( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

163: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:40:33.68 ID:xg28za3k0
時は数日前に遡る。
世界政府に喧嘩を売ったモララー達は、その進撃中にかつての仲間達と対峙することとなった。
人質をとられたブーン達は、彼らの足止めを不本意ながらの任務としていたのだ。

ノハ#゚  ゚)「それで私は、ミルナの代わりにクーと戦うことになった。
      ちょうど目覚めたばかりだったし、ウォーミングアップのつもりでね」

川 ゚ -゚)「……それは初耳だぞ」

ノハ#゚  ゚)「まぁ、言ってないし」

何やら視線をぶつけて火花を散らす女性二名。
対して残された男性二名は、その迫力に気圧され身を縮める。

ノハ#゚  ゚)「14th−W『ハンレ』。
      全てのウェポンの能力を有する、クー専用のウェポン。
      もし私の相手がこれじゃなければ、きっと違和感に気付かなかったと思う」

( ゚д゚ )「成程、戦闘中の集中力は半端じゃないからな」

川 ゚ -゚)「そうだな。 所持者である私でさえ気付けなかった小さな点だ。
     彼女の戦闘に対する考え方は、きっと私では及ばぬ領域にあるのだろう」

( ^ω^)(おー……)

珍しい、とブーンは思った。
クーが手放しで相手を褒めるなど、滅多にないからだ。



166: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:42:12.95 ID:xg28za3k0
冷静沈着な思考の持ち主である彼女は、しかし素直な面も持っていた。

思ったことは口に出し、疑問は納得するまで追及する。
嫌なものは嫌だと、良いものは良いと、しっかり言える強情な性格だ。

そんな彼女が人を褒めるとなれば、本当に心の底から感服した時に他ならない。

( ^ω^)(やっぱりヒートさんもすごく強いってことかお……)

英雄であるミルナもペニサスも段違いの強さを持っている。
それは訓練時に嫌というほど思い知らされた。
異獣に拉致されたと言われていたヒートも、しかし例外無く強者なのだろう。

( ^ω^)「……で、その違和感って何なんですかお?」

ノハ#゚  ゚)「私はクーの攻撃全てに対応するため、ウェポン能力の分析を行なった。
      如何に摩訶不思議な武具だとしても、根本的な部分に魔力を使用している限りは
      どうしても七属性に当てはめることが出来るから」

( ゚д゚ )「魔力の七属性は聞いたことがあるだろう?
     震・貫・砕・引・斥・勢・衰だ。
     魔力は必ずこのどれかに分類され、そして目的のために使い分けられる」

例えば、1st−W『グラニード』に使用されている魔力は『引』となる。
2nd−W『ロステック』は『砕』となり、3rd−W『ウィレフェル』は『勢』となるわけだ。



167: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:44:11.04 ID:xg28za3k0
ノハ#゚  ゚)「知ってる通り、ウェポンは形状通りの能力を有している。
      剣だったら『斬る』、槍だったら『突く』、盾だったら『弾く』といった感じにね。
      あとは感じ取れる魔力の波長から属性を知り、その形状から能力を推測することが出来る」

簡単に言ってはいるが、これを出来る人間は少ないだろう。
英雄レベルの戦闘思考速度と、魔力嗅覚が無ければ出来ない荒技である。

ノハ#゚  ゚)「でも、その中で唯一私の予測から大幅に外れたウェポンがあった」

視線はブーンを、いや、その右手を見ていた。
言うまでもなく、握られているのは8th−W『クレティウス』だ。

ノハ#゚  ゚)「私は8th−Wの能力を『打撃・衝撃力の強化』と予測した。
      拳は『殴る』ことが仕事だからね。 この答えに行く着くのに時間は必要なかった」

しかし、その予想は外れた。
クレティウスの能力は『術者の身体強化』である。

(;^ω^)「じゃあ、クレティウスの違和感って――」

ノハ#゚  ゚)「今も言ったけど拳の仕事は『殴る』こと。
      でも拳型の8th−Wは『身体強化』を能力としている。
      つまり他のウェポンのように『外側へ作用する力』じゃなく、身体の中――『内側に作用する力』なんだ」

確かにおかしい話である。
ヒートが感じ取った違和感を、ブーンはようやく理解することが出来た。
ミルナとクーも、同じように納得した表情で頷いている。



172: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:47:59.61 ID:xg28za3k0
( ^ω^)(って、あれ?
      身体の内部に作用するウェポンって、もう一つあるような――)

