( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

5: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 20:57:25.49 ID:Z2i46qCp0
第五十五話 『この囁くような反逆の詩を』


北の方角から南へ向け、光と威力の線が走った。


正体は、魔法世界の純正ルイルの力を全て注いで放つ大砲撃――『龍砲』だ。
それは物理法則に従い八方へ散り消えることはせず、編み上げられた一つの線として存在していた。

いや、線というよりも一つの巨大な柱と言った方が解り易いかもしれない。

横倒しとなった光の柱、つまり極太の魔粒子レーザーは大気を掻き分けながら走る。
開戦当初から定められていた地点へ向け、真っ直ぐ。

レーザーの目指す先には標的があった。
空間という壁を引き裂きながら、この世界へ入り込もうとしている『敵』だ。

その、出て来ようとしている頭部目掛け、まるで押し戻そうとするように――


――激突する。



11: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 20:59:18.75 ID:Z2i46qCp0


音が消え

光が破裂し

空間が軋み

大地が悲鳴を挙げ

赤い空が光色に染まる。


世界一つ分の魔力の直撃は、想像を絶する力を備えていた。
魔力抵抗を持たぬ物質の悉くを灰燼に帰し、抵抗あらば純粋な破壊力で粉砕する。

その殲滅効果に、耐えられる存在など在ってはならない。

これこそが四世界混合軍の切り札だった。
『龍砲』の一撃を以って、異獣が大事に守る謎の空間を消し飛ばす。

クー達の見立てでは、門の役目があると予測されているその地点を破壊すれば
最低でも門を、上手くいけば、その奥にいる『敵』を撃破出来ると踏んでいた。

そのために皆、汗や血を流し、時に命をも落としながら突き進んできたのだ。



14: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:01:25.51 ID:Z2i46qCp0
「いけ……!!」

誰かが言ったが、それは音として震えることはなかった。
『龍砲』の奏でる吼声が全ての音を叩き伏せているのだ。
加えてレーザーの強烈な光が、その場にいた全員の目を眩ませている。

(;`ω´)「く、ぅぅぅ――!」

川;う-゚)「ッ……!!」

解るのは、伏せ気味の身体に叩きつけられる強風と震動だけ。
更に強烈な光と音も来ているはずなのだが、あまりの大きさに感覚が麻痺してしまったのだろう。
目と耳の存在を知覚することの出来ない状態に、ブーンは一瞬だけ自分が死んだのではないかと錯覚してしまう。


――これは、先ほどの『神の裁き』とは比較にならないほどの大衝撃だ。


比較的後方にいた自分達ですらこの状況なのだから、
最前線にいた兵達はもっと酷い状態にあるかもしれない、と思い
しかし、これならば戦場の何処にいても変わらないのだろう、と同時に思う。

今出来ることは、ただひたすら耐えながら他の者達の無事を祈ることだけだった。



17: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:03:20.95 ID:Z2i46qCp0
レーザーが徐々に細くなっていくのを、レイン達が本陣から見ていた。

彼女達がいるのは、大地に設置された『龍砲』から少し後方にある地点だ。
周囲、戦闘力を持たない整備兵達がまとまり、緊張した面持ちで光の放出が終わるのを見守っている。

ややあって轟音が収まり、光の線は細くなった後に千切れた。
砲撃の全てを見届けたデフラグは、遮光用ゴーグルを額に乗せて感想を放つ。

[;゚д゚]「……おーう、すげぇ迫力だったな。 久々に良い仕事したぜ」

从・∀・ノ!リ「…………」

「ま、間もなく砲撃が完了……!
 終わり次第、放熱作業に入ります!」

片耳を押さえながら、顔をしかめた整備兵の一人が言う。
レインが、砲撃の先を見据えながら応えた。

从・∀・ノ!リ「……もう一ついいかの?」

「はい、何でしょうか?」

从・∀・ノ!リ「放熱作業が終了したら、すぐに各部カートリッジの交換に移る。
      他の皆にもそう伝えておいてくれんかのぅ?」



22: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:06:44.59 ID:Z2i46qCp0
「!? し、しかし――」

