( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

762: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:32:10.18 ID:wcoHHkfi0
スロットルレバーの側面上部に備え付けられている赤いスイッチを、親指が叩く。

そうすることで兵装パネルが明るく光った。
続いて、それぞれの兵装の残段数が表示される。
シャキンは迷うことなく、ウインドウに並ぶ兵装パネルを全指定した。

【貴方は――】

キオルはそこで、シャキンのやろうとしていることを理解した。
理解した上で言葉を並べる。

【随分と、貴方らしくありませんね】

(`・ω・´)『生憎、俺らしく、というのがどういうものなのか俺には解らんのでな。
     それに一つ我慢ならんことがある』

【それは?】

(`・ω・´)『……このままでは弾切れしていない俺の方が有利だ、ということだ』



766: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:33:46.99 ID:wcoHHkfi0
直後、機体が小さな震動に襲われる。
左右の翼、そして機体の底の兵装ハッチが全て展開したのだ。

奥から頭を覗かせるのは数種類のミサイル群。
今の今まで、シャキンが頑なに温存してきたものだ。
しかし、

(`・ω・´)『行け……!!』

それらはスイッチ一つで発射された。
相棒でありライバルであるエクストに負けられない、という気持ちが後押ししていた。

放たれたミサイル群は、どれもが初速からして高速だった。
一拍の空白後、一気に白煙を噴出させながら疾駆を開始する。

放射線状に分かたれた多量のマイクロミサイルが、
その中心を突き抜ける数基の対地ミサイルが、
それを追う形で飛ぶロングレンジミサイルが、
定まらない軌道を見せる二つの魔爆光ミサイルが、

狙いであるケーニッヒ・フェンリル目掛け、我先にと殺到した。

《――……!!》

撃音と爆音が同時に鳴り響く。
それは、雷鳴のような音に近かった。



768: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:35:17.73 ID:wcoHHkfi0
<_プー゚)フ『へぇ、やるじゃん』

ややあって、エクストの声が届いた。
妙に嬉しそうな感情が混じっており、シャキンも合わせて口元を緩ませる。

(`・ω・´)「……ふン」

【爆撃箇所確認……見た限り、目立った損傷さえも与えられていませんね】

何故か少し皮肉げな声のキオル。
しかし機械である彼女が言うのならば、今の報告は純然たる事実なのだろう。

【やはり人間とは解らない。
 一時の感情に身を任せて、果たして何を得るのでしょうか。
 今の攻撃も目に見える成果はありません。
 もっと効果的な機会に放つべきだったのではないでしょうか】

<_プー゚)フ『はっは、テンションに身を任せてはならないって考え方だな。
         キオルらしいっちゃーらしいが……まぁ、俺達はどうしようもなく人間で、馬鹿で、男なんだよ』

な、と同意を求めるエクストに、シャキンは、あぁ、と応え

(`・ω・´)『……感情が全て正しいとは言わない。
     キオルの言う理屈や理論の方が正しい時もあるだろう。
     だが、これに限って言えば「正しいか間違っているか」じゃないんだ』



774: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:36:58.76 ID:wcoHHkfi0
【では、何を以って?】

(`・ω・´)『自分が納得出来るか否か。
     そこに損得や是非など入り込む余地はなく、狭い自己満足の世界さ』

言葉にするならば『矜持』か。
『誇り』と言い換えてもいい。
ちっぽけで、理解などされない自分だけの世界だ。

(`・ω・´)『だからこそ極めたくもなる……空しか知らん男にとって、それが全てだからな』

<_プー゚)フ『そういうこと』

(`・ω・´)『空は広い。 が、それは一つしかない。
      そしてそれが空に生きる半端者の唯一のルール。
      「己の誇り」を貫くことが出来ぬ者から墜ちていく』

<_プー゚)フ『だから俺達は過去に戦い、シャキンはラミュタスを超えた。
       同じ空を飛ぶ者同士、思想が違えば共存なんか出来やしねぇんだ』

【…………】

<_プー゚)フ『あー、なんだ。 難しいこと言ってるが、つまりこういうこと――』

一拍の間。
そして二人は口を揃え、


<_プー゚)フ『『――コイツには絶対負けたくない』』(`・ω・´)



778: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:39:23.30 ID:wcoHHkfi0
【貴方達は……】

一瞬、言葉が途切れ

【貴方達は、私が知る限りで最大の馬鹿だと言えましょう。
 しかし不思議なもので、それを否定する気にはなりません。
 データ上では否定材料などいくらでも抽出できるのですが……不思議です。
 その馬鹿げた行為を、むしろ喜ばしく思うなど――】