ノハ#゚  ゚)「他のウェポンに比べておかしいと思えるのは、きっとその製作過程が逆だからじゃないかと私は思う。
      拳だから、じゃなくて……『身体強化』に相応しい形が拳だった、と。
      本来なら鎧とかにするべきだったんだろうけど、何故か武器に拘ってたみたいだし」

(;^ω^)「むぅ」

頷ける理論だ。
細かいところで見れば、クレティウスは違和感に包まれている。

ノハ#゚  ゚)「最後のは私の勘だからハズレの可能性もある。
      けど、クレティウスの違和感についての論は間違ってないと思うよ」

川 ゚ -゚)「内藤、クレティウスは何と言っている?」

( ^ω^)「…………」

『…………』

今までの会話は全て聞いていたようだ。
黙ってはいるが、すぐ傍に意識を感じる。

( ^ω^)(クレティウス?)



177: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:49:45.96 ID:xg28za3k0
『……ここまで問い詰められ、無言を返すのも失礼か』

(;^ω^)(お、おぉ。 だったら――)

『だが、全てを話すわけではない。
 あくまで君達に関する事実のみ教えようと思うが、それでも良いか?』

( ^ω^)(もちろんだお!)

『解った。 しかしこの話は他の者も聞いた方が良いかもしれない。
 後日また会議があるのだろう? その時になら話す約束をしよう』

川 ゚ -゚)「……どうだ?」

( ^ω^)「僕達に関することだけって条件だけど、了承をくれたお。
      作戦前の会議の時に、皆の前で話してくれるみたいだお」

それを聞いたヒートが満足気な溜息を吐いた。

ノハ#゚  ゚)「ということは、やっぱり私の推測は正しかったみたいだね」

川 ゚ -゚)「あぁ、礼を言うぞヒート」

ノハ#゚  ゚)「言葉だけ?」

川;゚ -゚)「む……何が望みだ」



182: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:51:41.78 ID:xg28za3k0
渋々言うクーを見据え、ヒートは仮面から見える目を弓にした。

ノハ#゚  ゚)「じゃあ、これから私の訓練に付き合ってよ。
      ミルナの相手もそろそろ飽きてきちゃってさ」

(;゚д゚ )「!?」

川 ゚ -゚)「そんなので良いのか?」

ノハ#゚  ゚)「自覚してないだけかもしれないけど、貴女は身体能力だけで言えば英雄にも引けを取らないよ?
     ミルナはどっちかと言うと我慢する方だから、クーみたいに回避重視の人とも手合わせしたいんだ」

川 ゚ -゚)「成程……そこまで言われれば、付き合わんわけにもいかないか」

笑みを浮かべて立ち上がるクー。
ヒートも勢いよく席を立ち、呆けているミルナをその場に置いて歩き出す。
結局二人は、止める暇もなく楽しそうに睨み合いながら談話室を出ていった。

(;^ω^)「……あれれー?」

(;゚д゚ )「……むぅ」

取り残された男二人は、気まずそうに汗を浮かべる。

( ^ω^)「お互い大変ですお」

( ゚д゚ )「大変かどうかは解らないが、置いていかれるのは悲しいところがあるな」

果たして、何か通じるものがあったのか。
ブーンとミルナは固い握手を交わし、それだけでは飽き足らず肩まで組んで頷き合った。



185: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:53:09.71 ID:xg28za3k0
と、そんな時に限ってタイミング良く現れる影がある。

('、`*川「ペ・ペ・ペニスは不思議な味ぃ〜♪」

奇怪な歌を口にしながらのペニサスだ。
スナック菓子の袋を片手に、談話室の扉を開いた彼女は

('、`*川「……あらまぁ」

などと、空いている手を可愛らしく口に当てた。

(;^ω^)「え?」

(;゚д゚ )「む?」

('、`*川「えむ? えすえむ? がちほも?」

(;^ω^)「何がどうなったらそういう発想に行き着くんですかお……」

('、`*川「いやぁ、そうやって部屋で二人きりで肩組んでるの見たら、そりゃあイケナイ考えに走っちゃうでしょ」

(;゚д゚ )「イケナイのはアンタの頭だと思うんだが」

『そう?』、と興味無さげに部屋を横断するペニサスは、
菓子をテーブルに置いてソファに腰掛け、傍にあったリモコンを操作してテレビのスイッチを入れた。
流れ始める音楽や賑やかな声が、静かな空間を一転させて明るいものとする。



