( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 286: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:11:04.34 ID:wcoHHkfi0
- <_;プー゚)フ『んなこと言うなら、どうやって倒せってんだよ。
「龍砲」が効かなかったんだろ?』
(`・ω・´)『流石兄者が言うには直撃ではなかったらしい。
狙いが外れたのか回避されたのか解らんが……もしかしたら、という希望がある』
<_プー゚)フ『小せぇ希望だな』
嘆息混じりのコメント。
その時、それを擦り抜ける動きがあった。
|゚ノ#^∀^)『――攻撃を諦めるというのなら、せめて私のサポートくらいしなさい!』
<_;プー゚)フ『んな……っ!?』
青い巨剣を持った赤い巨人だ。
別行動をとっていたはずのレモナが、いつの間にか合流していたのだ。
機械仕掛けの巨躯が背部スラスターから出る光を従わせ、一気に行く。
|゚ノ#^∀^)『はぁぁぁぁっ!!』
激突した。
剣へ変形しているリベリオンを、身体ごとぶつけるような形だ。
衝撃波と音が円を描くように散っていく。
しかしまったく揺るがないケーニッヒ・フェンリルを前に、レモナは更に剣を振りかぶった。
- 294: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:12:12.23 ID:wcoHHkfi0
- |゚ノ#^∀^)『私は絶対に諦めない! 弱音も吐かない!
だってその分、自分の弱さを認めるってことだもの!!』
根源的に、彼女はそれが許せなかった。
己を弱いと認めるのは敗北の時だけだ。
しかし自分は生きていて、まだ戦いは終わりを告げてなどいない。
|゚ノ#^∀^)『だから……!!』
青い刃を叩きつける。
この一撃一撃が、遠き勝利に繋がっているのだと信じながら。
手を止めるのは己への敗北だと理解しながら。
(;´∀`)『あ、あのぉー!? 僕が乗ってるってこと考慮して――もぎゃ!?』
レモナが鬼気迫る勢いで攻撃を続ける中、間抜けな声が割り込んだ。
それは赤いEMAが両手に構える青い巨剣の中からで
|゚ノ ^∀^)『……剣は黙って振られてなさい』
(;´∀`)『酷――――っ!!』
<_プー゚)フ『おいおい、なんだありゃ。 新手のコントか?』
【コント……短編小説の一種で、特に機知に富み、ひねりを利かせた作品のことを言います。
しかし一般的には『笑いを誘う寸劇』という認識が多く――】
(`・ω・´)『無駄な解説は省略しろ、キオル。
おそらくだが、あの剣にも人が乗らなければならんらしいな』
- 305: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:14:25.39 ID:wcoHHkfi0
- あの剣は元々EMA-01『リベリオン』のはず。
経緯はよく解らないが、変形することで自身を刀身と化すことが出来るらしい。
そしてその完成した巨大な武具を、あの赤いEMA『ウルグルフ』が振るうのだ。
と、そこでシャキン達の方へレモナが戻ってくる。
どうやらモナーの間抜けな声に気合を失ってしまったようだ。
|゚ノ ^∀^)『乗るのは誰でも良かったんだけどね。
どうしてもこの人が役に立ちたいっていうから、一番良い役を与えたのだけど』
(;´∀`)『うぅ、だからってこの仕打ちはひどいモナ……』
<_プー゚)フ『まぁ確かに素人にゃあキツい役割だろうなぁ』
(`・ω・´)(む? あれは――)
多少の魔力加護はあるにせよ、それでも振られる度に内部は大変なことになる。
カクテルシェーク状態なコクピットは、ある意味で地獄だと言えるだろう。
戦闘機に乗り慣れているエクストやシャキンならばともかく、
素人のモナーにとっては絶叫マシーン以上の恐怖と衝撃が襲い掛かってきているはずだ。
- 312: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:16:11.96 ID:wcoHHkfi0
- |゚ノ ^∀^)『あのねぇ』
