( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 102: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:40:09.38 ID:iFGjxXYh0
- 後は、同じことの繰り返しだった。
それぞれのミラーと球体を行き来する紫電は、さながら身をくねらせる龍のようだ。
だが決定的に異なるのは、その反射の度に電流が力強くなっていく点だ。
特殊電磁反射率の理論を元にした仕掛けは成功しているらしい。
反射すればするほど、その密度が濃くなっていく。
その度、鳴り響く雷鳴のような音も大きくなっていく。
「いけ……!」
誰かが、強く呟いた。
「いけよ! そんなクソふざけた拒絶壁なんか、ぶっ壊しちまえ……!!」
応じるように一際強烈な光が生み出された。
連続反射によって編み上げられた高密度の紫電が、全て元の灰色球体へ戻っていく。
最初に放ったものよりも強い閃光を放つそれは、直下にあるバリアに向かって――
――その莫大なエネルギーを爆発させた。
狙った範囲だけに大破壊をもたらす『神の裁き』が、発動する。
- 105: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:41:34.90 ID:iFGjxXYh0
- そこから先、どうなったのかは解らない。
強烈な光と風のせいで誰もが爆心地を直視することが出来ないのだ。
ただ解ったのは、地面が大きく揺れていることだけだった。
そんな大衝撃が終わりを告げたのは、爆発から実に八十秒後であった。
「ぐ、ぅぅ……?」
「けほっ……ど、どうなったの……?」
「あー耳痛ぇ」
「やべ、誰か俺の剣知らない? どっか飛ばされた」
口々に感想を漏らしながら立ち上がるのは、地面に伏せていた兵達だ。
突然のことに装備を吹き飛ばされた者が少数いる以外は、特に目立った被害はない。
*(;‘‘)*「っ……なんつーアホみたいな爆撃ですか……!
死ぬかと! 死ぬかと!!」
<;ヽ`∀´>「現状を確認するニダ! 他の隊とも連絡をとるニダ!」
川;゚ -゚)「な、内藤は――!?」
背後を見る。
御存知の通り、ブーンは医療テントの中で横になっていたはずだ。
だが、あの突風と衝撃を受けたテントは吹っ飛んでしまっている。
- 113: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:44:06.52 ID:iFGjxXYh0
- 川;゚ -゚)(まさか……)
一緒に吹っ飛んで行ってしまったのだろうか。
嫌な予感が脳裏を過ぎり、探し出そうと足を踏み出しかけた時。
軽く混乱している皆の中、ふにゃふにゃしたモノがこちらに近付いてきていた。
(;´ω`)「し、死ぬかと思ったお……」
川;゚ -゚)「内藤! 無事だったか!」
(;´ω`)「いきなりテントが消えた時はどうしようかと……。
床までくっついてるタイプじゃなくて良かったお」
『勢い余って十メートルほど転がったが。 危なかった』
川;゚ -゚)「君の強運には時々驚かされるな……」
( ^ω^)「とにかく僕は大丈夫だお。 ところで今の爆発みたいなのって――」
川 ゚ -゚)「あぁ、『神の裁き』だ。 先ほど起動してな。
結果はまだ解らん」
爆心地となる結界は、舞い上がった多量の砂煙に覆われて見えない。
視界の利かない中を下手に突っ込むわけにもいかず、全軍が最大警戒の構えで見守っている状況だ。
- 119: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:45:39.12 ID:iFGjxXYh0
- ( ^ω^)「あの先に僕らが倒すべき元凶がいるのかお……」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだ。
そして、何が出てこようとも絶対に負けられない」
『…………』
<ヽ`∀´>「…………」
*(‘‘)*「…………」
いつしか、それぞれの隊から音や声が無くなっていた。
