( ^ω^)奇人達は二十一グラムの旅をしますようです
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:47:06.64 ID:XEQSdgst0
- ―4―
三人は須名邸へと到着した。公園の側の山道を登る、ちょっとした登山だった。
ブーンは勿論のこと、洋服のツンも、運動不足のショボンも疲労困憊である。
内藤家の飼い犬は、もう歩けないと途中で足を止めたので、ブーンが抱いている。
(;^ω^)「クドは僕と一緒で軽いおー」
ξ;゚听)ξ「お兄様。そろそろご自分の体型を認めてください」
(´・ω・`)「しかし、これは大きいねえ。ブーンの家よりやや大きいか?」
ショボンは須名邸の外観を見上げた。二階建てのハーフティンバー様式の邸だ。
屋根は赤茶けた寄棟造り。よくあるタイプの洋館である。しかし、敷地面積は広大だ。
人が住まなくなってから随分経つのか、窓が割れ、壁は黒ずんでいる。
( ^ω^)「ふん。庭の面積なら、僕の家のほうがずうっと広いお」
- 90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:47:37.25 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「須名家は1960年頃から急成長した、日本の音楽会社です。
ただ、2000年を過ぎた頃、一族に不幸が訪れました」
(´・ω・`)「不幸?」
ξ゚听)ξ「須名の血を引く者と、その関係者が非業の死を遂げていったのです。
それからは凋落の一途を辿るのみでした。誰もブレーキが出来ません。
そして、ついには会社倒産の憂き目に逢ったのです」
(´・ω・`)「なるほど。詳しいね」
( ^ω^)「須名家は、我が内藤コーポレーションとも繋がりがあったんだお」
ξ゚听)ξ「我がって、お兄様の会社じゃないでしょう。お父様のです」
指摘され、ブーンは口先を尖らせて、至極面白くなさそうな表情をした。
ショボンはもう一度洋館を見上げた。灰色の下に映える須名邸は不気味だった。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:48:18.78 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「お兄様が会った女の子は、『黒い翼を持つ少女』と言ったんですよね?
それが、もし本当ならば、その少女は須名家の次女である、
須名・コウデルカだと思います。私達の国の読み方でクーデルカです。
思えば、彼女が亡くなってから、須名家がおかしくなり始めました。
彼女は、変死したと聞いています。自殺か、或いは――」
( ^ω^)(・・・・・・)
(´・ω・`)「ほうほう。という事は、どうやら幽霊説が濃厚になって来たね。
そのクーデルカ嬢が、恨めしや、と祟ったのかもしれない」
( ^ω^)「そんなことはどうでも良い。さっさと中に入るお」
何故か苛々とした口調で、ブーンが二人の長話を止めた。
カツカツと革靴の音を周りの森に響かせながら、彼は正面玄関に向かう。
自分勝手さにショボンは肩を竦め、ツンは眉を顰めて額に手を当てる。
それから、二人は目を合わせたあと、ブーンの後姿を追いかけたのだった。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:49:03.47 ID:XEQSdgst0
- 重厚な茶色の玄関扉は、ドアノブを回すと何の抵抗もなく開いた。
ブーンが薄暗い建物の内部の様子を、目を凝らして注意深く窺う。
玄関というよりはホールさながらで、二階まで吹き抜けになっている。
彼の目の前には、結構幅のある赤い絨毯が敷かれた大階段がある。
階段は中ほどで左右に折れ、二階へと続いている。踊り場の上部にはステンドグラスがある。
ステンドグラスには、小さな子供を囲む、九人の羽ばたく天使が描かれている。
(´・ω・`)「アンゲロスからセラフの、九階級の天使達だね。
しかし、見たことがない型だな。真ん中の子供は誰だろう」
ブーンの隣に並んだショボンが、正面を見上げて興味深げに腕を組んだ。
ブーンは、彼の話など無視して屋敷に足を踏み入れた。靴が床につくと埃が舞う。
汚れないでは帰れないらしい。高価なスーツを着ているブーンは、眉根を寄せた。
けれども、ツンを半ば家に幽閉させている奴に文句を言わねば気がすまない。
( ^ω^)(そして、クー。もしも、君なら)
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:49:31.48 ID:XEQSdgst0
- (´・ω・`)「さあて、どこから探索しようか。順当に一階からかな」
ξ゚听)ξ「そうですわね。けど、くれぐれもお気を付けてくださいね。
いつ、あの奇妙な術を使ってくるか分かりませんから」
( ^ω^)9m「そこの部屋から調べてみるお」
ブーンは左側にある扉三つの内、自分達に最も近い扉を指し示した。
茶色い、両開きの扉だ。三人はそちらへと近づいて行った。
(´・ω・`)「気配はない、か。それじゃあ、開けるよ」
扉がギギギィと音を立てて開かれる。全てを開き終えると、部屋の様子が分かる。
大きなテーブル。それに左に五脚、右に五脚、木造の椅子が置かれている。
食堂だ。壁には開放感を得られるように、出窓が等間隔に並んでいる。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:50:11.51 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「お兄様。良かったですわね。食堂の広さは内藤家が勝っていますわ」
( ^ω^)「ふむ。見たまえ、ショボン。僕の家の方が格が高い」
(´・ω・`)「皮肉に気付け。ご飯を食べる場所の広さなんて、どうでも良いよ。
それより、ここには目的の人物は居ないようだ」
食堂には人が隠れられる場所は無い。無論、テーブルの下も何もない。
(U^ω^) わんわんお。
( ^ω^)「おっと」
突然、美犬が胸の中で暴れだした。ブーンが慌てて抱きなおす。意識すると重い。
その様子を見ていたショボンは、「おお」と手を打った。
(´・ω・`)「待てよ。そいつは一応犬だ。僕達以外の匂いを嗅ぎ付けたのかもしれない」
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:50:48.09 ID:XEQSdgst0
- ( ^ω^)「一応ってなんだお。・・・本当かお? お前の力を見せ付けてみろ」
ブーンが開放すると、美犬は地面に叩きつけられ、転がりながら着地した。
そうして立ち直ったあと、覚束ない足取りで部屋の隅へと向かった。
(U^ω^) わんわんお!
