( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

238: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:18:13.55 ID:fmjQj92D0
ただ先ほども言ったように、戦いの中でそれを思い出してしまったヒートに落ち度はある。

仕方のないこととはいえ事実だ。
そして、そこを的確に穿とうとするミリアは根っからのサディストと言える。

ノハ#゚  ゚)「ッ……あぁぁ――!!」

疾風は止まらない。
更なる攻撃を仕掛けるため、ヒートは怒りに身を任せていく。

ル(i|゚ ー゚ノリ「ククク……愉快愉快」

前提として、こちらの攻撃は問答無用に遮断される。

遠距離だろうが近接だろうが関係ない。
しかも軍神の一撃すら止めるのだから、防御力も高いのだろう。
となれば――

ノハ#゚  ゚)「っ!!」

選択は一瞬。
右手に包丁刀、左手に槍を構えての猛攻である。



241: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:20:14.55 ID:fmjQj92D0
フェイントで気を逸らし、右方へ跳ぶ。
続いて地についた右足を止めることなく蹴立てた。

完成する動きは、ツーステップによる瞬間的な回り込みだ。

常人よりも強い身体を持つ英雄ならではの技能である。
まだミリアがこちらを捉え切れていないのを視線の端で確認しながら
ヒートは容赦なく包丁刀を薙ぎ払うようにしてブチ込んだ。

破砕音。

ル(i|゚ ー゚ノリ「残念だったな」

案の定と言うべきか、ミリアを切断しようとした刃は
突如として出現した刀によって阻まれる結果に終わる。

ノハ#゚  ゚)「おぉぉ……!!」

だが、ここからが本番だった。

元より防がれるのは承知。
ならば、害を利に変えるために意識は切り替えておくべきで。
事実、ヒートは既に別の思考へと移行していた。



246: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:21:41.55 ID:fmjQj92D0
ノハ#゚  ゚)(そこ――!!)

飛び散る破片すら厭わず、ヒートは当初から狙っていた位置を見る。
一度防御に使った場所を連続で突けば、防御が間に合わないかもしれない、と。

いつでも打ち出せるように構えていた槍の切っ先を穴へ向け
包丁刀が弾かれた衝撃を前屈のために変換し、そのままの勢いで左腕を突き出した。
槍は空気を切り裂く細音を奏でながら、ミリアの脇腹を目掛けて一直線に――

ノハ#;゚  ゚)「――っな!?」

砕かれた。

包丁刀を防いだ刀の更に奥。
新たな刀が現れ、まるで断頭するように槍を叩き折ったのだ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「センスは良い。 勘も。 度胸も。 判断力も。
      だが、単純に遅かったようだな」

ノハ#;゚  ゚)(そんな――!!)

ヒートは気付いていなかった。
頭に血を昇らせ過ぎて、動きが読まれやすくなっているということに。

今のも、最初から二連続攻撃が来ると解っていての防御だったのだ。



250: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:23:10.54 ID:fmjQj92D0
最初から両手に武器を握っていては意味がない。
『連続で仕掛けますよ』と言ってしまっているようなものだ。
フェイクだったとしても、とりあえず警戒しておけば損はない。

上記の理由もあって防がれて当たり前だったわけだが
攻撃という面に多大な自信を持っていたヒートは
いけないと思っていながらもショックを隠し切れなかった。

そんな彼女を見たミリアもまた、愉悦の高揚を止めることは出来なかった。

ル(i|゚ ー゚ノリ「人間とは脆いな、英雄!
      四肢を軽く引けば千切れ、少し言葉を投げかければ自壊していく!
      まるでこの槍のように儚いじゃないか!」

ノハ#゚  ゚)「そうやって人間を弄んで……! 悪鬼が!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「極上なのだよ! 脆い癖に楽しませてくれる玩具さ!!」

ノハ#゚  ゚)「――!!」

言葉を聞いた瞬間。
折れた槍を捨てながら、ヒートは思わず咆哮していた。

ノハ#゚  ゚)「お前は……お前はどこの神様だぁぁぁぁああ!!」



255: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:24:41.73 ID:fmjQj92D0
叫びと共に打ち鳴らされるは金属音の多重合唱だ。

激怒の念を込めた刃が、まさに縦横無尽に空間を切り裂く。
その全てをミリアの刀が受け止め、撓み、そして爆ぜていく。

散る刃はどこまでも白く、
弾ける火花はどこまでも輝き、
ぶつかる意志はどこまでも深い。

赤褐の大地に雪が降る。
刃の欠片という白雪が散る。
赤い空の下、怨念と愉悦がぶつかり合う。

際限無く高速化していく戦いの中、ミリアの声の調子が徐々に上がっていくことに気付いた。
戦闘の展開に比例して興奮していくような、そんなイメージだ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「神!? 神はどこかにいるだろう!
      趣味の悪いことに、今もどこかで笑いながら覗いているさ!」