他方角の軍も同様らしい。
今、ニダーの隣で最後の通信が切られた。
彼らの意志は統一されていた。
結界の破壊が確認され次第、中枢に突入する、と。
「「――――」」
これぞまさに『嵐の前の静けさ』か。
段々と晴れていく煙がひどく焦れったい。
全員が緊張に表情を硬くしている。
特に最前線にいる者は、いつあの煙の向こうから敵が来るか解らないため
いつでも飛び出せるように腰を低く構えていた。
- 125: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:47:15.67 ID:iFGjxXYh0
- 十秒が経つ。
二十七秒が経つ。
そして、一分と四十三秒が経過した時。
「!? お、おい! あれを見ろ!」
最前線にいた兵の一人が煙の隙間から事実を見る。
周囲にいた者もそれを認め、そして驚きに目を見開いた。
そうしている間にも煙が晴れていき、結果を目に焼き付けていく。
ざわ、というどよめきが、前方から波として順次走っていった。
*(;‘‘)*「!!」
<;ヽ`∀´>「っ……」
そして、遂にクー達も見ることとなる。
(;^ω^)「あれは……そんな……!!」
赤色だった。
煙が消え、その先に現れたのは紅蓮の壁である。
そしてその結果が示す真実とは
川;゚ -゚)「――馬鹿な!? 失敗だと!?」
そびえ立つ壁は、つまり結界である。
『神の裁き』の直撃を受けて尚、その形を保っていたのだ。
- 128: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:49:22.03 ID:iFGjxXYh0
- 破壊されているのは上部だけだった。
半円形状の上三分の一ほどが割れ砕けている以外、特に目立った損傷は見受けられない。
これは、地上から攻め入ることしか出来ない四軍にとって致命的な状況だった。
<;ヽ`∀´>「他に入れそうな場所はないニカ!?」
「ど、どの軍も侵攻口を見つけられないようです!」
川;゚ -゚)「ここまできて……!? そんな馬鹿な!」
残りを破壊しようにも、あの結界の魔力密度を考えるにこちらの攻撃が通じるとは考え難い。
加えてその後に一番重要な戦いが控えている以上、ここで力の消耗は抑えたいところなのだが――
「――ッ!? 待て、あれを!」
誰かが空を指差した。
正確には、『神の裁き』で破壊された部分だ。
戦闘機やヘリでしか侵入出来ないような穴に、変化があった。
(;^ω^)「修復してる、のかお……!?」
砕け、ギザギザの切り口を見せている結界に蠢きが多数。
それは揺らぎを見せながら、徐々に赤い面積を増やしていた。
- 133: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:50:32.35 ID:iFGjxXYh0
- *(;‘‘)*「ま、まずくないですか!?
このまま時間が経てば元通りになってしまいますよ!」
『神の裁き』は一つしか用意出来ていない。
この世界の純正ルイルの魔力をつぎ込んだ、一度限りの兵器である。
つまりこの機を逃がせば、ブーン達に勝ち目がなくなってしまうということだ。
川;゚ -゚)「もはや悠長に考えている暇はない……!
出来るか解らんが、私達で残りの結界を破壊する!!」
焦燥も露わにクーが命令し、全員がそれに従う。
遠距離攻撃を可能とする兵が各々の武器を構え、今も修復していく結界へ銃口を向けた。
間髪入れずに発砲。
だが、巨大な壁と化す結界に対し、こちらの攻撃はあまりに小さ過ぎた。
銃声と砲声の中、彼らの顔には焦りが浮かぶ。
おそらく他の軍も同じだろう。
『おい、これが効かなかったらどうするつもりだ』
川;゚ -゚)「それは……」
東軍のギコの声にクーは言いよどむ。
認めたくないが、それがこちらの敗北の瞬間だろう。
手出し出来ない以上、敵を倒す術はこちらにはないのだから。
- 139: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:51:44.06 ID:iFGjxXYh0
- 『何か他に手はないのか!