クドリャフカは、「こっちに来い」とでも言わんばかりに吠え立てる。
顔を見合わせた三人は、とりあえず彼女の側に寄ってみることにした。
( ^ω^)「くずかご?」
部屋の隅には、上質の籐で編まれた小さなサイズの屑籠が置かれてあった。
ブーンは屑籠の中を覗き込んだ。中には、くしゃくしゃに丸められた紙があった。
その紙だけで他にゴミはない。ブーンはそれを拾い上げて、広げた。
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:51:31.77 ID:XEQSdgst0
- ( ^ω^)「なになに、えーっと」
紙には、まるで字を覚えたての幼子が書いたような、くねくねの文字が並んでいた。
一つ一つ丁寧に解読し、ブーンが紙に書かれた文章を読み上げていく。
“いまこそ、めざめのとき。くろいつばさのいみを、おもいだしてほしい。
つらいことが あったのでしょう。くるしいことが あったのでしょう。
わたしたちは、わたしたちをうんだせかいを かえなければなりません。
そのために、どうか あなたのつよいちからを かしてださい。”
( ^ω^)「ヘイ! ショボン! 誰かは知らないが、革命を起こす気だお!」
(´・ω・`)「そうだねえ。この文章にも“黒い翼”とある。
これは、ツンちゃんの言う奴らに違いないね。楽しくなってきたな。
それと、この手紙を読んだ人物は断っちゃったみたいだね」
( ^ω^)「丸めてゴミ扱いだしお! しかし、誰が書いたのだろうかお。
この文章を見る限り、小さな子供としか思えないお」
(´・ω・`)「うーん。でも、文章は割としっかりとしてるんだよなあ」
- 100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:52:14.16 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「最後の方、へりくだってますよね。・・・いよいよ気を付けてください。
“黒い翼の少女”が居れば、それは恐らく強い力の持ち主です」
(´・ω・`)「強弱があるんだ? ツンちゃんは、どうやって渡り合って来たんだろう」
ショボンは口に手を添えて、ううんと唸り声を上げ、部屋中に視線を巡らせた。
問われたツンは返し難そうに、顔を伏せる。暫しの沈黙のあと、呟くように言った。
ξ;゚听)ξ「ええっとですね。どう説明すれば良いか。彼らの心を満たせば良いんです。
彼らは、それぞれ何らかの“飢え”を持っている場合が多いです。
その“飢え”を取り除けば、彼らは大人しく退いてくれます」
(´・ω・`)「ははあん。こいつは益々怪談のそれだ。つまりは鎮めるんだね。
無神経ボーイ。聞いたかい? 相手の心を知らなければ不可能なんだ。
相手の気持ちを知れば、自分が成長する。今の君にはうってつけだ。
心の旅をしなければ。ああ、そんな名前の曲が日本にあったなあ」
( ^ω^)「心の旅?」
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:52:52.72 ID:XEQSdgst0
- それは佐藤にも言われた言葉だ。今思い返せば、彼女は何を告げたかったのだろう。
佐藤の声を思い出し、深く考えてみる。しかし、今のブーンにはどうしても覚ることが出来ない。
それを繰り返していると、心に徐々にどす黒いものが渦を巻いて、こみ上げて来た。
『情けない男だ。君は全くの無力なのだ。そう。だから、母親を助けられなかった。
違う、だなんて言わせない。もう一度言おう。君は、全くの無力である』
(#;ω;)「違う! 凡百の人間とは違って、誰よりも優れているのだお!」
(;´・ω・)ξ;゚听)ξ「「!?」」
突然の絶叫。テーブルが思い切り叩き付けられる音。ブーンが子供のように喚く。
ツンは勿論のこと、ショボンもこの時ばかりは驚きを隠せなかった。
ブーンは涙を流しながら意味不明な言葉を発して、何度も何度も両拳で叩き付ける。
流石に尋常ではないと判断したショボンは、彼の後ろから羽交い絞めにした。
(;´・ω・)「時に落ち着け。ははあ! 僕が無神経だと言ったのが気に触ったんだ。
あれは撤回しよう! 君は人の気持ちが分かるグッドボーイさ!」
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:53:31.77 ID:XEQSdgst0
- ( ;ω;)「違うのだお。あれは不可避の、事故だったのだお・・・・・・」
ξ;゚听)ξ「・・・・・・お兄様」
やがて、ブーンは落ち着きを取り戻し、力なく埃の積もった椅子に座った。
彼特有の高い自尊心が戻るのは、まだまだ時間がかかりそうだった。
(´・ω・`)「よしよし。誰にだって、無性に叫び狂いたくなることはあるものさ。
君が落ち着くように、日本のOTAKUから教えて貰った歌を唄ってあげよう。
