( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 915: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:09:41.37 ID:TNojT3sl0
- 声すらも封じられたプギャーは、歯噛みして聞く。
( ・∀・)「だが、考えてみてほしい。
ウェポンにはそれぞれの形があると言ったが、それは一つに限るのだろうか?
そういった制限があるのだろうか?」
言い、
( ・∀・)「前提を忘れるのは人間の悪い癖だね。
ウェポンは一つの形状だけを持つ武器ではない。
本来は、『指輪』と『武器』の二つの顔を持つ特殊魔法武装なのだよ」
指輪も一つの形状。
発生した稲妻。
この二つの要素が意味するのは
( ・∀・)「あとは簡単だ。 つまりこの指輪こそが、このウェポンの限界突破の形だ」
(;^Д^)「……ッ!」
理屈は解った。
あまりに突拍子もない発想だが、何より馬鹿げている。
わざわざ戦闘用のハンマーではなく、指輪という形状を選ぶ必要がどこにあるというのだ。
そんな小細工を弄する必要が――
(;^Д^)(!? まさ、か……お前は……!!)
( ・∀・)「君が武器に何かを仕込んでいるのは既に予想済みだった。
そしてそれを切り札としていることも、絶対の自信を持っていることも解っていた。
でなければ、わざわざ剣で戦おうなどとは思わないだろうからね」
- 921: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:10:51.52 ID:TNojT3sl0
- 全て読まれていた。
読まれていた上で、この一撃に繋げるためにモララーは動いていた。
ただ倒すのではなく、心を屈服させるため。
身体を傷つけるのではなく、精神を削り取るため。
(;^Д^)「――っそ……が……!」
そんな馬鹿な。
そしてなんと馬鹿らしいことか。
あの程度の化かし合いで勝負がついてしまったというのか。
モララーが近付いてくる。
殺すためか、それとも気絶させるためか。
どちらにせよ、ここで黙って見ていては全てが終わってしまう。
さっき自分で言った通り、今が最後の機会なのだ。
( Д )「――ッ――!!」
だが、身体が動いてくれない。
一瞬とはいえ強烈な電流を叩き込まれたのだ。
制御不能となった神経や筋肉が、思ったとおりに動くことは無い。
- 930: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:13:46.34 ID:TNojT3sl0
- ――終わりか。
こんなところで終わってしまうのか。
こんな幕切れで満足なのか。
こんな終わり方を自分は望んでいたのか。
(#^Д^)(違う……!)
あれから何のために生きてきた。
たった一度の油断で倒れるくらいの、その程度の感情だったのか。
(#^Д^)(違う違う違う違う違う違う違う!!)
憤慨に脳髄が沸騰し始める。
心臓が早鐘を打ち鳴らす。
鬼神のように血走った眼が、彼の怒りの程を示していた。
( ・∀・)「……君は、負けたんだ」
(#^Д^)「――!!」
( ・∀・)「君の思いが大きかったのは知っている。
だが、それでも負けたんだ。 その意味をよく考えてみるといい」
何を言っているのか、この男は。
変わらず持ち続けた思いが、簡単に変わろうとした男の思いに負けるはずがない。
- 937: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:15:59.45 ID:TNojT3sl0
- (#^Д^)「俺が――俺が負けた、だと――!?」
( ・∀・)「プギャー君。 もう、そろそろ夢から覚めようじゃないか」
(#^Д^)「違う……違うぞモララー!!
俺がお前を倒すのが現実だ!