命令を受けた兵がうろたえるのも無理はない。
レインはこう言っているのだ。
もう一度発射の準備をしろ、と。

[゚д゚]「おいおい、まさかもう一発必要なのか?」

从・∀・ノ!リ「必要とは限らぬ。 だが、誰も後悔はしたくなかろう?」

[゚д゚]「まぁ、そうかもしれんが……しかし、作業はどう急いでも十五分は掛かるぞ。
    それに今の一撃で、純正ルイルの核以外の魔力のほとんどを使い切った。
    もうあの大食いに詰め込むのは――」

从・∀・ノ!リ「本陣に、前線へ向かった者達が置いていった予備装備がある。
      アレらに余っているカートリッジを回収すれば、もう一発くらいはお見舞い出来よう?」

[;゚д゚]「……確かに、純度は低くなるが出来ないこともねぇ、な。
    この修羅場で何てこと提案すンだよ、お前さんは」

そう言うデフラグは、しかし満足気な笑みを浮かべていた。
背後、ポリフェノールが手を上げる。

|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「では私と、私の部下がその作業を請け負いましょう。
           貴女の言う通り……誰もが後悔をしないために」

从・∀・ノ!リ「すまんが、頼む」



24: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:08:18.32 ID:Z2i46qCp0
こういう時、すぐに名乗りをあげるポリフェノールの力は役に立つ。
部下を引き連れて去っていく彼の背中を見送っていると、
龍砲の再発射作業を進めていたチンとビロードが、ふと戦場へ視線を送るのが見えた。

レインも、釣られるように同じ方向へ目を向ける。
そこには現実ではあり得そうにない光景が広がっていた。

( ><)「煙と光が混ざって……」

まるで、巨大で奇怪な積乱雲だ。
しかしそれは風に吹かれて晴れていく。
結果という現実を、戦場にいる者達へ提示するために。

(*‘ω‘ *)「ぽぽ」

从・∀・ノ!リ「あぁ……これで終わるのが一番なのだが、な」

そう呟くレインの目に、喜びのような感情は一切映っていなかった。



27: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:09:29.34 ID:Z2i46qCp0
予感はあったのだ。
認めたくはないが、同時に疑念も。

これまで幾多の世界を食い荒らしてきた化物に対し、通用する攻撃など存在するのか、と。

保有する戦力と持ち得る力から判断するに、
確かに、ここまで戦えたの自分達は稀有な存在だったかもしれない。
今まで滅んだ世界は、自分達よりも技術が高いところもあっただろうが、その世界のみで対抗しただろうから。

対してこちらは四世界分の力と知識、意志が揃っている。
四倍まではいかないだろうが、それに相当する戦力であるはずだ。
ならばここまで肉迫することが出来たのは、ある意味で納得出来る。

だが、そこからだ。

肉迫するのと牙を立てるのでは大きな違いがある。
その大きな違いを超えられるか否かが、この戦いにおいて最も重要な要素だ。
そして、それを為すための手段が『龍砲』である。

龍の名を冠する切り札は、今しがた放たれたばかり。
この光が希望であることには違いない。

事実、予想を遥かに超えた規模の一撃は、こちら側に出てこようとしていた敵に直撃したのだ。



31: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:11:24.97 ID:Z2i46qCp0
予感はあったのだ。
もはや認めるしかないが、同時に疑念も。

しかし、自分達を信じる方を優先した。
ここまでやってきた自分達に間違いはない、と、自分が信じないわけにはいかない。

だからきっと、全てが上手くいく、と。

どこかの映画や物語のように。
心のどこかで、そう楽観していた部分があったのかもしれない。
それはきっと自分だけではなく、他の皆も同じ気持ちだったのだろう。
だからこそ――

(;^ω^)「!!」

(,,-Д゚)「ちっ……しぶとい奴だ」

煙と光の混ざった幕が晴れていくのに比例して、兵達の顔が青くなる結果となる。

(;゚д゚ )「馬鹿な……!!」

从;゚∀从「……!」

砲撃が生んだ灰色のカーテンから現れたのは、死骸ではなく。


――代わりとして現れたのは、どこまでも巨大な獣だった。



35: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:14:16.93 ID:Z2i46qCp0
《――――――…………》

