( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

732: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:11:30.15 ID:fmjQj92D0
軍神は過去、『軍神』となる前に異獣に捕らえられたことがあった。
その際にデータ収集の意味もあってか、全身の皮膚を剥がされている。

本来ならば、そのまま朽ち果てる運命。
しかし彼女が属していた軍はそれを許さなかった。
目が覚めた時には、剥がされた皮膚の代わりに極薄の装甲を張り付けられていたのだ。


……汝、死することなく軍神で在れ。


そんな声が未だに耳に残っている。
自分のこれからの命運を決定付けた、抗いようのない言葉として。

だが、それでも軍神は誰をも恨むことをしなかった。

ネガティヴに考えるよりも、与えられた力と時間をどのように使うか。
そんな風に考えてみろ、と何よりも大切な人に言われたからだ。

もういない彼の言葉、表情、状況、その全ては誰にも話すことなく心の中に閉まっている。



739: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:12:57.92 ID:fmjQj92D0
(#゚;;-゚)「おぉ――!!」

彼は空が好きだった。
だから、自分は大地を愛した。

更に疾く。
更に熱く。
更に強く。

既に人を捨てた傷だらけの女は、今日も怨念を晴らすために吼える。
異獣を屠り、結果的に誰かを護りながら、そうして彼女は今日まで生きてきた。

(#゚;;-゚)「おおぉぉぉぉ……!!!」

この戦いが始まった時点で決めていた。

あの青髪の女は自分が倒す、と。

ミルナやヒートを仲間だとは思うが、やはり異獣を倒すのは自分でなければならない。
特に、似た境遇のヒートには申し訳ないと思う部分も少なからずあるが
死の危険性が常に付き纏う以上、待つ人がいる彼女には荷が重いと言える。

悪い言い方をすれば、今の状況は非常に都合がよかった。

何せ戦場に立っているのは自分と敵だけなのだ。
この広い大地の中、立っているのはたったの二人。
単純なロジックの結果は、倒すか倒されるかの二つに一つ。

ならば自分は軍の神として、全身全霊の力を以って勝利を得に行くのみだ。



743: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:14:20.08 ID:fmjQj92D0
ル(i|"ー゚ノリ「――はっ!」

向かい来る敵――軍神の姿を視認して、
ミリアは歓喜のあまり、溜めこんでいた酸素を一部吐き出した。

真っ直ぐ向かって来ている。
フェイントなどという考えは毛頭ないようだ。
ただ自分という敵を粉砕するため、殺気立った目でこちらを睨んで走っている。

それでいい。
たまらない。
ゾクゾクする。

今にもぶつからんとする瞬間の興奮は、例えば性交による本能の沸騰すら上回る熱さである。
灼熱であり、極寒であり、蕩けるようであり、弾けるようである。
形容し難い刺激というパルスが、脳の快楽中枢を突き回すのである。

少なくともミリア自身はそう思って止まない。
この昂揚を超える感覚があるわけがない、と信じ切っている。

ル(i|"ー゚ノリ「さぁ来いよ軍神!! 私を、異獣を屠りたいのだろう!!?」

(#゚;;-゚)「余裕ぶるのも――」

軽い跳躍。
同時にロール。

(#゚;;-゚)「――えぇ加減にせぇよ!!」

横回転を加えられた薙ぎ払いが、ミリアの構えた白刀に激突した。



749: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:15:56.76 ID:fmjQj92D0
ル(i|" -゚ノリ「ぬ、ぅ……!?」

(#゚;;-゚)「軍神として生まれ変わって幾星霜! 待ちに待った狩猟の時!!
    遠慮なく食らわせて頂きますよ、と――!!」

その重量を武器に押した。
異なる魔力同士が互いを刻み合い、白黒の火花を散らす中、
一歩、また一歩と確実に歩を進めていく。

二人を中心として衝撃波が唸り、転がっている岩石を容易く吹き飛ばす。

ル(i|" -゚ノリ(こいつ、こんな身体のどこに――!)

(#゚;;-゚)「あああぁぁぁぁぁああ!!」

そこから攻撃が止まることはなかった。
不断の速攻に、ミリアは後退を余儀なくされる。
今までではまったく考えられない展開に直面し、ほんの少しだけ焦りが生まれた。

結果があるということは、理論もあることに繋がる。

体格は若干ミリアが勝っており
単純な力もミリアが勝っている。
武器の優劣から言えば、能力を発揮出来ていないブロスティークが劣っている。

だが、結果として軍神の方が押している。

ル(i|" -゚ノリ(何故だ……! テセラの出力は最大のはず! 何故、私が押し負ける!?)



