( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

11: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:07:38.27 ID:wcoHHkfi0



この戦いが、本当の意味で開幕したのはいつだろうか。


集った四世界の者達が獣に抗うことを決めた時か。

とある科学者の計画によって世界が通じ合った時か。

そのとある科学者が行動を開始した時か。

人の手によって創られた少女が指輪を扱う者達に討たれた時か。

その少女が誕生した時か。

少年が彼女と出会った時か。

また別の科学者が他世界を垣間見た時か。

機械の名を冠する世界が獣に侵略された時か。



或いは――――…………



        最終話 『永き狂走の終焉』



13: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:08:59.85 ID:wcoHHkfi0
人と獣による激戦は、まずケーニッヒ・フェンリルの足下で開始された。
獣の王を倒そうとする人らと、王を護るように集っている獣との激突だ。

「突撃突撃突撃――ッ!!」

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉるぁぁぁぁぁっ!!」

もはや隊列など関係ない。
逸早く誰かがケーニッヒ・フェンリルに辿り着き、ダメージを与えることが肝要だからだ。
そのためには、どんな手を使ってでも獣の壁に穴を開けるしかない。

己の武器を振るい、穿ち、発射する人の群れに迷いは一切なかった。

《グッゥゥ――》

《ガァァァァァァァァッ!!》

迎撃する獣は、白色の狼に似た形をしていた。
しかしサイズは象と同等で、それでいて俊敏さは失っていない。
向かい来る小さき人類を、赤く鋭利な牙と爪、そして巨体で迎え撃つ。

両者咆哮。

人間達は、未来の絶望を払拭するため。
異獣達は、迫り来る希望を退けるため。

互いに一歩も譲ることなく、最初の激突から両軍は均衡した。



21: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:10:45.15 ID:wcoHHkfi0
「押されるなァ! 前だけを見ろ!!」

「そうだ! 後ろは絶対に見るなよ!
 我らの望む勝利、ただ前にしかないと知れ!!」

《グルァァァァァァッ!》

乱戦となった場の中、人と獣の叫びが交錯する。

更には剣撃の音が、銃撃の音が、爪撃の音が、噛撃の音が重なっていく。
少し遅れて悲鳴が、血潮の噴く音が、激昂の声が、大地を砕く音が追加されていく。

そんな混戦状態となった中、黒の色を纏った女神が声を放っていた。

川#゚ -゚)「進軍せよ! 敵の大将は目の前だぞ!!」

刀状態の14th−W『ハンレ』を左手に持ったクーだ。
己の武器を見せ付けるように掲げ、右手は味方の目指す方角を指し示している。
まるで抗う者達を導くように、だ。

川#゚ -゚)「我らが敵は人に非ず……!
     理性を持ち、しかし欲に溺れた悪鬼! 故に遠慮は無用だ!」

刀を振りかざし、

川#゚ -゚)「――『生』は我らが頂く!!」



28: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:12:04.22 ID:wcoHHkfi0
若き女性の、しかし似つかわしくない鋭い声に、味方軍の士気は確実に上がっていく。

それもそのはず。
彼女は口だけでなく、戦列にも積極的に参加していた。
敵の先鋒を潰し、劣勢に陥った味方勢を助け、時には道を切り開くため単身で突撃していくのだ。
これを見て士気の上がらない軍勢などいないだろう。

川#゚ -゚)「行けッ! 私は向こうの援護へ向かう!」

「了解!!」
「あとは任せろ、女神様!」
「アイツぶっ倒したらチューしてくれ!」

川 ゚ー゚)「ふっ……内藤が許せば頬くらいにしてやろう」

「おいおい、そりゃケーニッヒ・フェンリル倒しても無理じゃねーかぁ!?」
「こうなったら内藤の奴をちょっと脅して……」

川 ゚ -゚)「……今、誅(ちゅう)されたいか?」

「「何でもありません行って来ます!!」」

気合も新たに突っ込んでいく兵を見送ったクーは、まったく、と漏らしながら苦笑した。

この状況であれだけの冗談が言えるのなら心配無用だろう。
それに、もし危なくなっても助けてくれる者は何処にでもいる。
今自分がすべきは誰かの心配ではなく、戦場を走り回って皆を鼓舞することだ。



