( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

838: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:06:31.83 ID:wcoHHkfi0
( ゚∀゚)「だが頼ってばかりじゃいけねぇ……次は俺の番だ」

足止めの必要があった。
既にシャキン達の攻撃は終わり、特にレモナの方は再度の攻撃が不可能な被害を受けている。
先回りしている味方の準備時間を稼ぐ意味でも、ここで誰かが代わってやらねばならない。

思うジョルジュは、おもむろに己の両手へ目を向ける。

右手指は四。
左手指は三。

数字は、折れていない指の数だ。
残る全ての指は関節の存在しない部分から歪に折れ曲がっている。
血が集まり、腫れ、まるで手袋をしているかのように膨らんでいた。

(;゚∀゚)(ちっ……あの野郎、しつこかったよな……)

機械の四肢持つ男、キリバ。
東側での激戦時、ジョルジュはこの男を抑えつけるため鎖を振るった。

しかし、束縛されながらも動きを止めないキリバは数本の鎖を引き千切る。

操作系の問題で鎖と指がリンクしていたのがいけなかったのが
鎖を一本失う度、対応するジョルジュの指が折れていたのだ。



843: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:07:42.47 ID:wcoHHkfi0
(#゚∀゚)「けど、負けねぇぞ」

誰に言うでもなく呟かれた言葉には力が満ちている。
この戦いに、勝利する価値を見出しているからだ。


……生きて帰る。


ジョルジュの目的はそれだ。
戦闘しか知らなった彼が、果てに見つけた帰るべき――いや、帰りたいと思える場所。
そこに至るため、今のジョルジュは一人でケーニッヒ・フェンリルに挑もうとしていた。

(#゚∀゚)「DOUBLE OVER ZENITH……!!」

右手からは灰色の光が。
左手からは紫色の光が。

同時というタイミングで、握った両拳から強い光が漏れた。

そして二つの色が混ざり始める。
自分の内で何かが這いずるような感覚の中、ジョルジュは意識を集中させた。

限界突破した二つの大きな力を纏め上げるためだ。



849: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:09:49.38 ID:wcoHHkfi0
二種の疑似精神を制御し、一つにするという荒業は決して容易いことではない。

少しでも気を抜けば魔力が暴走してしまい、
最悪の場合はジョルジュ自身の身が破壊されてしまうだろう。
だが、

(#-∀-)(――――)

ジョルジュは制御しきった。

理屈ではない。
流石はウェポンを扱うために生まれてきたと言うべきか、
本能レベルでの意識下により、高難易度の制御を成し遂げたのだ。
そして、たった一人でケーニッヒ・フェンリルを抑えようとする姿は、間違いなく『優秀作』たる堂々としたものであった。

(#゚∀゚)「さぁ、こっからは俺様オンステージだぜ……!」

両腕を勢いよく振るった。
すると、翼のようにして広げられた腕、そして五指の先に鎖が出現する。
合計十本もの鎖――その内五本はボロボロだったが――は放射線状に広がり、更に翼を大きく形作っていった。

最大まで仰いだ動きを止め、一呼吸。
深く吐き、深く吸い、

(#゚∀゚)「――だぁぁぁぁぁりゃあああああああッ!!!」

構えた両腕を勢いよく前方へ投げ出した。



857: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:12:22.47 ID:wcoHHkfi0
十の鎖が意志を持っているかのように宙を走る。
魔力で編まれた鉄の連鎖が絡む先は、ケーニッヒ・フェンリルの右後ろ足だ。

硬い金属音と共に、鎖が束縛する。

完全固定。
鎖には一片の撓みもない。

(#゚∀゚)「さぁ、力比べといこうぜ……!!」

一息。


(#゚∀゚)「テメェと俺様の魂! どっちが重いってのかをなぁ!!」


次の瞬間、ジョルジュの身体が前へと吹き飛んだ。



862: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:15:20.24 ID:wcoHHkfi0
背後から強い力で押さえれたように見える光景は、しかし逆だ。
体勢を立て直したケーニッヒ・フェンリルの右足が前を目指し、絡みつく鎖に引っ張られての吹っ飛びだ。
身体の中、特に腕と肩が軋みをあげるのを感じながら地面に叩きつけられる。

