( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

169: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:47:58.79 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、そろそろこの踊りも飽きてきた頃だろう」

ノハ#゚  ゚)「何……?」

突然の提案は、しかし軍神らにとって僥倖に値した。
そして同時、ジリ貧で倒される可能性があったが故にミリアの意図が読めない。

ル(i|゚ ー゚ノリ「セカンドステージと行こうか。
      そうだな、今度のメインテーマは……」

き、という音。
それも一つではなく、複数。

ノハ#゚  ゚)「!?」

(#゚;;-゚)「なっ……」

逸早く察した二人は見る。
細かく砕かれ、地面に落ちた刃が震え始めたのを。
それらは素早い動きで集結し、再度、刀という形を作り上げてしまった。

空中にある刀、復元された刀、補充される刀。

元から在ったモノと無くなったはずのモノが合わさり、想像を絶する数に膨れ上がっていた。
気付いた時には周囲三百六十度、刃に囲まれてしまい
そして切っ先は残らず二人の方を向いて――

ル(i|゚ ー゚ノリ「――うむ、『血』にしよう」

次の瞬間、戦場に在る全ての刀が軍神とヒートに殺到した。



174: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:49:46.42 ID:fmjQj92D0
ノハ#;゚  ゚)「くっ……ッ!?」

これには流石のヒートも焦らずにいられなかった。
今まで見たことのない、常識外れの全方位攻撃に回避の構想が遅れる。

いや、そもそも逃げ道などなかった。
どこを見ても刃の切っ先が見える状況で、とてもではないが人一人が通れるような隙間があるわけがない。
この状況で『問題なし』と思えるヤツは、よほど力を持っているか、ただの自信過剰かのどちらかだ。

本能が警告する。
このままでは死ぬ、と。
研ぎ澄まされた戦闘勘も同様だった。

もはや一刻の猶予もない。
いくら優れた動体視力を以ってしても、これ以上の決断遅延は致命的となる。

ノハ#゚  ゚)「ッ!!」

直後、ヒートは真上へと跳んだ。

あのまま地面で迎撃してしまった場合、
全方位からの攻撃を受けなければならなくなってしまう。
そこで彼女のように上へ向けて跳べば、攻撃を受ける方向を限定させることが出来るのだ。

横ではなく上へ跳んだのは、背後からの追撃という憂慮を無くすためである。



176: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:51:45.88 ID:fmjQj92D0
だが、それでも直上からの刀を防がなければならない。

ノハ#゚  ゚)(ここで――!!)

右手に持っていた包丁刀を盾とするように構えた。
完全とは言えないが、これで進行方向上の刀から身を守ることが出来る。
あとは左手の中脇差で防御すれば、動けなくなるほどの傷を負うことはないはずだ。

耳を塞ぎたくなるほどの金属音が、足下から響いた。
数えることが億劫になる数の刀がぶつかりあっているのだろう。
あの中に自分がいたとすれば、と考えたところで、ヒートはかぶりを振って否定する。

窮地は脱した。
死なず、生きている。
生きているのならば、生きる先を考えるべきだ。

今、ヒートは空中にいる。
蹴りを入れる地面がない以上、急激な姿勢変更は不可能な状況だ。

――そこを、見逃す敵がいるか?

ノハ#゚  ゚)「ッ!!」

直感に身を任せ、背を逸らした。

擦過の感触が首を撫でた。
スローになった視界の下部では、こちらを表情を映す刃が走っている。
まさに紙一重というタイミングだった。



180: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:52:53.02 ID:fmjQj92D0
やはり、来たか。

確実に殺すのならば身動きのとれない状況へ追い詰めるのが一番だ。
今がまさにそれであり、だからこそ、この攻撃は必然であった。

ノハ#゚  ゚)(認識が甘かったな、異獣――!)

ル(i|゚ ー゚ノリ(流石に今のでやられてはくれんか)

交錯する視線。
言葉など無くとも、それだけで思惑は読み取れる。

だから、ヒートは応えた。

身を回転させる勢いで中脇差を収納し、代わりとして弓を取り出しながら

ノハ#゚  ゚)「これが私からの返答だ――!!」

放つ。
狙いも何もかも出鱈目だ。
だが、それでいい。

ここで『反撃した』という事実こそが重大なのだ。



184: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:54:10.15 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「ふむ」

飛んできた矢を造作もなく掴み取ったミリアは、
軽く握っただけで砕きながら、地面に降り立つヒートを見る。

ル(i|゚ ー゚ノリ「あの状況で尚、まだ反撃する余裕があったとは思わなんだ。
      流石は英雄だと言っておこうか」

ノハ#゚  ゚)「言ったでしょう。 嘗めるなって」

(#゚;;-゚)「――ま、そゆこと」

軍神も無事だったようだ。
彼女の周囲には刃が軽い山を為して積まれている。
なんと、刀の集中地点から動かず全てを叩き折ってしまったらしい。
彼女らしいと言えばらしい行為だった。

