( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

178: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:29:05.45 ID:pd2Of4e00
異常は視界だけに留まらない。
音が歪み、四肢の感覚が失せ、代わりとして痛みが来る。

外側ではなく内側から――湧き出るように、貪られるように、滲み出るように。

川; - )「がっぁ……ッ!?」

<;ヽ`∀´>「ぐっ、これは――!!」

(; ω )「げほっ、おぇっ……!? な、なんだ……お……?」

クーが膝を折り、ヘリカルが力無く倒れた。
あの屈強な精神を持つニダーですら、身体の内から出てきた痛みに顔をしかめている。
突然のことに頭が混乱しながら、ブーンは視界が歪んでいくのを感じていた。

『内藤ホライゾンの体内に有害物質……!?
 これは、まさか――』

〈/i(iφ-゚ノii「馬鹿――野郎! なにまともに――受けてンだよ――!」

<;ヽ ∀ >「毒、ニカ……!?」

〈/i(iφ-゚ノii「変幻自在だと――言っただろうが――!!」

しかし、今のは未来予知くらいのことをしていなければ回避出来なかっただろう。
そういう言い訳が頭に浮かぶも、霞む意識と痛みが先行して口から出ない。
代わりに出たのは、粘着性を持った血液だった。



181: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:30:52.86 ID:pd2Of4e00
(; ω )(力が……あ、あれ……声も……?)

『ただの毒では……これはウイルスの一種か……!?』

クレティウスの声に、危険だ、と思うことすら既に出来ずにいた。

気付けば視点が随分と下がっている。
いや、いつの間にか身体が倒れてしまっていたのだ。
微かに動く目で見てみれば、既に他の三人も地に伏せてしまっている。

そうして意識も感覚も消えていく中、ブーンはある色を見る。


血のような赤色だ。
赤い空の中、それすら超える強い赤が、微かに見えた。


〈/i(iφ-゚ノii「――?」

こちらを睥睨していたロマネスクが、何かに気付いたかのように視線を上げる。
同時、その赤色が大きくなる。

いや、違う。
あれは大きくなるのではない。
落ちてきているから、そう見えるのだ。

直後、轟音が響いた。
衝撃は地を貫通し、その上に乗るブーン達を大きく揺さぶる。

空からいきなり落ちてきたそれは、全身を鋼鉄の装甲で包んでいる巨人だった。



188: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:32:39.22 ID:pd2Of4e00
『――ただいま参上にございまする』

淡々とした声に覚えがあった。
魔法世界に所属している不思議な雰囲気を持つ少女、シューだ。
西の戦場で雑魚を片付けていたはずの少女が、何故ここにいるのだろう。

〈/i(iφ-゚ノii「EMA――目の前で見るのは――初めてだな」

ロマネスクが右腕を振るう。
すると周囲に散っていた黒の霧が集束し、ガントレットへ吸い込まれていった。
それはブーン達の体内にあるものも例外ではなく、それぞれの身体から微かに黒色が抜けていく。

川;゚ -゚)「くっ、うぅ……身体の中を引っ掻き回された気分だ……」

(;^ω^)「ど、毒が抜けたのかお……?」

<;ヽ`∀´>「どうやらあのEMAを警戒して、能力を中断したみたいニダ……」

赤き騎士にも見える全長七メートルの巨人は、こちらに背を向けて構えている。

形状が多少異なる二本の刀を軽く下げ、背部ブースターは低い唸り声をあげていた。
リラックスしているような格好だが、おそらくすぐに飛び出せるような構えなのだろう。

『む? よく解らないけれどピンチ脱出?』

*(;‘‘)*「……みたいですね。 感謝しときます」

身体の調子を確かめるように肩を回すヘリカルが言い、ニダーが頷いた。



197: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:34:39.24 ID:pd2Of4e00
『良かった。 けど気にしないでいい。
 補給に戻る途中で寄ってみただけだから。 でも――』