(`・ω・´)『そいつは重畳。
      ならば、その勢いで行こう。 決着をつけに……!!』

両機が傾いた。
機首を真下に向け、メインスラスターを全開へ。
旋回の軌道から、落下の軌道へ移るためだ。

程よい浮遊感を得ながら、二人は接触寸前まで機体を近付ける。
並のパイロット同士には出来ない芸当だ。

過去のいがみ合いは、今この時においては懐かしい思い出でしかない。
あの戦いを通じて二人は互いの力を認め、掛け替えのない好敵手となった。

敵ではなく、しかし単なる味方でもない。

切磋琢磨を基部においた摩訶不思議な関係。
超えることを誓い合い、互いの成功を喜び、そして同時に目標ともする絆。
そこに損得などといった無粋な感情は一切ない。

それほど、今のシャキンとエクストの気持ちは通じ合ってた。



781: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:41:01.95 ID:wcoHHkfi0
<_#プー゚)フ『待たせたな、13th−W「ラクハーツ」!
         テメェの仕事がやってきたぜ!!』

(#`・ω・´)『キオル!
      6th−W「ギルミルキル」モードと、「Force Attack」モードの同時発動を!』

【――心より、了解】

大気を切り裂きながらの急降下。

水蒸気の白尾を引きながら、二つの機体に多量の魔力が循環を始めた。
物理法則を否定する力がオーバーヒートの火花を散らし、その機体のカラーすら歪め始める。

エクストの駆るGDF『ミョゾリアル』は、緑の光に。
シャキンの駆るEMA『キオル』は、赤の光に。



783: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:42:17.94 ID:wcoHHkfi0
更に最接近していた機体の二色が混じり、レッドグリーンのコントラストを生む。
そこに大気の破裂と白尾が加われば――


(#`・ω・´)『おぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

<_#プー゚)フ『いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!』


一直線に落ちる二機は流星よりも疾く、
その輝きは空に浮かぶ星々よりも煌き、


――赤と緑の色が、目にも留まらぬ速度で落ちていく。


狙いは、真下にいるケーニッヒ・フェンリルの巨体。
その無防備な背中に最大級の突撃をぶつけるため、二人は意思を持って吼える。


決着を呼ぶ第一撃が、大音と共に放たれた。



785: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:44:01.84 ID:wcoHHkfi0
|゚ノ ^∀^)「…………」

少し離れた位置でレモナは見ていた。
自身を兵器に見立てた二人の突撃を。

コクピット越しに映る景色は、赤と緑、そして細い白の線によって彩られている。
心を通じ合わせ、しかしプライドを捨て切れない男達にしか描くことの出来ない光景である。

二機が最大の力を以って落ちた先にはケーニッヒ・フェンリル。
巨大な獣は、いきなりの直上からの攻撃に驚いたようだ。

そして直撃を受けた背は曲がり、順調に動いていた足が止まっていた。

残り八〇〇メートル。

シャキンとエクストの同時突撃で歩調が鈍くなってはいるが、
ここでレモナの攻撃を重ねることにより、更に時間を稼ぐことが出来るだろう。
だから、彼女は深く息を吸い、

|゚ノ ^∀^)「行くわよ、モナー」

(;´∀`)『わ、解ったモナ……!』



790: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:45:25.15 ID:wcoHHkfi0
浮かんでは流れる汗も拭わず、レモナはレバーを握り直した。

剣と化したリベリオンは既に構えの中に組み込まれており、
あとはペダルを踏み込めば、彼女の乗るウルグルフは最大速度で突っ込むだろう。


チャンスは今しかない。


|゚ノ#^∀^)「この一撃に全身全霊の力を込める……!!」

腰だめに構えた剣は青色を放ち、包む魔力が輝きを与えた。

発進する。
高機動性を活かして先回りしていた位置から、赤い鎧武者が空を疾駆した。

前から来る重力付加が、レモナの身体をシートへ押しつける。
しかしその重圧と痛みすら、今の彼女にとっては生の実感であった。



795: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:46:40.12 ID:wcoHHkfi0
レモナは刹那に思う。

何度も間違えた。
何度も死にかけた。
何度も誰かに迷惑をかけた。

だから謝って、感謝したい人がたくさんいた。

でも、その言葉を送る相手は、もうこの世にいない。
だというのに、自分は未だ生きている。

生かされたのだ。
レモナの過ちを知っていながらも。
過たれていると受け止めた上で、彼らは彼女を生かしたのだ。

何故。

答えなどない問いかけは、今もレモナの胸にある。
何も知らず、偽りの権利だけを振りかざし、感情のまま刃を持つ自分を、彼らは何故に生かしたのか。

解らない。
解るわけがない。

もう二度と聞くことの出来ない声。
答えを欲する感情はあるが、それは不可能だと理性が言う。

だが求める心は、この冷たい戦場の中でも凍えることなく焦がれ続けていた。



800: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:49:06.61 ID:wcoHHkfi0
|゚ノ#^∀^)「っはぁぁッ!!」

