( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

55: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:17:25.90 ID:NP7tvWF90
从 ;∀从「僕は……僕は……!!」

異獣を討つための存在。
生まれた時から、いや、生まれる前から決められていた運命。


果たすべきは今。


たとえ、

川 -川(誰かの死を得ようとも――)

突き進まねばならない。
それが兵器としての宿命だ。

誰かの悲しみも、怒りも、喜びも踏みにじり、目的を完遂する。

残酷な宿命だ。
まだ幼いハインにとっては、重過ぎる部分があるだろう。
しかし、と思う。


川 -川(私の――wwヘ√レvv――死で、終わ――wwヘ√レvv――なら。
     それは、ハインリッヒを、護った――wwヘ√レvv――ことに、なります、か……?)


……もう、どの世界にもいないマスターよ。



86: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:21:26.05 ID:NP7tvWF90
从 Д从「う、うぁ……あぁぁ……!!」

川 -川(あぁ――wwヘ√レvv――やはり――)

身体が崩れるのを感じながら、貞子は最後にハインの姿を見た。
自分の死を悲しみながら嗚咽する姿に、一つ思う。


         从 ー 从


川 ー川(貴女は……母親似です――よ、ハインリッヒ)



从 ;Д从「うわあああああああああああああああああああッ!!!」



悲痛な叫びと同時、『龍砲』が光に包まれ――



――最大の光を以って発射された。



127: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:26:33.62 ID:NP7tvWF90
強烈な光が戦場を包む代わりに、全ての音が消えた。


龍の砲から放たれた光は、白という色で迸る。


大地を、大気を、音を削りながら一直線に。
その先には、ハインリッヒの敵がいた。

《グ――――》

ケーニッヒ・フェンリル。
異獣の王にして、全ての元凶。

巨獣は向かい来る光に対し、防御の構えを取った。
直後、


白光が、硝子を砕くような音を以って、ケーニッヒ・フェンリルを貫通した。



163: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:32:12.46 ID:NP7tvWF90
《グァ――》

更に、深く。

《――ギュアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?》

一気に行く。
ケーニッヒ・フェンリルの、強靭な肉体が穿たれる。

身体に溢れる魔力でどうにかしようともがくが、
それよりも強い光が阻止し、更に貫通した穴を広げていった。

《グルァァァォォォオオオオオオ!!》

それでも抗おうと身体を捻る。
『龍砲』の光から逃れるように、だ。

しかし逃げられない。
既に捉えた光が更に太くなり、巨獣の身体を削っていくのだ。
もはや止めることも、逃げることも出来なくなったケーニッヒ・フェンリルは、


《――――アアアアアァァァアァァァァァ……――――》


確かにハインリッヒを見ながら、その身を消滅させていく。

空に、断末魔の叫びと、魔力の光が散っていった。



204: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:36:45.03 ID:NP7tvWF90
<_プー゚)フ「――で、これがそうだってのかよ?」

戦いが終わった戦場。
全ての異獣を撃破した面々は、ケーニッヒ・フェンリイルが消滅した場所に集まっていた。

( ・∀・)「らしいね……魔力を限界まで削られたからだろうか」

人々はドーナツ状に集まっている。
内側にはブーンやクーといった、主要メンバーが揃っていた。
彼らが円を作って見ているのは、


《――――ゥ―――ァァ―――――》


一メートル。
いや、五十センチにも満たないほどに小さくなってしまった異獣だ。

(;^ω^)「これが……異獣の正体なのかお?」

川 ゚ -゚)「…………」

( ´_ゝ`)「俺の理論は正しかったようだな」

皆、驚いている。
あれだけ巨大で強大だった獣が、
見るも無残な姿になってしまっているのだから。



254: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:41:45.53 ID:NP7tvWF90
('、`*川「こんな奴に、今まで私達は苦戦してたわけ?
     なんか納得いかないわねぇ」

(`・ω・´)「……全ての元凶、か」

<ヽ`∀´>「…………」

(,,゚Д゚)「…………」

口々に言い、それぞれの思惑を込めた視線が集中する。

(メ゚∀゚)「んで、これどーすんだ?
     まさか持って帰るわけでもねぇーだろうし」

( ・∀・)「本当なら色々と分析やら解析やらしてみたいところなのだがね。
     まぁ、誰も許してくれないだろう?」

「「「当然だ馬鹿!!」」」

いくら手足の一本すら動かせない状態にあろうとも、
たとえば魔力を与えてしまえば、おそらくだが復活するはずだ。

そんな危険な存在を、この世界に許しておくわけにはいかない。

( ^ω^)「でも、どうやって……」


『――私に任せてもらっても良いだろうか』



289: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:46:40.60 ID:NP7tvWF90
意見をよこしたのはクレティウスだった。
指輪状態に戻っている彼は、震えを起こして自分の存在をアピールする。