この剣で! お前の武器を砕いて、身体を裂いて――!!」
( ・∀・)「……認めろ。 これが現実だ」
ぶつ、と音が聞こえた。
突き付けられる現実に、幻想が耐え切れずに割れ爆ぜる。
――それで終われば良かった。
だが、幻想の下から出てきたものは諦念ではなく
更なる醜い足掻きだった。
(# Д )「――あああああああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
( ・∀・)「……!?」
立ち上がる。
筋肉や神経がボロボロになっていながら、プギャーは立ち上がった。
酷使し続けてきた血管が破れ、身体中に内出血を起こす。
その執念は、まさに鬼神と言える深さを兼ね備えていた。
- 943: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:17:11.80 ID:TNojT3sl0
- ( ・∀・)「……私が死ぬことでしか君は浮かばれないのか」
(# Д )「そうだ……! そのために俺は、お前を――!!」
( ・∀・)(正常に見えて既に狂っていたようだな。
手段と目的が丸ごと入れ替わってしまっている……)
しかも目的を果たすまで死ねない、ときた。
彼の話が本当ならば、いくらこちらが手を下してもゾンビの如く蘇ってくるだろう。
ここまでの事象を引き起こすほどの心を、どうやって折れば良いのかモララーには解らなかった。
どうすれば良いのか。
折れないとするならば、あるいは――
( ・∀・)「私が死ねば……君は救われるのだね?」
(# Д )「死ネェエエエェェエエエ!!」
能面のような表情を歪に歪めて突撃してくるプギャー。
もはやモララーの声は届いておらず、積年の恨みを晴らすために向かってくる。
あまりに醜く、原始的な疾駆だったが、
……それがとても尊いように見えたのは、まさに幻想だったか。
- 948: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:18:09.24 ID:TNojT3sl0
- ( ・∀・)「君くらいだったよ、私に全力で正面からぶつかってきてくれるのは」
ロステックを開放。
やるべきことは決まった。
狂った彼の心を救うには、もうこれしかない。
(# Д )「――モララアァァァァァァアアアアアァ!!!」
( ・∀・)「だから、せめて君に出来ることを――!!」
感情を以って咆哮する男。
理性を以って対抗する男。
それら二つの影が、赤い大地の上で交錯した。
- 952: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:19:17.75 ID:TNojT3sl0
- 爪゚ -゚)「――!!」
それは果たして予感だったのか。
時を同じくして、ジェイルの直感が焦りを呼んだ。
立ち止まりたくなる衝動に駆られるが、それでは本末転倒だと判断する。
時間がないように思えた。
このルートで走るのが一番安全だったが――
爪゚ -゚)「…………」
ふと横を見る。
本陣に攻め寄ろうとしている異獣と、守ろうとする混合軍が激しい戦闘を繰り広げていた。
空では二機の戦闘機が地面に向けて機銃やミサイルを落としている。
本陣とは異なる方角からも煙が上がっていることから、援軍が来ているのも解った。
――この一部分を突っ切れば、もっと早く駆け付けられる。
もちろん危険度は増すが
今のジェイルの装備を考えれば、急がば回れの理論は通じ難いだだろう。
- 957: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:20:25.91 ID:TNojT3sl0
- 爪゚ -゚)「ッ!」
決心すれば行動は早かった。
地面を蹴って進行方向を変え、乱戦の中に突入する。
「おぉ!?」
「ジェ、ジェイルさん!? 何で!?」
「手伝いに来てくr――」
爪゚ -゚)「申し訳ございません。 急いでおりますので」
期待の眼差しを無情にもオールスルーし、
ジェイルは特大ランスを構えて敵の中に飛び込んでいった。
「うわ、思い切り敵を蹴散らしてる……!?」
「口では断っておいて手伝ってくれるなんて……」
「ツンデレ? これがツンデレ?」
何やら怪訝な表情を浮かべる彼らを尻目に
ジェイルは更なる疾走を続けた。
――消えない焦燥感を胸に秘めつつ。
- 972: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:24:04.54 ID:TNojT3sl0
- 「――――」
「――――」
風の音だけが場を駆け巡る。
一瞬で擦れ違う形になった二人は、背を向けた格好で止まっていた。
映画や物語で見るような、それでいて少し歪な構図だ。
だが、その沈黙は数秒にも満たない。
びしゃ、という水音がぶちまけられたのが直後だったからだ。
( ∀ )「っ――ぁ――」
