( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 91: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:36:15.46 ID:Z2i46qCp0
- 川#゚ -゚)「――見ろ!!」
地上にいるクーが、装甲車の上で吠える。
指差す先には、ケーニッヒ・フェンリルへ攻撃を浴びせるハインの姿が遠くにあった。
クーは見せつけるように両手を仰ぎ、
川#゚ -゚)「敵は決して無敵でも最強でも不滅でもない!
攻撃すればダメージがある! 怯ませることも出来るんだ!」
だから、と言うように
川#゚ -゚)「倒すぞ! あの化け物を!!」
クーの強い声に、しかし反応は薄い。
彼女やハインを見る兵達の目にあるのは葛藤だった。
確かに『何とかしなければならない』と解っている反面、やはり恐怖も強かった。
誰もが戸惑いと苦悩の表情を浮かべ、己の武器やハインの活躍を見ている。
川;゚ -゚)(駄目、か……?)
やはり、一度折られた闘争心は二度と元に戻ることはないのか。
あの巨大な獣に立ち向かうまでの心意気は、もう無いとでも言うのだろうか。
そんな暗い感情が、クーの心の一部を射した。
- 95: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:37:40.12 ID:Z2i46qCp0
- クーの後方、空からは断続的に爆音や飛翔の音が響いてくる。
すぐさま駆けつけたい衝動に駆られるが、自分だけが行ってもさしたる意味はないのは理解していた。
出来るだけ戦力を率いて行かなければならない。
だから、クーは皆の気迫を励起させるために呼び掛けていたのだが、
(#゚∀゚)「ちッ、ここまで来てコレかよ」
( -д- )「……そう言うな。 誰もがお前のように勇猛ではない。
そして、それを『悪いこと』として文句を言うのは間違いだ」
しかし、戦う気満々なジョルジュが悪態を吐くのは仕方がなかった。
装甲車の横に立つミルナが腕を組んで俯いたまま動かず、ペニサスやヒートは背を向けていつでも走れるように準備している。
隣にいるブーンは、クーの手を握るだけで黙っていた。
更に言えば、何名かは既に見切りをつけてハインの援護へ向かっている。
そして、クー達にも動かなければいけない時間が迫っていた。
(;^ω^)「クー……そろそろ行かないと、全てが間に合わなくなるお」
川 ゚ -゚)「ここが限界、か……」
どうしても覇気が戻らない面々に、クーは遂に諦めの吐息。
戦いに赴けそうな者は四方戦の主要メンバーと、少数の血気盛んな兵だけだった。
- 99: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:39:56.76 ID:Z2i46qCp0
- 川 ゚ -゚)(……思えば、あの怪物に抗おうとしている私達の方が異常なのかもしれんな。
そして奴らがここまで来ることが出来たのも――)
恐怖とは一つの力である。
あのような軍勢が攻めてきたとなれば、中には諦めた世界もあるかもしれない。
もしくは、今の混合軍のように戦意を喪失する者がたくさん出たのかもしれない。
牙や爪だけでなく、その存在自体をも武器とする異獣は、確かに最強の名に相応しいと言えるだろう。
川 ゚ -゚)(だが、まだ全員が諦めたわけじゃない。
私が、ハインが、内藤が……これまで手を貸してくれた者達は、まだ戦える)
ならば行くしかあるまい。
ここで膝を折る者が出ても、それは認めるしかない現実なのだ。
あれほどの巨体を誇る敵に挑むなど、確かに気でも狂っていない限りは難しいかもしれない。
川 - -)(行こう。 私達だけで――)
そう、心に決めかけた時だった。
「――俺さ。 ハインリッヒを見たのが、今日が初めてなんだ」
- 103: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:42:09.75 ID:Z2i46qCp0
- 川;゚ -゚)「……え?」
声の主は、今しがたクーに背を向けられた兵達の中にいた。
額を血に染め、右肩を庇うような姿勢の若い男が、立ち上がって言ったのだ。
「俺ァ機械世界に所属する人間でな。
ハインリッヒのことを『最強を名乗れる程の兵器である』と、そう教わった。
無論、仲間内の噂程度の話だったし、あんまりあてにはしてなかったがな」
誰もが沈黙したまま聞く。
一部の兵は、彼の言葉に軽く頷きの動作を見せた。
「まぁ……そんなことを言いつつも、どんな秘密兵器かと思ったさ。
それが本当に俺達にとっての切り札となるんなら、どれだけゴツい兵器なんだろうな、って。
あの憎たらしい全ての獣を葬り去る超大型爆弾じゃねーか、とか、仲間同士で語り合ったことも少しはあった」
彼は、武器を持っていない方の手で頭を掻き
「恥ずかしい話、あてにしてなかった、とか言いつつ期待してたんだと思う。
そんなガキみてぇな夢物語を少し信じたくなるほど、戦況も切羽つまってたしな。
でもよ――」
その手を、更に人差し指を伸ばし、巨大な獣の方へ向けた。
ケーニッヒ・フェンリルの周囲では爆発や光の破裂が起き、戦闘が続いていることが解る。
彼はその様子を指差したまま、周囲へ問いかけるように
「――ありゃあ、何なんだ?」
- 105: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:43:46.57 ID:Z2i46qCp0
- 口に出して答えるまでもない。
単独でケーニッヒ・フェンリルに挑んでいるのは、15th−W『アゲンストガード』を従えるハインリッヒだ。
「あれが『最強』? あれが俺達の切り札?