ゆーめどりーむ おーいーかーけてー すなーおーなこのきーもちー♪」
ショボンは調子の外れた声で唄う。日本語で何と言っているか分からない。
ただ一つだけ言えることがある。ブーンは顔を突っ伏したまま呟いた。
( ω )「音痴だお」
- 103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:54:01.53 ID:XEQSdgst0
- (´・ω・`)「聞き捨てならないな。OTAKUの友人には上手だと褒められたんだけど」
( ^ω^)「・・・・・・きっと、おべんちゃらを言ったんだお」
ブーンが顔を上げた。そこにはもう、恐慌の表情は張り付いていなかった。
ショボンはほっと胸を撫で下ろし、彼の強張った両肩を優しく揉み解した。
(´・ω・`)「おんやあ? お客さんだらしないね。引き篭もり生活でもしてるんだろう」
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「なんだい?」
( ^ω^)「・・・・・・いや、何でもないお。そろそろその手をどけろお」
ブーンはどうしても言えなかった。「ありがとう」の一言を。
理由を考えてみる。今度は先程とは違って、すんなりと答えが出る。
自分がどうしようもなく傲慢だからである。彼はゆっくりと席を立つ。
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:54:53.05 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「お兄様、大丈夫ですの?」
( ^ω^)「もう大丈夫だお。心配かけてすまないお」
(´・ω・`)「天使のゆびーきりー、叶うよーにー♪ いや、僕の歌声はなかなかだろ」
( ^ω^)「分かった分かった。耳が腐るからやめてくれお」
(´・ω・`)「あのね。今度は僕が泣いてしまうぞ。そうなったら介抱してよね」
三人はそれぞれの笑顔になる。無事に、この場は収まったようだ。
そんな中、部屋にガチャリという音が響いた。一同はそちらに注目する。
ζ(゚ー゚;ζ「あ」
扉から女性が顔を見せた。そして、映像の逆再生のように扉を閉じ、出て行った。
- 107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:55:18.23 ID:XEQSdgst0
- ( ^ω^)「今のは?」
(´・ω・`)「・・・・・・」
ξ;゚听)ξ「ほんの一瞬ですが、あの人の背に黒いものが見えました」
(;´・ω・)「・・・・・・ユーメイドリーム! 追いかけろ!」
三人は慌てて部屋を飛び出した。丁度、女性が向こう側の部屋に入る姿を確認した。
女性が入った部屋の扉の前に立つと三人は、一様に緊張の面持ちになる。
(´・ω・`)「よし。僕が先に入ろう。持ってきておいて良かった」
ショボンが懐に手を忍ばせた。そうして現れたものはとんでもないものだった。
(;^ω^)「け、拳銃! どうしてそんなものを!?」
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:55:56.53 ID:XEQSdgst0
- ショボンは重々しく黒光りする回転式拳銃をぐっと握る。1、2、3。
タイミングを計り、ショボンは扉を蹴破って部屋の中へと足を踏み入れた。
そして、即座に構える。女性は部屋の奥の壁際に居た。照準を合わせる。
(´・ω・`)「フリーズ! 日本語で言うと“動くな!”」
ζ(゚、゚;ζ「どうして、ジャパニーズで言い直す必要があるの」
(´・ω・`)「僕が親日家だからだよ」
ζ(゚、゚*ζ「それは仕方ないですの。あたしも日本は好きですよー。
スシー、テンプーラ、東尋坊、ナナちゃんにんぎょお♪」
(´・ω・`)「・・・・・・?」
女性は拳銃を突き付けられているのにも関わらず、のんびりマイペースだ。
その内、欠伸でもしそうな雰囲気である。余裕というものなのだろうか。
真っ直ぐに立つ女性の背中を見るが、黒い翼などは生えていなかった。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:56:43.49 ID:XEQSdgst0
- (;^ω^)「君は特殊訓練でも受けたのかお。手榴弾がなくて残念だったね」
ξ;゚听)ξ「ショボンさん」
二人が遅れて部屋に入ってきた。ショボンは構えを崩さずに忠告する。
(´・ω・)「気を付けろ。どうにも、この女性は普通じゃないようだ」
( ^ω^)「んー?」
ξ゚听)ξ「・・・」
ツンは悠然と立つ女性を見る。すると彼女の眼には、はっきりと翼が視えた。
そして視線を移動させていると、女性の後ろにある大きな鏡に気付く。
ξ;゚听)ξ「鏡を! 鏡を見てください!」
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:57:21.86 ID:XEQSdgst0