その獣は、確固不動といわんばかりに大地へ四肢を刺し
血のように赤い目を、同じような色の空へ向けていた。


その大きさは、今まで見てきた敵の何よりも、そして戦場の中枢地のほとんどを占めるほど巨大。


爪だけで、既に大岩と見間違えるほどである。
体重を支える足は大樹、影を落とす身体は太陽を覆い隠す雲だ。
そして何より圧倒的なのは、その場に在るだけでプレッシャーを与えてくる強烈な存在感だった。

「あ、あれが獣を統率する長……」
「……仮に名をつけるとするならば『ケーニッヒ・フェンリル』といったところか」
「異獣の王、か……ところでどうして独逸語?」
「かっこいいからに決まってるだろう、常識的に考えて」

(;゚∀゚)「っておい、ちょっと待て……『龍砲』の一撃はどうなったんだよ?」

搾り出されるような言葉に、全員が改めて巨大な獣――ケーニッヒ・フェンリル――を見上げる。

「う、嘘だろ……」

そして、痛みに悶える動作も、死に絶えながら倒れる動作もない現実に背筋を震わせた。

「直撃だったはずだぞ! 効いてないというのか!?」
「不屈か! 不屈でも使ったんか!!」



39: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:16:27.87 ID:Z2i46qCp0
( ´_ゝ`)「いや、まったく効いてないわけじゃないようだが……これは……」

あまりに大きな敵を見上げながら兄者は確認する。
ケーニッヒ・フェンリルの背部の右方から、大量の煙が上がっているのを。

( ´_ゝ`)「角度がズレたか敵が身を捻ったのか解らんが、直撃ではなかったようだ」

(´<_`;)「兄者、それはつまり――」

( ´_ゝ`)「『龍砲』がしっかり当たっていれば倒せた可能性もある。
     皆、あの大きさにビビることはないぞ! 攻撃が通用しないわけじゃない!!」

「「……!!」」

その声に応じる動きがあった。

一つは、味方軍勢が発する安堵の吐息。
一つは、それをバネとした闘争の構え。

そして最後の一つは、


《――――グゥゥゥゥゥゥウウ――ァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!》


衝撃が走った。
中枢部に鎮座するケーニッヒ・フェンリルが、身を仰け反らせて吼えたのだ。



45: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:18:35.81 ID:Z2i46qCp0
轟音。

続いて威力の波動が走った。
身から迸る魔力の圧が壁となり、周囲にブチまけられ、大地を削り、空気を砕き、
最も接近していた最前線の兵の一部が、まるで飛沫のように打ち上げられる。

(;^ω^)「なっ――!?」

高度にして十数メートルは舞い上がった人の群れが、真っ逆さまに落ちていく。
光景として最も似つかわしいのは降雨だ。
装甲服に纏う魔力があれば死ぬことはないだろうが、圧倒的な光景であることに疑いはない。

「ひ、人がゴミのようだ……」
「何、なんだ……何なんだよ、ありゃあ!!」

たった一撃。
しかも、攻撃とは言えないただの咆哮。
この光景が与える精神的ダメージは計り知れない。
事実、一連の流れを見ていた兵達の士気が下がっていくのが、手に取るように解った。

「勝てない……」

そう、誰かが言うのは当然で。

「俺達は、刃向かう相手を間違えたのか……!?」



50: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:20:46.14 ID:Z2i46qCp0
そもそも、勝機などほとんどなかったのだ。
初めから勝敗が決まっているようなものだったのだ。

いくら小さな獣を散らしても、最終的にこの一体がいれば帳尻が合うシステムだとしたら――

「今まで俺達がやってきたこととは……」

ノハ#゚  ゚)「ふざけるな……!
      咆哮一発で負けを認めてたまるか!
      私は命果てると解っていても奴と戦うぞ! そのためにここまで来たはずだ!」