754: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:17:14.49 ID:fmjQj92D0
ミリアは知らなかった。
いや、気付いていなかった。

人間とは感情を引き金に爆発的な力を生む。
それは時に絶望を希望に変えることだってある。
だが、その根源が『意思』であることを、ミリアは気付けなかったのだ。

人間の身体を貪っておきながら、
人間の感情流動を知り尽くしておきながら、
彼女は、力の源泉たる人の意思を理解していなかったのだ。

(#゚;;-゚)「おぉぉぉぁぁぁああああああ――!!」

負けるか。
負けてたまるか。

勝つんだ。
勝たなければ。
絶対に勝ってやる。

もはや軍神の思考は、ただ『勝つ』という意思によって支配されていた。

目の前にいる敵が異獣であることすら忘れ始めている。
今まで異獣を倒すことだけを誓ってきた彼女が、仇敵という理由を放棄したのだ。
その代わりとして入ってきた意思は、たった一つの結果を求めている。

――ただ、ひたすらに勝利を。

自分のため、仲間のため、未来のため、そして誇りのために。



758: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:18:15.42 ID:fmjQj92D0
何が彼女をここまで本気にさせたのか。
それは、背後で未だ意識を失う二人の英雄へ向けられていた。

嫉妬、とは違うし、切望、とも異なる。

少しだけ重ねているのかもしれない。
かつて、自分にも愛する人がいたから。

(#゚;;-゚)「――ぁぁぁあああ!!」

ぶつかるのは、もう何度目だろうか。

三人で挑み、二人で挑み、ブロスティークで挑み、また三人で挑み、そして今は一人で挑んでいる。

まったく情けない。
自分の他に英雄二人を傍に置きながら、これほどまで手こずっている。
それだけミリアが強いのだろうが、だとしても情けない話であった。

だが、無駄ではなかった。

最初は力に圧倒され、次に力を理解し、そして切り札を得て、総攻撃を掛けた。

ル(i|" -゚ノリ「っ……ぉお……!!」

その結果がこれだ。
相手の切り札を引き摺り出し、その上で押している。

軍神は、確実に相手が消耗しているという事実を確信していた。



763: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:20:05.27 ID:fmjQj92D0
残る問題はあと一つ。
どれだけ圧倒しても、それを覆す要素がある限りは勝利など遠い幻想に過ぎない。

――テセラ。

それが一体何なのかすら判明していない謎だらけの武器。
ただ一つ解っているのは、ミリアがこれを切り札として拠り所にしている、という点だ。
逆を言ってしまえば、これさえ何とか無効化してしまえば勝ったも同然となる。
そして軍神は、数え切れない合撃の間に理解した。

ミリアは能力を頼りに戦っている。
だから力を取っ払ってしまえば、あとは簡単だ。

だが、迂闊な無茶は出来ない。
もし自分が倒れてしまえば、次はミルナとヒートが餌食となる。
それだけは絶対に許容出来ない。

求めるは、確実にミリアを殺し尽くす手段。

(#゚;;-゚)(ブロスティーク、って言ったっけ?)

『何だい?』

(#゚;;-゚)(アンタに一つ提案があるんやけど。 OK?)

『それが面白いことなら、OKさ』

(#゚;;-゚)(ん、りょーかい)



769: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:22:30.22 ID:fmjQj92D0
剣撃の合間、軍神は企み事をブロスティークへ告げた。

内側に声を受けた彼女は一瞬だけ絶句し、そして豪快に笑う。
それを肯定と受け取った軍神もまた、心の中で笑った。

『あぁ、最期の持ち主がアンタで良かった。
 その洞察力、決断力、そして覚悟……正直言って敬服するよ。
 散々な人生だったけど捨てたモンじゃないんだねぇ』

(#゚;;-゚)(ウチもこれほどまでに妙な武器と出会えて良かったわぁ。
    本当はもっともっと戦いを共にしたかったけど……これで、終わらせなあかんしね)

表情を軽く緩めた軍神は、いきなりのバックステップでミリアから距離をとる。
どちらかが果てるまで続くかと思っていた彼女は、明らかに不満気な顔を見せた。
しかしまた、軍神の表情を挑発と受け取ったか、狂気に彩られた笑みに戻る。

