( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

409: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:41:10.91 ID:6/Vur52L0
(´<_`;)「くっ……!」

震えてしまうのは仕方のないことだった。
目の前に濃密な『死』があり、それが目の前を掠っていく状況に恐怖しないわけがない。

( ´_ゝ`)「弟者!!」

その、恐怖に負けてしまいそうな手を握る動きがあった。

( ´_ゝ`)b「俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!」

(´<_`;)「こういう場面ではオリジナルで頼む! 空気嫁!」

( ´_ゝ`)「えー?」

ひゅ、という風切音。
兄者の頭上ギリギリをビーム砲撃が掠めていった。

(´<_`;)「兄者、死ぬ! いい加減アンタ死ぬ!」

(#´_ゝ`)「何を言うか! 自分の力を自分が信じないで一体誰が信じる!
      堂々とした余裕を持て、流石弟者!!」

(´<_`;)「……っ!」

つまり、信じているから撃墜されることはない、と彼は言いたいらしい。
まったく理に適っているとは言えないが、気迫という面で見ればこれ以上の覚悟もない。



414: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:42:46.68 ID:6/Vur52L0
(´<_`#)「とんでもない兄を持ったものだ……!
      だが、その覚悟に乗らせてもらう!」

(#´_ゝ`)「ついて来いついて来い!
      安心しろ! 何せ俺は天才を超えた大天才だからな!!」

もはや突っ込む気は起きなかった。
ここまで言い切るのならば、こちらとしても信じるしかあるまい。

(#´_ゝ`)「突撃――!!」

砲撃の嵐の中、更に速度を上げて空を走る。
この速度で一撃でも喰らってしまえば、おそらく助かることはないだろう。

しかし、先ほどまであった恐怖はどこにも無くなっていた。


――兄とならば何だって出来る。


そう、本気で思うことが出来たからだ。



419: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:44:16.67 ID:6/Vur52L0
《ギュギギギギギギギギィ!!》

異変を察知したのだろう、カマキリの動きに変化があった。
横腹を見せ付けるようにしていた位置から、今度は顔がこちらを向くように移動したのだ。
必然、砲撃の質は落ち、それだけ流石兄弟の突撃力も上がるのだが――

(´<_` )「諦めたか!?」

( ´_ゝ`)「いや、おそらく奴の切り札が来る!
      ジゴミルのバリアすら破壊するほどの一撃が!」

断言する兄者の予想は当たっていた。
大きく開いた口の中に、これまでとは比較にならないほどの大きな魔力塊が見えたのだ。

(´<_`;)「何という濃度……確かに、ジゴミルではアレを防ぐことは出来ん……!」

(#´_ゝ`)「だったら避けるしかあるまい! ここで勝負が決まるぞ!」

当たるか避けるか、二つに一つ。
二種の未来が、一つしかない椅子を巡って激突する。

(´<_`;)(あの攻撃は初見のはず。 見切りはほぼ不可能。
     もはや運に任せるしかないのか……!?)



423: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:45:47.24 ID:6/Vur52L0
(#´_ゝ`)「ドラゴン、お前に任せた! 俺達を向こうへ運べ!」

(´<_`;)「え……!?」

( ´_ゝ`)「こいつは俺が生み出したんだ。
     だったら、きっと俺の望む結果を出すはず。
     俺はそれを信じる。 それだけだ」

そう言い切った兄者は、何と目を瞑って視界を遮断した。
まだ砲撃は終わっておらず、そして敵の主砲がこちらを狙っているというのに。

(´<_`;)(そこまで信じられるか、普通……!?)