191: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:54:43.86 ID:xg28za3k0
(;^ω^)「ってか、何してるんですかお?」

('、`*川「見て解んない?
     テレビ見ながらゴロゴロ〜っと、太らない程度にお菓子むしゃむしゃ。
     いわゆる暇を持て余している状態なわけで」

(;^ω^)「え、えと……訓練は?」

('、`*川「んー、あんまりやる意味ないかなぁ、と」

テレビから笑い声が響き、ペニサスも釣られるように小さく笑う。
スナック菓子の袋を片手で開けて食べ始める姿は、とてもではないが英雄に見えなかった。
珍妙な生物を見るような目を向ける二人に気付かないのか、ペニサスはテレビへ顔を向けたまま

('、`*川「ねー、ミルナくーん、英雄世界に帰ったらどうするー?」

( ゚д゚ )「……は?」

('、`*川「いや、だから。 異獣をぶっ倒した後は元の世界に帰るつもりなんでしょ?
     しばらく向こうに帰ってないから、やること溜まってるんじゃないかなーと思ってさ」

軽い調子の言葉に、ブーンとミルナは口を開いたまま呆然とする。

(;^ω^)「ええっと……僕らはこれから異獣と戦うんですお」

('、`*川「だねぇ」

(;^ω^)「だから、先のことよりも目の前に集中してもらいたいというか――」

('、`*川「あーなーるほど」



194: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:56:12.54 ID:xg28za3k0
だらしい格好で寝そべっていたペニサスは、その身を跳ねるようにして起こす。
菓子を一つ口に放り込み

('、`*川「でもさ、私達が生きて辿り着く末なんて一つなんだからいいんじゃない?」

( ゚д゚ )「どういうことだ?」

('、`*川「そのまんまの意味よ。
     異獣に負けて死ぬか、勝って生き残るしかないでしょう?
     だったら勝った後のことを考えるしかないじゃない?」

( ^ω^)「お……確かにそんな気がするようなしないような」

('、`*川「人間死んだら終わりなんだし、そう考えたら私達が進む先は一つだけ。
     何てことないわ。 初めから私達の未来は決まってるようなもんなのよ」

無茶苦茶な理屈であるが、一応筋は通っている。
自分達が見ることの出来る未来など、ペニサスの言う通り一つしかないのだ。

――異獣に勝利し、生き残る。

それは『大変』だとかいう言葉で片付けられることではない。

退路など無い、まさに背水の陣で挑む決死の大勝負である。



198: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:57:51.61 ID:xg28za3k0
('、`*川「ま、そう気負いなさんな。 精一杯やればそれなりの結果がついてくる。
     その結果ってヤツが異獣を上回っていれば勝てるだろうし、逆なら負けるってだけよ」

( ゚д゚ )「……どうにも俺には解らん理論だな」

('、`*川「人それぞれ、って言葉知らない? 私はそう思ってて、ミルナ君はそう思ってない。
     別に私はこの考え方をアンタ達に押し付ける気は無いし、理解出来ないならそれでいいんじゃない?」

( ゚д゚ )「まぁ、確かにそうだが。
     ……で、その考えと、そのぐぅたらな態度は何か関係が?」

('、`*川「今更訓練したって、たった一週間程度で何か変わるとは思ってないだけよ。
     最終日にちょっと動いて勘を起こすくらいで、後は全て休憩に当てるつもり。
     英雄世界に帰ったら忙しくなるだろうし、今の内に堕落しておきたいってわけ」

そう言いながら伸びをするペニサスは、心の底から休んでいるように見える。

( ゚д゚ )「忙しくなる……?
     そうか……英雄神は、もう」

世界交差が発動したということは、英雄世界の純正ルイルが使用されたということだ。

その純正ルイルに魂――つまり本体を封じていた英雄神が、この世界に存在出来る理はない。
この目で最期を見たわけではないが、現状から見れば『消滅』した線が濃厚だろう。



202: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 22:59:23.18 ID:xg28za3k0
('、`*川「他の英雄達も色々と考えてるみたいねぇ。
     英雄神が敵に回ったっていう事実から一転、今度は知らないところで死んだってんだから。
     FCにはモララー、機械世界には軍神、魔法世界にはレインがいるけど
     英雄世界は英雄神を無くしたことから、統率力というか協調性を徐々に失ってるみたいよ」

