( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

301: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:11:23.72 ID:6/Vur52L0
既に、空を支配していた異獣の姿はほとんどなかった。
シャキンやエクスト達が奮戦した結果だろう。

( ´_ゝ`)「最高の舞台だな! 怪獣大決戦ってか!!」

(´<_` )「何か手は!?」

( ´_ゝ`)「特に無い!」

だが、と言い

(#´_ゝ`)「それでも何とかしてみせるのが俺達、流石兄弟だ――!!」

呼応するようにドラゴンが吼えた。
対し、軋む音で以ってカマキリが異音を叫ぶ。


赤い景色の中、二つの巨大人工生物が激突を開始した。



308: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:12:41.35 ID:6/Vur52L0
('、`*川(まったく……苛立たせてくれる)

再び戦闘体勢に入りながら、ペニサスは心の中で一人ごちた。

从ξ゚ -゚ノリ「…………」

異獣の非道な手口に対する怒りだ。
正々堂々、力と力のぶつかり合いを好みとする彼女にとって
こういう人質以下の最低な手段は、ただの苛立ちの種でしかない。

流石兄弟という切り札は、異獣の切り札とぶつかることとなった。
ならば、本体である銀髪の女の相手は自分がしなければならない流れとなっている。

拳を握り、自分に問う。

('、`*川(出来るか、私に)

先ほどの話を統合すれば、銀髪の女の中には異なる女性の命が入っているらしい。
ドクオとフサギコにとって大切な存在であることは、彼らの表情や動きで充分に理解しているつもりだ。

それを、壊す。

比較した場合、実のところ殺すだけならば容易いと本人は思っていた。
確かに異獣は強敵ではあるが、あの銀髪の女に限って言えば倒せる自信があるのだ。
充分な支援と時間、そして体力が続けば、の限定条件が付属するが。



311: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:14:00.31 ID:6/Vur52L0
だが、アレは単なる敵ではない。
フサギコの主であり、ドクオの親しい友人である。
それを容赦なく、しかも彼らの目の前で殺そうとは気軽に思えなかった。

――どうしても、惨い殺し方になってしまうから。

打撃は一撃必倒を目的としている部分があるが、
その側面として『損傷累積』というものもある。
読んで字の如く、ダメージを積み重ねていき、結果的に倒すという戦術だ。

前者は自分の力量よりも下の存在へ。
後者は自分の力量よりも上の存在へ使われることが多い。

現状ならば、間違いなく後者の戦術を選択すべきだ。
特に身体自体が頑丈となっている異獣を倒すには、更に細かく損傷を与えなければなるまい。

関節破壊は当然として、骨肉神経断裂、内蔵破壊、視聴触嗅四感の無効化――

人間としての全てを奪うことを前提としての戦闘。
それらが駄目だとしても、充分に動きが鈍くなっている時を狙い、脳や心臓を確実に破壊する。

確かに『非道だ』と罵られる時もある。
事実、ペニサスは修行中に幾度かそんなことを言われてきた。
意見の大部分は嫉妬による醜い足掻きではあったが、彼女自身、その非道さを充分に熟知している。

それを出来れば使いたくない、と思っている自分がいることも。



317: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:16:17.81 ID:6/Vur52L0
('、`*川「らしくないわね……こんなんじゃ笑われちゃう」

今はもういない知人なら、迷うペニサスの背中を張り手して送り出すだろう。
過程など無視しろ、結果を見てから先を選べ、と。

('、`*川(私はアンタみたいに割り切れない)

銀髪の女が動き始めているのを見ながら、しかしペニサスは覚悟を決めようとしていた。

('、`*川「けど、やらなくちゃいけない時もある。
     そしてそれが今」

('A`)「…………」

前方、既に戦闘態勢に入った銀髪の女の両手には、黒色の刃が二枚握られている。
大鎌であるウィレフェルの大部分は上空で、だとすれば、あの刃に特殊な効果があるとは考え難い。