(#゚;;-゚)「で? また、この刀をまた修復して操る?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「さて、な」

ノハ#゚  ゚)(……効果はあったみたいだね)

(#゚;;-゚)(やな)



187: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:55:41.77 ID:fmjQj92D0
未だ敵の総力量を計りきれていないヒート達にとって、ミリアの余裕は侮蔑に等しい。
だがそれ以上に、『刀を操作する』という曖昧な攻撃手段しか把握出来ていないのが
現状の打破を妨げる一つの要素であることに疑いは無かった。

相手は、何が出来て何が出来ないのか。

何事においても、この問い掛けは重要項目に挙げられる。
いわば力量の把握というわけだが、戦いの場では事前に調べるのが通常だ。

しかし遭遇戦――つまり下準備なしでの戦闘になれば、
刻一刻と変わっていく戦況に対応しつつも、敵の行動把握を第一に考えなければならなくなる。
何故なら結果的に、個人の勝利を逃がすどころか団体の敗北すら呼びかねないからだ。


『戦いながらの観察』と言葉では簡単に言えるかもしれないが
これが熟練した腕を持っていないと難しい行為であることは、実はあまり知られていない。

――集中力を常に高レベルに保ち、それを更に二分化して保持し続ける。

こう言えば、どれほどの難度を誇るか想像しやすいかもしれない。
何かをしながら別の事をする、という行為はなかなかに難しい。

あれを常にアクティブに、更に命を賭けるとなれば、もはや常人の想像は及ぶべくもないだろう。



189: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:57:44.82 ID:fmjQj92D0
つまりヒート達は、ミリアの能力の全容を知ろうとしているのだ。
仮に決めの一手を仕掛けたとしても、それを防ぐことの出来る力があれば意味が無いばかりか
何も知らずに飛び込んだ者の命すら危うくなってしまう。

さて、そういうケースで考えた場合、
ミリアの能力を知るにはどうすれば良いだろうか。

(#゚;;-゚)「やるこたぁ決まったね」

ノハ#゚  ゚)「……えぇ」

(#゚;;-゚)「ただ、相手にはムカつくくらい余裕がある。
    そういう輩は大概の場合、挑発で遊ぼうとするから気ィつけよ」

敵は、高い位置からこちらを見下ろしている。
そんな状況で切り札を使用する阿呆はいない。
適当にあしらえる程度の力で、こちらを蹴散らそうとするだろう。
となれば――

ノハ#゚  ゚)「――ふっ!!」

迷うことなく疾駆する。
背後の軍神も走り始めたのを音に聞き、ヒートは更に姿勢を落とした。

対するミリアは相変わらず不動の姿勢だ。
絶対的優位を確信している表情で、肉薄せんと走るヒートを見据えている。
それを突き崩すためには、ただひたすら攻めるしかない。



195: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 18:59:27.27 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「今度は何をするつもりだ?」

ノハ#゚  ゚)「はぁぁぁあああ!!」

ノンストップの突進から放たれる斬撃。
一薙ぎで大岩すら切断する刃は、しかし先ほどと同じように防がれてしまった。
硬い金属音は、ミリアと包丁刀の間に出現した数本の刀によって引き起こされる。

ノハ#゚  ゚)(でも――!)

それでも、諦めない。
この防御を突き抜く方法を見つけるまで。
そして、この異獣を倒すまでは。

(#゚;;-゚)(敵をこちらに引き摺り落とす……そのためには、力を見せる必要がある。
    『己の力で倒す必要がある』と思わせなあかん)

まだまだ見下されているのは軍神も承知している。
だが、このままでは敵の切り札――それどころか、能力の全容すら掴むことが出来ないだろう。

だからこそ、攻める。

不利だろうが何だろうが関係ない。
弱者が強者に抗うには、それしかないのだ。



199: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:01:27.73 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「くっ、くく……その程度の力では私に触れることすら難しいぞ?」

(#゚;;-゚)「アンタは黙って殴られとけばえぇんやけどな……!!」

右に跳んだヒートとは逆方向へ。
一対二のセオリー通り、敵を挟む形での攻撃だ。

だが、ミリアにそのような定石は通用しない。

ノハ#゚  ゚)「っ!?」

前後からの攻撃は同時のタイミングにも関わらず、
やはり奇怪な防御方法によって無効化されてしまった。

彼女の周囲に結界が張られているような錯覚すら得てしまうほど、
もはや完璧としか思えない防御力である。

ノハ#゚  ゚)(まさか、本当に……?)