ノハ#゚  ゚)「何を――!?」

ル(i|゚ ー゚ノリ「――あれを神と呼ぶのならば!!」

ミリアの動きが変わった。
不敵に笑いながらヒートの攻撃を防ぐ形から、その右手が腰に伸びていく。

先には、今まで一度として使用されなかった白色の刀があった。



261: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:25:54.44 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「よほど世界は退屈だと言えような!
      棚の一つに収められて埃を被りながら朽ちていく書物のように!」


来る。


ル(i|゚ ー゚ノリ「集められ! 管理され! 整頓され! 自己満足の一手段とされ――!」


くる。


ル(i|゚ ー゚ノリ「知らぬ方が幸いにもなろうさ!
      知れば抗いたくもなる! 無謀だと知ろうとも!」


クル。


ル(i|゚ ー゚ノリ「だから死ねよ脆弱者……!
      何も知らぬのならば、せめて糧として我々の力となれ!」

駄目だ。
避けなければ。
喰らえば、死ぬ。


おそらくアレが、ミリアの持つ切り札……!



264: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:27:40.75 ID:fmjQj92D0






全力で、            地を蹴り、    その場から、        退避を――――


     ありえぬ力を持った、      刀が、       白色の鞘から、   抜き放たれ――――



273: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:28:57.92 ID:fmjQj92D0
直後、刃が奔った。
あり得ない程の高密度魔力を纏う純白の刃が。
全て切断せんと光る、まさに抜けば玉散る氷の刃が。

段々と後退していく身体に、真横から食いこむような軌道で。

あれを受けて生きていられる確率は低い。
よしんば命を保てたとしても戦闘不能は確実だ。
そんな未来しか見えないほど、疾走する刃の力はケタ外れだった。

一瞬が、ペースト状に引き伸ばされる。

正確に言えば脳のフル回転による錯覚なわけだが、その中でヒートは冷静に状況を吟味していた。
このままの速度を維持することが出来れば直撃は無い、と。

ル(i|゚ ー゚ノリ「――だが、逃げられんよ」

判断してから離脱まで秒も掛からない。
だというのに、ミリアの声が届いた気がした。


直後、視界が白色に染まる。


強烈な風が吹いた、と思った次の瞬間。

ノハ#;゚  ゚)「――あっ、うあああぁぁ!?」

身体を縛っていた重力が消失。
代わりとして、前方からの暴力的な力場がヒートの身に襲い掛かった。



278: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:30:46.29 ID:fmjQj92D0
(#゚;;-゚)「……やれやれ」

どこを見ても刃、という気が狂いそうな景色に、軍神は溜息を吐いた。
上手く掻い潜ったつもりだったが、逆に閉じ込められてしまったようだ。

裂かれた機械皮膚から、少量の血が流れ出ている。

対魔力攻撃に優れるはずの装甲が切り裂かれている。
抵抗しようと微かに身を動かしただけで。
仮に、あと少し大きく動いていれば、果たしてどうなってしまっていたのか。

(#゚;;-゚)(くそっ、忘れとったわ……奴らの根本的な性質を……)

異獣は基本的に嘘を吐かない。
単純に吐く必要がないからだ。
その力のみで難なく蹂躙出来る以上、フェイクなどを使用するのはかえって時間の無駄である。

知っていたはずなのに、反応が遅れた。
結果、機械皮膚――ひいてはプライドが僅かながらも裂かれてしまう。
今も動いてしまえば、おそらくその分だけ傷が増えるだろう。

(#゚;;-゚)(完全に身動きを封じられた……一瞬のミスがこれほどまで)

あの場で感情的になったヒートも悪いが
止めようとして突発的な行動に出た自分も褒められたものではない。

受けなくても良いはずだったダメージを前に、軍神は歯噛みを止めることが出来なかった。



281: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 19:32:25.52 ID:fmjQj92D0
何より、ヒートを一人残してしまったのが気掛かりだ。
決して彼女の戦闘力を過小評価しているわけではなく、むしろ認めてすらいる。

しかし、今の状態でミリアと対するには荷が重いだろう。
他の者達もいるにはいるが、囮の役目すら危険過ぎる。

不覚にも、自責の念が押し寄せるのを感じた。
あのままヒートを見捨ててはおけない状況だったかもしれないが
だとしても自分の行動は軽率過ぎて、結果がこの様である。

(#゚;;-゚)「くっ、ウチとしたことが――」

せめて、ヒートと自分の立ち位置が入れ替わっていれば。
ミリアの狙いが自分一人に絞られていれば――

ありえたかも知れない、都合の良い未来を望んだ、その時だった。

(#゚;;-゚)「……ん?」

一つの気配を感じ取る。

それは見知ったものであり、しかし信じられぬ色を同時に内包してることに気付いた軍神は
思わず――身体が傷付くのさえ構わず――振り向いた。

(#゚;;-゚)「ア、アンタ……? ってか、それって……!?」

直後、一陣の黒風が軍神の周囲で、大きく弾けた。



353: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:14:39.70 ID:fmjQj92D0
何がどうなったのか解らない。