膝をついたのはモララー。
切り裂かれた腹部の傷から、大量の血液が滴り落ちる。
先ほどの怪我とは比べものにならないほどの重傷だ。
一気に体温が奪われていく。
思考が端から凍っていき、血と共に生きる力が抜けていく。
- 976: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:25:10.69 ID:TNojT3sl0
- ( ∀ )「……見事、と言わざるを……得ない」
(# Д )「ハァ、ハァ――!!」
( ∀ )「君の……勝ちだよ」
言い終わったモララーは、そのために立っていたかのように身を崩した。
湿った音は、おそらく流れ出た血の上に倒れたからだろう。
同時、細かい金属音を立ててロステックが地面に転がる。
後には、プギャーの荒い息しか残っていなかった。
(# Д )「あ、ぁ……っお、れは――」
そのままの姿勢で、彼は言う。
(# Д )「俺は――お、前を――勝って――そし、て――」
震える手から剣が落ちる。
それを気にも止めないプギャーは膝を地面につけ
そして恐る恐る、と言った様子で倒れているモララーを見た。
- 982: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:26:20.09 ID:TNojT3sl0
- (# Д )「や、った……俺はっ……は、はは――――ぐゅっ」
直後、胸の『中身』が粉砕した。
正確に言えば、胸の中にある心臓が破壊されたのだ。
震える視界で見れば、プギャーの左胸が大きく凹んでしまっている。
あの交錯の一瞬。
プギャーはモララーの腹部を切り裂いたわけだが
逆にモララーは、攻撃ばかりに専念していたプギャーの心臓を叩いたのだ。
本来ならば相討ちだったはず。
だが先にモララーの方が倒れたのは、単にプギャーが執念で死を先延ばしただけで
つまり結果的に想いの強さはプギャーの方が勝っていたのだろう。
(# Д )「――――」
視力と聴力が消え、そして全身の力が抜けていく中
プギャーは凍る寸前の思考で思う。
……まさか目的を達した瞬間に死が来ようとは。
だが、後悔はない。
これは最初から決めていたこと。
目的――モララーの殺害を達することが出来るのならば、その後の命など要らない、と。
- 986: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:27:35.66 ID:TNojT3sl0
- ( Д )「……――」
言葉にならない口の形は女性の名を示し
( Д )「また、会え――」
我執の果てに見た誰かの姿を幻想に見つつ、
プギャーの身体もまた、モララーと同じように崩れていった。
後に何も残ることはない。
ただ一つの執念がこの結果を生んだ。
たとえ間違っていようとも、それを否定することなど誰にも出来はしない。
何故なら、その誰もが彼らの過去を知らないからだ。
知らずに語るは侮辱に等しいが、存在すら知られていなければ問題はない。
最後まで知っていた二人がここで絶えたことにより
もう『彼女』を起点とした恨みの連鎖は続かないだろう。
モララーの宿願と、プギャーの悲願が同時に叶うこととなったのは果たして奇跡だろうか。
その価値を計れる者は、もうこの世に残されていなかった。
- 990: ◆BYUt189CYA :2008/02/20(水) 23:28:50.69 ID:TNojT3sl0
- 何も動かなくなった戦場の一角。
このまま戦いが終わるまで誰も踏み込んではこないだろう、と思われた矢先
いくつかの音が、この場に接近していた。
《――――》
異獣である。
それも数匹や数十匹という単位ではない。
戦いから逃げて来たのか、それとも別動隊なのかは解らないが
血の匂いを察知してここまでやってきたようだ。
視線の先には二人の男が倒れている。
一方は腹から血を流し、一方は口から血を流している。
執念が激突した果ての象徴だが、そんな事情を知らない異獣にとってはただの餌に過ぎなかった。
涎を滴らせ、まだ温かい肉に爪を――
爪゚ -゚)「――我が主に触れるなッ!!」
次の瞬間、単身で飛び込んできたジェイルによって吹き飛ばされることとなる。
《!?》
一瞬の出来事に、異獣達は飛び込んできた人形から距離を取った。
- 86: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:04:21.16 ID:e0sGo3gu0
- ジェイルは威嚇する意味でランスを振り回し、その切っ先を群れに突き付ける
爪゚ -゚)「その汚らしい爪で主に触れようものなら、我が槍を以って地獄を見せましょう。
これを聞いて退かぬのであれば、竜の咆哮を以って散らしましょう」
人語が通じるか解らないが、
その気迫は本能レベルにまで響く危険信号として放たれていた。
だが、その程度で怯む異獣ではない。
たった一人と知るや否や、その身を引き千切るために牙を剥いて殺到する。
