( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

124: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:37:46.47 ID:wcoHHkfi0
だが、ここにきて予想が大きく外れた。

左から来るヒートに気をとられた直後、いきなり右から強い衝撃が来たのだ。
二人の完璧なコンビネーションに、異獣は何が起きたのかを知ることなく絶命することとなった。

ノハ#゚  ゚)「喰らえええええっ!」

そしてフェイントとして先に跳んでいたヒートは、
背後で獣が倒れる音を聞きながら、奥にいた獣の頭を両断する。
血潮を浴びる暇なく次の獲物へを狙う貪欲な姿は、まさに『蜘蛛姫』の名に相応しい。

そして一体を相手すると見せかけての二体同時撃破は、心身共に通じ合う二人にしか出来ぬ芸当だろう。

( ゚д゚ )「この呼吸……あの頃のまま、変わっていないな」

ノハ#゚  ゚)「当然! 私は私だ!
      顔が無くなろうとも、何年経とうとも、この事実だけは絶対に変わらない!!」

だから、と言い放ち

ノハ#゚  ゚)「安心して私の背中を護ってくれ、ミルナ!
      私は昔と変わらず無茶をするぞ!!」

( -д- )「あぁ、安心しよう。
     お前が無茶をする限り、この戦いはお前の思うがままだからな。
     そのサポートを行える俺は、おそらく世界で一番幸せ者だろうさ……!」



132: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:40:20.04 ID:wcoHHkfi0
(;^ω^)「あれ……クーは何処行ったんだお……?」

乱戦極まる戦場で、ブーンは見事に迷子になっていた。
先ほどまで一緒にいたはずのクーを探し、きょろきょろと周囲を見渡す。
と、そこで見知った顔を見つけた。

( ^ω^)「あ、ジョルジュ! 無事かお!」

( ゚∀゚)「んあ?」

( ゚ω゚)「ほわぁぁぁ!!?」

散り散りとなった仲間の一人に出会えたブーンは、しかしいきなり顔面目掛けて穂先をブチ込まれた。

(;^ω^)「いきなり何するんだお!?
     って、それは……5th−W『ミストラン』かお?
     成程、今のは刺突の回収ってわけk……まさかショボンから奪ったのかお!?」

三段もの連続問い掛けに、ジョルジュはうんざりしたような表情を浮かべる。

(;゚∀゚)「お前な、俺様のキャラ誤解してねぇか?」

( ^ω^)「うーん……口が悪くて大雑把で馬鹿で、全体的にどうしようもないっていうか……」

(#゚∀゚)「あとで刺す。 巻いて刺す。 泣くまで刺す」

(;^ω^)「あばばばばばばばばばば――って、あれ?」



139: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:42:02.55 ID:wcoHHkfi0
馬鹿会話を展開する男二人が、ふと気付く。
いつの間にか周囲を異獣に囲まれてしまっていることに。
慌てて構えをとるブーンと、肩をすくめたジョルジュが背中合わせになる形で立った。
ジョルジュが9th−W『ユストーン』を地面に垂らしながら

( ゚∀゚)「おい、そういやテメェは何でここにいる?」

( ^ω^)「え? いや、特に理由はないお。
     強いて言うなら、がむしゃらに戦ってたらジョルジュがいたから。
     最初はクーと一緒に戦ってたんだけど……あれ、もしかして僕って迷子?」

( ゚∀゚)「馬鹿はどっちだか……ったく、まさかテメェとこうやって一緒に戦うなんてな」

( ^ω^)「おっおっ、そういえばそうだお。
     最初の頃はジョルジュがクーを襲ってたから驚いたお」

それはブーンにとって全ての始まりとなった戦闘だった。
ある日、学校に現れた不審者クーとジョルジュとのいきなりの交戦。
巻き込まれた少年は、自分の身とクーを護るために白き拳を得た。

( ゚∀゚)「俺様もだ。 まさかいきなりウェポン使いこなされるとはな。
     しかもこの俺様がただの素人にあれだけ抵抗されるたぁ……まぁ、今のお前を見てりゃ納得だが」