ただ、抗えない力に吹き飛ばされたとしか。
きりもみし過ぎて前後左右の感覚が麻痺したまま、大きな衝撃が走る。

ノハ#;゚  ゚)「っぁぁあ……!」

地面に叩きつけられたのだ。
突然のことに受け身などとれるわけもなく。
しかも勢いは止まることを知らず、そのまま数回転ほど無様に転がってしまう。

ノハ#;゚  ゚)「……う、ぅぅ」

ようやく止まったかと思えば、今度は様々な不快感がヒートを覆った。
まるでカクテルシェイカーの中に入っていたような気分だった。
無茶苦茶に揺さぶられた脳が、骨が、肉が、神経が不調を訴えている。
起き上がろうとしても腕に力は入らず、そもそもどう起き上がれば良いのかすら解らなかった。

ノハ#;゚  ゚)「げほっ、がはっ……ぁ……っ……」

呼吸が上手く出来ない。
少し耳鳴りもする。
それに思考が歪むようで気分が悪い。

全身を包み込むような激痛が、ギリギリのところでヒートの意識を繋いでいた。



358: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:16:23.93 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「成程」

ノハ#;゚  ゚)「っ……くぅ……!」

まさにノイズだらけの意識の中。
それでも、戦士としての嗅覚が敵の接近を察知する。

ル(i|゚ ー゚ノリ「攻撃範囲から逃れようとする反応速度と判断力は良かった。
      だが運がなかったな。 直撃を受ければ苦しまずに死ねたものを」

ノハ#;゚  ゚)「そ、れは……っぁ……」

ル(i|゚ ー゚ノリ「これぞ我が真の武装。 名は……そうだな、『テセラ』だったか。
      ただ高密度の魔力を圧縮しているだけだが、その余波でさえアレだ。
      流石の英雄も一撃で伏せるか」

納得がいった。
ヒートを吹き飛ばしたのは余波――衝撃波だったのだ。
剣撃こそ受けなかったものの、その後に発生した『オマケ』にやられたのである。

ならば仮に、刀身部分をまともに受けていたらどうなったのか。

まず悔しさが浮かび、そして心の底に恐怖が滴り落ちた。
コンマ数秒でも反応が遅れていれば死んでいた、という過ぎ去った未来が
恐れとなってヒートの本能を蝕んでいく。



362: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:18:07.53 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「月並みの言葉だが光栄に思えよ、蜘蛛姫。
       この刀を使って殺してやるのだからな」

ノハ#;゚  ゚)「……っふざ、けるな」

ル(i|゚ ー゚ノリ「せめて立って言ったらどうだ?」

ノハ#;゚  ゚)「く、ぅぅ……!」

立ちたくても立ち上がれない。
もがく間にもミリアがトドメを刺すために近付いてくる。
砂利を踏む足音は、、ヒートの命のカウントダウンと同義だ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「無様だな。 英雄もこの程度か」

ノハ#;゚  ゚)「……!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「これならば英雄神の方がよほど脅威だったよ。
      何故、自身を犠牲にしてまでお前達を残したのか理解に苦しむ」

英雄とは英雄神――シャーミンが意図的に作り出した、対異獣用の戦闘人種だ。
生まれた時から体内に魔力を備えている彼らは、驚異的な運動能力を発揮することが出来る。
戦闘という方向性に限定されるが、だからこそ彼らの能力はナチュラルに高性能だと言えた。

だが、それでも彼らは人間なのだ。

体調もあれば感情もある。
生じる迷いも、普通の人と同じものだ。



363: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:19:39.86 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「奴らが作ったハインリッヒにしてもそうだ。
      ただの戦闘用生物に仕立て上げれば良いのに、頑なに自己意識を宿したがる。
      まるで自分の子供を作るかのようにな」

ヒートは、その言葉に軽く目を見開いた。
ハインリッヒのことを知っている、という事実と併せて
まるで開発者達の心情を、正確に知っているかのような口振りに違和感が湧いたのだ。

ノハ#;゚  ゚)「……ッ……それは――」

ル(i|゚ ー゚ノリ「知っている。 感情とは時に強さのトリガーとなる、だろう?
      例えばお前などは、あのミルナとかいう男と共に戦えば
      体力面に二割ほどの増強が見られるしな」

