ「っと!」

トリガーを連続で五度引き、装填しているマジックカートリッジ内の魔力を全て刀身へ送る。
濃密な魔力は存在するだけで異変を起こし、キリバの手に襲い掛かった。
思わず手を離した隙に、レモナはバックステップで距離を取る。

メ(リ゚ ー゚ノリ「EMA無しでやる気かよ? そりゃあ無謀以前に論外だ」

|゚ノ#^∀^)「やってみなくちゃ解らないことだってある……! それに――」

カートリッジリロードを行ない、剣を構える。
その切っ先は、僅かにキリバを外れて後方へと向いていた。

|゚ノ#^∀^)「それに私は一人じゃない!
      ここに在るアンタへの敵意を数えてみなさい!!」

メ(リ゚ ー゚ノリ「なにぃ……?」

意識範囲を拡大し、走査。

メ(リ゚ ー゚ノリ「――!」

確かに在った。
レモナの他に、鋭く冷たい殺気が三つ。
それが、いつの間にかキリバを囲うようにして存在していた。



503: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:37:05.05 ID:8H9+v4j70


(メ,,゚Д゚)*゚ー゚)「「――――」」


左方に見えるはギコとしぃ、そして一般兵が数人。

彼らはギコの両足に負担を与えないためにか両肩を支えて立っている。

その足は太腿部分まで包帯に包まれており、何かで固定されているようにも見える。

疲労による弱体感はあるが、それを尚も叩き伏せる意志が感じられた。




( ゚∀゚)「――――」


右方に見えるはジョルジュ。

両腕からは、それぞれ紫と灰の淡い光を立ち昇らせていた。

表情は空虚に見え、しかし空っぽには到底見えないほど充実している。



510: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:38:45.86 ID:8H9+v4j70
見た瞬間、全てを察した。

メ(リ゚ ー゚ノリ(なぁるほど……ようやくってところか?)

数々の世界を巡ってきた彼は、この空気を知っていた。
いわゆる火事場の馬鹿力に似た、しかし根本的に異なる力の湧出。
生み出される爆発的な戦闘力は異獣が望むものだった。

キリバ達は、この現象を『覚醒』と呼んでいる。

何か重要なものを失った時。
何か尊いものに気付いた時。
何か大切なものを確認した時。

人間は更なる力を求め、全てのリミッターを解除する。

メ(リ゚ ー゚ノリ(ここからは本腰入れてやらねぇとな……!)

『覚醒』した人間の力は異獣に肉薄し、時に接触すらする。
キリバにとっては遊び甲斐のある敵と化すわけだが、その分だけ本気で掛からねばならない。

だが尚もこのような状況において笑みを浮かべられるのは
彼自身、例え死しても代わりなど掃いて捨てるほど『在る』からだった。



519: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:40:16.25 ID:8H9+v4j70
だからこその余裕。
キリバなどの別格存在や異獣が何匹殺されようとも本体――つまり『王』からすれば損傷とすら呼べない。
『同属』の中で最も愚鈍で扱い難い存在だが、条件さえ合えば最強に近い力と数を生み出せる能力だからだ。

無論、通常であればこのような軍勢を持つことは不可能である。
気の遠くなるような量の魔力と、神さえ殺しかねない程の奇跡が『異獣』と呼ばれるまでの戦力に仕立て上げたのだ。

それは遠い過去の物語。
現状においてはまったく関係なく、しかし根本に存在する神話レベルの根拠。

(メ,,゚Д゚)*゚ー゚)「「――――」」

(#゚∀゚)「――――」

|゚ノ#^∀^)「――――」

メ(リ゚ ー゚ノリ「…………へぇ」

経緯はどうあれ、もはや言葉は要らないらしい。
キリバを囲うようにして立つ、ギコ、しぃ、ジョルジュ、レモナの殺気は尋常ではない。

おそらくここで勝負が決するだろう、という予感に、キリバは軽く身を震わせた。



524: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:41:41.31 ID:8H9+v4j70
沈黙に乗って風の音が来る。
冷たい緊張が場を包む。