こうなったらヤケだ。
既に自棄の覚悟を決めていた弟者だが、更に大きな覚悟を追加して
兄者と同じように硬く目を閉じる。



――瞬間、吸い込まれるような感覚の後、全ての音が消滅した。




430: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:47:23.54 ID:6/Vur52L0
再び感覚が戻った頃には、先ほどまであった騒がしい砲撃の音が止んでしまっていた。
身体がまだあることを、耳が聞こえることを確認し、弟者は恐る恐る目を開く。

(´<_` )「……お」

真っ赤な色が目に飛び込んできた。
それが空であると気付くのに、数秒の時間を必要とする。

何も無い。

弾幕も、ビーム砲も、レーザーも、そして敵の姿さえも。
さっきまであったはずの殺気も何もかもが、視界から消えてしまっていた。

ただ、自分の身を乗せているドラゴンの感触はあった。
置いてある手で撫でてみれば、鱗特有の硬くザラザラした感触を感じる。
つまり自分はまだ生きているということだ。

(´<_`;)「ど、どう――」

なって、と言おうとした時、その肩を叩く動きがある。

( ´_ゝ`)「いくぞ、弟者。 最後の仕上げだ」

隣。
兄者が強い笑みを浮かべ、そして背後を指差した。



435: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:49:05.37 ID:6/Vur52L0
見る。

そこには、こちらを目で追う敵の姿があった。
更に向こう側となる背景に、異獣の中枢を護るドーム状の結界があり
その一部から大きな煙を上げていることに気付いた。

どうやら高速で突撃した結果、敵の傍を通り過ぎてしまったらしい。
回避した主砲は、先ほどまでドラゴンの背後にあった結界に直撃したのだ。

( ´_ゝ`)「あの威力でも破壊出来んとはな。
      まぁいい、そっちの方が好都合だ」

(´<_`;)「あ、兄者? 何を――」

(#´_ゝ`)「ここがお前の力の発揮する時! 行くぞ!!」

視界が急激に動いた。
慌ててしがみ付き、兄者の狙いを推測する。

ドラゴンは斜め下降の姿勢だ。
大きな翼で大気を叩き、速度を上げていく。
その目指す先には、先ほどまで対峙していたウィレフェルの姿が――

(´<_` )「――そうか……そういうことか!」

(#´_ゝ`)「頼むぞ弟者!!」

(´<_`#)「あぁ、解った兄者!」



441: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:50:22.15 ID:6/Vur52L0
腕を掲げ、強風の中で立ち上がる。
今にも吹き飛ばされそうな衝撃が身を襲うが、足を踏ん張らせて耐え切り
そして、ありったけの声で吼えた。

(´<_`#)「12th−W『ジゴミル』――OVER ZENITH!!」

金の光が散る。
それはドラゴンの前面に展開され、弟者の思う通りに密度を増していき
結果、一つの巨大なシールドを完成させた。

だが、その目的は防衛のためではない。
むしろ敵を撃破するための第一工程である。

(´<_`#)「今度こそ、これで終わりにしてやる!!」

(#´_ゝ`)「迷うことなく猪突猛進――!!」

轟、と風を切り裂いてのチャージだ。
先ほどまでとは違う正真正銘の攻撃姿勢である。

《――ギ!!》

眼下にいるウィレフェルはドラゴンの勢いと兄弟の表情を受け、決定打を予知した。

バリアを張っての突撃は、特にこの場面となっては確かに有効だろう。
既に主砲を撃ってしまったために対抗手段は皆無と言えるからだ。
しかもあの速度ならば、こちらが完全に動く前に捉えられてしまう。



449: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:52:00.42 ID:6/Vur52L0
(#´_ゝ`)「いっけぇぇえええ!!」

撃震、そして撃音。

弟者が放つ黄金の壁を盾に真正面からぶち当たった。
下降速度も相俟って、その衝撃は今までの中でも最高の威力を刻むことになる。

《ギ――》

(´<_`#)「おおおぉぉぉぉぉぉッ!!」

《――ュオオオオオオオオオオオ!!》

為す術もなく体当たりの直撃を受けたウィレフェルは、悔やみか苦痛か、甲高い悲鳴を挙げた。
抵抗するためにもがくが、加速に加速したドラゴンの勢いを止めることは出来ない。