ケーニッヒ・フェンリルへ一気に接近したレモナは、迎撃を受ける前に腕を動かした。

容赦無しの無加減斬撃。
機体と慣性の全加重を乗せた一撃は、身を前に投げるような形で繰り出された。


半円を描く一刀は太陽を割るが如く。

軌跡を描く青刃は月輪を裂くが如く。


剣線を真芯で捉えた見事な斬線は、

|゚ノ#^∀^)「ッ!!」

だが、分厚い魔力の毛並によって逸らされることとなる。
自分の放った力が外れるという並の人間には解らない不快感が脳を突いた。
頭に血が昇るのを自覚しながらも、しかしレモナは努めて冷静でいようとする。

今までの経験が、自然とそうさせた。



804: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:50:29.67 ID:wcoHHkfi0
|゚ノ#^∀^)「だったら教えてあげるわ……!」

前への勢い余った機体は、振り抜いた剣に引っ張られて上下逆さまとなる。

このまま力を抜けば地に落ちるだろう。
逆に姿勢を戻そうとすれば攻撃を受けるだろう。

今、ケーニッヒ・フェンリルから生まれた多くの獣は、生みの親を守るように布陣していた。
陸は言うまでもなく、翼を持つ個体は空にも、だ。
その只中に突っ込んで来た自分は間違いなく最優先駆除対象である。

圧倒的な死の予感に、しかしレモナは表情を緩めない。

|゚ノ#^∀^)「どうして、わざわざEMA一機を変形させて剣を作っているのかを――!!」

判断は一瞬。
レバーをしっかり握り、身を一気に振った。

機体がその場でロールする。
レモナの身にかかる慣性の突っ張りは、むしろ心地良くすらある。
そして、身体の中身全てが半身に集ったかのような感覚の中、

|゚ノ#^∀^)「こうするためよッ!!」

青い巨剣を、力の限り振るった。



809: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:52:48.25 ID:wcoHHkfi0
形としては、ケーニッヒ・フェンリルに背を向けて逆さになった状態からの攻撃だ。
つまり下から上への斬撃が炸裂したことになるのだが、
如何にEMAといえども、その巨躯にかかる重力を全て無効化するほどの出力は無い。

しかし、剣は振られた。

《――……ッ!!》

いきなりの挙動に加え、首元を切りつけられたケーニッヒ・フェンリルは見る。

物理法則に反する事実の正体とは、光だった。
巨剣となったEMA-01『リベリオン』の刀身の根元。
そこに、元はリベリオンの飛行機能を支えていたスラスターが、一纏めになって光を噴いていた。

今のは、剣から出るブーストによる現象だ。

数十トンはある金属の塊を飛ばす大出力は、
逆さになったウルグルフの姿勢を一瞬で反転させるほどの瞬発力を持っていた。

|゚ノ#^∀^)「そして――っ!」

斬りつけついでに上昇したウルグルフは、しかし止まらない。
両腕で柄を握り、今度は重力に身を任せて落ちてくる。

|゚ノ#^∀^)「『リベリオン』の名が示すは復讐……遂げられるまで、しつこく追うわ!」

三撃目。
上、下、ときて、更に上からのアタック。
機体と剣の両方のスラスターを用いた、EMAならではの贅沢な連続攻撃である。



813: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:55:08.50 ID:wcoHHkfi0
破裂音。
そして強烈な光。

剣と化したリベリオンの魔力と、ケーニッヒ・フェンリルの纏う魔力との擦過による大音だ。
火ではない火花――いわば光花が激しく散り咲き、その威力の程を周囲に伝える。
あまりの光に、一瞬だけ時が止まったかのような空気が流れるが、

|゚ノ;^∀^)「――っくぅぅぅ!!」

(;´∀`)『うわわわ……!?』

果たして根負けしたのはウルグルフの方だった。
魔力と魔力のぶつかり合いに耐えられなくなった機体が、一気に後方へ弾き飛ばされる。

(;´∀`)『レ、レモナ!!』

|゚ノ#^∀^)「解ってる!!」

乱れた姿勢を空中で立て直しながら、レモナは強く言う。

これもまた、一つの想定内であった、と。

弾き飛ばされたことで、機体とケーニッヒ・フェンリルの間に充分な間合いが発生する。
言い方を変えれば充分な助走距離が出来上がったことに等しく。

事実、レモナはこの空白を加速の材料にしようと狙っていたのだ。



820: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:57:30.08 ID:wcoHHkfi0
|゚ノ#^∀^)「私は負けない! 諦めない! そして簡単には死なない!!
      彼らが何故、私を生かしてくれたのかは解らないけれど――」