迂闊には動けない状況に、焦れったい快感を得た。

メ(リ゚ ー゚ノリ「おいおい――」

吐かれる息は生暖かく

メ(リ゚ ー゚ノリ「おいおいおいおいおいおいおい……!」

たまんねぇじゃねぇか、と呟き


メ(リ゚ ー゚ノリ「なぁ!? だったら加減なんかぶっ飛ばしていくぜぇ!?」


獣の咆哮に似た声が、決戦の開始を告げた。



528: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:42:56.20 ID:8H9+v4j70







ジョルジュは人造人間である。                          ギコとしぃは既に一心同体と化していた。







そして、クルト博士によって生み出された三体の内の一体でもあった。


                                             互いが考えていることなど手に取るように解る。
                                             一種の覚醒状態と言うべきか、
                                             絶対の信頼愛情から生まれる関係の名を『同調』といった。


『完成品』であるハインリッヒ。
『失敗策』であるクー。
『優秀作』であるジョルジュ。


                                             そして、心と直接繋がっているウェポンも
                                             また同じように密接なリンクを行なおうとしていた。



533: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:43:54.19 ID:8H9+v4j70
これらは三者三様の意味を持っている。


                                             剣と翼。


ハインリッヒは、クルト博士の目的の集大成だ。
すぐそこまで迫っていた異獣を倒すために作られた、対異獣用決戦兵器。


                                             それは、用途も歴史も意味も違う異質なモノ同士。


クーは、その強大な力を持つハインリッヒが悪用された時のための策だ。
彼女の血液はハインリッヒの活動を停止させ、変化した身体を元に戻す作用を持っている。


                                             本来は相成れぬはずの存在は
                                             しかし、ギコとしぃという絶対関係から生まれる力に影響され、
                                             ある一つの形を生み出そうとしていた。



そしてジョルジュ。


                                             剣とは、武器である。
                                             憎むべき相手を切り裂き、殺すための。
                                             護るべき存在の盾となり、生かすための。



536: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:45:08.01 ID:8H9+v4j70
                                             翼とは、器官である。
                                             持ち主を大空へ舞い上がらせるための。
                                             地を這うことしか出来ない者を空へ送るための。


だが、違うのだ。


                                             生まれた経緯も、用途も異なる二つの武装は
                                             だからこそ互いを支えるために形を成す。


忘れられがちだが、ジョルジュもまた特別な存在。
ハインリッヒやクーと同じ――いや、ある一点をおいてはそれらすら凌駕するスペックを持っているのだ。


                                             それは、二人が互いを求めるかのように。


『彼には複数のウェポンが作られた』とクルト博士の日記にあった通り、彼もまたクルトに愛されていた。
そして、その中の一つである鎖のウェポン『ユストーン』を与えられたと記述されてはいるが、
実は細かいニュアンスが我々と異なっている。


                                             それは、二人が互いを愛するかのように。


ユストーンを与えられた、のではない。
ユストーンしか与えられなかったのだ。



546: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:46:33.40 ID:8H9+v4j70
                                             ここにきてウェポンは新たな可能性を示す。
                                             擬似精神は術者、そしてパートナーとリンクする、
                                             という三次元接続による合一だ。


こうなると理由など考えるまでもないだろう。
ジョルジュもまた、ハインリッヒと同じように悪用される危険性と能力があったのだ。
その可能性があったからこそユストーンしか与えられず、そして記憶を消されて外界へ放たれた。


                                             二つのウェポンは魔力を通す回路を繋げ、二人の全てを共有する。


つまりジョルジュは――                              つまり二人は――





(#゚∀゚)「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……!!」                (#,,゚Д゚)*゚ー゚)「「ああああああぁぁぁぁぁ……!!」」



552: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:47:56.31 ID:8H9+v4j70
メ(リ゚ ー゚ノリ「これは――コイツらは――」

雄叫びは三つで一つとなる。
それは新たな可能性を示す必殺の言葉。




(#,, Д )* ー )「TWIN――!!」

(# ∀ )「DOUBLE――!!」





(#,,゚Д゚)#゚ー゚)「「「OVER ZENITH!!!」」」(゚∀゚#)