('、`*川「完全実力勝負ってわけね」

从ξ゚ -゚ノリ「――――」

('、`*川「いいわ。 もう、いい加減に終わらせてあげる。
     あと少しだけ我慢しててね、御嬢ちゃん――!」

背後でドクオが7th−Wを構える気配を感じつつ、ペニサスは今度こそ本気で疾駆した。



322: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:17:39.22 ID:6/Vur52L0
赤空の中、幾度となくぶつかる二種の色はただひたすらに巨大であった。
その翼を自慢げに大きく振り、自在に空を飛ぶ姿は、地上から見る者達に形容し難い感動を与えてくる。

風が叩かれ、弾ける。
その乱れた波を正すかのように、鋭い吼声が響き渡る。

『――――!!』

《ギギギギギギ!!》

一方は、滾った熱気をそのまま吐き出すかのように吼える竜。
一方は、身体中から異音を発しながら尚、大叫声を発する虫。

高純度、そして濃密な魔力で構成されている身体を、そのまま攻撃力として激突させる。

(#´_ゝ`)「パンチだキックだ体当たりだぁぁぁああ!!」

(´<_`;)「あ、兄者! もっと流石な攻撃はないのか!」

( ´_ゝ`)「例えば?」

(´<_` )「……炎を吐いたりとか」

(#´_ゝ`)「パンチだ! ドラゴン!!」

(´<_`;)「無いのか? まさかマジで何も無いのか!?」



330: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:19:03.92 ID:6/Vur52L0
(#´_ゝ`)「男と男の戦いは拳のぶつけ合いと相場が決まっているだろう!」

(´<_`;)「兄者! たぶんアンタ何かと混同してる!」

ぶつかり合う度に、舌を噛みそうなほどの振動が襲う。
このままでは竜よりも先に乗り手がダウンしてしまいそうだ。

(´<_`;)「このままぶつかっていても埒が明かないぞ!」

(;´_ゝ`)「あ、やっぱり?」

(´<_`;)「解ってたのかよ!」

(;´_ゝ`)「いやまぁ、そもそもこんなカマキリと戦うなんて予想してなかったしな」

兄者が言うには、
銀髪の女を相手にするからこそ、重量重視の格闘戦仕様として作り上げたらしい。
まさか同じような敵と戦うなど思ってもみなかった、と。

言い訳としてしか受け取りようがない言である。

(´<_` )「ってことは遠距離攻撃とか――」

( ´_ゝ`)「うん、用意して無い」



337: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:20:15.93 ID:6/Vur52L0
《ギギギギギギギギャギギギ!》

弟者が大きく肩を落とし、カマキリが叫んだ。
空中でホップして後方へ位置取り、その数多い脚を八方へ広げる。
千手観音のようにも見える光景は、しかしその色のせいで不吉なモノとしか思えない。
果たして、そのイメージはまったくの正解であった。

(´<_`;)「……! 何だ!?」

( ´_ゝ`)「馬ッ鹿、ああいう構えは昔から決まってんだろ!」

(´<_` )「それ即ち?」

( ´_ゝ`)「必殺技」

直後、カマキリの胴体中心部から一筋の光線が発せられた。
赤い空すらを染め上げる魔力の塊が、一筋の光となってドラゴンに襲い掛かったのだ。

大気に穴を開ける穿ちの力。
それは、如何に限界突破で編み込まれた魔力の鱗を持つドラゴンであっても
完全に防ぎ切れるものではなかった。

(;´_ゝ`)「のわあぁぁぁぁぁあああ!!」

(´<_`;)「あ、兄者の馬鹿ー!!」

バランスを一気に崩された竜は、痛みの声を挙げながら高度を落とす。



340: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:21:39.56 ID:6/Vur52L0
《ギャギギギギャギャギギギ――!!》

それを逃さぬと言わんばかりにカマキリが迫った。
大きく広げた鎌脚をそのままに向かってくる。
一際大きな振動に耐えてみれば、抱き締める形でドラゴンに食いついていた。