「だが、このまま戦ったとしても!」

(;゚∀゚)「あんな反則じみた奴を倒せンのかよ……!?」

動揺は更に広がり、変色して恐怖へと転じる。
誰もが『勝ってやる』という心意気を忘れかけてしまっていた。

これが敵の狙いだとすれば、効果は言うまでもなく抜群で――


川#゚ -゚)「――うろたえるなッ!!」


しかし一際凛とした声が、波状に広がりかけた恐怖をせき止める。



55: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:22:37.96 ID:Z2i46qCp0
川#゚ -゚)「怯むな! 脅えるな! 泣くな! 逸らすな! 諦めるな!!
     何のためにここまで来たのか、各々思い出せ!!」

あ、という回帰の声。
それすら叩き伏せる勢いでクーは言う。

川#゚ -゚)「我ら生を望む抵抗の軍勢!
     『生きる』という誓約の下に抗いの刃を重ねたはず!
     ならば簡単に生を諦めるな!
     最後の最後まで望み、願い、走った者こそ手に出来ると知れ……!!」

「しかし、あんな怪物相手にどうすれば――」

川#゚ -゚)「それが敵側の示した『絶望』という札ならば、こちらも対する札を切ればいい!
     総員、こちらを見ろ!!」

言ったクーの背後、いきなり大きな人影が立ち上がる。
その正体はハインの持つ15th−W『アゲンストガード』だ。
ケーニッヒ・フェンリルの巨大さに比べれば矮小そのものだが、その力強いフォルムは簡単には折れそうにない。
黒い巨人の右肩に乗るハインが、クーの言葉を受け継いで言う。

从 ゚∀从「――その役目、僕が示します!!」

止める暇もない。
しなやかな動きで、15th−W『アゲンストガード』と共に大きく跳躍した。



64: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:24:43.15 ID:Z2i46qCp0
从 -∀从(ありがとうございます、クーさん……僕の役目を理解してくれて)

ケーニッヒ・フェンリルが『絶望』ならば、ハインリッヒは『希望』だ。
元よりそのために作られた身体。


ならば今という状況こそ、彼女の役目が果たされる時だ。


戦場のど真ん中にいるケーニッヒ・フェンリルの目が、近付いてくるハインを捉える。
その視線は鋭く、そしてあまりに深い。
しかし怖じることなく、ハインは力を提示した。

从#゚∀从「アゲンストガード! 主である僕が命ず!
      『僕の身となれ』!!」

ハインが肩から跳躍し、同時に機械音が響いた。

結界を破壊した時のように、15th−W『アゲンストガード』が変形を開始する。



67: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:26:37.13 ID:Z2i46qCp0
四肢を広げた格好から、まず各部装甲の接続を解除。
一瞬だけ力が抜けたような動きとなるが、すぐに次の段階へ移行した。

フレームを露出させる。
それは火花と共に稼働し、四肢が伸びるような形へ変えた。
更に胸部と腹部の装甲や内部機構を縦に分割し、スライドさせて背部へと回す。

そうすることで、身体の中心部に人が入り込める空間を作ったのだ。

当然のように落ちてきたハインが滑り込み、その両手両足を所定の位置に差し込んで確定した。
続いてアゲンストガードの四肢に変化が生じる。

両脚部が、ブースターを形作りながら折り畳まれた。
右手部が、大きなブレードを作るように変形した。
左手部が、大きなシールドを作るように変形した。

完成した形を、ハインはこう呼称する。

从#゚∀从「15th−W『アゲンストガード』、アウトフレームモード……!!」

外骨格の意味を持つ形態だ。
一見して、ハインリッヒの四肢を機械化・巨大化させたようにも見える。

つまり彼女は、アゲンストガードという機甲を装着したのだ。

意思を流し込むことで、思う通りに手足を動かすことの出来る機械鎧を。



76: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:28:51.98 ID:Z2i46qCp0
从#゚∀从「行きます! 希望が希望であるために!!」