( ^ω^)「変わったお。 僕も君も」

以前に比べてブーンは強くなった。
同じようにジョルジュも。

それぞれ、様々な部分が。



149: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:44:02.82 ID:wcoHHkfi0
( ゚∀゚)「でも変わってねぇこともあるぜ?」

( ^ω^)「お?」


( ゚∀゚)「……お前がクーを護ってやらなきゃならねぇっていう事実さ」


一瞬、戦闘体勢に入っていたブーンの顔が固まった。
背中合わせになっているため表情を見ることが出来ないジョルジュは、そのまま言葉を続ける。

( ゚∀゚)「アイツは俺様と違って弱虫だからな。
     誰よりも真面目で、真剣で……だからしょーもねぇことで悩んで、苦しんで、でも答え出してさ。
     だからこそ他人のことも本気で考えられて、正直すげーと思う。
     あ、これアイツに言うなよ? 調子乗るからな」

( ^ω^)「ジョルジュ、君は……」

( ゚∀゚)「他人に対して本気になれるから、誰かが代わりにアイツを護ってやらなきゃならねぇ。
     そしてその役目は、あの最初の戦いからテメェだって決まったんだよ」



162: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:45:56.53 ID:wcoHHkfi0
だから、とジョルジュは言う。
右手を振るえば鎖がのたうち、左手を振るえば槍が風を切った。
仁王立つような構えをとったジョルジュは、ブーンの背中を押すように、

( ゚∀゚)「ここは俺様が任された。 さっさとテメェはクーのところへ戻れ。
    きっとアイツは……今も他人のために馬鹿やってるだろうからよ」

( ^ω^)「……ズルいお。
     何でジョルジュの方が僕よりクーのことを理解してるんだお」

( ゚∀゚)「さぁね。 俺様には難しい理屈なんぞ解らねぇーよ」

ぶっきらぼうな口調にブーンは、ウソツキ、と呟いた。

ジョルジュとクーは、言ってしまえば同じ人間である。
性格の差異はあれど、同じ制作者、同じ時期、同じ方法で作られているからには
芯となる心の根源が同一でもおかしくはない。

だからジョルジュには解るのかもしれない。
クーの気持ちはきっと、自分のそれと限りなく近いはずだからだ。

( ^ω^)(つまり逆を言えば、君も――)

(#゚∀゚)「早く行け! そしてテメェはテメェの仕事を果たせ!
     自分の仕事も満足にやり遂げられねぇ奴は速攻でクビだぜ!?」

( ^ω^)「……ッ! 生きて帰ったらバーボンハウスで奢るお!!」



173: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:48:08.12 ID:wcoHHkfi0
駆け出すブーンの気配を背中で感じながら、ジョルジュは逆方向へ走る。
同時に仕掛けておいた鎖を波立たせ、ブーンを追い掛けようとする獣の足止めを行なった。

周囲にいる全ての獣の殺意が、ジョルジュを捉える。

( ゚∀゚)「バーボンハウスのメニューじゃあ割に合わねぇな、こりゃ……」

敵の数は八。
そのどれもが巨大で、しかし俊敏かつ獰猛な獣だ。
いくら9th−W『ユストーン』と5th−W『ミストラン』を操るジョルジュでも、この状況には流石に身の危険を感じる。

《ウゥゥゥゥゥ……》

(#゚∀゚)「けっ、さっさと掛かってこいっつーの。
     言っとくが俺様は何がなんでも生き残るつもりだから覚悟しろよ。
     たとえ腕や足が何本無くなろうとも――」

瞬間、死の旗を立てそうな言葉を遮るように、光が降り注いだ。



181: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:49:27.47 ID:wcoHHkfi0
流星の如く落ちる光は、細長い線となって獣の身体に突き刺さった。
一度に半数ほどの数を減らされた敵群は、何事かと空を見上げる。