悪いが、俺にはただの可憐な少女にしか見えねぇ。
その可憐な少女がデカい巨人と共に、もっと遥かにデケェ狼と戦ってるようにしか見えねぇんだよ。
こりゃあ誰の妄想だよ、ってツッコみたくなるくらいの光景だ」
川 ゚ -゚)「…………」
それは一体どういう意味の言葉なのか。
単なる疑問か、愚弄か、それとも別の何かか。
真意を測りかねるクーは、口を挟むことなく成り行きを見守った。
「その事を踏まえた上で更に問う」
腕を下ろした若い男が、今度は周囲を見渡した。
「――俺達は、何してんだ?」
「…………」
「……!」
いくつかの反応があった。
何かに気付いた顔や、更に俯いたり、苦い表情を浮かべる様子が見て取れる。
それら全てを見渡した一人の若者は、追い詰めるように
「あんな可愛くて、華奢で、すぐにでも折れちまいそうな少女を戦わせておいて
大の大人だと言える俺達は一歩引いた場所で怯えてる……それでいいのか?」
- 108: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:46:08.44 ID:Z2i46qCp0
- 「しかし――」
「しかし……何だ?」
「お前も見ただろう。 そして今も見ているはずだ。
あんな馬鹿みたいに巨大な敵を……。
ハインリッヒのように強力な武器も無しに、俺達に何が出来る?」
「強力な武器がないと抗えねぇのか?
何か正しい理屈がないと動けねぇのか?
そんなに貧弱でナヨナヨで雑魚思考だったのか、俺達は?」
違うだろ、と呟く。
そして、自分の持つ武器を掲げた。
「武器ならここにある。 『生きたい』という意思も胸にある。 そして動く身体もある。
つまり俺はあのデカい『絶望』に対し、少しばかり抗うことが出来る」
一歩踏み出した。
『絶望』に踏みつけられたかのように膝を着いている兵達の間を歩く。
その間にも言葉は続いて、
「何かの本で読んだのだが……『抗』という文字は、上からの重圧に対し、手をもって押し上げるイメージらしい。
例えばこんな俺でも1cmくらいは押し返せるとして、もしそうなら抗う価値はあると俺は思う。
だからさ――」
皆の視線が集まる中央へ到着した彼は、近くにいるクーを真っ直ぐ見つめ、
「俺も連れていってくれ。 あの少女を手助け出来る戦場へ」
- 113: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:47:53.95 ID:Z2i46qCp0
- 川 ゚ -゚)「……随分と遅い志願だな?」
「俺はアンタらと違ってちょっと臆病だから。
恐怖を払拭……いや、押さえ込むのに少し時間が掛かった。
だが、もう大丈夫だ」
川 ゚ -゚)「そうか。 ならば共に行こう。
率先して抗いの先端にいるハインの下へ」
「いいや、彼女は率先なんかしちゃいない。
ただ自分の役目を果たすため、一度たりとも止まらずに走り抜いているだけだ。
彼女が先に行っているのではなく……俺達が情けなく遅れているだけなんだ」
だから、と言い
「追いつこう、と。
怖くても、そう思えて……この気持ちは、決して偽物なんかじゃないんだよな」
苦笑交じりに放たれた言葉。
それに反応するような動きと声が立ち上がった。
初めは小波として。
しかし確実に、その波は誰かの心を揺らしていく。
生まれていく波紋は他者とぶつかり合い、次第に激浪の勢いとなって混合軍を埋め尽くした。
- 116: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:50:34.34 ID:Z2i46qCp0
- 川 ゚ -゚)「こ、れは……一体……」
ノハ#゚ ゚)「――これこそが人の持つ魂の真声」
川 ゚ -゚)「む?」
徐々に盛り上がりを見せる士気の中、ヒートが言う。
ノハ#゚ ゚)「圧され伏されて人は嘆く。
しかしどんなに重くとも、その胸の内にある声だけは、本人が望む限り潰れることなどあり得ない。
今、恐怖という蓋が『希望』によって排されたのなら……」
( ゚д゚ )「……それは、真の意味での意思となる、か」
*(‘‘)*「恐怖や絶望が心を覆うのであれば、それらを上回る希望や気概で払拭するだけのこと。
これが動物にはない、人間の意志というやつですね」
それはきっと自分にはない理屈なのだろう。
本当の人間だからこそ、恐怖を踏み台にして高みを望めるのかもしれない。
川 ゚ -゚)「……そうだな。 きっとそうだ」