川;゚ -゚)「あぁ……悔しいが、このまま放っておかれるのは厳しい」

毒が抜けたからといって、すぐに動けるわけではなかった。
まだ身体の感覚が戻ってきていない。
このままでは、本格的な戦闘は不可能だ。

『解った。 じゃあ、少し時間を稼ぐ』

(;^ω^)「で、でも、補給が必要だって――」

『大丈夫。 まだ十分くらい持つから』

赤きEMA――ウルグルフが機動の音を奏でながら、右足を踏み出した。
右手の刃を真正面、縦に構え、左手の刃を半身で隠すように軽く背後へ向ける。
威嚇するように深く腰を落とした構えは、ロマネスクの興味を煽るのに充分な効果を持っていた。

lw´‐ _‐ノv(さて……お?)

コクピット内のシューがモニターを見る。
いくつかあるものの一つ、機体のステータスを表示する画面を見る。

損傷部、システム、動力等の様々な情報が並べられている中、
この機体に残されている魔力残量を再びチェックした。



199: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:36:36.88 ID:pd2Of4e00
今さっき『十分くらい』と言ったわけだが、残量から計算すれば事実である。
だが、それは戦闘しなければ、という条件がつくことをスッカリ忘れてしまっていた。

激しい戦闘挙動を連続させることを考えれば、予測時間は半分にまで減るだろう。

lw´‐ _‐ノv「……まぁいいか」

彼女にとっては、さほど問題ではないらしい。
いざとなれば機体を捨てて戦うことも出来る、という考えがあった。

EMAパイロットの前に、シューは剣士であった。
魔法世界では主を護るための護衛を務めるほどだ。
その主が今の今まで生きていることから、シューの実力が高いことが伺える。

lw´‐ _‐ノv「ここからは私が相手をしよう。
       そこで転がってる人達よりは楽しませる自信、あるよ?」

思い直したシューは、正面モニターに映る敵の姿を見た。
棒立ちしている格好で隙だらけだが、迂闊に踏み込めない何かがあった。

lw´‐ _‐ノv(でも)

駄目だ。
このまま敵の出方を待つのでは駄目だ。
勝利とは来るモノではなく、得に行った先にあるモノなのだから。

過去、それを教えてくれた人がいた。



202: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:37:57.25 ID:pd2Of4e00
lw´‐ _‐ノv「師匠……アナタには感謝をしている。
       戦う術を教えてくれて、生死のやり取りという空気を吸わせてくれて。
       そして、幼い私をつまらない世界から助けてくれた」

恩を返したいが、ほとんど不可能だった。
師匠と呼んだ『誰か』は既にどこにもいないのだろう。
これは後で知ったことだが、師匠は世界を渡る渡り鳥のような人だったのだ。

今思えば本当に存在していたのかすら怪しい人だったが――

lw´‐ _‐ノv(あの人から学んだことは、全てこの身に染みている……!)

だから何も心配はいらない。
学んだことを活かし続けるのが、自分の使命だ。

ロマネスクが跳躍し、それに逸早く反応しながらシューは思う。


――だから、いつか、貴女のように――



204: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:39:18.11 ID:pd2Of4e00
二つの武器がぶつかり合った。

片方は巨大な刀で、もう片方はガントレットだ。
高威力を誇る両者は互いを破壊するため、衝突という名の咆哮を放つ。

lw´‐ _‐ノv「ふぅっ……!」

たとえロマネスクの力が強大であろうとも、この質量差だ。
全力で押せば弾き返すことなど容易い。
生まれた隙を突くために左手の刀を振るのも、また容易い。

だから、行く。

後方へ軽く突き飛ばされたロマネスク目掛け、もう一本の刀をブチ込んだ。
唐竹の軌道で落ちる刃は、もはや刃ではなく一つの巨大質量物質だ。
斬るというよりも押し潰す勢いで、それは叩き落される。