- ショボンとブーンは言われるがままに、壁に掛けられている等身大の鏡を見る。
(;´・ω・)「・・・・・・本当に、存在していたんだ」
(;^ω^)「・・・・・・」
鏡に写る女性の背中には、確かに、ありありと黒い霧状の翼があった。
翼といっても、誰もが想像する天使みたいに大きなものではない。
丁度、絵本に出てくるキューピッドのような小さな翼だ。
ζ(>ε<*ζ「あやや。だから逃げたのに。おまけに視える人も居るですの。
鏡は全ての闇を光を、真実を映してしまいますですの」
ぶうぶう、と緊張感など全くなく、外見が大人とは思えない仕草を女性はする。
一見無害そうに見える。だが、ショボンは集中力を欠かない。銃口は女性に向けたままだ。
(´・ω・`)「まあ、なんだろう。もっと劇的な出会いを果たすと思ってたんだけど」
ζ(゚ー゚*ζ「出会いは、いつだって、突然ですの」
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:57:59.74 ID:XEQSdgst0
- (´・ω・`)「ふうん。まあ、良いか。君達が何者なのか教えて貰おうかな。
おっと、動かないでね。もし動いたら、大出血がマッハになる」
ζ(>ー<*ζ「だめだめだめですの。あたしに、一切の物理攻撃は効かないのです。
あたしを討てるのは、エル・オー・ブイ・イー。ええ、清らかな恋だけなのです」
そう言えばそんな話だったっけ。ショボンはツンの方へと視線を向けた。
彼女は頷く。ため息を大きく吐いて、ショボンはだらりと銃を下ろした。
(´・ω・`)「ちぇっ。おてんばガール。もう一度訊いても良いかい。
君達の正体は何なんだい? お化け? アンブレラの生体兵器?」
ζ(>ε<*ζ「ぶっぶー! 全部違いますですの。大変ゆとっていますですー」
(´・ω・`) イラッ。
ショボンは珍しく苛ついた。なんだこのファニーガールは。死ねば良いのに。
女性じゃなかったら※※ているところだ。口に出していないので、セーフセーフ。
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 22:58:49.81 ID:XEQSdgst0
- ζ(゚ー゚*ζ「あたし達はですねー、二十一グラムなんですの」
(´・ω・`)「・・・それは魂の重さのことだね。アメリカの医師が行った実験。
人間は死ぬ際に、幾ばくかの重量を失うという。
その変化が二十一グラム。世間に広まっている俗説さ」
ζ(゚、゚*ζ「うんうん。その零れちゃった魂、及び意思があたし達の正体」
(´・ω・`)「幽霊とどこが違うんだい? 似たようなものじゃないか」
ζ(>ε<*ζ「お化けさんは、実体がないじゃないですか! あたしはここに在るもの!」
(´・ω・`)「その顔やめて。ふと僕が、僕でなくなってしまいそうになるんだ」
えへへ、と女性は頭を掻いて微笑んだ。忙しく表情が変わる娘だ。
ゆるいウェーブのかかったブロンドの髪の毛。愛くるしさを振りまく顔立ち。
恐らくショボン、ブーンと同年代だが、童顔なため十代でも通用するだろう。
淡いピンクのスカートと純白のブラウスが、とても彼女の雰囲気に合っているといえる。
肩には浅葱色のショルダーバッグを掛けている。その鞄にはピンバッチが数個付いている。
- 116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:00:01.38 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「どうして逃げたの? あなたがもしかしてクーデルカ?」
ずっと黙していたツンが、きつい口調で話しかけた。
女性は、自分の髪の毛を指先でくるくる巻いてブルーの瞳を向ける。
ζ(゚、゚*ζ「ううう、なんて綺麗な人。逃げたのは、キミ達のことを思ってのことですの。
あたし達の存在を認知してしまえば、もう普通の生活に戻れないのですよ。
お姉さんなら、分かるはずですの。あたしは他人を不幸にしたくないんです」
髪から指を離す。女性繊細な糸のような髪の先が、ぽよんと跳ねる。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、嘘だって顔してますねー? 本当ですですよー。
あたしはタマモ・デレというですの。ここのお嬢さんではありません」
(´・ω・`)「タマモ、・・・ね。玉藻前。君にぴったりじゃないか。
僕達も自己紹介しとこうか。こっちはツンちゃん、僕の隣の変なのはブーン。
――それで、デレさん。君はここで何をしていたんだい?」
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:00:45.97 ID:XEQSdgst0
ζ(゚ー゚*ζ「ご丁寧にどうも。私は“影”の身でありながら“影”を退治しているのです。