( ^ω^)「行くお、クー! 全ての決着を望みに!」
川 ゚ -゚)「あぁ、行こう……もはや何も恐れることはないんだ……!!」
もはや、誰もが止まらない。
真の意味で戦いの意志を表した混合軍は、今度こそ生を求めて刃を掲げた。
- 119: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:52:10.51 ID:Z2i46qCp0
- ハインは風を切って飛んでいた。
アウトフレームモードのアゲンストガードに包まれたまま、高速で空を滑る。
从;゚∀从「くっ……ぬぬぬぬ……っ!!」
とてつもない重圧だ。
重力と遠心力、慣性等の物理法則が、これでもかと彼女の身を連打している。
歯を噛み締めて耐えればすぐさま別の圧が襲い掛かり――先ほどから、その繰り返しだった。
《ガァァァァァァアアアア――!!》
追うように吠声が来る。
周囲を飛びまわるハインを撃墜するため、その大口を開けて噛みつこうとしているのだ。
从;゚∀从「うわっ! っとぉ……おぉ!?」
ハインはそれを紙一重で回避しながら、隙を見て砲撃を叩き込む。
その一発一発はケーニッヒ・フェンリルの巨体から見れば小さなものだったが
当てる毎に防御力を削っているのだと考えれば、決して無駄な抵抗ではないはずだ。
从#゚∀从(僕が負けるわけにはいかないんだ――!!)
限度の見えない高速の攻防は、ここにきて更に激化した。
ハインが、15th−W『アゲンストガード』を使いこなし始めているのだ。
- 123: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:53:36.28 ID:Z2i46qCp0
- ハインは思う。
これこそ自分の望んだ力だ、と。
人型でありながら無形のウェポンは、一つの能力を有している、と知ったからだ。
――主であるハインリッヒの思う幻想を、全て現実のモノとする。
剣を望めば、剣を形作り
銃を望めば、銃を形作り
盾を望めば、盾を形作る。
破壊を望めば、破壊を生み
守護を望めば、守護を行い
生存を望めば、生存させる。
音速超過を望めば、為せる速度を与え
連射連撃を望めば、相応の力を構築し
絶対正義を望めば、真であろうが葬る。
制限などの心配は最初から無用だった。
元より、このウェポンが持つ魔力の量は桁外れだ。
そして出力の幅も高いレベルで確定されているため、ハインの思うがままに力を表現することが出来る。
だから、迷うことなく加速を入れる。
だから、躊躇うことなく砲撃出来る。
- 127: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:55:22.75 ID:Z2i46qCp0
- 全ては与えられた役目を果たすため。
単純でありながら鋼の硬度を持つ意志は、迷いを悉く遮断する。
更に言えば、自分の力を理解したハインリッヒに『加減』という言葉は存在しなかった。
从#゚∀从「兵装オープン! カウリング開放から、一気に火線を集中させます!!」
がこ、という硬い音が響く。
15th−W『アゲンストガード』の装甲各部が展開したのだ。
内部からは即興で形成した砲口が顔を出し、己の存在を確かめるように数度動き
そして合計三十ほどのそれは、ハインの意志に従ってケーニッヒ・フェンリルを見据えた。
从#゚∀从「いっけぇぇぇぇぇええええっ!!」
光の線が幾重にも奔った。
乱、という軌道のレーザー群は、加速の最先端を突き進む。
多重の破砕音。
ケーニッヒ・フェンリルに絡みつくような光の線が、着弾した途端に爆発を引き起こしたのだ。
そして、限度のない攻撃力が、遂に巨体を震わせることに成功する。
- 132: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 21:58:46.57 ID:Z2i46qCp0
- 从 ゚∀从「よし、この調子でもっと――」
《――ァァァ》
从;゚∀从「え?」
《――ア"ァァァァア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!》
从;゚∀从「う、ぁ……っ!? しまった!?」
吼える声が前からぶつかってきた。
発せられた衝撃波と大気の圧が、回避運動をとっていたハインを横殴りに叩く。
そして気付けば大きな獣の目が苛立ちの色を見せ、こちらを睨んでいた。