ある意味、こうなるだろうと予想していたブーンは
握っていた拳を開き、その上に白色の指輪を乗せることで応えた。

川 ゚ -゚)「お前なら何とか出来るのか?」

『あぁ』

(´<_` )「別に疑うわけじゃないが……大丈夫なのだろうか」

从・∀・ノ!リ「おぬしと異獣。 決して無関係ではないのだろう?
       そんな存在が死にかけの異獣に入っても、無問題なのかのぅ」

確かにそうだ。
魔力を内蔵しているクレティウスが異獣に入った場合、
何が起こるかまったく想像出来ない。

『…………』

(;^ω^)「あ、あの!」

沈黙に耐え切れず、ブーンが声を発した。
視線が集中するのを感じながら、

(;^ω^)「……クレティウスを信じてあげてほしいんですお!」



325: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:50:04.74 ID:NP7tvWF90
『内藤ホライゾン……』

(;^ω^)「クレティウスは、最初の戦いから僕をずっと守ってくれたお!
     一緒に戦って、力を貸してくれて……ええと、ええっと……」

胸に手を当て、一息。


( ^ω^)「……彼も僕達の仲間だと思うんだお!」


言えた。
今まで言っておきたかったことだ。
たとえ秘密にしていることがあったとしても、それまでの戦いは決して偽物なんかじゃない。

クレティウスがブーンに力を貸してくれたのは、疑いようのない事実なのだ。
だから、ブーンは絶対的な信頼で応えようとした。

『…………』



353: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:53:36.89 ID:NP7tvWF90
沈黙が訪れる。
皆の視線がブーンとクレティウスに集中していた。

試されるような視線に、身をよじらせて抵抗してみる。

( ・∀・)「ふむ」

するとモララーが一歩前に出た。
周囲を見渡すように両手を仰ぎ

( ・∀・)「……だ、そうだが?
     皆の意見も聞いておこうか」

問われた皆は顔を見合わせた。
少し言葉を交わし、うん、と頷き、再びブーンを見て、


「「ま、内藤が言うならいいんじゃね?」」


と、案外軽い調子でブーンの望む返事を寄越した。



408: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 22:59:13.24 ID:NP7tvWF90
(;^ω^)「い、いいんですかお!?」

思わず問いかける。
おかしな慌てように、皆が苦笑し、

(,,゚Д゚)「アイツと一番長く付き合ってきたのはお前だろう。
    お前以外の誰の意見を信じろ、と言うのだ」

(´・ω・`)「だよねぇ」

ノハ#゚  ゚)「私は新参者だけど……彼とクレティウスの絆の強さは解るよ?」

*(‘‘)*「自分の武器を信じるのは普通ですよ」

川 ゚ -゚)「まったくだ」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽとぽやがれ!!」

(;^ω^)「おぉ……皆が神に見えるお……!」

今更ながら、皆の信頼にブーンは胸が熱くなった。
クレティウスを信じる自分を信じてくれるなんて、半ば諦めかけていたというのに。
そして軽く半泣きになりかけるブーンに、

『――ありがとう、内藤ホライゾン。 そして四世界の者達よ』

と、素気なく感謝の言葉が来る。



453: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:05:11.91 ID:NP7tvWF90
ブーンの手にある指輪から、光が浮いた。
おそらくこれがクレティウスの本体――というよりも、思念体のようなものなのだろう。
フワフワと浮遊する光は、ブーンの目の前で静止する。

( ^ω^)「クレティウス……」

『今までよく頑張った、と思う。
 あの時の弱かった少年がここまで強くなるとは』

(;^ω^)「そ、それは君のおかげだお!」

『いや、私だけじゃないさ。
 君自身の潜在的な強さがあったから、ここまで一緒に来ることが出来た』

一息入れ、

『……本当に感謝するよ、内藤ホライゾン。
 君が強いおかげで、私は目的を果たすことが出来そうだ』

( ;ω;)「う"……う"ん! 今まであ"りがどうだお!」

『もう二度と会えないと思う。
 けれど、私がいなくても――』

( ;ω;)「わ"、わわ解ってるお"!! 強く生きる"お!!」

『ならば、安心だな』

その時、クレティウスが初めて笑った気がした。



482: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:09:42.42 ID:NP7tvWF90
光がブーンの傍を離れた。