“影”とはあたしの世界での、黒い翼を持つ人達の呼び方です」
ξ゚听)ξ「そんなの、とても信じられないわ。あなた達は人に危害しか与えない」
ζ(゚、゚*ζ「疑り深いですの。証拠に、あたしはここのお嬢さんについて調べたのに」
(´・ω・`)「ほう。ねえ、ブーン。君はどう思う? 彼女を信じられるかい?」
ショボンは左に立っているブーンを、肘で小突いた。反応は返ってこない。
もう一度小突く。しかし、無反応である。疑問に思い、彼の横顔を見た。
(;^ω^)(・・・・・・)
ブーンはまるで氷のように固まっていた。又は大理石の彫像のように微動だにしない。
呼吸をしているのかすら分からないほどに、彼は驚きの顔のまま静止している。
(´・ω・`)「衝撃を受けたのは分かる。けど、君は文句を言うんじゃなかったのかい?」
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:01:19.47 ID:XEQSdgst0
- 怖気づくような性格ではないだろう。ショボンは、ブーンの腕を引っ張った。
すると途端、彼は雷に撃たれたかのように、全身を激しくわななかせた。
(;^ω^)「おおおお、おおおお、おおおお・・・・・・」
(´・ω・`)「お? アストロンボーイの帰還だ。おかえり。
さあ、妹の敵だ。君は言いたいことがあったんだろう?」
( ^ω^)9m「――――素晴らしい!」
(´・ω・`)「は?」
ξ;゚听)ξ「お兄様?」
ζ(゚、゚*ζ「?」
ブーンはデレを指差して褒め称えた。デレは彼の妹を脅かす存在の同類だ。
デレが何かをしたわけではないが、彼女は、ツンを家に押し込めているものの仲間だ。
罵倒ことすれど、褒める理由はない。ブーンは妹を愛しているのではなかったのか。
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:02:01.12 ID:XEQSdgst0
- (´・ω・`)「君は動揺しすぎなんだ。心を静かにして、今一度考えてみろ」
( ^ω^)「いや」
ブーンは首を横に振り、つかつかとデレへと近づいた。彼女と並ぶと頭一つ分身長差がある。
そして、次に彼は驚くべき行動を取った。なんと、デレを抱きしめたのだった。
ζ(/////ζ「え、ええ? ちょっと」
( ^ω^)「こんなに美しく可憐な女性は、他に居ないお! 決めた!
僕はこの娘さんを妻に迎えるお! 今から結婚式の準備をするお!」
ブーンはデレに熱いベーゼをした。デレは唐突の口付けで、目を大きく見開く。
唇が離れると、彼女の顔は紅潮しきっていた。ショボンとツンに衝撃が走る。
(´・ω・`)「おいおいおいおいおいおい。頼む、理性ある行動を心がけてくれ」
ξ;゚听)ξ「お兄様・・・。何をしているのです!? 破廉恥ですわよ!」
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:02:35.12 ID:XEQSdgst0
- ブーンはしかし、二人の悲鳴めいた声など聞き入れなかった。
意馬心猿とし、いっそうデレを力強く抱く。髪の毛の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
それは、ブーンの情動を攻め立て、とうとうベッドに押し倒すまでに至らせた。
部屋の壁際にあるベッドのバネが、男女の重みに耐えかねてぎしりと音を立てる。
( ^ω^)「デレと云ったね。今から君は僕のものだお。
僕は君との子孫が欲しい。この意味が分かるね!?」
ζ(/////ζ「う、うん。でも、あたし、初めて、ですの」
( ^ω^)「いいね! 純潔なんだね! 僕も初めてだから大丈夫だお!」
ブーンは白い首筋に舌先を這わせる。デレはびくりと顎を上げて、甘い声を漏らした。
スカートを捲り、彼は膝から太ももへとゆっくりゆっくりと手を移動させていく。
そして、とうとう指先が下着に触れようととした時、ブーンの身体が宙を舞った。
ξ#゚听)ξ「何をしてるんですか! 閲覧注意になってしまいます!」
(´・ω・`)「お。メタ的な発言いただきました」
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:03:22.69 ID:XEQSdgst0
- (;^ω^)「ぐふう・・・。朝のカレーをもどしそうだお!」
ツンに思い切り蹴飛ばされたブーンは、フローリングをのた打ち回る。
冒頭で、暴力的な女性はツンデレではないと書いたが、これは致し方ない。
ブーンの行動は常軌を逸していたのだから。やって良いことと悪いことがある。
ツンは威圧する眼でブーンを見下ろし、指を震わせながら怒鳴りつける。
ξ#゚听)ξ9m「恥を知りなさい! 内藤家の名を汚すつもりなのですか!」
(´・ω・`)「そうだよ。ツンちゃんの言う通りだ。君は間違っている」
ξ#゚听)ξ「ショボンさんも言ってやってください!