ル(i|"ー゚ノリ「今度は何を企んだのか知らんが――距離をとる不利を理解しているか?」

(#゚;;-゚)「心配せんでもすぐに行ったるよ。
    そしてこれが最後の一撃になる」

ル(i|"ー゚ノリ「最後、か……くく、貴様も大概に狂っているな。
       ならばやってみるがいい。 少々名残惜しいが、もう充分に遊んだとしよう」

ミリアが、テセラを深く構えた。
カウンターを狙っているのだろう。
遠距離攻撃を使わないのは、己の美学か軍神への驕りか。

もしかしたら、軍神の力を認めての行為かもしれない。



774: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:24:02.65 ID:fmjQj92D0
(#゚;;-゚)(ま、なんでもえぇわ。 これで何も出来ずに死ぬこたぁない)

『だね。 じゃあ、一時の御別れだ』

(#゚;;-゚)(さいなら)

『グッドラック!』

最後の最後までふざけた剣だ。
そう思いながら深く腰を落とした軍神は、一切の笑みと余裕を消してミリアと対峙する。

(#゚;;-゚)(大剣と刀。 速度ならば圧倒的にこちらが不利。
    普通に突っ込んでいけば、まず間違いなくカウンターを喰らって死ぬ)

一息。

(#゚;;-゚)(しかも僅かに盛り上がった斜面の先に奴がいる。 上手く位置を獲られた。
    微小とはいえ、坂は坂。 速度にコンマ数秒の遅れが出るのは当然の帰結。
    見える全ての要素が、こちらの敗北を示唆しとる)

だが、それでいい。
奴には余裕を持っていてもらわねば困る。
こちらの狙いを知られるわけにはいかない。

ル(i|"ー゚ノリ「さぁ――」

(#゚;;-゚)「――勝負!!」

もはや僅かな時間すら与えることは出来なかった。
タイミングも何もない状態で飛び出し、敵の間合い目掛けて疾走した。



776: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:25:18.61 ID:fmjQj92D0
ル(i|"ー゚ノリ「愚か者が――!」

それを初動の失敗と認めたミリアが吼える。
更に腰を深く落とし、向かい来る敵意を一刀両断するため力を込めた。
視線の先、敵があと一歩でこちらの間合いに入るのを視認したミリアは、

(#゚;;-゚)「ふン!!」

ル(i|" -゚ノリ「っ!?」

だがしかし、直前に行なわれた奇行に目を見開くこととなる。

ル(i|" -゚ノリ「ば――」

投げたのだ。
右手に持っていたブロスティークを。
前屈姿勢を溜めとして、上半身を思い切り振り上げる勢いで真上へ。
もはやお前は必要ない、と言うように。

激変は直後だ。

ル(i|;"Д゚ノリ「――っかなぁぁあ!?」

ひゅ、という音をたてながら縦回転する黒剣に目を奪われた隙に
猛然と飛び込んできた軍神のタックルをまともに喰らってしまう。

ただカウンターのためだけに構えていた身体が、その衝撃に耐えられるわけがなかった。



788: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:27:02.54 ID:fmjQj92D0
そのまま背後へ、もつれ合うようにして転がる。
身体と同じく揺さぶられる思考の中、様々な疑問が過ぎっていく。
中でも最も大きな理解不能は、軍神がブロスティークを投げ捨てた行為についてだ。

ル(i|;"Д゚ノリ「ぐっ、あ……き、さまぁ! 一体何の――」

(#゚;;-゚)「マウ〜ントポジショ〜ン♪」

先に体勢を立て直した軍神は、ミリアの腹部に馬乗りとなった。
ミリアの両手首を握り、体重をかけて押さえつける形だ。
当然、手に握られているテセラを振るうことは出来なくなってしまう。

ル(i|;"Д゚ノリ「離せ! このような泥仕合のような中での決着など――っくぁあ!?」

歯を剥いて吼えた口に、硬い感触が痛みと共に落ちてくる。
それが振り下ろされた軍神の頭突きだと気付き、更なる屈辱に怒りを露にする。

ル(i|#"Д゚ノリ「っ貴様ァァァァ!! それでも軍の神か!?」

(#゚;;-゚)「ちゃんと言ったよなぁ!? 勝手なイメージの押し付けはいらんって!」

何とかして抜け出そうともがくミリアを、軍神は全力で押さえつける。
その行為に違和感を覚えたのは、ごく自然なことであった。

ル(i|;" -゚ノリ(何をそんな必死に……両腕が塞がっている以上、攻撃手段など……!?)