大地が砕けた。
抵抗出来なかった土や砂が飛び上がり、一瞬遅れて土煙が舞う。

lw´‐ _‐ノv「む……」

手応えはなかった。
地面を叩き割った感触しかない。
ロマネスクごと斬ったのか、それとも避けられたのか。

考えるまでもない。
シューの嗅覚が何かを捉える。

漠然とした予感を頼りに、右手に構えた刀剣を横薙ぎに振るった。



205: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:40:22.50 ID:pd2Of4e00
何かに当たる感触がある。
見れば、振るった先にロマネスクがいた。
ガントレットを胸の前に構え、激突した刃を受け止めている。
だが、受けた場所が悪かった。

空中。

おそらくこちらを攻撃しようとして跳躍していたのだろう。
それが、EMAにとって好ましい動きであることを知らずに。

全長七メートルの巨人と、普通の人間が戦えばこうなるのは当然だ。
重要な機器が集中しているであろうEMAの胴体を狙うには、跳んで攻撃するしかない。
そしてシューの行なった薙ぎ払いは、高さの関係から地面付近を狙うことが難しい。

だから、この構図はある意味で必然だった。

地面がない空中は足腰の踏ん張りがまともに利かない。
シューは当然のように、一切の迷いなく刀を振り抜いた。

〈/i(iφ-゚ノii「――っ!」

抵抗の術がないロマネスクは地面に叩きつけられる。
その折、ぱっ、と砂煙が舞い、その周囲を隠してしまった。



207: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:42:01.41 ID:pd2Of4e00
lw´‐ _‐ノv「追撃ボーナス……更に倍率×3!」

だが、敵に容赦するなかれ。
そんな言葉を体現するかのように、シューはすぐさま動いた。
ここで踏ん反り返って動きを待つのは三流以下のすることだ。

ロマネスクがいるであろう位置に、左手の刀を突き出す。

硬い震動が僅かにコクピットを揺らした。
刃先が地面に刺さった感触だろう。
当然、その上にいたロマネスクに接触しているはずなのだが、

……逸らされた?

何度もEMAに乗って戦わなければ、気付くことの出来ない微細な違和感。
加えて剣の扱いに長ける彼女ならではの感覚が、それを感知した。

lw´‐ _‐ノv「ッ!!」

即座に反応する。
考えるよりも先に、身体が動いた。
左右のレバーを引き、ペダルを軽く踏み込む。
体重を背中の方へ傾ければ、流れるように機体が後ろへ動く。

だが、それを追う動作があった。

〈/i(iφ-゚ノii「良い判断だ……!」



210: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:43:52.82 ID:pd2Of4e00
煙を突き破り、黒い蛇のような何かが飛び出してくる。
EMAにしてみれば一本の紐のような儚さだが、それは力強い躍動を経て右脚部に取りつく。
踝から脛、膝と巻き上がり、遂には右足の太腿部分を掌握されたシューは、その状況を一言で表現した。

lw´‐ _‐ノv「いやんえっち」

〈/i(iφ-゚ノii「……随分と――余裕だな」

振り払おうと右足を振るが離れない。
ロマネスク本体を引っ張ろうとしても、伸縮する黒線はそれを許さなかった。

lw´‐ _‐ノv「妖怪触手痴漢(粘着Ver)……!」

ただの黒いロープではないことを悟ったシューは、刀を切り裂くように突き立てるが
流石に粒子で構成されている物質を断つことは出来なかった。
一瞬だけバラバラになるものの、すぐさま配列を為して元に戻ってしまう。

逃げられない。

空へ飛ぶことも考えたが、機体の魔力残量が心許無い領域まできてしまっている。
フルパワーでの稼働は良くて一分ほどが限界で、その間に何とかすることが出来るとは思えなかった。

lw´‐ _‐ノv「むぅ……このままでは動けなくなる上、(ピー)で(ピー)されて(ピー)まで……!」

機体動作の限界が近い事を知らせる警告音の中、シューは判断する。
逃げることは出来ず、待っていてはやられるだけ。

lw´‐ _‐ノv「なら、前へ出て敵を倒す」



212: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:45:31.24 ID:pd2Of4e00
それしかない、というか、それが一番堅実だった。