ここできつく叱っておかないと、兄はきっと調子付きます!」
(´・ω・`)「こんな荒れ果てた屋敷で女性を抱くなんておかしい。ロマンがない。
セックスは自分の家で、君の広く清楚な部屋で熱くするものだ」
ξ;゚听)ξ「な、何を仰ってるんですか? そういう問題ではないです・・・」
- 125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:04:09.34 ID:XEQSdgst0
- ( ^ω^)「た、確かに。僕は軽はずみな行動に走ってしまったお。
・・・すまなかった。帰ってから、誰も居ないところで子作りに励むお」
蹴られた脇腹をかばいながら、ブーンはよろよろと立ち上がる。
デレを見ると、ベッドの上で頬を赤くしてスカートの裾を正していた。
ζ(/////ζ(び、びっくりしたぁ)
(´・ω・`)「で、ブーンはどう思うの? 彼女は“影”とやらを退治してるそうだ」
( ^ω^)「僕はデレを信じるお。特別に責め立てたりもしない。
デレはデレであり、彼女がツンを困らせたものではないお。
そして、僕はデレがしようとしてることを手伝いたいと思う」
(´・ω・`)「ブーンが他人のことを考えるなんて珍しい。しかし、正気かい?
僕達がここに来たのは、ツンちゃんがいう奴らの存在を確認するためだ。
別に、闇で蠢く奴らを退治しようとしに来たわけじゃない」
- 127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:05:08.35 ID:XEQSdgst0
- ショボンの言う通り、ブーン達は黒い翼を持つものの正体を確認しに来ただけだ。
銃撃が通用しないのが相手なのだ。このまま帰った方が賢い選択である。
それなのに、なにゆえブーンは乗り気なのだろうか。ショボンは腕を組む
(´・ω・`)「僕はこのまま帰った方が良いと思うんだけどな」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、それは不可能ですの」
デレが遮るように言った。三人は彼女へと注目する。
ベッドの縁に座って、デレは屈託なくにこやかに微笑んでいる。
(´・ω・`)「不可能?」
ζ(゚ー゚*ζ「あなた達は、あたしの存在を知る眼を手に入れてしまったのです。
そう。その瞬間から、この邸のお嬢さんに目を付けられたんですの。
深淵を覗くものは、また深淵に覗かれているの――ええ、だから!」
声を大きくさせて、デレは勢いよく立ち上がった。鹿爪らしい表情。
いきなりの変調。デレは戦慄く両手を顔の前まであげる。噛み締める白い歯が覗く。
- 128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:05:50.70 ID:XEQSdgst0
- ζ( ー *ζ「あたし達は、彼女の流線型に揺らめく呪い。その渦中にいるのだ!
もう、逃れられない。しつこく計算しつくされた、穴は皆無の呪い。
目覚めた眼で、窓の外を見ると良い。吸い込まれそうな闇だけが見える。
希望はない。退路もない。行けば、アカシックレコードから外れる・・・。
だから、眼を凝らしたまえ。二十一グラムの欠片が視えるだろう。
それこそ、クーデルカの潜在意識に残された最後の最後のひとかけら!」
(´・ω・`)(また、おかしな人間が僕の前に現れた・・・)
人が変わったように早口で捲くし立てて、腕を下ろす。デレの言葉の行方が掴めない。
静寂が訪れた部屋。その秩序を打ち破ったのは、ツンのかすれた声だった。
ξ゚听)ξ「・・・言われたことは本当です。私達は既にクーデルカの術中に嵌っています。
私は、この邸に入った時点で呪われていました。ステンドグラス。
あれはクーデルカの世界の一部分が、漏れ出してしまったものです」
(´・ω・`)「僕とブーンは後から呪われたんだね。いやあ、参ったなあ。
今日は見たいテレビがあったんだけどな。録画しておけば良かった」
- 130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:06:15.80 ID:XEQSdgst0
- ζ(゚ー゚*ζ「眼をしっかりと閉じて、そして、ゆっくりと開けて欲しいですの。
そうすれば、ツンさんが見ている、クーデルカの世界が見えますの」
ブーンとショボンは顔を見合わせてから、瞼を閉じた。黒い空間が映る。
やはり渡辺が言っていた、緑には見えないな、とブーンは目を開けた。
(;^ω^)「お!」
(´・ω・`)「これは驚いたな」
二人は動揺し、ざわめいた。今までの様相が全て一変していたのである。
薄汚れ、埃が漂っていた部屋が、人が住んでいたころのそれへと変わった。
ベッドにはシーツがきちんと敷かれている。鏡は光輝くほど綺麗だ。
ζ(゚ー゚*ζ「ツンさんは、この邸に入った時から、こう見えていた。そうですの?」
ξ゚听)ξ「・・・・・・そうよ。まさか、ここまで力が強いとは思ってなかった」