( ;ω;)「……!」

一瞬、ブーンが足を出しそうになり、しかし踏み止まる。
隣にはクーが寄り添い、その肩を優しく抱いていた。

『…………』

朽ちかけた異獣の上で止まる。
まるで見下ろしているようだ。

彼にも、おそらく異獣に対して何らかの感情があるのだろう。

( ・∀・)「では、その元凶の処理は頼むよ」

『あぁ、任せてくれ。
 もう二度と世界に危害を加えないように、な』

光が落ちる。
葉から落ちる雨雫のようだ。
吸い込まれるように異獣の上に落ちたクレティウスは、


『――さようなら』


と、呆気ない別れの言葉を残して消えた。



503: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:12:00.39 ID:NP7tvWF90
全てが白い世界がある。


音も、景色も、何もかもが白い。


その中を漂う存在があった。



『…………・』


クレティウス。
8th-Wとして戦いに参加した謎の存在。
最終目的である異獣に到達した彼は、
真白であるはずの世界を、まるで導に従うように真っ直ぐと泳ぎ始めた。

更に深い方へと、沈んでいくように。



537: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:14:57.95 ID:NP7tvWF90
『全ての……そう、全ての元凶が……』


身体の感覚はあるようで、無いようで。
『泳ぐ』という感覚で泳ぐような、そんな感じだ。

更に行くと、何かをクレティウスの視界が捉えた。


『これは――』


クレティウスと同じ思念体が一つ、転がっていた。
視覚的には『光が一つ浮いている』状態なのだが、彼はすぐさまその中身を感じ取る。


『……違う』


目的の存在ではなかった。
光を捨て置き、クレティウスは更に奥深くへと潜っていく。



565: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:17:49.98 ID:NP7tvWF90
どこまで潜っただろうか。
道中、何度か光を発見したが、その全てがクレティウスの求めたモノとは異なっていた。

疲労は感じない。
しかし同じ景色を見続けるのは流石に飽きる。
そう思っていた時。


いきなり、クレティウスの周囲を闇が包み込んだ。


『最下層、というわけか。
 ここならばおそらく――』

視覚で周囲を見渡すと、それはすぐに見つかった。


【――――】


『……!』


闇の中でもハッキリと解るほどの黒い光。
クレティウスの視線の先に、それはフラフラと浮遊していた。



609: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:21:51.57 ID:NP7tvWF90
忘れるはずもない。

この感覚。
全てを狂わせた張本人。

『ッ!』

知覚が認めた瞬間、身体が飛び出していた。
今までに見せたことのない速度で、その黒色の光に近付いていく。

『貴様が……貴様が……!』

何かが聞こえる。
それは黒い光からで、


【か、みみみ、み……殺す……ヒヒ……全て……朽ちろ……我が物と……ヒャハ。
 殺す……強く……食え……秩序、……二十一……種……】


呪いの言葉を吐き続ける黒光。
いつからかは解らないが、おそらく異獣と化した時から狂っていたのだろう。

だが、その惨状を見てもクレティウスは止まらなかった。



650: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:27:14.57 ID:NP7tvWF90
『たとえ狂っていようとも、報いは受けてもらうぞ……!』

意識で拳を作った。
握りを確かめ、更に速度を重ねていく、

【NNN……ブロス……ゼアフォー……邪気眼……ザンヌ……ヒヒ……】

『貴様が――』

は、と息を吐き

『貴様が俺とツンの……!!
 それだけじゃない!
 母者を! デレを! クーを! ヒートを! 八頭身を! イチを!
 その全てを狂わせて――!!』


最大の恨みを籠めて振り抜く。
拳が黒い光を砕く直前。
クレティウスの口が、とある名前を作っていた。


――『あ』『え』『い』『あ』、と。



直後、全てが、消えた。



707: ◆BYUt189CYA :2008/07/23(水) 23:33:10.25 ID:NP7tvWF90
( ・∀・)「しかし……」

全てが終わった戦場。
皆、怪我人の応急処置や、死体の処理などで忙殺されている。

その都度、的確な指示を出していたモララーは、ふと呟いた。

爪゚ -゚)「如何しましたか?」

( ・∀・)「いや、なかなか休まる時がないな、と思ってね」

(;^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「ふむ」

視線の先、ブーンとクーが空を見上げていた。
赤から元の青へ戻った空は、どうしても懐かしさを感じてしまう。
しかしブーン達が見ているのは、空全体ではなかった。


――今までなかったモノが存在しているのだ。


( ・∀・)「まぁ……予想の範囲内だったがね」

釣られるようにモララーの見上げる。

そこにあったのは――



戻るエピローグ