ぞく、と悪寒が背を貫く。
睨まれてはならないものに睨まれたような、そんな危機感。
まだあまり戦い慣れていないハインにとって、その視線は殺人的だった。
動物は、その視線だけで己より弱い獣を散らすことが出来るが、それはまさにこの状況のことを言うのだろう。
四肢が強張る。
瞬きすら出来ない。
まさに一瞬で状況が入れ替わる。
从;゚∀从「ぁ、まず――」
身体が自由を得た時には遅かった。
次の瞬間、図体に似合わぬ速度で口を開いたケーニッヒ・フェンリルは、彼女を丸ごと噛み砕こうと――
- 135: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:00:05.79 ID:Z2i46qCp0
- 《ッ!!?》
しかし別の衝撃が来襲した。
ケーニッヒ・フェンリルから見て右方向から、突然の平手を喰らったような一撃だ。
何事かと顔で問うハインは、それを視界に捉え、驚きに目を見開く。
(,,゚Д゚)「まったく……敵の眼前でふらふらと飛ぶ馬鹿がいるか。
見ていられなくて、つい手を出してしまったぞ」
(*゚ー゚)「ハインちゃん、大丈夫?」
从;゚∀从「ギ、ギコさんとしぃさん!?」
獣の横っ面を張り飛ばしたのはギコだった。
背後には、羽交い絞めするように支えているしぃがいる。
二人は空を飛んでいた。
そして二人の武器――1st−W『グラニード』と10th−W『レードラーク』――は、まったく同じ色を発している。
ブラックパープルに近い色だ。
濃い彩りでありながら、しかし不思議と安心感を与えてくれるように感じられた。
- 138: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:01:43.32 ID:Z2i46qCp0
- (,,゚Д゚)「だが、それでも奴らにとっては希望となったらしいな。
後ろを見てみろ」
从 ゚∀从「……?」
背後、そして眼下。
装甲服を着た兵達が武器を掲げてこちらを見上げていた。
その立ち位置は、ケーニッヒ・フェンリルが出現した時と比べて前へと出ている。
从;゚∀从「あれは――」
(,,゚Д゚)「あぁ、お前の戦いに抗う心を取り戻したんだ」
彼らは前を見て、そして前へ進もうとしていた。
あまりに巨大過ぎる獣に抗うためだ。
中には、雄叫びを挙げながら疾駆を開始する者もいる。
(,,゚Д゚)「戦いの心得はまったく成っていないが、お前は奴らに『希望』を与えた。
俺なんぞには出来ない芸当だ。 誇って良いんじゃないか」
(*゚ー゚)「さぁ、行きましょうハインちゃん。
更に彼らの希望となるため、私達も一緒に戦うわ」
从*゚∀从「ギコさん、しぃさん……あ、ありがとうございます……!」
- 143: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:03:03.87 ID:Z2i46qCp0
- 二人の言葉に、ハインの心に明るい色の感情が溢れる。
自分の暴力的な力が役立ったのが、嬉しかった。
力を認めてくれる人達がいるのが、とても嬉しかった。
この意思疎通を以前からずっとやってきた彼らに、少なからず嫉妬するほどだった。
从 ゚∀从(でも――)
今回は、その中に自分もいる。
自ら望んで飛び込んだ領域は、まさに夢見た関係を体現する場所だったのだ。
これ以上の喜びが、果たして存在するのだろうか。
感激に頬を染めるハインの前、ギコとしぃが戦闘態勢を作り出す。
(,,゚Д゚)「間もなく全戦力がこの場に集うだろう。
そしてその時こそ……文字通り、最終決戦が開始されるはずだ」
从 ゚∀从「じゃあ、僕らは――」
(,,゚Д゚)「あぁ、奴らを待つ必要はない。
先に攻撃を開始し、少しでも敵戦力を削るのが俺達に課せられた役目だ。
転じて、空はお前を中心として俺達に任された……と、俺は判断している」
- 146: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:04:16.96 ID:Z2i46qCp0
- そう言い切ったギコは、鋭い視線をケーニッヒ・フェンリルへ向け、
(,,゚Д゚)「行くぞ、しぃ。 移動は全てお前に任せる」
(*゚ー゚)「うん、解った。 その代わり全て委ねるよ」
翼と剣が、青と橙の混じった色を迸らせた。
それが弾けたと思った瞬間だ。
二人で一つとなった大翼剣は、猛スピードで巨大な獣へと立ち向かっていく。