(#゚∀゚)「んぎっ……! っちくしょう!!」

完全に倒れる直前、反射的に出した左足の膝が支えとなり、更に一回転を追加した。
そのまま驚異的な身体能力で着地したジョルジュは、腰を深く落とし

(#゚∀゚)「行かせると思うか……!?」

体重を後ろへ流し、

(#゚∀゚)「この俺様が、テメェを素直に歩かせると思ってンのか!?」

歯を食いしばり、

(#゚∀゚)「そんなわけねぇよなぁ……!?」

あぁそうさ、と口の中で呟き、

(#゚∀゚)「確かにテメェの脅威はハインかもしれねぇけどなぁ!?
     俺様だってテメェの相手くらいは出来るように作られてンだよ!!」

だから、

(#゚∀゚)「この、俺様がァァァァァァッ!!」

叫び、両足を大地に刺す勢いで沈め、重心を後方へ落とした。



867: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:16:26.67 ID:wcoHHkfi0
《!?》

変化が生じたのは直後だ。
前だけを目指していたケーニッヒ・フェンリルが、僅かに身を震わせた。
前へ出ようとし、しかし何かに邪魔されているような動きだ。

特に動きを阻害されているのが右足である。
そしてそこには、文字通り足を引っ張る形でジョルジュが踏ん張っている。

行かせてたまるか、と。
進軍の阻止は出来ないかもしれないが、足止めくらいは、と。

《……――――!》

(;゚∀゚)「ぬぎぎぎぎぎ――って、うぉ!?」

しかし現実は厳格であった。
ケーニッヒ・フェンリルが強く右足を引くことで、耐え切れない力がジョルジュを襲う。

踏ん張っていた足が外れた。
引っ掛かりを失った足裏は、堰を切ったかのように滑り始める。

慌ててもう一度足に力を込めるが、既に勢いはジョルジュ一人では止まらないところまで来ていた。



869: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:18:33.14 ID:wcoHHkfi0
(#゚∀゚)「ちっくしょ……!! ざけんなっ!!」

形振り構わずの本気で止めにかかるが、それでもケーニッヒ・フェンリルに変化はない。
むしろ更に勢い増して引き摺られていく状況だ。
ジョルジュの顔に焦りが浮かぶ。

あり得ない。
この自分が何も出来ないなんて。

シャキンとエクストは、その速度と技術にモノを言わせて足止めに成功した。
レモナとモナーは、EMAという兵器を用いて足止めに成功した。
ケーニッヒ・フェンリルの足下では、敵に囲まれながらも抵抗を止めない兵達がいる。

事実を確認した上で、ジョルジュは自分を見て、


――なんだこの様は?


(#゚∀゚)「くそっ! くそくそくそっ! 止まれっつってんだろぉがぁぁぁ!!」

鎖を制御する指から異音が響くのも厭わない。
全身を突っ張らせ、地に足を刺すようにして抵抗した。

だが、それでも止まらない。

単純な力や理屈では覆せない圧倒的な質量差が原因だ。
いくらジョルジュが踏ん張ろうとも、ケーニッヒ・フェンリルの巨体からすれば小動物の抵抗に等しい。
まるで気に留める素振りすら見せず、ゆっくり前だけを目指していた。



874: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:19:50.43 ID:wcoHHkfi0
侮辱以前の問題である反応に、ジョルジュは獣を睨みながら思う。

一体自分は何をやっているんだ。

早く止めなければ。
少しでも歩を削って、そして少しでも時間を稼がなければ。
誰もが本気で時間を作っているのだから、自分だって負けていられない。

(#゚∀゚)(何やってンだ、俺様の身体は!
     こういう時にしか役立たねぇ人間じゃねぇかよ!?)