(#゚;;-゚)(不可視で自動防御用の刀を生み出すタイプの?
    そりゃあ、ちょいと無理があると思うんやけど――)

不可能だと断言出来ないところが痛い。
『異獣ならば』という確証もない仮定がヒート達の心を蝕んでいく。
もし完全無欠のバリアだとするならば――

ノハ#゚  ゚)(くっ……駄目だ……考えちゃ駄目だ。
     必ずどこかに弱点が――いや、小さな穴くらいはあるはず!)



202: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:02:59.49 ID:fmjQj92D0
嫌な思いが湧き上がるのを、ヒートは心の底から否定した。

皆、頑張っている。
軍神だって諦める素振りは見せていない。
もうすぐミルナも合流するはずなのに、自分だけ弱音を吐くわけにはいかない。


一層の気を引き締めるヒートではあるが
実は、この気迫の高さは南軍随一であることに誰も気付いていなかった。


ヒートはかつて、異獣に捕らわれたことがある。
もう一年以上も前の話だ。
英雄となってミルナと一緒に戦い、その才能を認められ始めた頃だった。

何をされたのかは、何故か記憶に残っていないのだが
その結果は最も表れてほしくないところに表れてしまう。


――顔だ。


正確に言えば、顔全体の皮膚である。
軍神が全身の皮膚を奪われたケースと同じだった。

今、ヒートは仮面で顔を覆っている。
敵への威嚇や、表情を読ませない意味も兼ねてはいるが
最大の理由は、単純に『顔を見せたくない』という一点に尽きる。



205: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:04:30.35 ID:fmjQj92D0
醜い、と彼女は自分の顔について強く思っていた。

だから、頑なに隠している。
この世界に辿り着いた時も、ミルナを探すよりも先に異獣を追ったのはそのためだ。

こんな醜い顔では、文字通り『会わせる顔がない』という心境だったのだろう。
何が何でも異獣から顔を取り戻さなければ、ミルナと会えないと思ったのだ。

だが、その願いが叶うことはなかった。

まんまと異獣に誘き寄せられた結果、ヒートはミルナとの再会を果たしてしまう。
彼はヒートの顔に関して何も言わないでいるが、だからこそ彼女は確信している。

既に知られている、と。
この醜悪な顔を、彼は知っていながら何も言わないのだ、と。

それはヒートにとって何よりも辛いことだったのだが、ミルナは気付かずにいた。

ノハ#゚  ゚)「ぅ……おぉ……!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ(さて……そろそろ頃合い、といったところか)



208: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:05:55.58 ID:fmjQj92D0
かつてミルナは、彼女に言ったことがある。

――お前のコロコロ変わる表情が好きだ、と。

心の底から嬉しかった言葉。
しかし、もう見せることの出来ない表情。
そして何も言わないミルナ。

ヒートは心配でたまらなかった。
『その程度』としか見てもらえていなかったのか、と。
今でこそ手を組んで戦えるまでに回復してはいるが
信頼という点において、ヒートとミルナには微妙なズレがある。


きっと、大丈夫。

けれど、もしかしたら。


ノハ#゚  ゚)「――ッ――!!」

希望と邪推がせめぎ合う中、ヒートは戦っている。

信じられるだろうか。
迷いを持ちながらも、この気迫である。

戦闘力という点で、軍神に及ばずとも劣らない位置にいる彼女だが、
もし、仮に元々持っていた直線的感情を取り戻せたとすれば――



216: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:07:50.26 ID:fmjQj92D0
だが、完全に信じることが出来ない。

彼はヒートの顔について如何なる思いを得たのだろうか。
好きだと言ってくれたモノを失くしてしまった自分に、価値などあるのだろうか。
今、共に戦っているのは同情から来る行為なのだろうか。

だとするならば――

ル(i|゚ ー゚ノリ「――揺れているな」

ノハ#゚  ゚)「っ!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「何を抱えているのか……疑心の姫君。
      どうだ? 大切なモノを奪われた気持ちは? 失くした気持ちは?
      そこから派生する様々な感情に、お前はどう答えを出す?」

ノハ#゚  ゚)「だ、まれ……! 見知ったようなことを!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「そんなことを言わず見せてくれ。
      猜疑の果てに出す答えを。 そして気付いた真実を」

ノハ#゚  ゚)「喋るな……言うな……!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「さぁ……答えてみせろ。
       お前は、あの男を――?」

ノハ#゚  ゚)「これ以上、私の中に汚い手を突っ込むなァァァァァアアア!!!」



217: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:09:45.14 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「はははははははははは!
      いいぞ、蜘蛛姫! お前は疑うが故に自ら――」

ノハ#゚  ゚)「ぁあぁぁぁあああ!!」

(#゚;;-゚)「な、っにやっとんのアンタ! そのままやと!」

具体的に何が引き金となったのかは解らないが、
ミリアの言葉がヒートの逆鱗に触れてしまったらしい。
この言い方ではミリアに危機が訪れたかのようにも思えるが、実のところはまったくの逆だ。