( ゚д゚ )「……だが、彼らをまとめられる強者などいるのか。
     俺が知る限りではアンタが――」

('、`*川「あー私はパスね。 確かに認められてるとは思うけど、そういう柄じゃないし。
     逆にミルナ君やってみれば?」

(;゚д゚ )「お、俺が? 待て、俺には無理だ」

('、`*川「何でよ? ヒートちゃんは戦いに専念したいって言ってたし、だったら後はミルナ君でしょー」

(;゚д゚ )(い、いつの間にヒートと話を……)

('、`*川「内藤君もそう思わないー?」

(;^ω^)「え?」

('、`*川「指揮官ってーのはピンチの時でも動揺を見せちゃいけないわけで、だとしたら寡黙なミルナ君は打ってつけじゃない?
     ほら、むしろドMだから燃えて強くなっちゃったり。 これが本当の『打たれ強い』」

(;^ω^)「えーっと……よく解らないけど、同意ですお」

(;゚д゚ )「よく解らんのに安易な賛成をするな……そして頼むから後半だけでも否定してくれ……!」



207: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 23:00:58.95 ID:xg28za3k0
( ^ω^)「いや、でも僕はミルナさんでも大丈夫だと思いますお。
     僕より少し年上なだけなのに、物凄く頼り甲斐があるというか」

( ゚д゚ )「……よく考えたら、全て外面の話ではないか。
     俺はモララーやレインのように頭が柔らかいわけでもないし、軍神のような問答無用のカリスマ性を持っているわけでもない。
     上に立つ者としての能力が、俺には決定的に欠けていると思う」

('、`*川「そう、それ」

ペニサスはテレビから目を離し、ミルナを見据えた。

('、`*川「自分の事さえも冷静に判定出来る人って、なかなかいないわよ。
     それにミルナ君は状況分析に秀でてるし……うん、指導者ってよりも参謀役かな。
     だったら尚更、ある程度の地位に立った方が、充分に能力を発揮出来ると思わない?」

(;゚д゚ )「……正論に聞こえるから困る」

('、`*川「何で困るのよ。 まだちょっと時間も残ってるし、暇なら考えてみれば?」

彼女の言葉は軽い。
が、その意味はミルナにとって酷く重いものだ。



212: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 23:04:22.72 ID:xg28za3k0
( ゚д゚ )(俺が人の上に立つ……出来るのか……?)

( ^ω^)「ミルナさんミルナさん」

( ゚д゚ )「ん? どうした?」

( ^ω^)「これからちょっと僕の訓練に付き合ってほしいですお」

(;゚д゚ )「む……いや、悪いがそんな気分では――」

( ^ω^)「まぁまぁ、一度身体を思い切り動かした方が考えもまとまり易くなるですお」

ブーンの押しが強い言葉に、ミルナは少しだけ考える素振りを見せた。

確かにこのまま悩んでいても答えは出そうにもない。
そしてミルナは、そもそも自分は肉体派だということを思い出し

( ゚д゚ )「ふむ……一理ある。
    しかし今の俺に付き合うと、余計に痛い目を見るかもしれんが」

( ^ω^)「構わないですお。 それに僕ももっと強くなりたいんですお」

( ゚д゚ )「強く、か。 ひた向きに頑張れた頃が懐かしい気もするな」

('、`*川「なーに言ってんの。 まだ全然若手のくせして」

ペニサスの意地悪い笑みに、ミルナも苦笑を返した。



214: ◆BYUt189CYA :2007/11/03(土) 23:05:47.67 ID:xg28za3k0
そうだ、自分は若い。
まだまだ経験を積まなければならない時期である。

そう考えれば、それなりの地位に立つのも悪くはないかもしれない。

( ゚д゚ )「……そうだな。 やってみなければ解らんか」

('、`*川(やれやれ。 慎重過ぎるってーのも大変ねぇ)

( ゚д゚ )「よし、内藤。 まずは身体を動かすぞ」

( ^ω^)「あいあいさー!」

そうと決まれば即行動だ。
どこか似ている二人は談話室を飛び出していく。

('、`*川「いってらっしゃーい」

遠退く足音に、ペニサスののんきな声が響いた。



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