いや、

(#゚∀゚)(まともな人間ですらねぇっ……!
     こんな化物達と戦うための存在……そんな俺様が何も出来ずにいるなんか!)

認めるわけにはいかない。
それは自分の存在理由の否定にしかならないからだ。

だから、というように、彼は更に力を求める。

(#゚∀゚)(これは汚ぇ戦いしか知らなかった俺様の最後の仕事だろう!?
     なら果たしてみせろよ俺……!!)



879: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:22:03.23 ID:wcoHHkfi0
既に身体は限界を超えつつあった。

勢いよく流れる血流が管を破り、引き締まった筋肉が更に絞られ自壊していく。
鎖とジョルジュを繋ぐ両腕はボロボロで、いつ壊れてもおかしくない状態だ。
現に両手指のほとんどが歪に折れ曲がっており、腕部分の骨も悲鳴をあげっ放しである。

しかしそれでも、ジョルジュは離さなかった。

戦いでしか自分を表現することが出来ないから。
存在の理由を己で否定することになってしまうから。
そして何よりも、


――帰りたい場所があるから。


(#゚∀゚)「テメェらからすりゃ、ここは下らねぇ世界かもしれねぇ……。
     あぁそうさ。 この世界は誇れるほど美しくもねぇし、しかも変態多いしな」

あまり認めたくはない部分を素直に認めたジョルジュ。
その表情に諦めは無く、むしろ逆で、

(#゚∀゚)「だが、テメェの勝手な行動で壊されてたまるか……ッ!
     それが俺様は我慢ならねぇ!」



884: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:24:25.85 ID:wcoHHkfi0
この世界は、絶対に離さない。

以前のジョルジュからすればあり得ない思考だ。
偽善ならまだ解るが、しかしこの思いは間違いなく本物である。
確かに、ここは自分を生み出した憎たらしい世界だが、

(#゚∀゚)「……今の俺様にとっちゃ割と住み心地が良いトコロなんだよッ! そう見えるんだよ!」

やっと見つけた自分の居場所を、そう易々と手放すわけにはいかない。
世界の命運だとか、これからどうなるのか、などに興味はなかった。

(#゚∀゚)「馬鹿が多くて、変態も多くて、全体的にどーしようもねぇ!
     けど、こんな俺様をも対等に仲間として信じてくれる奴らがいるんだ!
     だったら俺様は……!!」

崩れかけた体勢を戻す。
無理な動作に全身が軋みをあげたが全て無視。

ただひたすらに、ケーニッヒ・フェンリルと己を繋ぐ鎖を握りながら吼えた。

(# ∀ )「――――ううううぉぉぉぉぉぉおおおおおああああああッッ!!!」



889: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:26:58.70 ID:wcoHHkfi0
止める。
止めてみせる。
止められないわけがない。

己は戦うために生み出された身だ。
『この程度』の巨体に負けるわけにはいかない。

(#゚∀゚)「テメェなんかよりも、もっとデケェ奴を見てきたんだからよ……!」

単純な質量では説明出来ない大きさ。
腕力じゃ到底動かせない、そういう意味での『重い』者達を見てきたのだ。
自分などと比べるようもないほど大きな、見果てぬ理想を追い求めた者達がいるのだ。

だから、

(; ∀ )「――っぐぅっぁああ!?」

己を鼓舞することで耐えてきた身体に限界が訪れようとしていた。
腕の各機能は崩壊寸前、手に至っては無事な指がない。
それでも鎖を手放さないのは、ジョルジュの執念によるものだ。

しかし、限界は限界だ。
こればかりは誤魔化しようもない。

二つのウェポンを操作する精神の方にも無理がきていた。
もし今の全力状態で制御を失ってしまえば、荒れ狂う魔力がジョルジュの身を喰らうだろう。



900: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:29:12.87 ID:wcoHHkfi0
(#゚∀゚)「くっ……!?」