雑魚が集まるが、隙など与えてなるものか。
巨剣を今度は突き出すように構えたウルグルフは、背のスラスターに目一杯の光を生み、

|゚ノ#^∀^)「――これからも生きていくのが、最大の応えになるんだからッ!!」

もはや魔力の残量など考えない。
出来る限りの最大出力を以って、復讐に燃える赤い機体が疾駆した。

初速からコンマ数秒で音速を超える。
同時に機体にとって想定外の衝撃と加圧が、一気にメインフレームの寿命を奪う。
自壊の兆しを見せるウルグルフは、しかし水蒸気爆発による白い輪を幾重にくぐりながらも飛んだ。

|゚ノ#^∀^)「!」

そんな一瞬の間にレモナは見た。
剣化しているリベリオンに、更なる魔力が纏われるのを。

あの操作を可能とするのは、リベリオンに乗っている者だけである。


……いいわ、行きましょう。


愚図で、情けなくて、どうしようもないけれど。
今この時に貴方が出した勇気と覚悟、私が見届けた。



823: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 18:59:10.64 ID:wcoHHkfi0
|゚ノ#^∀^)「ぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!」

《――――……ッ!!?》

赤光が、獣へ激突した。

一瞬だった。
光を放つ赤が行き、衝撃が走り、そして轟音が最後に来る一瞬だった。
道程にいた異獣が、発生した衝撃波によって微塵切りにされるほどの速度であった。

そして結果は一目瞭然である。

赤い人型が、右肩から巨大な獣にぶつかっていた。
よほどの衝撃だったのか、その右肩を始点とする腕全体は無惨にも全壊している。
その他にもフレーム各部の軸がずれてしまったのか、微かに歪な様相で存在している。

だが、それで終わりではなかった。

《グ……――ガァァァァ……!?》

自身を『刃を持つ砲弾』として打ち出したレモナは、しっかりと剣先をケーニッヒ・フェンリルの腹部に差し込んでいたのだ。

魔力の総量では勝てない勝負だったのかもしれない。
しかし速度が味方したおかげか、
発生した瞬発的な貫通力が、ケーニッヒ・フェンリルの防御力を上回ったようだ。



831: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:03:44.36 ID:wcoHHkfi0
しかし以降、ウルグルフが動くことはなかった。
刀身の半分ほどをめり込ませた形で、装甲の隙間から火花を散らしながら。

|゚ノ;^∀^)「――っはぁ、はぁ……!!」

あまりの衝撃に冷房装置が壊れたか、熱を持ち始めたコクピット。
その中でレモナは震える身体を抑えつけるようにして喘いでいた。
額と肩から少量の血が流れていることから、激突時の衝撃が凄まじかったことが解る。

|゚ノ;^∀^)「はぁ……何とか……一矢報いることが出来たみたいね……」

ブレる頭で機体をチェック。
右腕部はどうしようもなく、全身は衝撃に軋んでいる状態だ。
各部を繋げる接続線が千切れたのか、レバーやペダルを動かしても反応は薄かった。

何とか生きているスラスターを操作し、リベリオンを引き抜く。
また集まってくる異獣に包囲される前に、レモナはそれ以上攻撃もせずに撤退した。
既に機体は崩壊寸前で、いつ力を失って墜落してもおかしくないからだ。

不時着の操作を行ないながら、レモナはバックカメラで巨獣を見る。

彼女の放った一撃は、思ったよりも小さな傷跡として残っていた。
ケーニッヒ・フェンリルにとって、さほど重大ではなかったのかもしれない。
しかし、

|゚ノ#^∀^)「生き残った私の、勝ちよ……異獣……!」

地面が近付いてきたところで言い切り、レモナはそこで意識を失った。



835: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:05:21.82 ID:wcoHHkfi0
( ゚∀゚)「なんとか間に合ったみてーだな……」

本陣まで残り七〇〇メートル。

ジョルジュが立っている。
荒れた赤褐の大地の上、疲労に面倒そうな表情を乗せて。
ここまで全力で走って来たのか、額には多量の汗が浮いていた。

荒い息を吐く視線の先には、巨大な白い柱がある。

いや、柱ではない。
大き過ぎるが故にそう見えてしまうが、表面をよく見れば毛で覆われている。

ケーニッヒ・フェンリルの足だ。

ジョルジュは巨大な獣の足下に立っていた。
四本ある内の、右後ろに位置する地点だ。
攻撃の準備をしに先回りしたクー達とは違い、彼は単独でケーニッヒ・フェンリルを追っていたのだ。

もちろん理由がある。

( ゚∀゚)「シャキン達は上手くやったみてーだな。
     なんだかんだ言ってやるじゃねぇか」

シャキンとエクスト、レモナとモナーの連続攻撃を受けたケーニッヒ・フェンリルは行動を停止していた。
あまりの衝撃に体勢が崩れ、その立て直しを図っているのだ。



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