だが、どうするつもりなのか。

先ほどのように地面に叩きつけての優位に持ち込むのか。
それとも、別の――

その瞬間、確かにウィレフェルは見た。

( ´_ゝ`)σ「後ろ、見てみ」

兄者の、悪戯を企むような無邪気な笑みを。



456: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:53:17.26 ID:6/Vur52L0
《……!?》

兄者の楽しげな言葉に、向かう先が地面などではないのだと知る。
同じ降下とはいえ、真下ではなく斜め方向へ吹き飛ばされている時点で気付くべきだったのだ。


――異獣の中枢部を守る大型結界へ向かっている、と。


格闘戦へ持ち込む?
甘い、甘過ぎる。
この兄弟、この状況においてとんでもないことを――

《ギ――ギギギギギギギギギギギギギギ!!!》

慌てて形状を変化させて離脱しようとするが、勢いから逃れることは出来ない。
ドラゴン本体を攻撃しようにも、前面に張られているジゴミルのバリアに防がれる。

(#´_ゝ`)「名ぁぁぁぁ付けてぇぇぇぇええええ!!」

(´<_`#)「流石バリアァァァァ!!」


(#´_ゝ`)「「サンドウィィィィッチィィィィィイイイ!!!」」(´<_`#)


《ギュギャアアアアアアアアアアアアアアア!!?》

直後、ドラゴンとウィレフェルが縺れ合うようにして、中枢結界の表面に激突した。



463: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:54:42.58 ID:6/Vur52L0
耳を聾さんばかりの轟音が響く。

同時、大震動が空間を揺るがした。
衝撃の強さは、発生したプラズマのような魔力の奔流で推して知れるというもの。

そもそも中枢部を守る結界は、不滅世界の純正ルイルを使用する『神の裁き』で破れるか不明なほど
濃密な魔力によって編み込まれている――いわば存在するだけで危険なモノだ。

そして、そのような完全な『拒絶』という情報で構成されたバリア同士に挟まれれば
如何なる存在であろうとも、消し飛ぶという結果にならなくては道理として合わない。

無論、限界突破で高められた力を持つウィレフェルでさえも、例外ではなかった。


《――オォォオオオオオォォオオオォォオオオオォォォォ!!!》


断末魔の叫びとは、この事を言うのだろう。

先ほどまでの金切り声とはまた違った、怨念を励起させるような叫喚。
苦痛を通り越した何かを刻まれる時に吐かれる『音』が響いた。



469: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 21:56:23.21 ID:6/Vur52L0
朽ちていく。
異獣の介入を受け、更に限界を超えたはずの力が。

犀利を誇っていたはずの、堅固な身体を構成していたはずの黒刃は、もはや機能を失っていく。

脱出する暇も、力も持てなかったウィレフェルは、


《ュ――――オォ――――オォォォォ――――》


今際の際、諦念したような儚さの声を残し、



《………………――――――》




完全に、消滅した。



489: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:02:07.88 ID:6/Vur52L0
現実とは、常に瞬刻の積み重ねの最先端を指して言うわけだが
その内のたった一つにおいて、運命を分ける瞬間というものがある。

強運を持っているならば、例え修羅場の最中にいようとも偶然必然問わず、
その一瞬を見極めて生を得ることもある。
経験を積んだ者ならば、取捨選択して最適な行動をとることも可能だろう。




それは、本当に一瞬の出来事であった。

もはや取り戻せない、過去への憧れであった。

来るであろう未来に対する、後悔でもあった。



だが、残念ながら――非常に残念ながら、『彼』はそのどちらも持ち合わせることはなかった。



499: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:04:02.48 ID:6/Vur52L0
('、`*川「……っ!」

銀髪の女の歩調が乱れたのは、流石兄弟がウィレフェルを撃破したと同時であった。
おそらく魔力の経路が絶たれたことにより、何らかの物理的なショックが彼女を襲ったのだろう。