「神の裁き」と同等の、いや、もっと強力な攻撃が……!』
(;^ω^)「そ、そうだお! まだこっちには『龍砲』があるお!」
南軍のミルナに応えるように、ブーンが言った。
『龍砲』とは、魔法世界の純正ルイルを組み込んで作り上げた巨砲のことだ。
結界を破壊した後に現れるであろう『何か』を破壊するための、最後の切り札である。
今は本陣にて発射の用意が進められているはず。
本来の用途とは異なるが、あれを使えば――
『――だが、不安要素が大き過ぎる』
そこで、兄者の声が割り込んだ。
『「龍砲」を使えば結界を破壊することが出来るかもしれない。 しかし確実とは言えんぞ。
それに運良く壊すことが出来たとして、その後はどうするつもりだ?』
異獣があれだけ頑なに守ろうとしていた中枢だ。
そこに、今まで以上に強力な敵が鎮座していてもなんら不思議ではない。
そういった最大の危機を打ち砕くのが、『龍砲』に与えられた役目なのだ。
兄者の言葉は正しい。
だからこそ、全員が逡巡した。
- 145: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:53:30.61 ID:iFGjxXYh0
- 『……モララーはどうなっている?
アイツなら何とかすることが出来るかもしれん。 ひどく気に入らんが』
『残念ながら今は話せる状態にないらしいぞ、ギコさん』
『何……? 怪我でもしたのか?
まったく肝心な時に何を油断している、アイツは』
つまり、今いるメンバーだけで決断しなければならないというわけだ。
少々心許無い気もするが、贅沢など言っていられない。
川;゚ -゚)(どうする……どうすればいい……?
今ここで切り札を消費して、後の危機を私達だけで何とかするのか。
それとも後のことを考え、ここは私達の力のみで切り抜けるべきか)
どちらにも全滅の危険性が付きまとっている。
あの結界を破壊しなければこちらに勝利はないだろうし
『龍砲』を使って破壊しても、その中身に負けてしまえば意味がない。
危機が先か後かの違いだ。
どちらにも大きなデメリットがある以上、安易な判断をしてはならないと思う。
だが、そうしている間にも結界は修復されているのだ。
- 153: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:55:13.98 ID:iFGjxXYh0
- 砲射撃の先を見る。
数々の光が散っているが、結界にダメージを与えているとは言い難い。
このままでは修復速度の勝っている結界が元の強固な壁へ戻ってしまう。
*(;‘‘)*「急遽決断を要する……ってやつですね」
そしてそれが重要だからこそ、迷う。
<;ヽ`∀´>「……時間がないニダ」
川;゚ -゚)「くっ……」
(;^ω^)「…………」
川;゚ -゚)(時間が無い……どっちつかずになるのが一番危険か……!)
元の形を取り戻しつつある結界を見て判断する。
今の自分達の力では結界をこじ開けることは出来ないだろう、と。
だからクーは、今ある要素を最大限に発揮することが出来る選択肢を選んだ。
川;゚ -゚)「――『龍砲』を使う! 兎にも角にも結界を壊さねば話にならん!」
- 161: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:57:15.03 ID:iFGjxXYh0
- <#ヽ`∀´>「了解したニダ!」
『よし、本陣への連絡と段取りは俺に任せろ。 北軍は射線を開けてくれ』
川 ゚ -゚)「解った……頼むぞ、兄者」
皆はすぐさま応じた。
どちらが正解かなど解らない。
ただ、クーの選択を信じて動くだけだ。
それでもクーは落ち着く素振りすら見せることが出来ずにいた。
隣にいるブーンに向き直り、しかし自分に言い訳するように言葉を吐いていく。
川 ゚ -゚)「……現状での切り札の消費が正しいのかは解らない。
だが、こんなところで進路を閉ざされるわけにもいかないんだ」
( ^ω^)「解ってるお。 僕も、皆も」
しかしそれでも不安は拭えない。
この選択は、結界を破壊した先にあるモノを自分達だけで何とかする必要がある、ということだ。
川;゚ -゚)(もし今まで以上に強力な敵が出てきた場合……私達は対抗出来るのか……?)