(;゚∀゚)「なっ……?」

*(‘‘)*「やれやれ、これだから馬鹿は。 後先考えて戦えってンですよ」

( ゚∀゚)「テメェ……俺様を助けるたぁ良い度胸じゃねぇか、ヘリコプター」

*(#‘‘)*「ヘリしか合ってねぇーじゃねぇですか馬鹿!」

(#゚∀゚)「どっちも同じだろうが! 空飛ぶし!」

*(#‘‘)*「アンタ空飛べば何でも一緒に見えるんですか!?
     親切心で言いますが頭の病院へ行きなさい!」

(#゚∀゚)「命令かよ!!」

*(#‘‘)*「後ろ!」

(#゚∀゚)「あ!?」

振り向けば攻撃が来ていた。
足を止めて口論していた二人は、しかし瞬時に動いて回避する。



193: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:51:29.03 ID:wcoHHkfi0
(;゚∀゚)「ちィっ……人が争ってる時に手ェ出すなっつーの!」

*(;‘‘)*「味方同士で争ってりゃ敵の攻撃が来るのは当たり前です!」

言う間に攻防が始まっていた。
まずジョルジュが跳躍し、その下をヘリカルが低い姿勢で疾駆。
油断した獣の顔面に杖の先端が突きつけられ、次の瞬間には桃色の光にブチ抜かれる。
そしてその隙をカバーするようにジョルジュが割って入り、

(#゚∀゚)「おらよっ!!」

突き上げられた不可視の刺突が、少し離れた位置にいる獣の胸部を穿った。

*(‘‘)*「ジョルジュ!」

もはや明確な指示は要らない。
ステッキを構えるヘリカルを見たジョルジュは、迷わず前へ跳んだ。

一瞬前に彼の頭があった空間を、鋭利な爪が通過していく。

*(#‘‘)*「引っかかりやがりましたね! そいつは囮です!!」

間髪入れずに光線が走った。
ピンク色に染まったそれは途中で三股に分かれ、空振りする異獣の腹部を貫く。
赤黒い血が噴出するのを見届けたヘリカルは、満足そうに頷き

(#゚∀゚)「勝手に人を囮にすンな!!」

ジョルジュの軽いチョップを脳天に受けた。



200: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:53:01.78 ID:wcoHHkfi0
*(;‘‘)*「……っ!? な、何をしやがりますか!!」

( ゚∀゚)「生意気なんだよテメェ。 あと、ゴニョゴニョ……」

*(‘‘)*「は? 何て?」

(;゚∀゚)「あーくそっ! 聞いとけ馬鹿! あと一度しか言わねぇからな!」

バツの悪そうな表情を浮かべるジョルジュは、しかし頭を下げながら



( ゚∀゚)「さっきはたすけてくれてありがとー」←棒読み



*(‘‘)*「…………」

(;゚∀゚)「な、何だよその奇妙な動物を見るような目は!?」

*(;‘‘)*「いやー……すげーモン見ましたよこれ。 ねぇ?」

周囲、視線が集まっているのをジョルジュは感じる。

首を回して見てみれば、何人かの兵が懐に携帯電話を入れるところで
何やってんだ、と瞬間的に思ったジョルジュだが、すぐに自分の考えの過ちに気付いた。



210: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:54:48.47 ID:wcoHHkfi0
(;゚∀゚)「テ、テメェら、まさか……!!?」

「いいぞジョルジュ! ナイス謝罪!」
「おい、誰か代わりに前に出とけ。 ちょっと皆に緊急なメールしなきゃならんから」
「あ、その写真僕にも送っといてくださいね」

(#;∀;)「止めろおおおおおおおお!!」

*(‘‘)*「あははは、バーカ」

可笑しそうに笑うヘリカルが、ジョルジュの睨みを受けながら空へ浮かんだ。
ステッキに腰を乗せて浮かぶ姿は魔女を彷彿とさせる。

*(‘‘)*「んじゃ、今度はちょっと上の方へ行ってきますね。
     アンタが寂しくなった頃に降りてきますから、安心してください」

(#;∀;)「二度と戻って来るんじゃねぇよ馬ァー鹿! ちくしょう!!」

半分涙目になっているジョルジュを真下に、ヘリカルは一気に上昇した。



221: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:56:52.98 ID:wcoHHkfi0
そのまま上へ向かって宙を駆ける。

右手にはケーニッヒ・フェンリルの胴体が、左手には突き抜けるような赤い空だ。
赤い景色は今や見慣れてしまった光景だが、この世界本来の姿ではない。
そして元の光景を取り戻すためには、異獣全てを相手に戦い抜かなければならない。