565: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:49:17.63 ID:8H9+v4j70
魔力の奔流が二本、中心のキリバを境に荒れ狂った。


一方は二人一組の限界突破。
一方は一人二組の限界突破。


名こそ違うが、本質においては同等の力が解放される。

メ(リ゚ ー゚ノリ「……!」

まず青と橙の色が渦を巻いて天へと昇った。
うねり、吼える力は、螺旋を描いて一つとなる。

そして変色。

混ざった色は暗い紫に近い。
しかし決して不吉なものではなかった。
それは、赤い空に抗うかのような清涼さを以って確定される。

(メ,, Д )「…………」

(* ー )「…………」

展開された色が濃縮され、それぞれの武器に宿っていく。

ブラックパープルに染まった巨剣へ。
ブラックパープルに染まった鉄翼へ。



573: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:50:45.42 ID:8H9+v4j70
メ(リ゚ ー゚ノリ「っ――!?」

光の中から現れた二人の姿は奇異なものであった。

ギコが立っている。
だが、両足を骨折した彼が一人で立てるわけがない。
それを支えるように――姿勢としては羽交い絞めにするようにして、しぃが背後から支えている格好。

(メ,,゚Д゚)「…………」

鉄翼がはためき、その浮力によってギコは地面に立っているように見えるが
実のところ、操り人形のように『浮いて』いるだけであった。

メ(リ゚ ー゚ノリ「ぷっ……はは、ははははははは!!」

そんな、見る人が見れば情けない光景に、キリバは笑い声を止めることをしなかった。

メ(リ゚ ー゚ノリ「ダッセェ! ダセェぞ、おい!!
      男が女に支えられて何やってんだァ!? タマぁ付いてんだろぉ!?」

無論、足を失くして立てる人間などいない。
それを承知しておきながらも、キリバは挑発するように派手に笑った。



585: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:52:36.18 ID:8H9+v4j70
(メ,, Д )「……しぃ」

軽く俯いたギコは、愛する者の名を呼ぶ。
背を支えてくれる彼女が頷いたのを悟り

(メ,, Д )「俺は、ダサいか?」

(* ー )「……うん」

(メ,, Д )「俺は、かっこ悪いか?」

(* ー )「……うん」

(メ,, Д )「俺は、情けないか?」

(* ー )「……うん」

素直に返事を寄越すしぃに、ギコは俯いたまま、こう言った。


(メ,, Д )「――それでも、良いか?」

(* ー )「……うん!」


力強い返答。
それを聞いて頷いたギコは顔を上げ

(メ,,゚Д゚)「だったら何も気にすることはない……!」



591: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:54:11.06 ID:8H9+v4j70
しぃの魔力供給で復活したグラニードを構え


(#,,゚Д゚)「たとえダサかろうが、かっこ悪かろうが、そんなもの強さには何の関係ないのだから!
     愛する人が、愛して欲しい人が『良い』と言ってくれるのならば
     俺はどんな格好でも戦い抜いて抗い抜いて――勝ってみせる!
     それが俺達の望む形だッ!!」


応じるように鉄翼が動いた。
以前よりも更に巨大化した骨格は、身を伸ばすようにして面積を広げていく。
ブラックパープルの羽片が、しゃん、という鈴の音に似た音を多量に振り撒いた。


(*゚ー゚)「私はギコ君の全てを認める! 認めて、それを支えてみせる!
     私の身体は、心は―ーいいえ、何もかもがギコ君のために在るから!
     それが私達の望む形よッ!!」


だから、と吼え


(#,,゚Д゚)「依存とは停滞! だが、退化ではない!
     ならば俺はその停滞を足場に昇華し、新しい理屈を証明してみせる!
     準備はいいかキリバ!?
     ここからは不断の猛攻が、止まることを知らずに喰らいつくぞ――!!」