訝しげに思った時、俯く軍神の口元に笑みが浮かんでいるのを見る。
まるで自分の思惑が現在進行形で着実に進んでいるのを理解しているかのような。



793: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:28:35.90 ID:fmjQj92D0
何だ。
待て。
おかしい。

三連の疑念が脳に響いた時、ミリアは遂に察知した。


……音が、聞こえる。


この細い音は、今さっき聞いたばかりの――

ル(i|;" -゚ノリ「――っ!!?」

ぞくり、と悪寒のような震えが背筋を走った。
この戦いが始まってから初の経験に、ミリアは戦慄する。

軍神は何故、先ほどブロスティークを捨てるような真似をしたのか。

違う。
前提からして違う。
奴は武器を捨てたんじゃない。

ル(i|;" -゚ノリ(まさか、武器を投げることによって……!?)



798: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:29:34.87 ID:fmjQj92D0
だが、という焦燥が来る。
もし今の予想が事実だとすれば、

ル(i|;"Д゚ノリ「まさか貴様!?」

現状、仰向けとなったミリアに軍神が馬乗りとなっている形だ。
先ほど投げたブロスティークが落ちてくるのならば、
その切っ先は、まず下方を向いていると思って間違いないだろう。

つまり、指し示す真の事実とは――

ル(i|;"Д゚ノリ「自分ごと私を貫くつもりで……!?」

(#゚;;ー゚)「さぁ、一緒に地獄へ逝こか?」

ル(i|;"Д゚ノリ「ふ、ふざけるな!! そんなふざけたことが!!」

離脱しようと身を捻るが、がっちりと腰を両足で挟み込まれて動くことすら出来ない。
両腕は既に封じられ、頼みの綱のテセラを振るうことも出来ない。
足は比較的自由となっているが、どう動かしたところで何の効果も得られない。

ル(i|;"Д゚ノリ「ならば……!」

振るうことの出来ないテセラだが、それでも念じれば能力は作動する。
周囲に散っていた刀が宙に浮かび、軍神目掛けて飛翔した。



806: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:31:45.53 ID:fmjQj92D0
(# ;;- )「――っぐぅぅ!!」

散る鮮血。
右の太腿を抉るようにして刺さった刃が血に染まる。

(# ;;- )「っぁああ!!」

更にもう一撃が入った。
今度は左脇腹だ。

(# ;;- )「っ!! っぐぁ! かぁああ!」

集まってくる刃が連続して軍神の身体へ突き刺さっていく。
激痛に呻き声を上げる彼女だが、それでも両腕を封じる力を緩めない。

(# ;;- )「――はぁ! はぁ! っづぅ……あぁあぁああ!!」

ル(i|;"Д゚ノリ「何故だ、何故……!? 死ねよ! お前はもう死んでいるはずだろう!?」

致命傷のはずだ。
身体の節々を貫かれ、内蔵を串刺しにされ、神経はずたずたに引き裂かれているはず。
出血は半端な量ではなく、普通の人間ならば意識を失って当然の状態だ。


――だが、両手首を掴む力が、緩むことはない。



814: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:32:52.49 ID:fmjQj92D0
(# ;;- )「――っづ、はぁああ……!」

薄く開いた口から粘る血が滴る。
それが頬に落ちた時、ミリアはどうしようもない恐怖を覚えた。

ル(i|;"Д゚ノリ「馬鹿な!? 馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!!」

もがき、暴れるが逃げられない。

――音が来る。

ル(i|;"Д゚ノリ「こんな結果はあり得ない!! おかしい! 狂っている!!」

(# ;;- )(馬鹿、やなぁ……)

ほとんどの感覚が失せている中、軍神は微かに聞いたミリアの声に苦笑する。
まだ来ていない『結果』という言葉を口にする時点で間違っているのだ。
有能かつ優秀であるが故の判断の早さなのだろうが、だから正しいとは一概には言えない。

過程こそが大切だ、とは言わない。
ただ、過程を軽視する者は結果に泣くことがある。

誰かが言っていた。
負けを認めなければ負けじゃない、と。
例え死んだとしても、負けを認めなければ負けじゃないんだ、と。

身体は既にボロボロだ。
大半の機能を失ってしまっている。

けれど、この胸の奥に滾る熱は決して屈してなどいない。



819: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:34:31.28 ID:fmjQj92D0
ル(i|;"Д゚ノリ「退け! 退くんだ! 私がこんなところで死ぬわけが!!
        こんなふざけた決着のあり方など認めるものかぁあああああ!!!」

靄が掛かった視界、恐怖の色を浮かべたミリアの顔を見る。
あれだけ余裕を見せていた時とは逆の表情は、滑稽そのものであった。

(# ;;- )(ざまぁみろ。 人を嘗めとるからこんなことになるんや)

――音が近付いてくる。

段々と、目だけでなく耳の機能も失われていった。
身体は既に冷え切って、しかし胸の奥にある炎だけは最期まで絶やすものかと心に誓う。

ル(i|;"Д゚ノリ「――!! ――――!」

(# ;;- )(誰が退くかい……ウチを誰やと思うとる……?)