しかしレモナは、そんな弱音と同情の声を溜息で切り捨てた。
|゚ノ ^∀^)『あの馬鹿みたいに大きな獣に食べられて死ぬのと、この剣に乗って勝利するの。
……どっちが良いと思ってンの?』
(*´∀`)『そりゃあ勝った方が嬉しいモナ!』
|゚ノ ^∀^)『なら言うことはないわね。
文句なら後で聞いてあげるから、せめて今は地獄見なさい』
(;´∀`)『うぉあー! 悪夢確定――っ!?』
<_プー゚)フ『あっはっは! 悪魔だ! シャキン、ここに悪魔がいるぞ!』
(`・ω・´)『……お前達、余裕だな』
<_;プー゚)フ『え?』
瞬間、状況に大きな変化が訪れる。
いきなりというタイミングで、対空軌道の魔力弾が襲い掛かってきたのだ。
見れば、既にシャキンは回避運動に入っている。
なんとズルい奴だ、とエクストは直感的に思った。
- 315: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:18:02.05 ID:wcoHHkfi0
- <_;プー゚)フ『ちくしょう、ここにも悪魔がいやがったか!』
【随分と自分勝手な悪魔認定ですね。
ですが、本物の悪魔は私達の下にいると認識します】
キオルの機械的音声に、皆は下を見る。
そこにはケーニッヒ・フェンリルが堂々と構えているわけだが、その背に変化があった。
<_;プー゚)フ『うげっ、なんだありゃ!?』
|゚ノ;^∀^)『あれは……!』
複数の蠢きが見てとれる。
いや、よく見ればその全てが上半身だけの獣だ。
背中の所々に『生えた』獣達が、その口から魔力の塊を弾丸として吐き出して攻撃してきたのだ。
しかも単一ではなく連射で、その光景を言葉にするならば、
|゚ノ;^∀^)『まるで弾幕の真似事だわ……まだ数は少なく、狙いは稚拙だけど――』
(;´∀`)『弾幕薄いよ何やってんの! って感じモナか!』
(`・ω・´)『こちらの戦い方を見て、その身を変化させた……。
やはり普通の生物とはまったく違うのだな』
- 319: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:19:30.43 ID:wcoHHkfi0
- しかし一つ解ることがある。
今まで足下に戦力を集中させていたケーニッヒ・フェンリルが対空攻撃手段を持ち出したということは
即ち、飛行戦力であるシャキン達を煩わしく感じ始めている、ということだ。
<_プー゚)フ『うぇっへっへ……どうやら敵さん、俺達が相当にウザいらしいぜ。
こりゃもっと色んな角度から突いたり引っ掻いたりイジったりしてやらねぇとな』
(;`・ω・´)『言葉はアレだが概ね同意する』
飛来する魔力弾に、シャキン達は回避をとりながら言葉を交わす。
確かに遠距離攻撃の手段を講じられたのは予想外だが、それで撃墜されるほどの腕ではない。
敵の狙いはデタラメが良いところで、テンポも一定。
更に言えば連射でない時点で撃墜はあり得ない。
そして空戦の何もかもを知り尽くそうとしている彼らに、その砲撃は侮辱とさえ言えた。
【こちらの飛べる時間も限られています。
そして、そろそろ地上部隊もケーニッヒ・フェンリルに接近し始める頃……】
|゚ノ ^∀^)『……なら、ここで一気に総攻撃を掛けることも可能なのね?』
肯定の電子記号を示すキオルに、レモナは厳しい表情を浮かべた。
- 321: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:21:16.00 ID:wcoHHkfi0
- 決着は近い。
人か獣、どちらが生き残るかを決める審判の時だ。
思うと、焦燥にも似た緊張が湧き上がるのを自覚していた。
待ち遠しいような、訪れてほしくないような、微妙に揺れる心境だ。
鼓動は不規則になり、息も思うように吸えなくなってくる。
<_プー゚)フ『へっへ、ビビってんのかぁ?』
彼女の微妙な震えを感じ取ったのか、エクストが軽い調子で言う。
|゚ノ;^∀^)『ふ、ふざけないで! 私はそんな――』
(`-ω-´)『――俺は、少し怖い』
『『え"……』』
割り込んできたシャキンの言葉に、二人は絶句する。