向かう先からは、断続的に響く音があった。

戦闘の音だ。
それに混じり、誰かの叫び声や獣の吠声もある。

乱戦状態の地上に比べ、空の戦いは単純なものだった。
敵と呼べる存在はケーニッヒ・フェンリル一体で、対する味方はハインを筆頭とする空を駆ける兵達だ。

彼らは空を自在に走り、隙を見ては攻撃を叩き込んでいる。
対するケーニッヒ・フェンリルの迎撃は噛み付きくらいしかなく、一見すればやられ放題にも見える。
しかし実際は一撃の攻撃力と速度が大きいこともあって、単純なミスが命取りになる綱渡り状態であった。

そしてその中でも、特に高速を生む存在が二つある。

『イィィィィィヤッホォォォォォォォォ!!』

奇声を発しながら灰色の戦闘機と、

『行け……!!』

攻撃の意志を乗せながら黒色の戦闘機の二機だ。
風を切り、破片を纏っての飛翔は、まさに疾風一陣の体現である。



228: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 15:58:44.36 ID:wcoHHkfi0
*(;‘‘)*「まったく……あの人達はいつも騒がしいですね」

そんな光景を見ながら、ヘリカルは溜息を吐いた。

どちらかと言えば『質素で派手』などという矛盾した戦法を好むヘリカルは
雄叫びをあげながら、風切音を奏で、爆撃の重奏を敷くエクスト達のやり方が気に入らないらしい。

しかし、その攻撃力は目を見張るものがあった。
高速連打の射撃音が威力の程を物語っている。

*(‘‘)*(ま、人の戦闘スタイルに口出す暇なんてありゃしませんか)

他人のやることに何かを言えるのは、己が満たされている者だけだ。
まだまだ未熟であると自分で解っているヘリカルは、それ以上言うことなく自分の役割を確認する。

攻撃はシャキン達が担っている。
となれば、足りないのは囮や弾幕を張る支援役だろう。
広範囲をカバー可能な武装を持つヘリカルにとっては得意な分野だ。

*(‘‘)*「さて、と……って、あら……?」

丁度良い位置を探そうと首を振った時、ヘリカルは奇妙なモノを見た。



239: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:01:13.00 ID:wcoHHkfi0
それは、空中に浮かぶ桃色のドラゴンだった。

どこかコミカル調にも見受けられる造形の竜が、大きな両翼の羽ばたきによって宙に静止。
頭の上には兄者が、いつになく真剣な表情で腕を組んで立っている。
見方によっては、それは酷く間抜けな格好にも見受けられる。

*(;‘‘)*(あんな場所で何やってんですか、あの馬鹿は……)

よほど余裕があるのか単なる馬鹿なのか。

どちらにせよ、あんな狙われやすそうな位置にいるのは自殺行為である。
今はまだ良いが、もしケーニッヒ・フェンリルが対空攻撃手段を出してきた時が危ないだろう。

*(;‘‘)*(やれやれ……一応、見に行きましょうか。
      まったく世話の焼ける男です)

決戦が始まって早々に二度目の溜息を吐きながら、
ヘリカルはステッキの先をドラゴンへと向けた。



247: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:03:02.97 ID:wcoHHkfi0
( ´_ゝ`)「…………」

兄者は深い思考の底にいた。

考える先は、異獣について、である。
現物を見てから抱いていたいくつかの疑問を、思考していく。
こういう状態になった兄者は、やたらと真面目なので取扱注意だ。


さて、異獣とは世界を喰う獣として認知されている。
中身で言えば、世界に必ず一つある『純正ルイル』を捕食することだ。
そのために数ある世界を次々と襲い、丸ごと滅ぼしてきた。

今回、この世界に侵攻してきたのも同じ目的からである。


――では何故、捕食するのか。


そう、すっぽりと抜け落ちていた違和感の正体はこれだ。
敵の一連の『行動理由』が、今までまったく解明されていないのだ。
特に『純正ルイルを喰う』という行為に、確かな目的が確認されていない。

(生きるため、か?
 違う。 魔力を喰わねば生きていけないのなら、純正ルイルを喰う必要はない。
 アレは核さえ残っていれば、半永久的に魔力を放出し続けるのだから)

いくつか集めて保管しておけば済む問題だ。
それをしないということは、捕食するのに別の理由があるからに他ならない。



255: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:04:53.46 ID:wcoHHkfi0
( ´_ゝ`)(魔力とは、奴らにしてみれば『力の濃度』だろう。
     喰えば喰うほど増していく……確かに厄介だ)

だが、それだけではないはずだ。
そうでなければ説明出来ない。

( ´_ゝ`)(雑魚異獣の主成分は魔力……魔力を依り代とする人形のようなもの。
     それはつまり……?)