31: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:13:54.99 ID:wcoHHkfi0
川 ゚ -゚)「ところで――」

適当に見当をつけて走り始めたクーは、自分の周りを見渡し

川;゚ -゚)「……内藤は何処へ行ったのだろうか」

激突開始時には傍にいたはずなのだが、この乱戦の中、いつの間にか逸れてしまったようだ。
状況が状況だけに仕方がないとはいえ、多少の不満も出るというもの。
しかし彼女は溜息一つで払拭し、

川 ゚ -゚)「まぁいい。 私を残して倒れる男でもなかろう」

ここまで生き残ってきた実力――それがたとえ運だとしても――は、決して偽物ではないはずだ。


それに、クレティウスが一緒にいる。


確かに彼(?)はほとんど素性が知れないが
それでも自分達はともかく、ブーンを裏切ることはしないだろう。

根拠も何もないが、クーはそう判断していた。



35: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:15:40.70 ID:wcoHHkfi0
現状、むしろ危険なのは自分である。

単独で行動しており、その位置は常に流動的だ。
もし誰にも知られず命を落としたり、行動不能になった場合、自軍に大きな混乱が生じる可能性が高い。
『最強』を自負する異獣達が、それを解らぬわけもなく。

川 ゚ -゚)「ふン……いいだろう、邪魔をするのなら切り払うだけだ」

己の周囲を囲いつつある獣達に、クーは冷たい視線をぶつけた。

《グルルルル……》

見たところ、敵の数は六。
その全てが三メートルクラスの巨体だ。
一塊になって戦う皆ならともかく、女性一人が抗うには厳しい状況である。

しかしクーの顔には、焦りとは無縁の強かな笑みが浮かんだ。

川 ゚ -゚)「その判断は良し。
     だが、認識がまだ甘いようだな……その程度の戦力で、私を倒せると思うなよ」

何故なら、と言い

川#゚ -゚)「私達はもう、二度と止まることなどないのだから――!!」



39: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:16:58.31 ID:wcoHHkfi0
更なる混乱を生む戦場。

その中で人が砕かれ、しかし同じように獣も砕かれていく。
しかし誰もが後ろを振り返ることなく、己の武器に意志を乗せて振るった。

確かに恐怖はある。

噛み千切られる激痛は想像を絶するだろう。
身体のどこかが無くなるかもしれない、と考えるだけで震えがくる。
自覚もない間に死ぬことすらあるのだから、嫌な予感と恐怖を止めることは出来ない。

「だが――!」

それでも身体は前を目指した。

理屈などない。
言葉でも説明は出来ない。

ただ心の底にある何かが、有り余る恐怖を尚、凌駕しているだけだ。

「そっち行ったぞ! 気をつけろ!!」

「OKブラザー! 射線を集中させろ!
 怯んだ隙に近接部隊、一斉にブチ抜けッ! 獣姦でも何でもいいからファックして穴ァ開けろ!!」

《――ギュァァァァァァァァアアアア!!》

「うるっせぇ!! もう誰もビビらねぇよクソ獣がぁぁぁぁっ!!」



42: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:18:38.48 ID:wcoHHkfi0
一斉射撃に怯んだ獣に、剣や槍を持った兵達が突っ込んでいく。

多重の撃音。
そして断末魔の叫びがそれを追う。

今まで彼らを縛っていた恐怖はどこへやら。
完全にトリップした一部の兵達が、まったく怖じることなく獣へ立ち向かっていく。
戦術面で見れば愚かとしか言い様のない行動だったが、今の混合軍にとっては何よりの興奮剤だった。