今はその原因を知ることのないドクオ達だが、
何にせよ、なかなか見出せなかったチャンスであることには変わりない。

从ξ゚ -゚ノリ「――――」

己の内側に在る『動きの阻害の元』を遂に押さえたのか
二枚刃を得てからの銀髪の女は、一対一でペニサスを追い詰めるほどの動きを見せていた。
英雄として強者であると自他共に認めていた彼女が押され始めた時は
流石に、ドクオも己のやるべきことを放棄してまで手助けしようかと悩んだ。

だが、ここに来て千載一遇の好機を得ることとなる。
押され気味であったペニサスが、それを逃がすわけがない。
よろけてバランスを崩した銀髪の女に肉薄しながら

('、`*川「――ドクオ君! 準備はいい!?」

(;'A`)「りょ、了解……ッス……!!」

ドクオは前線に立っていなかった。
後方で、ペニサスの支援をしているわけでもなかった。
予め決めた位置――装甲車の車体を背に預けた姿勢で、7th−W『ガロン』を構えている。

しかし、その形態は以前のモノとは明らかに違っていた。



504: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:05:42.73 ID:6/Vur52L0
【マジックサークラー展開――確定。
 六連波状ミラー展開開始――wwヘ√レvv――順次確定中。
 ロックbPからbRまでを解除、同時にリング軌道修正の並列処理を開始。
 ――wwヘ√レvv――第七工程完了。
 ロックbSからbWまでの解除を確認――エラー、強制解除。
 『ガントリガー』生成――コード:1433認証中――承認。
 第八工程完了――wwヘ√レvv――】

(;'A`)「……ッ」

ノイズ混じりの機械音声がドクオの脳に直接響く。
脳髄の余っている余剰処理能力を、接続したガロンが使用しているためだ。

とんでもない量の情報が出入りする感覚は形容し難いものがあるが
発射までのタイミングを正確に知れるという点において、この方法は有効だった。

戦いの素人であるドクオが、異獣と化したツンを捉えるのは難しい。
しかし、この準備している一撃が決定打になり得る可能性を秘めているのも事実。

半ば強引、そして運任せに近い部分もある作戦だが
現状において最も有効だろうと思われるのが、ガロンによる最大出力の一撃であった。



511: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:07:52.51 ID:6/Vur52L0
今、彼が抱えている銃の大きさは、ただ巨大である、としか言いようがない。

初めて限界突破を使用した時よりも
その後、何度か戦いの中で使った時よりも、遥かに巨大である。

銃身の太さからして既に人の身を超えそうだ。
その重さを支えるため、先端部にはいくつかの補助足が地面に刺さっている。

更に言えば、ドクオが握るトリガー部分は真下ではなく真横に突き出している形で
スコープを片目に装着した彼が、それを握り締めている。
ストックは意味を為さないため外されており、後方の支えは装甲車が請け負っていた。

魔力というエネルギーが銃身を循環していく音。
既に臨界点に達していることは、頭の中に流れ込んでくる情報で理解している。

あとは、必中という機会を得た瞬間にトリガーを引けばいい。

(;'A`)(ツン……あと少しだ。 もう少し我慢してくれ)

既に覚悟は決めている。
ツンを殺してしまうということ。
その罪の重さと、後の人生に差す影を生涯背負っていくという覚悟を。

それが、今のドクオに出来る精一杯の懺悔であった。



515: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:09:17.59 ID:6/Vur52L0
('、`*川「お――っ!」

从ξ゚ -゚ノリ「……!」

懐に飛び込んだペニサスが、その膝で腹部を貫いた。
前へ倒れ込むように身を折る敵の首を握り、連撃を浴びせる。

クロスレンジの中にいるペニサスは水を得た魚だ。
先ほどまで苦戦していた二枚刃を苦もなく往なし、ダメージを重ねていく。
刃が最も力を発揮するショートレンジに移行しないよう
常に離れずの足捌きで位置を維持する技術は、流石としか言いようが無い。