動きが止まった。
いや、ケーニッヒ・フェンリルの右後足が地面についたのだ。
逆を言えば、またすぐに動き出すということでもある。

そんな中、ジョルジュの頭に一つの考えが浮かんだ。

今すぐこの手を離せば助かる、と。

両腕は既にボロボロだが、最悪でも命だけは助かるはず。
だがその分、他の者への負担が大きくなってしまう。


死ぬか生きるか。
負けるか勝つか。


双方の誘惑がジョルジュを惑わす。
『勝って生きる』が理想だが、今の状態では難しいのは彼が一番理解していた。

(#゚∀゚)「くそっ」

だからこそ、その悪態は吐き出され、

(#゚∀゚)「くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそぉぉぉぉっ!!
     なんで俺様はこんなに……こんなに、こんなに弱ェんだよ――!!?」



902: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:30:34.35 ID:wcoHHkfi0
クーのように気高くもなければハインのように強くもない。
何もかもが中途半端で、誇れるモノなど持っていなくて。
情けない自分を、ジョルジュは心の底から恨んだ。

たったこれだけの足止めも出来ない自分など、存在価値があるのか、と。

いや、そもそも自分は存在を許されて生まれていない。
勝手に作られ、勝手に生み出されたのがジョルジュだ。
正しい方法で生まれていない自分が、この世界に必要などされているわけがない。

己を『様』付けで呼ぶのも、そんな暗い考えを吹き飛ばすためのものだったのだが――

(;゚∀゚)「はは……そうだよな。 そんなもんだよな。
     初めから存在することなんかなかった命……それが俺なんだよな」

だったら、

( ゚∀゚)「死んで世界を救う……それも良いかもしれねぇ、か」

帰りたい場所はある。
けれど、自分などでは不相応なのかもしれない。

場所の問題ではなく、そういった願いを持つこと自体が。



907: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:32:08.06 ID:wcoHHkfi0
( ゚∀゚)「……ごめんな」

全身に力を籠めながらジョルジュは言う。
行動とは裏腹の、弱い言葉を。

( ゚∀゚)「ごめん……俺、やっぱ弱かったよ。
     でも、それで終わりたくないから……最期くらい、皆の役に――」

震える息を深く吸い、目を瞑る。

ここからは己の身体がどうなっても、ケーニッヒ・フェンリルを止める。
如何なる激痛にも、恐怖にも耐え抜く覚悟で。

強く思い、そして身体を引こうとした時。


(;゚∀゚)「……え?」


右の肩を叩く手が、あった。



916: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:33:30.12 ID:wcoHHkfi0
(;゚∀゚)「え?」

思わず反射的に振り向き、ジョルジュは再び疑問の声を発した。
そこに予想すらしていなかった人物がいたから。


(´・ω・`)「やぁ、随分とボロボロだね」


そこには、彼を護るために自ら傷付き、戦線から退いたショボンがいた。
更に後ろには装甲車が一台あり、それに乗ってここまで追いついたことが解る。
走行音にすら気付けなかったのは、よほど自分が集中していた証拠だろう。

しかし理解出来ないのは、

(;゚∀゚)「何で……なんでだよ!? どうして来た!?」

彼の手に紫色の指輪と意志を託したショボンが、どうしてわざわざ。
表情と声で問いかけると、彼は困ったような笑みを浮かべ、

(´・ω・`)「――友達のピンチに駆けつけるのが友達だと思うんだ」



924: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:35:03.12 ID:wcoHHkfi0
(;゚∀゚)「ば、馬鹿か! お前、怪我してんのに!」