(´<_`;)「いきなりピンチだぞ! このままじゃ墜落だ!」

(;´_ゝ`)「パ、パンチだ! ドラゴン!」

(´<_`;)「それしかないのかぁぁぁぁ!!」

急激な落下による無重力感のむず痒さを感じながらも叫ぶ弟者。
対する兄は、とにかく落ちないようにしがみついたまま『パンチだ』を連呼する。

まったくどうしようもない状況であった。

《ギャギギギギギギ!!》

カマキリも同様に思っているのだろう、笑い声に近い高さの声を発する。
その身の全体を使ってドラゴンに組みついた姿勢のまま、あろうことか直下降を開始した。

(´<_`;)「地面に叩きつけるつもりか!」

(;´_ゝ`)「それだけで済めば良いがな……!
     最悪、組み伏せられて串刺しだぞ!」



344: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:22:55.37 ID:6/Vur52L0
敵はカマキリの形をとっているが、その全身は刃であることに違いはない。

もしこちらが身動きのとれない状態になってしまえば、
その身を構成する刃を最大限に利用しての惨殺が始まるだろう。

後に続く周囲への被害だって無視は出来ない。
先ほどの攻防を見るに、一般兵が太刀打ち出来る怪物ではないのは明白だ。
ドラゴンと流石兄弟の惨殺の次は、虐殺へ続くに違いない。

《ギギギギギギギギギギィィィィ!!》

勝った、と言わんばかりに叫ぶ虫。
既に目前にまで迫った地面へ叩きつけるため、更に――

( ´_ゝ`)「――思考が浅いようだな、昆虫」

(´<_`;)「え……うおおっ!?」

兄者の確信めいた自信の声の直後、視界が一気に反転した。

《ギ!?》

一瞬の出来事である。
今まさに地面に叩きつけ、そして叩きつけられようとしていた両者の位置が逆転したのだ。

突然の出来事に、何も知らない弟者とカマキリが狼狽するのも無理はなかった。



349: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:24:13.28 ID:6/Vur52L0
乱れた大気が発する叩音の中、やけに大きく兄者の声が通った。

( ´_ゝ`)「言い忘れたつもりはないが!?
     俺はこのドラゴンを『格闘戦仕様として作り上げた』とな!!」

(´<_`;)「ってことはまさか――」

(#´_ゝ`)「大回転ドラゴンプレスじゃーい!!」

大音と大震が重なった。
位置を入れ替えたドラゴンが、カマキリを下敷きするようにして墜落したのだ。
その想像を絶する重さが地面を砕き、地震に近い衝撃を周囲に撒き散らす。

《ギ――ギュギョォォォォォ!!》

今の今まで勝利を確信していた敵に、衝撃を受け流すための姿勢を作り出す暇などなかった。
背からの激震が身体中に響き、メキメキと音立てて折れ曲がっていく。

(#´_ゝ`)「ここにきて加減は無用!
      マウントポジションで殴れ殴れ殴れぇぇぇぇぇ!!」

竜も同じことを思っていたのだろう。
兄者の命令が発せられる前から、その逞しい両腕を振り上げていた。

硬い鱗に包まれた拳が、カマキリの胴体を直撃する。

だが一撃では済まされない。
右が終われば左、左が終わればまた右、という正真正銘の連打が開始された。



358: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:27:35.27 ID:6/Vur52L0
流石、格闘用に生み出されただけはある。
抵抗しようとするカマキリの足を巧みに押さえつけ、隙が生まれた部位をつるべ撃つ姿は
ドラゴンの皮を被ったK-1ファイターを彷彿とさせた。

( ´_ゝ`)「名付けてサスガフェロウ(流石の眷族)――!」

(´<_`;)「兄者! それ駄目! 駄目だから!!」

(;´_ゝ`)「何故だ? 流石な俺が生んだ可愛い我が子に眷族の名が駄目だと!?」

(´<_`;)「そういう意味じゃない! パクりが駄目なんだって!」

《ギ――ギァ――ギュオォォォ――!!》

雨のように降り注ぐ拳打。
まさかの逆転に、カマキリは為す術もなく殴られていく。
せっかくの多足も仰向け、しかも根元から押さえつけられていては上手く動かせない。

矢継ぎ早に繰り出される拳は止まることを知らず
叩く度に、身体と装甲を構成している黒刃が血潮のように撒かれていった。

(#´_ゝ`)「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァははははははは!!」

(´<_` )「これならば……倒せるぞ!」



366: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:29:22.20 ID:6/Vur52L0
だが、双子は気付けなかった。
その破壊されていく身体の内に、もう一つの身体が見え始めていたことに。
勝利が目前となった今、持ち前の観察眼を自ら盲目化してしまっていたのだ。