周囲三百六十度を囲まれたジェイルは、しかし焦ることなく腰を落とし
爪゚ -゚)「死する覚悟があると判断しました。
状況が状況だけに容赦は無用ですね」
槍が回り、機械翼に似た何かが展開される。
薙ぎ払う。
遠心力の力で更に高まった衝撃力が、飛びかかってきた獣を片っ端から撃ち落とした。
しかし、それで終わらないのがこの武装の特徴で――
爪゚ -゚)「EF(エターナルフォース)−ブリザード。
『永遠の氷』という名を冠するこの第五武装は、主に広域殲滅に特化し
コスト燃費その他諸々を度外視した贅沢な装備となっております」
- 95: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:06:40.91 ID:e0sGo3gu0
- 大仰な説明の通り、
大仰な武装が力を吠えた。
まず一際大きなランスが、その切っ先を変形させて大口径の銃口を作り上げる。
続いて背中の装備が、更に四方八方に大きく展開される。
多大な魔力がジェイルの身体を巡り、凝縮され――
次の瞬間、周囲空間の『色』が変わった。
続いて、光の乱射と言える光景が展開される。
背中に装備した兵装が、周囲に光線のような青い光をぶち撒ける。
ランスの切っ先からも魔力を圧縮したレーザーが発射され
ジェイルは腰を低く落としたまま、その極太のブレードを一気に振り回した。
結果は言うまでもない。
最長で百メートル以上も伸びた光剣が、逃げることすら出来ない異獣を片っ端から薙ぎ払ったのだ。
運良く逃れたとしても、細かく砕かれた光の弾が余すことなく撃ち貫いていく。
まさに『広域殲滅兵器』の名に相応しい性能だった。
- 107: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:08:58.21 ID:e0sGo3gu0
- 撒き散らされた青い光が全て消え去る頃には
その場で動くことの出来る存在は、竜騎士と化したジェイルのみであった。
爪゚ -゚)「――氷竜の咆哮、如何だったでしょうか」
超圧縮された光は敵を貫くのではなく消し飛ばす力を持つ。
その光に薙ぎ払われた存在は抵抗することすら出来ず、この世から抹消されるのだ。
後には煙も死体も残らない。
ただ、大地や空気が抉られた跡のみが残る。
爪゚ -゚)「殲滅完了。 放熱開始。 終了処理を行ないます」
全ての攻撃を完了したジェイルは、足下に倒れている男を見た。
兵装解除しつつ、頭の傍で片膝をつく
爪゚ -゚)「…………」
スーツに身を包んだ男が倒れている。
胸と腹に一つずつ、大きな裂傷を刻まれていた。
それが致命傷となったのか、その男は動くことをしない。
- 115: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:10:43.90 ID:e0sGo3gu0
- 爪゚ -゚)「貴方が……我が主……」
返事はない。
それが、とても悲しかった。
まだ言葉も交わしたことがないのに。
まだ目すら合わせたことがないのに。
――無性に、間に合わなかったことが悔しかった。
爪゚ -゚)「……何故でしょう」
誰にともなく言葉が漏れ出る。
爪゚ -゚)「何が悲しいのか解らないのに……。
貴方とは初見なのに、何故、このような……胸が苦しいのでしょう?」
- 121: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:12:23.69 ID:e0sGo3gu0
- 頭を抱え、呼びかけるように
爪゚ -゚)「貴方は誰なのですか……?」
(メ ∀ )「――――」
爪゚ -゚)「御名前を……せめて、御名前くらいを――」
(メ・∀・)「――忍法:死んだふり」
爪;゚ -゚)「っ!!?」
いきなりだった。
動かないと思っていたはずの男が、突如として口を開く。
いくら機械人形のジェイルとはいえ、流石に目を見開いて驚愕するのは仕方ない。
あまりのショックに、ジェイルはモララーの頭を落として後ずさった。
- 139: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:14:08.31 ID:e0sGo3gu0
- (;・∀・)「ぬぉっ!? これは痛い……!?」
ご、と後頭部を地面に打ち付けたモララーは、身体を痙攣させながら呻く。
(;・∀・)「あ、頭が!? 頭を抑えたいけど腕を動かすと胸の傷がっ……!」
芋虫のように蠢く姿は、奇妙としか言えない。
こんな男に驚かされた自分が悔しくて仕方なかった。
ともあれ、あんななりでも怪我人なのだと判断したジェイルは、慌てて駆け寄る。
爪;゚ -゚)「も、申し訳ございません。
その、あまりにも奇天烈だったもので……」
(メ・∀・)「む……? 君は――」
爪゚ -゚)「はい、ジェイルと申します。
貴方を護るために馳せ参じました。 御指示を」