魔力を喰う行動。
魔力で構成されている異獣。
ケーニッヒ・フェンリルの異獣を生み出す能力。

それらを一本の線にまとめるならば――


( ´_ゝ`)「異獣は、異獣を生むために魔力を必要としている……?」


そうだとして、果たして何のためだろうか。
何を目的として異獣を生み出しているのか。

他の世界を滅ぼすため、という見方が強いかもしれない。

しかし断ずるには納得出来ない要素がある。
ミリアやキリバの圧倒的な戦闘力があれば、他の雑魚は要らないのではないか、と思えるからだ。
純正ルイルを奪うだけなら、彼女達の力を使うことで容易く達成出来るはずなのだ。



270: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:07:24.41 ID:wcoHHkfi0
( ´_ゝ`)(奴らの行動原理は『純正ルイルを奪う』ことであって世界を滅ぼすことじゃない。
     結果的には滅ぼしているんだが……それは純正ルイルを奪うことによる副次的な現象だ。
     だが、どこか異獣は戦いを望んでいる部分もある。
     やはり何かがおかしいぞ、コイツら……)

こんなに魔力を集め、兵隊を生み出して何をしたいのか。
最近では人間を用いた実験・改造を行なっている。
つまり奴らは大軍勢でありながら、更なる力を欲しているのだ。

何故。

強さに対する欲求か。
最強生物としてのプライドを保持するためか。
それとも単に、自分の考えが誤っているのか。

( ´_ゝ`)(考えろ、考えろ俺……!
     もしかしたら重要なことが解るかも――
     ひいては、俺達が最小限の被害で勝利することが出来るかもしれんのだ……!)

兄者の頭の中で思考が迸る。
計算とは異なる論理展開が、複雑に絡み合う神経を焼く勢いで広がっていった。
一つの答えを得るため、そしてそれが正しいのか確かめるため。

繰り広げられるは不可視の理論構築。
幻想と呼べる実体の無い脳内空間で、いくつもの意見や仮定がぶつかり合う。

ヘリカルが近付いてくるのも気付かぬまま、兄者は更に思考の深みに沈んでいった。



278: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:09:26.23 ID:wcoHHkfi0
空戦を役目とする者が幾人かいる。
その内、最も速度を生んでいるのは二機の戦闘機だ。

ケーニッヒ・フェンリルを中心として竜巻を生むように旋回する鉄鳥。
敵が別方角を見ている時を見計らい、その無防備な背中や頭に機関銃の雨を降らせている。
しかし、

<_;プー゚)フ『ちっ、どうにもこうにも戦ってる感じがしねぇ』

エクストが不満を漏らすのは当然だ。
いくら攻撃をぶつけても、敵は痛がる様子をまったく見せない。
のれんに腕を通しているような感覚だった。

冷静で長期的な視点を持つシャキンに対し
速攻、突撃等の短絡的な行動を好むエクストにとっては、現状がつまらなく感じるのだろう。

(`・ω・´)『無駄ではない。 気持ちは解るがな』

<_プー゚)フ『こう、一気に勝負を決める方法はねぇもんかねー』

(`・ω・´)『無いことは無いが……この場面で使用しても、大した結果は得られんだろう』

エクストの駆るGDF『ミョゾリアル』には、13th−W『ラクハーツ』。
シャキンの駆るEMA『キオル』には、6th−W『ギルミルキル』がある。

攻撃の属性は異なれど、本質は同じ――突撃による体当たりだ。
大型異獣ですら一撃でブチ抜く威力だが、ケーニッヒ・フェンリルに通じるかは怪しいところである。
むしろその厚い魔力の防御に、こちらの方が破壊されるかもしれない。



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