興奮は恐怖を消し、気迫を呼び起こす。
増していく勢いは限度を知らず、更に更にと脳髄を熱く焦がしていく。

しかし、そのうなぎ上りな状況に文句を言う者もいる。

<#ヽ`∀´>「まったく……!
       今日のウリは、馬鹿の面倒ばかりニダ!」

彼らの後方から援護射撃を送るのはニダーである。
無駄に戦力が削られないよう、的確な射撃と指揮で戦線を保っている。

異獣に対する知識、経験が人一倍豊富な彼は、今や無くてはならない存在だった。



48: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:20:11.94 ID:wcoHHkfi0
冷静な観察眼で戦場を見渡し
獣に襲われかけている者を見つけては、狙撃。
弱り始めた獣を見つけては、その脳天を狙って狙撃。

その技量は、時には四方戦の主要メンバーすら助けることがあった。

('、`*;川「ぬわっとぉ!?」

ペニサスの眼前を光の弾丸が掠めた。
同時、彼女が相手していた異獣の右前足が弾け、その動きが一瞬だけ止まる。

好機だと思う前に身体が動いていた。
ワンステップで跳び、腰の捻りを加えた回し蹴りを顔面に叩き込む。
肉が千切れ、骨が割れ砕ける感触を得ながら、ペニサスは身を綺麗にロールさせて着地し、

('、`*;川「ちょっとアンタ、撃つなら撃つって言ってから撃ちなさい! 私以外を!」

<ヽ`∀´>「心配する必要はないニダ。 味方には当てんニダ」

('、`*川「私のか弱いハートには当たったわよ、ビックリドッキリ的に!
     あとで謝罪と賠償を要求するから覚悟しておk――」

がなり立てるペニサスの背後に、異獣が飛び掛かった。
すぐさまニダーがライフルを構えるが、

('、`*#川「――うっさいわぁ!!」

それよりも速く、ペニサスの踵上げ蹴りが異獣の顎を砕いた。



58: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:21:56.77 ID:wcoHHkfi0
('、`*川「まったく、どいつもこいつも……」

手をはたき、改めてニダーを見れば、彼は額に汗を浮かべ、

<;ヽ`∀´>「……か弱いハート?」

('、`*;川「…………」

問われたペニサスはその場で一回転。
片手を頭へ、目を強く瞑り、軽く舌を出し、

(>、<*川「いやーんペニサス怖くて涙が出ちゃうー☆」

<ヽ`∀´>「…………」

ニダーは無視した。



66: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:23:35.09 ID:wcoHHkfi0
ノハ#;゚  ゚)「……馬鹿だ」

一連の様子を遠くから見ていたヒートは、感想混じりの溜息を一つ。
しかしその身は腰を深く落としており、爪を立てる異獣に黒い刃を合わせていた。

《ガァァァァァァ!!!》

ノハ#゚  ゚)「さっきから、そんな誇りも意志もない攻撃で――」

弾き、

ノハ#゚  ゚)「今の私達の心を折れると思うなッ!!」

斬撃する。
かち上げの動きから、一気に刀身を落としたのだ。
縦に切り裂かれた獣は死の叫びをあげて地に伏せる。

しかしそれで終わりではない。
また新たな異獣が、最前線に立つヒートを睨み始めていた。



70: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:24:54.07 ID:wcoHHkfi0
ノハ#゚  ゚)「ダイオードの使っていた剣……悪くない」

いるだけで震え上がりそうな殺気の中、ヒートは軽い感想を放つ。

かつて尊敬すらしていた騎士の剣。
彼女の真の目的や言動をミルナから聞いた時は驚きもしたが、しかし今は違った。
柄を両手で握り、重さを感じ、吸い込まれそうな刀身を見ていれば解る。

――ダイオードがこの剣と共に戦い抜いた意志は、紛れもなく本物であったろう、と。

だから必要以上に重く感じるのかもしれない。
華奢な両腕に圧し掛かる重量は、今のヒートにとっては心地良いものだった。

陶酔すらしてしまいそうな感覚の中、獣が飛び掛かる姿勢を作ったのを見る。
だが、ヒートはその前に疾駆を開始していた。

ノハ#゚  ゚)「まだ私に挑むか……ならば、解るまで刻み込んでやろう――!」

激突の直前、軽く跳ぶ。

ノハ#゚  ゚)「英雄としての誇りを! そして私の感情を!!」

《《ガッ!!?》》

まさに一瞬の出来事だった。
地面と平行になるように構えた巨剣で薙ぎ払う。

その刀身に触れた敵を、空気を、塵を一気に弾き飛ばしたのだ。



82: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:26:54.96 ID:wcoHHkfi0
しかしそこで終わらないのが英雄の技量。