(メ・∀・)「そうだね。 ならばまずは熱烈なキスを――」
しれっとした顔で言うモララーの頭を、
ジェイルはほぼ条件反射で叩いてしまっていた。
爪゚ -゚)「あ」
(;・∀・)「ぐおおぉぉ……こ、これは効いた……しかし動けん……!」
どうもこの主は、事ある毎に怪我人だということを忘れさせてくれるようだ。
- 152: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:16:19.26 ID:e0sGo3gu0
- ともあれ、いくつか指示を仰がねばならないことがある。
爪゚ -゚)「……あの男はどうしますか?」
少し離れた位置に倒れているプギャーを見やり、言う。
痛みに悶えていたモララーは
(メ・∀・)「彼は死んでいるのかね?」
爪゚ -゚)「はい」
(メ・∀・)「そうか……私を殺せたのだね。 幻想の中で」
もはやあの男は現実が見えていなかった。
現実では生きていくことの出来ない心を持ってしまっていた。
だから、モララーは幻想の中で死んだ。
それに満足したプギャーは、おそらく笑顔で死んでいるだろう。
――モララーの宿願と、プギャーの悲願が同時に叶うこととなったのは果たして奇跡だろうか――
プギャーはモララーを殺し
モララーは憎しみの連鎖を止めた。
これは、その結果である。
- 161: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:19:17.05 ID:e0sGo3gu0
- (メ・∀・)「……まぁ、結果的に騙すことになってしまったが構わんだろう。
私だって死ぬわけにはいかなかったしね。 必死に考えた折衷案がこれだった
相討ちもかっこよかったが、そのために命を落とすのは馬鹿がすることだ」
少し悲しそうな顔をし
(メ・∀・)「随分と卑怯だとは思うが、それを責めることの出来る人間はいないのが幸いか。
すまないねプギャー君……私はそれでも生きていたいんだ。 現実に生きる人間なんだよ」
戦いの一部始終は二人しか知らない。
今後、モララーはこの戦いのことを死ぬまで口にしないだろう。
爪゚ -゚)「……しかし大丈夫なのですか? 随分と出血為されているようですが」
(メ・∀・)「あまり良いとは言えん。 今はハイになっているから痛みをあまり感じないが、
だからと言って怪我が治っているわけではないのだから」
平気そうな表情をしているが、その顔色は青い。
どうやらかなり無理をしているようだ。
爪゚ -゚)(これは御世話が大変そうな主です)
(メ・∀・)「何か?」
爪゚ -゚)「いいえ」
(メ・∀・)「では、早速だが一つ君に命じようか。
私が死ぬまでに本陣へ届けてくれないか? これで死んだら流石に化けて出てしまう」
爪゚ -゚)「了解しました」
- 166: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:20:39.68 ID:e0sGo3gu0
- 素直に頷いたジェイルは、左手をモララーの首の後ろへ、右手を膝の裏へ通す。
そのまま持ち上げると――
(メ・∀・)「御姫様だっこ……だと……!?」
爪゚ -゚)「これが一番負担をかけない持ち上げ方なので。 我慢してください」
(メ・∀・)「……ふむ、まぁ仕方ないかな。
ともかく出来れば急いでほしい。 そろそろ意識を保つのが難しくなってきた」
爪゚ -゚)「了解」
何とも良い抱かれ心地の中、モララーは苦笑する。
まさかこんな助けられ方をするとは、と。
先ほどまでの攻防からは考えられなかった。
爪゚ -゚)「時に――」
(メ・∀・)「?」
爪゚ -゚)「貴方の御名前は?」
(メ・∀・)「モララーという。 まぁ、これから長いと思うがよろしく頼むよ」
爪゚ -゚)「解りました、モララー様」
完璧な返事だったはずなのだが、何故か彼は不満げな様子だ。
- 179: ◆BYUt189CYA :2008/02/21(木) 00:24:16.31 ID:e0sGo3gu0
- 爪゚ -゚)「どうしました?」
(メ・∀・)「訂正を求める。 私のことは『御主人様』と呼ぶようにしてくれたまえ。
これは何よりも優先すべきだから憶えておくように」
爪゚ -゚)「はぁ……別に構いませんが、それほど重要なのですか?」
首を傾げるジェイルに、モララーは小さな笑みを返し
(メ・∀・)「あぁ、大切だよ――何よりも大切なことだ」
と、満足げに頷くのだった。
後には死体が一つ残る。
うつ伏せに倒れた身体は、胸に一つの傷を負って死んだようだ。
そこらで戦って死んだ、一つの死体と変わりない。
一つ、違った。
――その表情。
ここを去っていった男のように、
その顔には、とても満足そうな笑顔が残っている。
それは、いつか『彼女』へ向けていた、かつての――
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