背中と両脚にあるブースターが光を噴く。
まさに『合体』といえるような変貌を遂げたハインが、力強く空を飛んだ。

《……――!!》

前方、ケーニッヒ・フェンリルも動きを開始する。
向けられる鋭い目は、それだけで大人の身長よりも大きい。

从#゚∀从「でも――!」

行く。
四肢に力を込め、怖じることなくその大きな視線を睨み返した。

大きいから何だ。
こっちには多くの仲間がいるんだ。
それに、彼らは恐怖程度の重圧には負けない。

从#゚∀从「それを僕が教えてあげるんだっ!!
      ここは抗えることの出来る戦場なんだと……!」

左手を動かし、その延長上にある左腕部を稼働させる。
シールドの切っ先を獣の顔へ向けた格好だが、その真の狙いは別にあった。

砲撃。

切っ先の裏側に取り付けられた銃口――いや、砲口が光弾を打ち出したのだ。
彼女の左手にあるのはただのシールドではなく、盾と砲が一体となった複合ユニットである。



80: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:30:20.94 ID:Z2i46qCp0
《……!》

光弾はケーニッヒ・フェンリルの額に直撃し、煙に似た光の粒子を散らす。
普通の人間からすれば大きな砲撃だったが、あの獣からすれば豆鉄砲レベルの攻撃だ。
だがその結果を見たハインは、己の考えが正しいことを知った。

从 ゚∀从「やっぱり……!」

ダメージがある。
しかも目に見える形で。
あの煙は、体毛を構成する魔力がこちらの砲撃を相殺した結果だ。

从 ゚∀从(つまり攻撃が無効化されるわけじゃない!
      単に防御の層が厚いだけで、あとは巨大なだけだ!)

思った次の瞬間、既に身体が動き始めていた。

重心を前へ倒しながらの突撃姿勢だ。
背部と脚部のブースターが光を噴き、ハインを一気に押し出した。

从#゚∀从「うあああああああっ!!」

直進。
目の前にいる獣の顔の横を通り過ぎ、背中を目指して高速飛翔する。



83: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:32:03.71 ID:Z2i46qCp0
从;゚∀从「!!」

辿り着いた先は、まるで白色の草が満ちる草原だった。
植物に見える白は獣の体毛で、その下には強靭な肉があるのだろう。
何もかもが拡大されるような光景に対し、ハインは一瞬だけ遠近感を失った。

从;゚∀从「……っと、いけない。 見とれてる場合じゃないや」

確認するように後ろを見ると、首を曲げたケーニッヒ・フェンリルの大きな目がこちらを見ていた。
視線は一つの意思を発している。

――無駄なことを、と。

从#゚∀从「そんなのやってみなくちゃ解らない……!
     『出来なさそう』だからと言って簡単に諦めるのは、可能性すら0にしてしまう最悪のやり方なんだ!
     何より、希望たる僕が希望を捨てるわけにはいかない!!」

右手を大きく振るった。
呼応するように、光の刃を生んだブレードが、ひ、という甲高い音を発する。
自分の手先にとてつもない力が生まれたことを自覚しながら、

从#-∀从「てぇぇぇぇぇ――」

その大きな切っ先を草原に突き立て

从#゚∀从「――りゃぁぁぁあああああっ!!!」

そのまま、ケーニッヒ・フェンリルの背中を切開するように疾走を始めた。



87: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:34:36.25 ID:Z2i46qCp0
魔力同士がぶつかり、弾け、鋭い光を生み、それが連鎖していく。
発生する震動は刃を伝ってハイン自身にも響き、脳や神経、骨が軋むのを感じる。
しかし微塵も速度を緩めることなく、ハインは下半身の方へと一気に移動した。

傷をつけることすら出来ないと思われていた巨大な獣。
その背中に、直線的な裂傷を刻んでいく。

从#゚∀从「あああああああっ!!」

渾身の力を込めて一気に切り裂いた。
何かがブツ切れる音と、魔力が弾けたことを示す光が散る。
大量の飛沫を受けながら、ハインは身を横に一回転させて空へ舞い戻った。

从#゚∀从「あとは……!!」

ブレードに注いでいた魔力を断ち、その全てを左手の砲へ集中させる。

从#゚∀从「これで……どうだぁぁ!!」

叫びと同時、限界まで溜めたエネルギーを解放。
流石に『龍砲』のような威力は出せないが、それでも充分な破壊力を持つレーザーが照射された。

白の熱線がケーニッヒ・フェンリルの脇腹に刺さり、小規模の爆発を引き起こす。



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