聞けば四方の戦いでの損害も少なくないらしい。
事実、どの部隊が壊滅しただとか、誰某が戦死しただとかいう情報も交錯している。
ただし軽い混乱が起きているため後で真偽を確認しなければならないが、被害は少なくない、とクーは見ていた。
現戦力は、最低でも初期の三分の二以下と判断していい。
- 164: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 21:59:08.69 ID:iFGjxXYh0
- 川;゚ -゚)(私の選択は、果たして正しいのか……?)
自信が持てない。
当然だ。
きっと、誰に任せても自信など持てないだろう。
押し潰されそうなプレッシャー。
背に重さを錯覚しつつ、クーは忌々しげに修復しつつある結界を見て、
川 ゚ -゚)「――え?」
言葉を失った。
(;^ω^)「ど、どうしたお?」
川;゚ -゚)「あれは……!?」
彼女の視線の先。
形を取り戻しつつある結界の上部――の更に上方。
追加として突き出された指の先には、真っ赤な空があった。
いや、違う。
彼女が示しているのは、その赤色に溶け込むように存在している――
(;^ω^)「!?」
人影があった。
遠過ぎて確認出来ないが、人らしき形の影が天空から落ちてきている。
真っ直ぐに、まるでスカイダイブしているかのように。
- 169: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:00:25.72 ID:iFGjxXYh0
- 「なんだなんだ?」
「おい見ろ! あれって人じゃねーか!?」
「まさか超高高度からの飛び降り自殺挑戦者……!?」
「ギネスっ!!」
二人の驚きを察知して周囲の兵達も次々と空を見上げた。
そして誰もが同様の驚きを発し、その正体を見極めんと目を凝らした。
<;ヽ`∀´>「……違うニダ!」
ニダーが言った。
高度と距離、速度から考えて、あれほど人影が大きく見えるはずがない。
確かに人の形をしているが、正体は別物だ。
人型。
それでいて巨大。
だが、EMAではない。
現存する二機はこちらに揃っている。
三機目が存在するという情報はない。
となれば、あれは――
- 179: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:01:49.12 ID:iFGjxXYh0
- 川 ゚ -゚)「!!」
普通の人間よりも視力の高いクーが、答えを見つけた。
降下している人型のすぐ傍に、小さな人影がいるのだ。
巨人にくらべて七分の一ほどのサイズのそれは、同じように四肢を広げている。
川;゚ -゚)「ぁ……あぁ……!」
一目見て理解した。
この戦場に遅れて参じる者の正体を。
ずっと、ずっと心配していた我が子のような――最後の参戦者を。
今にも壊れてしまいそうな声で、クーは言った。
川;゚ -゚)「ハイン――!!」
- 188: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:03:32.95 ID:iFGjxXYh0
- 落下という半自由空間に、銀髪の少女が身を任せていた。
从 -∀从「――――」
大きな音が響いている。
風が吹き荒む音だ。
ばたばた、という布を叩いたようなそれは、心地よく鼓膜を震わせる。
周囲に見える色は赤と褐色、正体は空と大地だ。
並行した視線一面に広がる二色は、果てがあるように思えないほど突き抜けている。
単純で壮大な景色に対し、眼下は複雑な景色だった。
灰や黒の色が、赤褐の大地に上塗りされている。
そしてその中心部には円形を描く紅蓮の色が鎮座していた。
……おそらくアレが、僕の目指すべき場所。
そう直感した。
- 196: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:04:43.24 ID:iFGjxXYh0
- この戦場へ到着したのは、本当につい先ほどのことだった。
何処なのかまったく解らない孤島から脱出し、
微かに感じる歪な魔力を辿りながら飛び続けること半日。
ようやく辿り着いた戦地では、既に戦いが始まって幾許かの時間が経過していた。
从 -∀从「――――」
まずハインリッヒが最初に見たのは半壊した結界だった。
それでいて戦いの声と音が聞こえてこないのは、異常があるからに他ならない。