(;´・ω・`)「応急処置は済んでるし、痛み止めも無理を言って打ってもらってる。
      ……それに、怪我の度合いで言えば君の方が重傷にも見えるけど?」

(;゚∀゚)「俺は……そ、そこら辺の奴より頑丈だから――ら?」

そこまで言って気付いた。
制御している指輪の負担が和らいでいることに。

まるで誰かが肩代わりしているかのような感覚に、ジョルジュはショボンを見る。
すると彼は、またもや困ったような笑みで、

(´・ω・`)「とはいえ無理は駄目だし……これくらいのことしか出来ないけどね」

(;゚∀゚)「お、お前……」



932: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:36:26.27 ID:wcoHHkfi0
5th−W『ミストラン』はショボンのウェポンだ。
ジョルジュの操作よりも、彼の方が数段上手く扱えるのは自然である。
それをジョルジュの肩を掴みながら行なっているのは、少々驚きではあるが、


……これなら、もう少しだけ頑張ることが出来る。


(´・ω・`)「アイツを止めるんでしょ? 僕も手伝うよ。
     運転手さん、もうちょっと時間をくれないかな」

問えば、装甲車の運転席にいる爽やかそうな男が返事を寄越す。

「はっはっは、『早く戻ってこい』とうるさい医療班は俺が適当にあしらっておくさ。
 しかし無理はしないでくれよ。 動けるとは言え、君は重傷者に変わりないんだから」

(´・ω・`)「ありがとう」

そして呆けるジョルジュを見て、

(´・ω・`)「さぁ、どうする?」

(;゚∀゚)「馬鹿野郎……お前、ホントに馬鹿だよ。
     怪我してて、無理も出来ねぇってのに……俺なんかを手伝いに来やがって……」

(´・ω・`)「君のことだから一人で無茶してるんじゃないか、って思ってね。
      どうにも君は、自信満々なくせに自分を蔑ろにする部分があるみたいだし」

(;゚∀゚)「うっ……」



939: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:37:29.19 ID:wcoHHkfi0
心当たりがあるのかジョルジュが表情を歪める。

彼はクー達と違い、人間ではなく戦闘用生物だと割り切っている部分があった。

故に、死を諦観してしまっている部分がある。
何がきっかけで壊れてしまうか解らないほどの不安定さだ。

あの弾けた言動も、その裏返しだとショボンは知っている。
一歩間違えれば自分も似たような考えに至っていたかもしれない、と理解していたからだ。

(´・ω・`)「でも……『どうする』なんて聞き方は卑怯だったかな」

(;゚∀゚)「え?」

(´・ω・`)「アイツを止めよう、ジョルジュ。
      僕と君で、出来る限りの時間を稼ぐために……帰るべき場所を守るために」

( ゚∀゚)「……!!」



958: ◆BYUt189CYA :2008/07/22(火) 19:43:13.08 ID:wcoHHkfi0
認識したと同時、震えが来た。
背中から首、頭を回って胸、そして肩、腕、腰ときて、最後に足が地面を軽く擦る。
体力は果て、精神力は枯渇し、しかしどこからか力が湧いてくるのを感じた。

それは意志の力。
本気で望もうとした時だけに来る、特別な力。

身体が熱を取り戻していく。
思考も、神経も、皮膚も、全てに熱が満ちていく。

(  ∀ )「馬鹿野郎……お前、ホント馬鹿だよ。
     自分が怪我してんのに他人を手伝おうとするなんて、御人好しもイイとこじゃねぇか」

(´・ω・`)「うん、よく言われる」

( ゚∀゚)「でも……そこがお前っていう存在の一つなんだよな。
     だから――」

伏せていた目を開く。
そこには既に、死を予感させる暗い光は微塵もなく。

(#゚∀゚)「俺様を手伝う以上、半端な覚悟じゃ痛い目見るぜ……!!」


直後、一気に力を解放した。


時を同じくしてケーニッヒ・フェンリルが突如、足を止めた。
その原因を知るのは、うるさそうに通信機のスイッチを切る装甲車の運転手だけであった。



戻る次のページ