- 132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:08:06.80 ID:XEQSdgst0
- ζ(゚ー゚*ζ「そうです。“影”にも強さってものがあるんですの。
ここのお嬢さんは、エスからイーまでのランクで表せばエスレベルです。
影には二種類あります。たくさんの思念が積み重なっているもの。
もう一つは、一つの思念で成り立っているもの。後者の方が強力です。
そして、クーデルカさんは一つの思念のみで生きておりますの。
しかも運の悪いことに、お嬢さんは大変聡明で狡猾なのです」
( ^ω^)「デレは、何故そんなに詳しいんだお?」
デレはブーンと目を合わせると、先程押し倒されたことを思い出して赤くなった。
顔を見ないように伏せ目がちにして、デレは質問に答える。
ζ(゚、゚*ζ「さ、さっきも言いましたの。邸に来る前に調査済みですの。
好きなもの、嫌いなもの。生い立ち。どうして死んだのか」
(´・ω・`)「邸に入る前にツンちゃんに聞いたけど、彼女は変死したらしいね。
本当のところはどうなのか。教えてくれるかい?」
- 133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:08:44.33 ID:XEQSdgst0
- デレはこくりと頷いた。青い眼を上目遣いにして、ショボンを見上げる。
ζ(゚、゚*ζ「答える前に一つ、まずは一つ念頭に置いて欲しいことがあるです。
“影”になる人達は、それぞれ恨みを抱いて亡くなっております。
クーデルカさんも例外ではなく、耐え難い運命にありました」
ごほん、と咳払いをする。彼女の行動には、オノマトペがいちいち付きまとう。
ζ(゚、゚*ζ「クーデルカさんは、正確には須名家の血を引いていません」
( ^ω^)「なんだって?」
ζ(゚、゚*ζ「彼女は母親の不義の子供です。父親の血を引いていないです。
父親である須名会長が日本人、母親はこの国の出身なのですが、
生まれてきた彼女がハーフにはまるで見えないため、
DNA鑑定をしてみたところ、不義が発覚したようです」
(´・ω・`)「重いね。その話の続きは、嫌な予感しかしないよ」
- 134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:09:21.81 ID:XEQSdgst0
- ζ(゚、゚*ζ「クーデルカさんの人生は悲惨でした。ずっと父親から疎われていました。
・・・ただ嫌われるだけだとまだマシなのですが、彼女が六歳の頃、
母親が逝去された時から、虐待を受けるようになりました」
ξ゚听)ξ「虐待」
ζ(゚、゚*ζ「はい。ご飯を食べさせて貰えなかったり、日常的に暴力がありました。
それから、もしかしたらですが――いえ、なんでもありません。
あ、これらは邸に入って彼女の世界を探索した結果からの推測ですの」
( ^ω^)「・・・・・・彼女は、楽に死ねたのかお?」
ζ(゚、゚*ζ「ブーンさんはお優しいですの。でも、先程言ったように、
影達は例外なく、恨みや辛みと共にその人生を終えてますの。
彼女の場合は自殺です。縊死。十五歳の若さで、生涯の幕を閉じました」
( ^ω^)「そうかお」
ブーンは窓の外へと視線を遣った。漆黒で遠くが見えない。どこまでも深淵である。
彼女はこのような精神状態で死んでしまったのだろうか。彼は目を閉じる。
- 135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:10:05.88 ID:XEQSdgst0
- ζ(゚ー゚*ζ「しかーし! 安心してください。あたしが楽にしてあげますの。
実は決定的な武器を手に入れましたですよ! 彼女は最後に幸せになれる。
この世界に生きるツンさんには、それがどういったものか分かるですの!」
ξ゚听)ξ「・・・クーデルカが喜ぶ物や、或いは言葉を与えれば良いのよ。
彼女が何で喜ぶのか知らないけれど、私はそうして生き延びてきた」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなのです! あたしはこの邸で、お嬢さんの日記帳を発見しました。
それには、ある興味深い一文がしっかりと書かれていました。
『私のこの家での唯一の話し相手は、母から貰ったクマのぬいぐるみだ』、と」
(´・ω・`)「なるほど。そいつを渡してやれば、クーデルカの心は満たされるわけか」
「正解です!」、と明るい声を出して、デレはカバンの中に手を入れた。
ごそごそと探り、じゃじゃーんと出てきたのは、茶色いクマのぬいぐるみである。
ぬいぐるみを三人にきっちりと見えるように、天井へと向けてかざす。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:10:54.49 ID:XEQSdgst0
- \ζ(>ε<*ζ「じゃじゃーん! お待ちかねのクマさんのぬいぐるみですよー!