ノハ#;゚  ゚)「……それを、知っていて……何故……?」

FCに合流せず、異獣を追っていた時があった。
ミルナに会う前に『顔』を取り戻しておきたかったからだ。

修練によって自発的に発動することが出来るようになった
『理性的バーサーカー』モードを休み休み使用しつつ、連夜追い続けた。

飄々と逃げ続ける双子が次第にこちらを誘導しているのだと気付いたのは
不覚にも、こちらの世界に来てしばらく経ってからだった。
最終的に誘い出された場所は、フィーデルトコーポレーションの玄関口。

そこにいたのは、誰でもないミルナであった。



365: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:20:52.16 ID:fmjQj92D0
だからこそ疑問が湧く。
様々な感情によって戦闘力が上がる、ということを知っているのならば
異獣にとってミルナとヒートの再会はマイナスにしかならないはず。

そんな訝しげな表情を仮面の奥に見出したのか。
ミリアの笑みが少し深くなる。

ル(i|゚ ー゚ノリ「考え無しに、あのようなことをしたわけじゃあない。
      何か勘違いしているようだが、お前達が元の鞘に収まったからと我々に不利はないのだよ」

ノハ#;゚  ゚)「より……強者を、愉しむため……」

ル(i|゚ ー゚ノリ「それと実験的な意味合いもある――というか、それが本質だ。
      お前が仲間と合流しない理由と、私達を執拗に追っている理由。
      この二つを考えた場合……推測に過ぎんが、一つ心当たりがあってな」

心臓が一際大きく鳴った。
勢いよく流れた一部の血流が、胸を中心に鼓動を刻む。
その後、ワンテンポ遅れてじっとりした汗が背を撫でた。

ル(i|゚ ー゚ノリ「最初は、私達の足取りを確実に掴むための斥候の真似事かとも思ったが
      それだと攻撃してくる意味がない。 むしろ逆効果だ。
      あくまでお前の狙いは私達の撃破……だとすれば答えは自ずと出るのさ」



368: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:22:09.40 ID:fmjQj92D0
ノハ#;゚  ゚)「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「お前は仲間――いや、あのミルナという男と会うわけにはいかなかった。
      個人を特定するための第一要素となる『顔』を奪われていれば、
      そして女なら尚更、な」

だから、と言い

ル(i|゚ ー゚ノリ「それをこちらとしても利用させてもらっただけのこと。
      大事なモノを失ったお前が、一体どういう答えを私に見せてくれるのか。
      相乗効果で更なる強さを見出すのか、相殺効果で目も当てられぬ状態になってしまうのか」

そういうことか。
先ほどの挑発は、ヒートの感情の機微から察したのかと思っていたのだが、
まさかこの女は――

ノハ#;゚  ゚)「知っていて……いや、最初から仕組むつもりで……!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「本来ならば『顔』のデータ摂取で終わりだった。
      そしてこれでも余興、もしくはオマケ程度に考えていてな。
      正直に言えば、ここまで来るとは予想の範疇外だった」

ノハ#;゚  ゚)「ッ……お前は……!!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「だが、もうそれも終わりだ。
      結果は今あった通り……所詮は人間だったということだな。
      修羅となって愉しませてくれるかと期待はしたが、無駄だったか」

明らかに落胆した表情を浮かべる。
位置の差から見下されたような影も加わり、憎たらしいほどに苛立つ顔となった。



370: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 20:23:47.81 ID:fmjQj92D0
ル(i|゚ ー゚ノリ「何か言い残すことは? 無論、誰にも伝える気など無いが」

ノハ#;゚  ゚)「……っ、一つ言わせろ」

ル(i|゚ ー゚ノリ「ほぅ。 オーソドックスに命乞いか? それとも愛する男へのメッセージか?」

ノハ#゚  ゚)「地獄に落ちろ……薄汚い獣め……!」

ル(i|゚ ー゚ノリ「…………」

その時の異獣の表情は初めて見るものだった。
『きょとんとした顔』とは、ああいうものを言うのだろう。
一瞬、ヒートが何を言ったのか理解出来なかったのだ。

ル(i|゚ ー゚ノリ「――っく、くく。 くくくくくくくく」

ノハ#;゚  ゚)「…………」

ル(i|゚ ー゚ノリ「やはり私の目に狂いはなかったな。
      蜘蛛姫、お前は最期の最期まで愉快な気分にさせてくれる玩具だ。
      この世界に来てからの行動全てが、私の掌の上で踊っていたと知った直後に呪いの言葉。
      英雄の誇りとやらも、ここまでくれば狂気と言わざるを得んぞ。
      だがな――」

ヒートの言葉が相当に面白かったのか。
饒舌になりつつも、ミリアは白色の刀を振りかざす。
一振りで敵だけでなく戦場をも削る魔刀が、血を欲してか暗い光を発射した。

その薄気味悪い光を頬に浴びながら、ミリアが歯を剥いて笑う。



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