《ギュオ……ギギ……》

段々と大人しくなっていくカマキリだったが、
後で思えば、まさしく隙を生み出すための演技だったのだろう。
化物じみた外見で麻痺していたが、アレは形が変わってもウェポンなのだ。
『経験』を積むことの出来る、特殊な魔法武装なのである。

(´<_` )「あと一息だ!」

(#´_ゝ`)「この虫けら風情が! 人間様を嘗め――」

《ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!》

突如、浮いた。
ほぼ自身と等しいはずの体重を持つドラゴンを腹に乗せたまま、
カマキリは隠し持っていた刃翼を用い、大出力を以って飛翔したのだ。

(´<_`;)「う、おぉぉ!?」

(;´_ゝ`)「コイツまだ力を……!?」



374: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:31:15.45 ID:6/Vur52L0
一気に持ち上げられたドラゴンは、地面を支えにしていただけあって必然とバランスを崩す。
その隙にカマキリは離脱。
剥がされた装甲を完全に捨て去り、更に鋭利となった身体を震わせて距離をとった。

(´<_`;)「離れた……? 逆転するチャンスだったのに――」

(;´_ゝ`)「違うぞ弟者……!
     奴はおそらく学習しやがったんだ!」

遠く離れて飛翔する黒い影。
刃を折り畳み、風を味方とするように細長くなったフォルムは飛翔竜のようだ。

《――――!》

ある一点が光る。
合図として、身体中に光を灯らせていく。

(;´_ゝ`)「ドラゴン、飛べ! ここじゃあ狙い撃ちされる!!」

咄嗟の判断は正しかった。
空中でバランスを正したばかりの姿勢から、更に一段上へ飛んだ直後
合計六筋もの光が、今までドラゴンのいた空間をブチ抜いたのだ。

(´<_`;)「砲撃!?」

(;´_ゝ`)「格闘じゃあ勝てんと踏んだんだろう!
     俺達の射程外から砲撃して潰すつもりだ!」



382: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:32:50.06 ID:6/Vur52L0
言う間にも射撃が来る。
黒、もしくは赤に見える光が、直線軌道で襲い掛かった。

しかし、図体の大きいはずのドラゴンには掠りもしない。

格闘仕様だけあって瞬発力は高いようだ。
不意の一撃を往なした後は、余裕を持っての回避に移る。

(#´_ゝ`)「まったく、面倒なことをしてくれる……!」

(´<_`;)「兄者、ここは俺が限界突破を使って防壁を作る!
     その間に接近して、また格闘に――」

( ´_ゝ`)「駄目だ」

(´<_`;)「し、しかし俺の力は防御だろう!
     ここで使わなくて、いつ使うんだ!」

( ´_ゝ`)「防御の力だと言って、そのまま防御に使ってたんじゃ勝てない。
     アイツは姿形、そして主が変わっていても3rd−W『ウィレフェル』だぞ。
     弟者の持つ12th−W『ジゴミル』の性能は熟知されているはず」

確かに、その通りだった。
弟者はフサギコの目の前で能力を使ってみせたことがある。
それは彼の感覚器官を通じて、ウィレフェル自身の『経験』として蓄えられているだろう。

だとすれば、この場面で弟者がジゴミルを使うことは充分に予測が可能。
対処としての手段を用意していないわけがない。



386: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:34:53.56 ID:6/Vur52L0
( ´_ゝ`)「しかも異獣に手を加えられてる可能性も高い。
     全てのウェポンの最大出力はほぼ同じレベルに設定されているが
     そこをイジられてリミッターでも解除されてりゃ、おそらくジゴミルと言えど防ぎきれない程の一撃だって放てるだろう。
     鎌のくせに砲撃してくるのが良い証拠だ」

(´<_`;)「……ッ」

まったくの正論、そして確かな予測に弟者は固い唾を呑んだ。
もし自分一人であったならば、確実に12th−W『ジゴミル』を用いた突撃を行なっていただろう。
今更ながら、本気となった兄の冷静さに畏怖と尊敬の念を抱いた。