限界突破によってしか見ることの出来ない光景に、ハインは目を輝かせて吐息し――
(*´_ゝ`)「――ハインちゃん可愛いよハインちゃん」
从;゚∀从「う、うわぁ!?」
変質発言に慌てて振り向けば、そこには兄者がいた。
空を飛べるはずのない彼は、『だからこそ』と言うように桃色の巨大な竜の頭に乗っている。
从;゚∀从「な、ななななな!?」
( ´_ゝ`)「ふっ……ハインちゃんが驚くのも無理はないが、これ実は限界突破のおかg――」
从;゚∀从「桃色だぁー!! 奇抜だぁー!!」
(;´_ゝ`)「んがっ!? 率直過ぎないか!?」
- 150: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:05:55.66 ID:Z2i46qCp0
- (;,,-Д゚)「……遊んでいる暇があるのならば手を貸せ、そこの阿呆二人」
わざわざ戻ってきたギコの溜息に、ハインは気まずそうに俯いた。
今のは確かにふざけ過ぎだった。
こんな大事な時に、自分は何をやっているのだろうか。
ハインは素直に自分の非を認め、もっと真面目に戦わなければならない、と反省する。
从;゚∀从(でも……)
……兄者さんと一緒にされたのは辛いよなぁ。
素直に思い、しかしハインは慌てて心の中で首を振った。
いや、きっとこれも仲間というものなのだ。
良い部分だけでなく、嫌な部分も共有し合うのが仲間なのだ。
都合の良し悪しなんて気にしない、真の意味で『気兼ねのない関係』というか、その、えーっと、つまり――
何にせよ兄者だって怒られれば反省くらいはするだろう。
そう思っていると、隣を浮く兄者は腕を組み、
( ´_ゝ`)「――だが断る!!」
- 154: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:08:09.53 ID:Z2i46qCp0
- (,,゚Д゚)「……叩き斬っていいな?」
(;´_ゝ`)「ま、待て待て! 別にふざけているわけじゃない!」
せっかく組んだ腕を解きながら、
( ´_ゝ`)「気になることがあるんだ。 どうしてもな。
だから俺はここでお前らの活躍を見守りながら観察するのだ」
从;゚∀从「に、逃げじゃないですよね……?」
(;´_ゝ`)「純粋無垢なハインちゃんが疑う子になったぁ!!」
よよよ、と嘘泣きを始めた兄者に、ハインはどう反論すれば良いか解らず頭を抱えた。
そんな光景を横に、巨大な獣と睨み合うギコは舌打ちを一つ。
(;,,-Д゚)「空は俺達とハインリッヒだけで対抗か……。
地上は復活した奴らが攻めてくれるが、そうなると少々厳しいな」
獣の目はギコを視界に収めたまま動こうとしない。
攻撃するにせよ動きで惑わすにせよ、このまま下手に動くのは自殺行為だった。
軌道を読まれれば最後、一気に噛み砕かれて終わりだろう。
ハインを食い千切ろうとした時の速度を考えれば、まともに相手するのは馬鹿らし過ぎる。
そしてそもそも何故、獣がこの場から移動しないのかという疑問については
既にギコは答えを出し、深く考えることを放棄している。
勘が『ハインリッヒが狙い』だと囁いており、彼自身もそう思っているのだ。
- 158: ◆BYUt189CYA :2008/06/05(木) 22:09:40.24 ID:Z2i46qCp0
- ともかく動かないのならばやりようはある。
しかし、せめてあと一人分の戦力がないと厳しい。
ハイン辺りが囮となり、自分ともう一人が隙を突けば少しはまともに戦えるはずだ。
思った時、その直上を突風が走る。
『いざ往かん、我らの戦場へ!! ――ってかぁ?』
『ふざけるのか真面目にするのかどちらかにしろ』
黒色の戦闘機『キオル』と、灰色の戦闘機『ミョゾリアル』だ。
風を従えて飛ぶ二機はハイン達を飛び越え、そのまま急上昇する。
大気の筋を引きながら天へ昇る姿は、対を為す双竜のようだ。
从;゚∀从「速っ」
(,,゚Д゚)「機械世界が誇る音速の鉄鳥……間に合ったか」
『はっは! 俺は生まれてこの方、遅刻だけはしたことねぇーンでな!』
【――と、言っておりますが。
もしフェイクならばエクスト様に対する評価が……これ以上、落ちません】
『……残念ながら事実でな。 難儀なことだ』
『おい、テメェらどういう意味だコラ』
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