戦場では冷静さを欠いた者から消えていく。
有名な格言であると同時に、だからこその真実である。

怒りに燃えるのと、怒りに我を忘れるのでは天地の差があった。
今のヒートは確実に後者であり、戦術も技術も何もない乱雑な攻撃を仕掛けていくのみ。

直線的な軌道。
愚直な判断。
解り易い視線。

どれもがミリアにとって有利にしか働かない情報で
それらを撒き散らすヒートは、激しく動いているように見えて隙だらけとなってしまう。



220: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:11:30.27 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「それほど気になるか?
      そんな也でも女だと自覚しているのだな?」

ノハ#゚  ゚)「黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!」

(#゚;;-゚)「えぇい言わんこっちゃない!!」

これだから若輩者は。
暴走し始めたヒートを止めに、軍神が地を蹴った次の瞬間。

ル(i|゚ ー゚ノリ「悪いが、今回ばかりは邪魔は無しだ」

(#゚;;-゚)「なっ――っぐぁあ!?」

決して忘れていたわけではないのだが、
突如として、眼前に出現した刀に対する反応が遅れてしまうのは当然だった。
慌ててのガードは完璧となるはずもなく、踏ん張る暇もないまま攻撃を受けてしまう。

(#゚;;-゚)「――っちィ!」

斬り飛ばされてしまった軍神は、しかし身体を抑えつけるようにして着地した。

並の使い手ならば、おそらく先ほどのミルナのように吹っ飛んでいたはずだ。
反応速度に優れている彼女ならではの芸当だろう。



222: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:12:26.22 ID:fmjQj92D0
開いた距離は、およそ五メートルほど。
しかし現状において、この距離は致命的だった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「お前は後でゆっくりと遊んでやる。 それまでそこにいろ」

(#゚;;-゚)「な――」

に、と続く言葉は、視界に収めた事実に打ち消されてしまった。
いつの間に仕掛けたのか、周囲に無数の刀が、全てこちらに切っ先を向けて浮いていたのだ。。

(#゚;;-゚)「……!!」

戦慄に息を呑む。

逃げる隙間も、防御する暇もまったくないことを悟った彼女は
一斉に射出された刃を睨みつけながら、殺到する刀の中に埋もれていった。



227: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:14:22.86 ID:fmjQj92D0
ミルナを失い、そして軍神をも封じられた。
ミリアに対抗出来る戦力は、もはやヒートのみとなる。

三人で通じなかった。
軍神と二人でも貫けなかった。
一対一となった今、ヒートの勝ち目は皆無に等しい。

ル(i|゚ ー゚ノリ「――更に重ねて問おうか。
      あの男が本当にお前を信頼しているのか、と」

ノハ#゚  ゚)「うぁあぁぁぁああああ!!」

しかも、依然としてヒートは錯乱している。

押さえつけていた不安が爆発したのか、
挑発として聞き流さなければならないミリアの言葉が
まるでスポンジに染み渡る水のように吸い込まれていく。

ル(i|゚ ー゚ノリ「怖いか? よほど怖いのだろうな!?
      知っているぞ! お前達は他人を通じて自己を確立する習性がある!
      だからこそ繋がりを重視する! 他人の心すら完全に読めぬ欠陥生物がな!」

怒りに身を任せるヒートがそれほど滑稽なのか
ミリアも興奮した調子で、更に更にと言葉を投げかけていく。



232: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:15:45.25 ID:fmjQj92D0
ノハ#゚  ゚)「う……うぅぁ……!」

孤独を自覚することが、これほど恐ろしいとは。

必死だった。
顔を失って以来、心の中では常に壁を作っていた。
ただ一人、ミルナというパートナーを除いて。

もう二度と離れたくなかった。
事実、ブーン達に合流してからのヒートの行動は常にミルナと共にあった。
寝起きから食事、娯楽、訓練に至るまで、彼と離れることをしなかった。

だが、それでいてどこかに不安があった。

かつて確かに紡いだ絆が、離れてしまっていた一年でどうなってしまったのか。
彼が好きだと言ってくれた『顔』を失った今、自分は一体何に成り下がってしまったのか。
それを、ヒートは確かめることが出来ずにいた。

本人に聞けば早かったかもしれない。
あの男は必ず『問題ない』と答えてくれるだろう。

――たとえ嘘でも。

もはや疑心暗鬼の領域である。

ただ、この結果は仕方がなかった。
ミルナに対する一番のデバイスを失ってしまったのだから。
自分を好んでくれる理由が無い今、彼の中でどんな存在になっているのだろう。
そう心配でたまらなくなるのは至極当然の流れである。



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