( ´_ゝ`)「だから、まだジゴミルは使わん。 使えば敵の意のままになってしまう」

(´<_`;)「ならばどうするつもりだ……?
     このまま距離をとられ続ければ勝負はつかない」

( ´_ゝ`)「簡単だ」

きっぱりと断言した兄者は、ドラゴンに『ある動き』を命じた。
それを聞いた弟者の顔が一気に青ざめていく。

(´<_`;)「ほ、本気か兄者!?」

( ´_ゝ`)「うむ、俺は嘘を言わん男だったらいいなぁと常々思っていた」

息を吸い、

( ´_ゝ`)「――何の防護も無しに、砲撃の嵐を潜り抜ける」



393: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:36:39.24 ID:6/Vur52L0
《ギギ――》

限界突破を経て爆発的な強さを手にしたウィレフェルは
先ほどまであった油断を捨て、しかし今度こそ勝利が近付いていると確信していた。

今までの攻防で、敵が遠距離攻撃を放てないことは既に解っている。
ならばこちらが砲撃戦に切り替えれば、相手は何らかの対処を強いられることになる。

おそらく、12th−W『ジゴミル』による防護を得ての突撃。

向かい来る全ての砲撃の嵐を無傷で突破し
そのまま再度、得意の格闘戦に持ち込むつもりだろう。
またあのような劣勢になってしまえば、次の『脱皮』が無い自分は今度こそ敗北する。

だが、そうならないための対処は施してあった。

全身を組み替えて細長くしたのは、風を味方して速く飛ぶことだけが目的ではない。
真の狙いは『自身を巨大な砲とする』ことであった。

口部分の中には既に砲口を完成させている。
あとは防護と共にやって来る敵に砲撃をぶつけて隙を生ませ、最大出力で狙撃するだけだ。
計算結果に出た攻撃力であれば、いくらジゴミルのシールドと言えど貫ける。

過程から見れば、勝利は堅い。



399: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:38:00.66 ID:6/Vur52L0
その時、音が聞こえた。
翼を動かして揚力を得る、原始的な飛翔音だ。

見れば、愚かにも桃色の竜がこちら目掛けて高速で向かってきている。

《ギギ……ギギギギギギ――!》

全砲門開放。
刃で作った砲口が全てドラゴンを見る。
限界突破効果で強引に作り上げた砲撃システムは、
その全ての機能をドラゴン撃墜のために傾倒させてあった。

射程範囲に入る桃色は、どこまで行っても苛立たせてくれる。

次の瞬間、ウィレフェルはドラゴン目掛けての全砲撃を開始した。

弾幕としての機関砲。
墜とすためのビーム砲。
撹乱を狙う無軌道レーザー。

一斉に放たれた多重の光筋が、放射線状に広がりつつも赤い空に疾走する。

それは徐々に大きく湾曲し、ターゲットとして設定された桃色の竜へ殺到した。



404: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:39:33.27 ID:6/Vur52L0
思った以上の攻撃の圧に、弟者は背筋が震えるのを自覚した。

(´<_`;)「う、ぉぉ……!」

(#´_ゝ`)「怯むな!!」

兄者の一喝がドラゴンの覚悟を更に堅くする。
細く鋭くなった両眼は既に砲撃を見ていない。
目指す先である異形となったウィレフェルへ、一直線に翼を動かした。

阻むかのように、前方どころか周囲から砲撃が来る。

その光景に似たものを、弟者は映画で見たことがあった。
だが、比較にすらならないことを身を以って知りつつあった。

映画では、この頬を切り裂くような突風を感じることは出来ない。
映画では、耳を叩く轟音の感触と殺気を感じることは出来ない。

そして何より、映画では、この胸に湧き上がる異常な興奮を感じることは出来ない。

早鐘を打つように鳴る心臓。
手先の冷たい感覚が熱く塗り変わっていく感触。
目の前を貫いていく『死』そのものと言える砲撃の圧。

その全てが現実であり、映画で見るような虚構とは似ても似つかない別物である。



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