特に以前から彼のことをよく知るエクストは、文字通り口をあんぐりと開けていた。
冷静沈着で、容赦無しで、全体的にセメントな感じのシャキンが恐れを抱いているとは。
二人の微妙な沈黙に、シャキンは、だが、と付け加え
(`・ω・´)『怖いからこそ抗えるのだと、俺は思う。
死にたくないから生きるために全力を尽くすことが出来るんだ。
だから、恐怖を感じるのは別に恥じゃあない』
- 324: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:22:51.50 ID:wcoHHkfi0
- |゚ノ ^∀^)『…………』
(`・ω・´)『意地を張ったり強がったりするのも良いがな、少しは場合を考えたらどうだ。
お前が「怖い」と言ったとして……それを馬鹿にする輩が俺達の中にいると思うか』
瞬間、レモナの乗る赤いEMAがエクストへ視線を向ける。
すると瞬間的に彼が首を振るのが見えた。
<_:プー゚)フ『ば、馬鹿野郎! いつ俺がそんなことしたよ!?』
|゚ノ#^∀^)『一レス前の自分くらい憶えてなさい馬鹿!!』
尚もしらばっくれようとするエクストに、レモナは大きな溜息を一つ。
|゚ノ#^∀^)(納得いかないわ……!)
そう思うのは当然で、
|゚ノ ^∀^)(何で三度も諭されなきゃならないのよ……情けない)
東戦で一時離脱のきっかけに一度。
補給に戻った本陣にて一度。
そして今。
どうにも感情的になり易い自分に、彼らは上手くブレーキを踏んでくれる。
それは仲間として見てくれている証拠だ。
- 329: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:24:46.37 ID:wcoHHkfi0
- |゚ノ;^∀^)(うぅ……)
複雑な心境である。
嬉しくもあり、くすぐったくもあり、そして屈辱的でもある。
今まで仲間などという存在に疎かったせいもあって、レモナは妙な恥ずかしさにコクピットの中で俯いた。
(`・ω・´)『……落ち着いたところで、そろそろ攻撃に戻るぞ』
<_プー゚)フ『だな。 とにかくブッ叩かねぇと終わりが見えねぇ』
直後、二機が鋭く動いた。
シャキンは右、エクストは左方向へ。
まるで最初から示し合わせていたかのように、二人は互いをサポート出来る最良の軌道へ乗った。
いや、これは――
<_プー゚)フ『おーい、お前が来ねぇと始まねぇぞ!』
(`・ω・´)『威嚇と囮は俺達に任せろ。
レモナ、お前はその隙に真ん中を突っ切って攻撃するんだ』
|゚ノ;^∀^)『……!』
言葉通り。
レモナの眼前には一つの道が見えていた。
それは、味方がどう動くかを理解した時にだけ見える、不可視のエスコートロードだった。
- 331: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:26:18.48 ID:wcoHHkfi0
- 自分が何処へ、どうやって行けば良いのか一目で解る光景に、レモナは思わず意気を呑む。
( ´∀`)『レモナ』
と、モナーの声が届いた。
それは伺うような音ではなく、むしろ後押しするような力強さだ。
剣を振られれば自分が怖い思いをするというのに、この男はそれを知っておきながら言っている。
だから、レモナは余計なことを考えずに頷いた。
|゚ノ ^∀^)『――えぇ、解ってる。 そして解ったわ』
かちり、と音を立てて心が確定を為した。
胸の内から溢れる衝動に身を任せ、レモナはレバーとペダルを確かめるように動かし、
|゚ノ ^∀^)『こんなに素晴らしいと思える戦い、一秒たりとも無駄には出来ない……!!』
高速で身を打ち出した。
赤い装甲巨人が、青い巨剣を携えての飛行を開始する。
――更に前で、自分を待ってくれている者達のためにも。
- 336: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:27:21.17 ID:wcoHHkfi0
- 一段と騒がしくなった上空を、ハインが見ていた。
黒と灰の戦闘機が舞い、彼らが作った道を赤い巨人が走る。