着地したヒートは、回転を止めることなく更に前へステップを踏む。
遠心力によって生まれるロールは斬撃の数を増やし、彼女の感情を刻んでいった。

ノハ#゚  ゚)「おぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

血潮と悲鳴の中、仮面の姫が舞い踊った。
遠心力を最大限に活かした連続攻撃は、まさに熟練された円舞。
蜘蛛姫の名に相応しい、豪胆でありながら美しささえ感じる戦闘だ。

( ゚∀゚)「うっひょー、やるじゃんテメェ!
     それ知ってるぞ! 何とか無双っていうゲームの技だろ!?」

声は上から。
鎖を纏い、その手に紫色の槍を持つジョルジュだ。

ノハ#゚  ゚)「……英雄の技とゲームが一緒に見えるか。
      私もまだまだ修行が足りないな」

( ゚∀゚)「でもそんなの関係ねぇ! ついでに俺様も混ぜろ!!」



85: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:28:17.89 ID:wcoHHkfi0
ヒートの回転斬撃が終わると同時に、ジョルジュが着地。
その時には既に彼の攻撃が始まっていた。

《ガッ――アァァ!?》

突如、ジョルジュ達を包囲していた獣達がバランスを崩す。
原因は足下だ。
ジョルジュのいつの間にか放っていたユストーンが、敵の前足を引っ掛けている。

( ゚∀゚)「覚悟しとけよ薄汚ねぇ獣が……!!」

素早く両腕をクロス。
そうすることで、5th−W『ミストラン』が真横に構えられた。
彼は腕の力だけで一気に回転を加え、

(#゚∀゚)「居場所もねぇようなホームレスが俺様に勝てると思うなぁぁぁ!!!」

ジョルジュを中心に、刺突が炸裂した。

しかも一つではない。
周りにいる獣達の顔面を、見えぬ槍が一度に貫いたのだ。



91: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:29:34.53 ID:wcoHHkfi0
( ゚∀゚)「うひゃひゃ! ぼーっとしてると死ぬぜぇ?」

ノハ#゚  ゚)「お前、今のは……」

( ゚∀゚)「理屈は聞くなよ。 俺様にはまったく解んねぇからな」

だが、と言い

( ゚∀゚)「一つ言えるのは、優秀作たる俺様に不可能はねぇってことだ。
    回収は面倒だが意外とおもしれーぞこの槍……ま、借り物だから貸さねぇけど」

狡猾な笑みを浮かべたジョルジュは刺突の回収へ向かう。
時間制限がどれほどあるのか解らないが、それはとても度胸のある行動に思えた。

ノハ#゚  ゚)「何が彼を変えたのか……戦いが始まる前とは大違いだな」

それは自分も同様だが、と心の中で付け加える。
今まさに死線の中にいながら何故か気分はこの上なく晴れやかで。

ヒートは、いつも以上に高揚し、そしていつも以上に戦える自分を自覚していた。



98: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:31:36.72 ID:wcoHHkfi0
《ウゥゥ――グァァァァァ!!》

しかし想いに浸る間はない。
前方、低く構えていた異獣が襲い掛かってくる。

気配はそれだけに留まらない。
更に背後からも強い敵意を感じるということは
ヒートを強敵と認めた上で確実に仕留めに来たのだろう。

ノハ#゚  ゚)「――――」

だが、甘い、と思う。
この程度の挟み撃ちで英雄たる自分を捉えるつもりとは。

……英雄の技量を嘗めるな。

思いながら踵で地を蹴った。
前後を挟まれる形となったヒートは、悠然とブロスティークを構え、

「――ヒート!」

ノハ#゚  ゚)「ッ!!」

直前に聞こえた声に、反射の勢いで前方へ跳んだ。
牙を剥いてヒートを引き裂こうとしている獣の首を刎ね、深い着地姿勢をとる。
背後を狙っていた敵に対して無防備な背中を晒すことになるが、彼女は特に焦らなかった。