('、`*川「滅ッ!!」

遂に、混乱の極みに達そうとしている銀髪の女の脳天に、踵落としが直撃した。

('、`*;川「――今よッ!!」

鋭い声に促されるように、ドクオは引き金に掛けた指に力を入れた。
一瞬で離脱するペニサスが攻撃範囲内からも消えたことを確認しつつ――

从ξ゚ -゚ノリ「!!」

(;'A`)「!!?」

ここに来て異変が起きた。
うずくまるように倒れかけていた銀髪の女が、見違える速度で地を蹴ったのだ。



521: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:12:17.38 ID:6/Vur52L0
('、`*;川「なっ――嘘でしょ!?」

ペニサスの驚愕の声。
同時、極限まで集中していたドクオの感覚が引き伸ばされる。

いわゆるスローモーションとなった視界の中、
ガロンの攻撃範囲から逃れるように――つまり真横へ、銀髪の女が動いている。
このまま撃っても当たらないことは明白だった。

だとすれば、今から軌道を変更すべきか?
しかし、そのタイムラグが致命的になる場合も――

「――撃ってくださいッ!!」

思わぬ方角から声が来た。
今までドクオを何度も助けてくれた、希望の声が。

先ほどまで戦意喪失していたのではないのか、という疑問は浮かばなかった。

彼はここぞという時にやって来てくれて、導いてくれるのだから。
どこまでも頼りになり、どこまでも気高いのだから。


今回もそうだと信じ込んだドクオは――愚かにも――その声に押されるように引き金を引いた。



529: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:14:15.51 ID:6/Vur52L0
それは、本当に一瞬の出来事であった。

本来ならば当たらぬ軌道で魔力のレーザーが発射される。
超高密度を誇る一条の光は通った際、そこに在るモノを全て消し飛ばす。
だが、定められた道筋に消すべき存在はいない。

影が躍り、空気が騒いだ。

いや、違う。

从ξ゚ -゚ノリ「――――っ!?」

発射寸前の銃口の先、離脱しようとしていた銀髪の女が転がり出てきたのだ。
無論、彼女の意思によるものではなく、はっきりとした外因が在った。

(;'A`)(フサギコさん!?)

銀髪の女にしがみつくようにしているのは、なんとドクオに射撃を促したフサギコ本人であった。
逃れようと跳んだ先から、全力のタックルを仕掛けたのだろう。

何をしている。
このままでは呑み込まれ――

――ドクオは、見る。

フサギコの頬に涙が流れ、しかし口元に笑みが浮いているのを。
銀髪の女の耳元に寄せ、何か短い言葉を紡いだのを。


直後、二人はドクオの放ったレーザーに照らされ、存在を抹消された。



544: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:15:40.06 ID:6/Vur52L0
('A`)「あ――」

全ては一瞬であった。
時間にして秒にすら満たない、小さな小さな時の間。

(;A;)「あぁ――」

しかし、その中でドクオは、今後の人生に大き過ぎる影響を与える因子を見てしまった。
もう既に手遅れとなったことを示す光を見ながら、彼はようやく知る。


先ほどのフサギコの声は『希望』などではなかったのだ、と。
ツン諸共死ぬために放った、決して聞いてはならない言葉だったのだ、と。


結果的に言えば希望だったのだろう。

彼の働きの末、銀髪の女という西軍最大の脅威は取り除かれた。
もし一撃を外してしまった場合の、更なる被害拡大は止めることが出来た。
それは、何よりも褒められるべき結果である。



565: ◆BYUt189CYA :2008/01/30(水) 22:17:21.25 ID:6/Vur52L0
( A )「あぁぁぁぁ――」

しかし。
だが、しかし。

一人なら、耐え切れた。
ツンという存在を殺すだけならば、まだ耐えられた。
悲しみを分かち合えるフサギコがいれば、きっと、あるいは。



だが、彼は二人も殺してしまった。



「ああぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁあぁああああああ――――!!!」



ドクオの拙い心が、その衝撃に耐えられるわけがなかった。



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