短い間に何があったのかは解らないが、その動きは今まで見た中で最も滑らかに見えた。
从 ゚∀从「皆、生きるために……」
必死になっているのだ。
その中で気付くこともあれば、得るものもある。
从 ゚∀从「だから頑張って……躓いても、誰かが手を差し伸べて……」
共存、という言葉が思い浮かぶ。
誰かが誰かのために本気になれる『絆』だ。
ハインがずっと憧れ、望み続けてきた光景が空で展開している。
从 ゚∀从「よぉし、僕も……!」
気合一新。
切り替えるように首を振ったハインは、改めてケーニッヒ・フェンリルを睨んだ。
『欲しい』、『羨ましい』などと嘆くのではなく、自分から得に行くために――
从#゚∀从「行くぞっ!!」
加速する。
爆発に似た空気の破裂に身を任せ、アゲインストガードごと飛び込んでいった。
- 340: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:28:57.13 ID:wcoHHkfi0
- 大質量を加速に乗せるには、それなりの時間とパワーを必要とする。
しかしアゲインストガードに搭載されている機械世界の純正ルイルは、その制限を呆気なく破壊していた。
人には扱いきれない量のエネルギーを、ハインは兵器としての本能を頼りに操っていく。
そこから生まれるのは自在の機動だ。
右かと思えば左へ。
下かと思えば上へ。
回避かと思えば攻撃へ。
縦横無尽、無窮自在のままに空を舞う姿は、まるで物理法則を蔑ろにしているかのようだ。
从#゚∀从「負けない――!」
そんな彼女の姿を追う目がある。
正面あるケーニッヒ・フェンリルの巨大な両眼と、身体の各部に生えた異獣の目だ。
合計して四十余りの視線がハインリッヒを追っている。
途端、光が複数破裂した。
上半身だけ獣の形をとる異獣の口が、王に仇なす敵を狙っての魔力弾を発射したのだ。
- 346: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:30:06.85 ID:wcoHHkfi0
- 一斉に向かい来る殺意。
しかし、対するハインに怯えの表情は一切無く。
逆に歯を剥き、
从#゚∀从「そんな攻撃で僕は負けない!」
屈することなく吼えた。
急加速に準じた力の急停止をかけ、創造した全砲門を前方へ展開する。
その間にもこちらへ襲い掛からんと光の粉を散らしながら走る魔力弾を全て見据え、
从#゚Д从「負っけて……たまるかぁぁぁぁぁぁッ!!」
同時、迸った光の線が、敵の攻撃全てを無効化した。
しかし光は留まることを知らず、
从#゚∀从「『走れ』!
無限軌道の螺旋を描き、僕の意志を――」
《!?》
从#゚∀从「『刻め』ッ!!」
ハインの右手――ひいてはアゲインストガードの右腕が大きく振られた瞬間。
放たれていた幾多もの光の線が、ケーニッヒ・フェンリルの巨体を貫いた。
- 351: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:31:47.11 ID:wcoHHkfi0
- 《グ――ァァァァァァアァアアアアアァァアアア!!》
獣の吼声が響き渡る。
今までのような攻撃的なものではなく、痛みに耐える声だ。
ここにきて誰もが、ケーニッヒ・フェンリルが発する初めての悲鳴を聞く。
从#゚∀从「苦しいでしょう。 それが痛みです。
そして、お前達が人間に与えてきた苦痛だ……!!」
それは小さな手傷なのかもしれない。
いや、傷にすらなっていないのかもしれない。
しかしその瞬間、ケーニッヒ・フェンリルは感じたはずだ。
痛みを。
苦痛を。
刻まれた感情は消えることなどない。
つまりハインは身体ではなく精神に一撃を入れたのだ。
この目に見えぬ傷を、ケーニッヒ・フェンリルは忘れることなど出来ないだろう。
そういう意味での、傷だった。
- 358: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:33:18.36 ID:wcoHHkfi0
- 从#゚∀从「…………」
《……ウゥゥゥゥ》
睨む先、巨大な獣は前足を一歩下がらせた形でハインを見ている。
目には初めて感情のようなものが映っており、言葉にするなら『怒り』に近い。