敵がいるから守らねばならない。
逆を言えば、敵さえ倒してしまえば守る必要はなくなる。

決断すれば行動は早かった。
元より迷いが薄いシューは、余計な雑念は考えずに身体を動かす。

理屈は同じだ。
黒い粒子があるから危険だというのならば、それを操るロマネスクを何とかすればいい。
少なくともここで諦めたり、無駄にもがくよりもマシなはずだ。

〈/i(iφ-゚ノii「はッ――こいつ――何つークソ度胸だ――!」

赤い巨人がこちらに向かってくるのを見ながら、ロマネスクは思わず呟いた。
驚きの感情は、シューの行動に起因している。

……普通なら無様にもがくところを、速攻で切り替えやがった。

行動の一つ一つに迷いも後悔も感じられない。
自分のやっていることに対し、微塵の不安も持っていないのだろう。
これをクソ度胸と呼ばず何と呼べば良いのか。

だが、このままタダでやられるほど、自分の身体は御人好しではないらしい。
自分の意志では制御出来ない右腕が動き、黒の粒子を操り始める。



215: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:46:34.52 ID:pd2Of4e00
lw´‐ _‐ノv「無駄。 私の方が速いよ」

あぁ、そうだな。
だがくれぐれも侮るなよ。

声も出せぬ一瞬の合間にロマネスクは思う。


――お前が思っている以上に、『俺』は手強いようだ。


瞬間、激突した。
元から持つ重量に、疾走の勢いが加わった衝撃は凄絶の一言だ。
たとえ大地に根を張る巨木でも、この衝突を受けては根こそぎ果てるというもの。

しかし。

lw´‐ _‐ノv「ッ!?」

シューの、息を詰める声。
そして一際大きな高音と、快音。
合計三つの音が場に響き渡った。

一つ目の音は、予想外の感触に対するシューの戸惑いの声だ。
二つ目の音は、ぶつけた刀が真ん中から折れた音だ。
三つ目の音は、折れた刀が地面に落ちた音だ。

つんのめって姿勢を崩したEMAが、すべてを物語っている。
ぶつかり合った際、ロマネスクの右腕に出現した黒刃が、EMAの刀身を真っ二つに切り裂いたのだ。



218: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:47:55.61 ID:pd2Of4e00
lw´‐ _‐ノv「そ、んな……」

これには流石のシューも困惑の色を隠せなかった。
剣技に自信があったが故に、その衝撃は人一倍である。
しかもEMAとただの人間の戦いで、だ。

いや、ただの人間という表現には誤りがあったか。

あれは人間に似て非なる獣の最果て。
人と比べるに易く、しかし比べれば絶望的な差がある生物だ。
自分達が勝手に定めた常識の範疇を超えているのならば、自分達が勝手に思う結果を覆すのは当然で。

つまりこの結果も、ある意味で必然だったのかもしれない。

そう思うことが出来たのは、シューならではの思考回路故だった。
だからなのか、モニターに映った光景に反応することが出来た。

lw´‐ _‐ノv「!」

黒い刃を右腕から生やしたロマネスクが来る。
思考を妨げる咄嗟の出来事にも関わらず、シューは即座に対応した。
体重を思いきり後ろへ預け、機体を下がらせたのだ。

防御する、という選択肢は捨てている。

ウルグルフの刀さえ両断するというのならば、その切断力は圧倒的なものだろう。
万が一懐に入られ、アレでコクピットでも突き刺されたらアウトだ。
コクピット周りの装甲は厚く作られているが、とても楽観的になることなど出来ない。



220: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:49:02.12 ID:pd2Of4e00
一瞬の油断が死を呼ぶ局面の中、一層大きな警告音が耳に飛び込んできた。
EMAを動かす魔力残量が底を尽いたことを示すものだ。
少しでも長く行動するため、モニターが明度などのレベルを落としていく。

lw´‐ _‐ノv(残すところ多く見積もっても十秒……一撃を繰り出すには充分……!)