おそらく予想以上に高い障害に進路を塞がれているのだろう。
だから、ハインリッヒは迷わず戦場へ降下した。
『――――』
隣には巨大な物質がある。
正体不明の人型自律機動兵器『鉄機人』だ。
機械世界で秘密裏に作られた、最強を支援するためのサポートウェポンである。
从 ゚∀从「――――」
頭を下へ向け、己が落ちようとしている先を見る。
壊れかけた結界の周囲には人の群れがあり、
それらが絶望という色に染まりつつあるのが、手によるように解った。
だから、行く。
- 204: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:06:59.29 ID:iFGjxXYh0
- 从 ゚∀从「僕は――」
弱かった。
何も出来ずに、何もせずに。
そう決め付けることで、自分を納得させていた。
……違う。
強さを振るうのが怖かった。
強くありたい、と願うと同時に、強さに恐れを抱いていた。
大切な何かを壊してしまわないか、と。
それは例えば、護ってくれる人との関係や、周囲の環境や時間を。
生まれ変わった自分が、また以前のような力に暴走することで壊すのが怖かった。
从 ゚∀从「でもそれは、僕が、僕自身が弱かったんじゃない――」
それは言い訳だ。
本当の弱さを言葉に置き換えただけの、張りぼてだ。
だから誰にも勝てなかったし、護られることばかりだった。
それは――
从 ゚∀从「――僕の心が弱かっただけだ」
- 209: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:08:16.72 ID:iFGjxXYh0
- 殺さねばならない状況に面した時、きっとトリガーを引くことは出来ないだろう。
そういう類の弱さだ。
ブーンやクー、そして彼らの仲間達が持つ弱さとは違う。
もっと下にあって、情けなくて、しかし誰もが持つことのある弱さだ。
銃――意志がない。
引き金――理由もない。
掛ける指――覚悟もない。
从 -∀从「でも――」
大きく息を吸い、大きく吐き出す。
眼下、ざわめきが大きくなった。
きっと落下している自分に気付き始めたのだろう。
そして戸惑いのざわめきが、徐々に明るい色へ変わっていく。
騒ぐということは、忘れられていなかった、ということだ。
素直に嬉しかった。
戦力外だった上、結果的に黙って行方をくらませてしまったのに
彼らは自分のことを憶えていてくれて、迎えてくれそうな勢いでこちらを見ている。
中には、『ハインリッヒ』と呼んでくれる者さえいた。
期待されているのかもしれない。
ハインリッヒを深く知らない者にとって、自分は『最強』だ。
異獣を滅ぼし尽くすために生み出された兵器である。
- 214: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:10:01.93 ID:iFGjxXYh0
- でも、嫌だ。
人間でなく兵器だなんて、そんなの嫌だ。
自分が傷つくのも、誰かを傷つけるのも嫌だ。
从 -∀从(僕は人間でいたい……人間として生きていたい。
クーさん達がそう見てくれたように、世界からも人間として見てもらいたい。
たとえそれが難しい願いであろうとも――)
だからこそ、心から強く願うのだ。
从 ゚∀从(そうだ……そうなんだ……)
願えるではないか。
こんな弱い自分でも、本気で求めることが出来るのだ。
――だとするなら、僕は決して弱くなんかない。
- 227: ◆BYUt189CYA :2008/04/30(水) 22:14:24.64 ID:iFGjxXYh0
- この戦いだけに求めよう、とハインリッヒは強く思う。
敵を殲滅する力を。
皆を護れる力を。
自分が恐れる力を。
でも、心配は要らない。
恐れることが弱さなら、きっともう大丈夫だから。
从 ゚∀从「――僕は、この力を恐れずに使ってみせる」
そして、叫ぶ。
从#゚∀从「僕のために用意された真の武装!
これが本来の僕の姿なら、今日この時だけ僕は兵器となる!
そして僕は僕の役目を果たし、その上で人間であることを願う!!」
叫びは咆哮となり、
从#゚∀从「いくよ! 僕専用のウェポン『鉄機人』!
そして、その真の名は――!!」
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