可愛い顔して、人一人を輪廻の輪へと叩き送るニクいやつですの」
( ^ω^)「ぬいぐるみよりもデレの方が可愛いお」
ξ゚听)ξ「お兄様・・・・・・」
(´・ω・`)「たった今日一日で、ブーンの趣味が分からなくなりそうだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「クーデルカさんがどこに居るかも、目星が付いてますの。
彼女は在世中、二階の物置部屋に住むよう強制されていたですの。
きっと、そこに。今は彼女が素敵な空間に変えていると思いますです」
(´・ω・`)「素敵な空間って、万魔殿とか? 君達は化け物なんだな」
デレが言うには、とりあえずどうにかなるらしい。ぬいぐるみがカバンに仕舞われる。
まるでピクニック気分のように鼻歌を唄う彼女に、ショボンは気になっていたことを尋ねた。
- 137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:11:50.83 ID:XEQSdgst0
- (´・ω・`)「良いよ。君のこと僕も信じてしまおう。ただ、その前に質問がある。
何故、君は影退治なんてしているんだ。それは云わば、同族殺しだよ」
何のメリットもない。デレがしていることは、人間の世界で言えば殺人である。
鼻歌を止めて、デレは視線をあちこちに泳がせる。考え込んでいる様子だ」
十秒ほど経ち、彼女は眼球の動きを止めた。頬に人差し指を置いて答える。
ζ(゚、゚*ζ「・・・・・・あたしは、ミステリ小説が好きなんですの。
クリスティ、エラリイ、カー、日本ではアヤツジとかも好きですの。
あたしはそれらに登場する探偵役に、いつも憧れているのですよ」
(´・ω・`)「つまり」
ζ(゚ー゚*ζ「心の欠片を集めて、災厄を振舞う犯人にびしっと指を突きつけるです!
その瞬間は生きがいを感じますです。気分爽快、愉快痛快ですのー!」
(´・ω・`)「やい。究極の変人だぜ。ブーンはそれでもこの娘が好きなのかい?」
( ^ω^)「僕の妻となる女性は、これくらい、かしましくなくては務まらん」
(´・ω・`)「そう。もう好きにして」
- 138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:12:21.02 ID:XEQSdgst0
- もう、ブーンはデレと結婚する気満々のようだ。デレも頬を赤くして否定しない。
相思相愛だ。きっと、素晴らしい家庭を築けに違いない。子供が出きるのかは不明だが。
ζ(゚ー゚*ζ「さあって。あたしは、今からクーデルカさんに会いに行きますの。
キミ達は、何の心配もせず大船に乗ったつもりで、ここで待っててです。
あたしが、ズビシイ! っとお嬢さんを指差してあげるですのー」
そう言って、デレは三人の側を通って扉へと歩き始めた。柑橘系の香水の匂いがした。
そうして、ドアノブに手をかけて開けようとしたところ、ブーンが呼び止めた。
( ^ω^)「待ってくれお! 僕も一緒に行きたいのだお!」
ζ(゚、゚*ζ「ううう、素敵な人。もしかしたら、危険になるかもしれませんですの」
( ^ω^)「僕も、クーデルカに会いたいのだお!」
ζ(゚、゚*ζ「もう! しようがないですの。あたしの後ろに居てくださいよ」
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:12:55.46 ID:XEQSdgst0
- ブーンは、「やった」と歓声を上げてデレに寄った。そして、自然に抱きしめる。
それから、舌を絡ませ合ってるのではないかと思うくらい、情熱的なキスをしたのだ。
(´・ω・`)「もう絶対に突っ込まないぞ。僕も一緒に行かせてくれ。
君達二人なんて、クーデルカ嬢の前で漫才を始めてしまいそうだ」
人前で、性行為さえしなければ良い、とショボンが投げやりな感情で言った。
彼らを二人にしておけば、必ずやクーデルカの逆鱗に触れるだろう。
それは、何らかの悲劇に発展しかねない。抑える役が必要不可欠である。
ζ(>ー<*ζ「あたしは幸せものですの。どうぞどうぞ、背中は任せたです」
( ^ω^)「ツンは、どうするのだお?」
ξ゚听)ξ「私は・・・・・・」
ツンは床に視線を落として、両拳をぎゅっと握った。すこぶる表情が暗い。
うつむく彼女が如何様の気持ちなのか、ブーンとデレには察せられなかった。
ゆっくりと顔を上げると、ツンの顔には微かな笑みが浮かんでいた。
- 140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/25(月) 23:13:14.62 ID:XEQSdgst0
- ξ゚听)ξ「私はこの部屋でクドと待っています。ほんの少し、疲れました。
クーデルカのことは、間違いがなければ彼女の言う通りで大丈夫でしょう」
(´・ω・`)(・・・・・・きっと、兄を取られたように思っているんだろうなあ)
( ^ω^)「分かったお。最良の結果を持って帰って来てやるお!」
(´・ω・`)「ブーンのことなら、僕が見張っておくから安心してね」
ξ゚听)ξ「はい。重々お気を付けてくださいね。ごきげんよう」
別れの挨拶をしたブーン達は、ツンを一人部屋に残して、大広間へと出て行った。
ツンはベッドに腰掛け、一呼吸置いてから、ゆるゆるとシーツの上に寝そべった。
側にあった真新しい枕を胸に抱いて、聞こえるか聞こえないかの、小さな声で呟いた。
ξ--)ξ「お兄様の、ばか」
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