やはり逃げるのは駄目だ。
自分には不退転が性に合う。

完全に追い詰められたことによって、シューの感覚は最大限に研ぎ澄まされた。

レバーを操作し、体重を前へ。
下がっていた景色が急停止。
直後、逆再生するように前進を開始した。

ロマネスクが来る。
跳躍の姿勢や高度から見て、やはりコクピットを串刺しにするつもりらしい。

ならば、良し。

自分目掛けて来る死の刃を睨みながらも、シューは突進を止めなかった。

lw´‐ _‐ノv「――おぉっ!!」

緊張と興奮からか、自然と強い声が発せられた。
次の瞬間、シューは最後の賭けに出る。



223: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:50:21.13 ID:pd2Of4e00
〈/i(iφ-゚ノii「!?」

跳躍した視界の中、ロマネスクはハッキリと見た。
目指している胸部――コクピットがある――部分が

……開いた?

咄嗟のことにロマネスクの思考が凍った。
それは傀儡と化している彼の身体も同様で、僅かな間だけ動作が止まる。

lw´‐ _‐ノv「――!」

彼我相対距離は残すところ十メートルも無い。
だというのに、開いたコクピットの中からシューが飛び出してきた。

ロックするための突起部分を蹴り飛ばした格好は、ロマネスクを目指している。

腰には一振りの刀――彼女が有するEWがあった。
そのことから解る事実は、たった一つだ。

〈/i(iφ-゚ノii(コイツ、機体を捨てやがった!?)



224: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:51:24.54 ID:pd2Of4e00
馬鹿か、と思う。

人間一人とEMA一機。
どちらが戦力として優秀かなど比べるまでもない。
整備の手間はあるが、EMAの方があらゆる意味で強力なのは当然である。

だが、シューは機体を捨てた。
何か理由があるのか、それとも考えがあるのか。

どちらにせよ、一人の人間として今のロマネスクに挑むなど愚行でしかない。

〈/i(iφ-゚ノii(自暴自棄ってヤツかよ……! これだからガキは!
       簡単に命を捨てるような真似をしてどうすんだ!)

悪態を心の中で吐いた時。

lw´‐ _‐ノv「おぉっ……!」

〈/i(iφ-゚ノii(! あの目――)

ロマネスクは気付く。
シューの目が、まったく死んでいないことに。
むしろ活き活きとした瞳に、彼はどうしようもなく懐かしい感覚を抱いた。

そう、あれは確か――



226: ◆BYUt189CYA :2008/04/21(月) 22:53:00.68 ID:pd2Of4e00
『――はぁ? コイツを拘束するだぁ? ふざけンのも大概にしろよロマネスク』

『当然の話だろう。 この男――ラミュタスとか言ったか。
 コイツは勝手に、俺達の先祖が作ってやった楽園から出てきやがったんだ。
 しかも戦闘機なんぞを独自に……こりゃあ、調べ尽くして口封じが妥当だろ』

『おい、馬鹿言ってンじゃねーよ』

『じゃあ、何だ?』

『コイツは外の世界へ出ることを望んで空を飛んだんだ。
 自分の意思で飛び、テメェらの作った楽園とやらから脱出したんだよ。
 それを認めるこたぁあっても、処理に困るから蓋をするっつーのが納得出来ねぇ』

『お前の納得など要らんだろうが』

『まぁ……確かにな。 所詮、私はこの世界の人間じゃねぇ。
 だが、ラミュタス本人の意思は尊重すべきじゃねーの?
 何度も言うが、コイツは望んでここまで来たんだぜ?』

『……俺は』

『気にすンな。 言えよ、ラミュタス。 己の意志を。
 お前は何もかもを捨てて自分の世界から飛び出したんだ。
 それを止める権利を持つヤツなんていねぇ。 もしいたら私が黙らせてやる』

『俺は……知りたい。 この荒れ果てた世界に何があったのか。
 そして何故、俺達をあんな箱庭に閉じ込めてしまったのか。
 だから、俺は――』



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