105: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:33:07.66 ID:wcoHHkfi0
「ぬんッ!!」

気合の声に、骨が粉々に砕ける音。
重なった二つの音はヒートの背中にぶつかり、心地良い震動を骨に与える。
今まで何度も聞いてきたリズムとテンポに、笑みを止められなかった。

ノハ#゚  ゚)「流石だね、ミルナ」

( ゚д゚ )「――あぁ、お前の背中は護り甲斐があるからな」

拳の一撃で異獣を粉砕したのはミルナだった。
腰を深く落とした姿勢から、流れるような動作で立ち上がる。
拳に付いた血を払いながら周囲を警戒する姿は、まさに騎士そのものだ。

ノハ#゚  ゚)「流石弟者はいいの?」

( ゚д゚ )「何とか無事に後方へ送り届けた。
     これから俺も戦線に戻る」

そう言うミルナは周りを見渡しながら、

( ゚д゚ )「……さて、敵は巨大な獣の群。
     そして誰もが本気になる戦場の中、勢いは均衡しつつある。
     こんな状況を一気に傾けることが出来たら――愉しいだろうな?」

ノハ#゚  ゚)「答えるまでもない。
      そのために私達、英雄がいるようなものだ」



112: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:34:37.00 ID:wcoHHkfi0
各々の武器を構え、両者並び立つ。
戦いに特化した遺伝子を受け継ぐ彼らにとって、今この状況こそが待ち望んでいたものである。
己の武をぶつけ、道を切り開いていくことこそが英雄としての愉悦なのだ。

もはや本能レベルに刻まれた感情に、二人は呼吸によるリズムを合わせていく。

何よりも容易いことだった。
自分は誰よりも相手のことを知っていて、その逆もまた然り。
『合わせる』という意識すら持つ前に、ヒートとミルナの呼吸は寸分の狂い無く一致した。

ノハ#゚  ゚)「「――!!」」( ゚д゚#)

瞬間、土煙が舞う。
二人の踏み込みの力が大地を砕いたのだ。
同時に前へ疾駆した二人は、道を阻むように構える異獣を睨み、

ノハ#゚  ゚)「――はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

吼える。
鋭い空気の振動が、津波となって獣達にブチ当たった。

普通の人間ならば失神してしまうほどの覇気に、しかし異獣は身を固めることで耐え切る。
自ら『最強』を名乗る生物である以上、他の生物に気圧されるわけにはいかない。

野性と狂気の中にある、小さいが、確かに存在するプライドが英雄との対峙を実現した。



117: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:36:07.74 ID:wcoHHkfi0
《グルァァァァァァァ!!》

獣の迎撃は単純なものだ。
馬鹿正直に正面から突っ込んでくるのであれば、そこ目掛けて爪を叩き込めばいい。
勢い余った二人は、相対速度で自ら深く突き刺さるだろう。

そんな一つの未来に、二人の判断は一瞬で対応した。

ノハ#゚  ゚)「「ッ!!」」( ゚д゚#)

跳躍。
しかも上ではなく横――ヒートが右で、ミルナが左――へ。
まったく迷う素振りすら見せず、二人は同時に同じ対応を為したのだ。

予め打ち合わせていたかのような素早く正確な動作。
いきなり二手に分かれた敵に、異獣はどうすべきか判断を見失う。
通常で考えれば限りなく短い思考時間は、しかし英雄にとって絶好の好機と化した。

ノハ#゚  ゚)「おぉぉ――!!」

左手から突っ込んできたのはヒート。
たった一回のステップを刻むことで急激な方向転換を行なった彼女は
異獣が反応する間に、その黒い刃を――

(#゚д゚ )「喰らえッ!!」

《ギッ!!?》



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