そして唸り声は、明らかに苛立ちを含んでいた。
身の毛もよだつ殺気だ。
以前のハインならば腰を抜かして怯えていただろう。
しかし今の彼女は、そんな視線に真っ向から立ち向かっていた。
震えも、怯えも、恐怖も、何もかもを勇気で押し留める彼女の胸中は、
从#゚∀从(恐れることなんか何もありません……だって――)
自分は、もう一人ではないのだから。
(#,,゚Д゚)「おぉ――!!」
ハインの真横を、ギコとしぃが通過した。
巨剣を正面に構えての突撃は高速の一言。
そしてハインに神経を集中させていたケーニッヒ・フェンリルにとって、
この攻撃はまさに予想外だった。
- 364: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:34:44.11 ID:wcoHHkfi0
- 《ガァァァァァァァ――!!》
迎え撃つはケーニッヒ・フェンリルの牙。
一噛みで何百もの死をもたらす、もはや巨大な『兵器』である。
だが、
(*゚ー゚)「んっ!!」
しぃの羽ばたきが位置をずらし、ギコの身を砕こうとしていた牙は空振りに終わる。
如何に強力な攻撃だろうが回避してしまえば無効だ。
しかも慌てての迎撃など、喰らってしまう方が難しいというもの。
余裕あるタイミングで死を逃れたギコは、すぐさま1st−W『グラニード』を構え、
(#,,゚Д゚)「切り裂け――!!」
その刃をケーニッヒ・フェンリルの首に突き立てた。
更なる羽ばたきで加速するしぃに連れられ、グラニードの刃が火花を散らして走り始める。
ぎ、という濁った音が響く。
チェーンソーで硬い物を刻む音に似ていた。
音は、黒紫の刃と巨大な獣の毛のぶつかりから発せられている。
(#,,゚Д゚)「たっぷり喰らえよ……ッ!!」
《ギュガァァァァァァァァァ!!》
- 371: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:36:29.58 ID:wcoHHkfi0
- 煌く光粒と獣の叫びの中、ギコは無情の刃と化して突っ走っていく。
先ほどのハインのようにケーニッヒ・フェンリルの体毛を切り裂く軌道だ。
だが、すぐにその表情が警戒の色を示した。
(#,,゚Д゚)「しぃっ!!」
(#*゚ー゚)「うん!!」
途端、ギコの身体が浮く。
しぃが羽ばたき一つを追加し、二人の身を風に乗せたのだ。
そして次の瞬間、今の今までギコ達がいた空間を破砕する動きがあった。
(,,゚Д゚)「やはりな……二度も通用するような甘い相手ではない、か」
高速で動く景色の中、ギコは背後を見て舌打ちする。
そこには獣がいた。
大きな獣から、獣が生えていた。
ケーニッヒ・フェンリルの体毛から出現した獣が、こちらを仕留め損なったことによる苛立ちの視線を向けているのだ。
(;*゚ー゚)「あ、危なかったね……っていうか気持ち悪い……」
(,,゚Д゚)「…………」
- 372: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 16:38:09.85 ID:wcoHHkfi0
- 从 ゚∀从「大丈夫ですか!!」
しぃの正直な感想に、ハインが追いついてくる。
それを見ながらギコは、
(,,゚Д゚)「」
何かを言いかけた時、ふと言葉が止まる。
(,,゚Д゚)「待てよ……何かおかしいぞ」
(*゚ー゚)「ギコ君? どうしたの?」
(,,゚Д゚)「身体から子分を生む能力……それが奴の力なのか……?」
(;*゚ー゚)「そ、そうじゃないの?
今だって小さな狼がケーニッヒ・フェンリルの身体から生えてきたんだよ?
こんなの普通じゃないと思うけど……」
(,,゚Д゚)「…………」
もし仮にケーニッヒ・フェンリルの能力をそれだとするならば、おかしな点があるのではないか。
前提や考え方からして破綻しているような、そんな違和感だ。
焦燥に似た感情がギコの心に浮かぶ。
大切な――それも決定的な――何かを見落としているのではないか、と。
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