そう、私は


(#゚;;-゚)「軍神や――!!」


直後、一際大きな衝撃が二人を貫いた。



827: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:35:49.68 ID:fmjQj92D0
ル(i|; Дノリ「が、ああぁぁあ――ああぁぁぁぁあああ……!」

天から落ちてきたブロスティークが
軍神の背中、そして組み伏せられているミリアの腹をブチ抜いたのだ。
強力な魔力の奔流が身体の中を駆け回り、二人を内部から蹂躙していく。

ル(i|; Дノリ「そん、な……わたしが……あぁ……!!」

(# ;;- )「――――」

ル(i|; Дノリ「このような、半分死んだ奴……など、に――」

(# ;;- )「――――」

ル(i|; Дノリ「あぁ、ああああああ……あぁぁあああああ――――!」

今際の際まで醜く諦めきれなかったミリア。
その妄執を抑えつけながら敵諸共果てた軍神。

誰の記憶にも残らない決着が確定され――



――そして南の戦場に、動く者が、いなくなった。



843: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:38:04.58 ID:fmjQj92D0
だれもいないせかい。
なにもないくうかん。

そんなばしょにとじこめられてから、いったいどれだけのときがたったのだろうか。

ζ(  *ζ「――――」

もう、うごくことすらおっくうだった。
しばりつけられたそんざいは、ただろうごくのなかでくちはてるのみか。

なにもきこえない。
なにもみえない。
だれもいない。

   、_
@#  )@「ったく、なーにやってんだい、アンタ」


ζ(  *ζ「――――」


あれ?
きいたことのあるこえが、きこえたよ?

   、_
@#  )@「やれやれ。 昔の気丈さはどこにいったんだい、テセラ――いや、デレ」



863: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:41:51.60 ID:fmjQj92D0
ζ(  *ζ「――誰?」

わかっている。
このこえ、くちょう。
にくたらしいくらいキライなやつのこえだ。
   、_
@#  )@「あたしを忘れたっていうのかい?
      あれほど一緒に戦った間柄だっていうのに」

しってるよ。
あんたはつよいんだ。
ぼうりょくてきで、ほこりたかくて、でもやさしくて。
   、_
@#  )@「……まぁいいや。 迎えに来た。
      とりあえず、こんな辛気臭い部屋から出よう」

ζ(  *ζ「?」

あれ?
いままでしばっていたなにかがきえてる。
   、_
@#  )@「安心しな。 アンタをコキ使ってた小娘は死んだよ」

そうなの。



869: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:44:43.19 ID:fmjQj92D0
だったら、いわなくちゃ。

ζ(  *ζ「……お礼」
   、_
@#  )@「そりゃあ無理な話さ。 もうそいつも、どこにもいないからねぇ」

なんか、かなしそう。
いいきみだ。
   、_
@#  )@「はいはい。 とにかく行くよ」

ζ(  *ζ「どこへ?」
   、_
@#  )@「さぁねぇ……どこかねぇ。 天国だったらいいねぇ」

ζ(  *ζ「お姉ちゃん、いるかな?」
   、_
@#  )@「いるんじゃないかい? 良い子だったらね」

ζ(  *ζ「じゃあ、クレティウスは?」
   、_
@#  )@「うーん……それがねぇ、さっきアイツの匂いがしたんだけどさ。
      まさか今も生きてるわけないし……」

ζ(  *ζ「じゃあ、地獄かな?」
   、_
@#  )@「かもしれないねぇ」



879: ◆BYUt189CYA :2008/03/28(金) 22:46:24.15 ID:fmjQj92D0
ζ(  *ζ「行こう。 もう疲れた」
   、_
@#  )@「はいはい。 解った解った」



とびらがひらく。


ひかりがはいってくる。


かぜがここちいい。




そして、へやにはだれもいなくなった。


いつも、どこにも、だれも、いなく、なった。



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