598: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:55:19.35 ID:8H9+v4j70
ギコはグラニードの切っ先を真上に向け、身を前へ倒す。
地面と平行になった瞬間、しぃの翼がはためき、ギコの身を倒れぬよう浮かす。
がくん、という衝撃に両足が悲鳴を上げるも、ギコは己の歯を砕くほど噛んで耐え切った。

準備完了。
あとは行くだけ。

己の身を剣に見立て、突撃を開始した。

メ(リ゚ ー゚ノリ「なぁる! こりゃあ言うだけあるらしいな!!」

それはキリバが感嘆する程、まさに巨剣というに相応しい合体攻撃だった。

グラニードが『刃』を担当し、ギコの身はそれを支える『樋』。
『鍔』はしぃの翼で、彼女の身は『握り』の役目を果たしている。

二者二具で一つの剣と化し、その巨大な刀身をぶつけんと高速飛翔したのだ。

メ(リ゚ ー゚ノリ「あとは俺を倒すだけってかぁ!?
      だが、それこそが最も困難であると知れよ――!!」

(メ,,゚Д゚)「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!」

迫る刃の威圧は凄まじい。
流石に受け切れないと判断したか、キリバは回避を試みる。

直上跳躍。

その足下を、剣身と化したギコとしぃが突き抜けていく。



607: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:56:34.90 ID:8H9+v4j70
メ(リ゚ ー゚ノリ「――ッ!!」

背後で弾ける魔力の波動に、キリバは己の判断の正しさを知った。
あれは容易に防御して良いものではない、と。

メ(リ゚ ー゚ノリ(やっべぇな、ありゃあ……一体どういう仕組みだぁ?
      まぁ、よく解らねぇ方が張り合いがあるっつーもんだが)

確かに攻撃力は信じられない程に高いだろう。
いくらキリバでも、正面から受けてしまえば四肢が断裂させられる。

だが、それ故の弱点を発見した。

圧倒的な突撃力を保有するため、その攻撃は直線のみに絞られる点だ。
しかも一度回避してしまえば、隙だらけな背後を追撃出来るようになっていた。

メ(リ゚ ー゚ノリ「世の中、上手く回るように出来てンねぇ!
      根拠のある無敵なんか存在しないってか!?」

ならば話は早い。
身を空中で回転させ、飛び去っていくギコ達を見据える。
ここからならば右腕から出す光弾で狙える距離だ。

だから、撃――

メ(リ;゚ ー゚ノリ「うおっ!!?」

鋭い音がキリバの周囲で響いたのは、右腕を構え終える直前。
警戒する彼の四肢に、いきなり鎖が絡みついた。



614: ◆BYUt189CYA :2007/12/29(土) 20:57:50.82 ID:8H9+v4j70
メ(リ;゚ ー゚ノリ「なんだぁ? どっから出てきやがった!?」

見れば奇怪なことに、合計四本の鎖の出元はバラバラであった。
というのも、四方の空間を割るように、まるで四次元から出現したかのように伸びているのだ。

メ(リ;゚ ー゚ノリ(こりゃあ空間跳躍を利用した攻撃!? んなアホな!
       一体誰が……まさか秩序守護者か!?)

空間を操作することなど普通の魔力では不可能である。
魔力とはあくまで物理法則を書き換えるだけの力で、超常現象を起こすものではない。
ここで言う超常現象とは、時間や空間、存在等の形を持たぬ『概念』に干渉する術を言う。

そんなことが出来るのは『同属』か、『秩序守護者』だけであるはずなのだが――

メ(リ;゚ ー゚ノリ(だが事実……! だったら原因解明よりも対処が先!!)

締め上げる鎖を、纏う魔力に任せて引き千切ろうと踏ん張る。
ばきり、という音を立てて粉砕されたそれは、逃げるようにして空間の割れ目に消えていった。

メ(リ゚ ー゚ノリ「誰だぁ! こんな妙なことをしやがるのはよぉ!!」

既にギコとしぃは遠くへ行ってしまっていた。
身体を地上へ落としながら見る。

両腕を広げ、蛇使いのようにして鎖を操る男を。



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